日中対立 ─―習近平の中国をよむ
天児慧(著)
/ちくま新書
作品情報
転機は二〇一〇年だった。この年、中国は「東アジア共同体」構想を放棄し、「中華文明の復興」を掲げて大国主義へと突き進みはじめる。領土問題で周辺国との衝突をためらわず、とりわけ尖閣諸島をめぐって日本との対立が先鋭化した。変化の背景には、共産党内部での権力闘争があった。熾烈な競争を勝ち抜き、権力を掌握したのは習近平。G2時代が現実味を増すなかで、新体制の共産党指導部は何を考えるのか?権力構造を細密に分析し、大きな変節点を迎える日中関係を大胆に読み解く。内部資料などをもとに、中国の動向を正確に見究める分析レポート。
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商品情報
- シリーズ
- 日中対立 ─―習近平の中国をよむ
- 著者
- 天児慧
- 出版社
- 筑摩書房
- 掲載誌・レーベル
- ちくま新書
- 書籍発売日
- 2013.06.05
- Reader Store発売日
- 2015.05.15
- ファイルサイズ
- 1.7MB
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この作品のレビュー
平均 4.3 (5件のレビュー)
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人民解放軍尖閣上陸シミュレーションつき
安全保障法案が衆院を通過したが、中国はほとんど反応していない。9月3日の抗日戦勝記念日が今年は休日になったが今の所急に燃え上がるという感じでもない。
著者が所属する早稲田のアジア太平洋研究科は45名…程度の大学院生を抱えしかもマジョリティーは華僑を含めた中国人だと言う。アニメ・漫画世代の彼らは2012年秋にも反日感情はなかったという。日中の最大の問題は、相手国の認識に対して過去と現在が断絶していること、あるいは真実の情報が流れないことである。例えば中国が日本を語る時には「戦争」の問題が多くを占め、「日本は憎い」という結論が導かれてしまう。ところが現実の日本に接してみると、「過去の日本」とつながらない。一般のレベルでは親日でもなく反日でもない無関心層が多数派になっている。
最近の株価暴落のニュースでは個人株主の数が共産党員を上回ったという。共産主義はすでに求心力を持たず、共産党の正当性を訴えるのは日本帝国主義の侵略に抗し、国家の独立と民族の統合を実現し中華民族を救ったと言うことが昔から中心にある。反政府デモが起きそうになると日本をダシにガス抜きをするのはこの流れだ。また政府内での権力闘争でも反日がカードとして使われる。
共産党が抱える4つのジレンマ、経済成長と不平等社会、国際協調と大国意識がもたらす対外強行路線、中国的特色と世界のリーダーになる為には求められる普遍主義そして多様化する社会に対する一党独裁。胡錦濤・温家宝政権の10年間ではジレンマに対処しようとする意図はあったにせよ効果的に対処することはできなかった。和諧社会は掛け声倒れに終わってしまった。
胡錦濤は東シナ海海底資源の日中共同開発に踏み切ったが、共同開発に反対する勢力は「売国奴」のレッテルを貼り国際協調派は窮地に立たされた。反対したのは石油閥など、ただ天児氏の見立てでは尖閣問題は海洋資源が中心というより、中国の大国意識と軍事的な側面が強い。元々日本がイニシアチブを持っていた日中外交関係が2000年代には対等になり、今は中国がイニシアチブを取ろうとしている。尖閣についても日本に妥協させれば中国の勝利で、例えば実力で実行支配しそれに対しアメリカが反対しなければ東シナ海での中国の影響力が強まる。だからと言ってわざわざ国有化して刺激することもないのだが。挑発しない、挑発に乗らないと言う姿勢を発信し続けることだ。どんな理由があろうとも戦闘行為が起こると経済的にも深刻な関係に陥る。
もう一つの重要なプレーヤーが台湾で、尖閣については親日的な台湾も中国寄りの姿勢を取っている。中国からすれば尖閣をきっかけに台湾を取り込めれば大きな利益だ。台湾の主な関心は漁業権なのでいくらでも妥協はできる。日本の隣国で唯一関係の良い台湾を敵に回すのはどう見ても得策ではない。
天児氏は中国脅威論にも特需・利益論にも偏らず中立的な立場で日本の利益を守りつつ日中関係の改善策を訴えている。その中で中国の大国意識には何度も触れているがメンツの国が大国意識を持つ隣国だと言うのはなかなか厄介な話なのだ。
続きを読む投稿日:2015.07.16
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反日暴動で矛先が向けられたのは中国人でもあった。徹底して破壊、略奪をした先は中国の商店など。
アメリカは中国に対して軍事的にもゼロサム(ライバル関係)から、Win-Winのプラスサムの関係になろうと呼…びかけた。
東アジアの安全保障のバランスが崩れれば崩れるほど、不安定感は増し、アメリカへの依存を強めていくことになる。
領土問題が今、燃え上がった理由。
・尖閣諸島の豊富な海底資源の確保という経済的理由
・大国化に伴うナショナリズムの高揚
・アジア太平洋の勢力拡大をめぐる軍事戦略的理由続きを読む投稿日:2013.09.20
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