プラナカン 東南アジアを動かす謎の民
太田泰彦(著)
/日本経済新聞出版
作品情報
【気高い美意識の謎に満ちた氏族】
プラナカンと呼ばれる異色の民が、東南アジアの国々にいる。 ある者は貿易で巨万の富をつかむ夢を抱いて。またある者は凶作と貧困から逃げ出すために。福建や広東の華人たちは、生死をかけてマラッカ海峡の新天地を目指した。男たちはマレー半島やスマトラ島、ジャワ島の妻と所帯を持った。熱帯の日差しを浴びて生まれ育った子孫が、やがて中国でもマレーでもない、万華鏡のように色鮮やかな独自の文化を開花させていった。彼らは、華僑とも異なる存在で、アジア経済界で隠然とした勢力を誇ち、その気高い美意識を誇る氏族の素顔は、いまなお謎に包まれている。19世紀には英国の東インド会社と手を組み、香辛料貿易、スズ鉱山、ゴム栽培で商才を奮った。あるいはアヘン取引、奴隷貿易によって無尽蔵の財をなした。富を現代に継ぐ末裔は、自らの歴史を封印したまま多くを語らない。
欧州の列強国とアジアの狭間で繁栄し、絢爛な文化を築き上げた彼らは、グローバリゼーションの波間を駆け抜ける「通商貴族」とも呼ぶべき存在だった。彼らは経済をどのように牛耳り、歴代の先人が残したその伝統を、誰が未来に渡すのか。栄華の痕跡を残すマラッカ、ペナン、シンガポールの街のほか、東南アジアの各地をめぐり、秘められたプラナカンの物語の扉を開く。
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商品情報
- シリーズ
- プラナカン 東南アジアを動かす謎の民
- 著者
- 太田泰彦
- 出版社
- 日経BP
- 掲載誌・レーベル
- 日本経済新聞出版
- 書籍発売日
- 2018.06.22
- Reader Store発売日
- 2018.06.27
- ファイルサイズ
- 16.6MB
- ページ数
- 256ページ
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この作品のレビュー
平均 4.4 (8件のレビュー)
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血筋ではなく文化だ
プラナカン(peranakan)、地元マレーの言葉で「その土地で生まれた子」という意味である。プラナカンの男性をババ(Baba)、女性をニョニャ(Nyonya)と呼ぶ。
とあるのだがマレーーイン…ドネシア語でanakは子供、基本中の基本の単語だ。perーanと言う共接辞をつけると動作やプロセスを表す名詞となり、良くあるberと言う接頭語に対応するらしい。beranakは子供を持つと言う動詞、peranakanは検索では子宮が出てくる。BABAはbapak(Mr.)の転用だろうか、ニョニャはそのままだが。
プラナカンはただの華人ではなく祖先がマレー人などと結婚している。ちなみに華僑は中国共産党の定義では中国国籍を持つものの呼び名で、国籍がないのは華人。また客家は華人の約1/3を占め中国の中原から南へと移住した集団で独自の文化を持ち客家語を話す漢民族の集団だ。wikiではシンガポールの初代首相リー・クアンユーは自叙伝に基づき客家系華人の4世と書かれているがこの本ではプラナカンとしての出自を隠していたと紹介されている。
1965年のシンガポール国会で同じくプラナカンの女性議員シュー・ペクレンの質問に対し、リー・クアンユーは「私のことを、その名前で読んで欲しくない」と公式に答えた。シューの質問の意図は「異なる民族、文化、宗教が融合したプラナカン」と言うアイデンティティがシンガポールと言うハイブリッド国家を象徴すると肯定的に捉えたのに対し、リーはプラナカンと言う言葉に含まれる「この地で生まれた外国人」と言うニュアンスを否定的に捉えた。プラナカンは宗主国であるイギリスの支配層に取り入ったエリート集団でもある。リーは自分のことを「マラヤの民」と呼んだ。
この辺りはインドネシア語の感覚ではよくわからない。ババ・マレー語と言うプラナカンの言葉があるので意味が違ってくるのだろうか。著者の太田氏は2015年から3年間シンガポールに駐在した日経記者で取材対象のプラナカンとはおそらく英語での会話は苦労しない。だからかマレーーインドネシア語との違和感は感じていないように見える。
マラッカのババ・ニョニャ・ヘリテージ博物館でとなった家で生まれたヘンリー・チャンは後に大陸から労働者として大量にやってきた新客とプラナカンを区別するのは血筋ではなく、文化だと言う。「文化とは教育であり、品位や礼儀でもあり、経済力でもある」、紹介されているプラナカンの文化は刺繍だったり装飾だったりが女性的と形容されているが、良く言えば貴族趣味、悪く言えば成金趣味な感じがある。客家自体が王朝の血筋のものが多く、独自の文化を守ったとある。現地の支配層と結びつきながらも独自の文化を守り続けたプラナカンは労働者階級ではなかったようだ。シンガポールプラナカン協会の定義ではマレー系の血筋が1/16以上、ババ・マレー語を話す、4世代以上遡って現地化しているなど厳格だ。
東南アジアのプラナカンの街といえばシンガポール、マラッカそしてペナンと言う海峡植民地だ。そしてもう一つ人口の70%がプラナカンなのがタイのプーケットだ。しかしプーケットではタイ人と結婚した華人の子孫は全てプラナカンでありそこに独自の文化を守ると言う意識はない。さらにインドネシアに行くと定義もはっきりしない、あえて言えば地に落ちた(土着化した)華人だ。
プラナカンの政治家でタイの外務大臣タナット・コーマンが生み出したものがある。ASEANがそれだ。東南アジアに生まれたよそから来たこどもがばらばらだった国を結びつけたのだ。続きを読む投稿日:2019.05.09
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プラナカンについて狭義に広義に捉えて取材されて、その本当の姿を追っていく。プラナカンの作り上げた文化は日本もその一端を担っていたようだけど、戦争によってプラナカンの財を奪いその文化の継承を妨げたのもま…た日本というあたり…現存されるプラナカンの方々にとって私たち日本人はどう見えているのかしら⁇と思い居た堪れない気持ちになりました。
これからもありがたくシンガポールやプラナカンの文化を楽しみたいと思います。続きを読む投稿日:2023.11.13
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