街場のアメリカ論
内田樹(著)
/文春文庫
作品情報
ウチダ先生が今回俎上に載せるのは、ズバリ「アメリカ」。私たちが「アメリカの圧倒的な力」と思いなしているものの一部は、明らかに私たちがつくり出した仮象である――。本作のベースとなっているのは大学院の演習での講義と、聴講生たちとの対話。ファストフード、アメリカン・コミックなど身近な題材から始めつつ、いつしか本質に迫るウチダ節が炸裂! アメリカを論ずることで、「日本らしさとは何か?」が見えてきます。
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商品情報
- シリーズ
- 街場のアメリカ論
- 著者
- 内田樹
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- 文藝春秋
- 掲載誌・レーベル
- 文春文庫
- 書籍発売日
- 2010.05.10
- Reader Store発売日
- 2013.09.06
- ファイルサイズ
- 0.4MB
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この作品のレビュー
平均 4.1 (49件のレビュー)
-
アメリカという国は独特だなあ。どう考えても礼讃できるような国ではないよなあ…と疑問を抱いて久しい。でもそういうことあんまり言えない。
その上、わたしは日本でその国の言語を教える人になろうとしている不思…議。英語=アメリカでは決してないのだけれど。
もっと事実を反映した、クールなアメリカ観を持たなくてはいけないなと思う。
「第6章 子供嫌いの文化―児童虐待の話」は最近読んだ中で1番怖いと思う文章だった。「子どもはかわいい」と思えない文化ってどうなっているの。ぞっとする。弱者にやさしくなれない社会は破綻するのが目に見えている。
「第4章 上が変でも大丈夫―アメリカの統治システム」はすごく腑に落ちて、納得できること自体危ういのかもしれないけど、人間は間違うということを、勘定に入れた方がいいのかどうか、わたしはまだ判断しかねる。
勉強になりました。これからもっと考えよ。続きを読む投稿日:2011.08.01
内田樹による、アメリカ論。ただし、誰一人アメリカ問題の専門家がいない講義の中で生まれた本。
それでアメリカ論が成り立つのか、と言えば、実に様々な角度からアメリカの持つ病巣を暴き出してくれる。
アメリ…カ特有のジンクスである、戦争をやって負かした国がその後同盟国になるという成功例。
その文脈でベトナム戦争やイラク戦争を見れば、私たち日本人の目線から見た「戦争」とは、全く違うものに見えてくる。
あるいは、ヨーロッパから引き継いだ子ども嫌いの文化。
マルクスが産業革命後のロンドンで見たように、子どもは搾取の対象だった。
アメリカには、自己実現を妨げる者は排除べし、という共通理解がある。
子どもが親にとって、自己実現の妨げになったとしたら?
そのような文脈を今まで読んだことがなかった。
訴訟大国アメリカ。
身に起こる様々のトラブルについて、事前に回避する能力を育てるのではなく、他者を責めることで問題を解決しようとする。
そういう人は、自分の失敗から学習するということがないし、社会人として成熟するよりむしろ常識がなく、不用意な「幼児」である方が多くの利益を得られる社会(マクドナルドのコーヒーで火傷した裁判や、「ライト」なタバコで肺がんになった、騙された、と訴えた裁判など)。
自己責任大国アメリカでなぜこういう場面だけ自己責任が問われないのか、本当に不思議。
ともあれ、単純に「アメリカでは弁護士が多いから日本でも弁護士を増やそう」などという単純な論説に対して、内田さんはいや、そもそも…という話をする。
この本の元になった話は2003年だそうだ。もう20年も経つアメリカ論がいまだに有効であることは、内田さんの文章が些末な事柄にこだわるものでなく、「アメリカという国がいくら変わっても変わらない点」を200年前に生きたトクヴィルに向けて書いたものだからである。
このような射程の長い文章は、物事の本質をきちんと捉え、誰にでも分かる論の組み方でないと書けない。
こんなものの考え方ができ、こんな文章を書いてみたい…
続きを読む投稿日:2022.01.15
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