誘拐
本田靖春(著)
/ちくま文庫
作品情報
東京オリンピックを翌年にひかえた1963年、東京の下町・入谷で起きた幼児誘拐、吉展ちゃん事件は、警察の失態による犯人取逃がしと被害者の死亡によって世間の注目を集めた。迷宮入りと思われながらも、刑事たちの執念により結着を見た。犯人を凶行に走らせた背景とは? 貧困と高度成長が交錯する都会の片隅に生きた人間の姿を描いたノンフィクションの最高傑作。
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商品情報
- シリーズ
- 誘拐
- 著者
- 本田靖春
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- 筑摩書房
- 掲載誌・レーベル
- ちくま文庫
- 書籍発売日
- 2005.10.05
- Reader Store発売日
- 2014.07.22
- ファイルサイズ
- 0.8MB
- ページ数
- 368ページ
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この作品のレビュー
平均 4.1 (71件のレビュー)
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昔は良かった?
吉展ちゃん事件が起きたのは1963年の入谷で東京都は前年に世界初の1000万都市になっていた。翌年の東京オリンピックを控え高度成長経済の建設ラッシュを迎えた時期でもあり入谷にほど近い山谷は出稼ぎ労働者…など2万人が集まる町になっていた。またテレビの普及率も5割に近く、この事件では初めて報道協定がしかれ、電話の逆探知により録音した犯人の声をテレビやラジオで流したのが犯人逮捕の情報につながっていたり、FBIで導入された声紋が犯人の割り出し(違うのはわかるが同じとまでは言えないのだが)に使われたりもしている。
吉展ちゃんの実家は工務店でそれほど裕福ではないがちょうど家の前が公園になっていた。誘拐を思いついた犯人の小原保は浅草に遊びに行った時に通りがかったこの入谷南公園で子供が遊んでいたことを思い出しちょうどその時一人で遊んでいた吉展ちゃんを誘い出す。まだ知らない人について行ってはいけないなどと言うのが一般的ではない時代だったのだろう。保はついて来た吉展ちゃんに足が不自由なことを知られ、また見つかると邪魔になると言う理由ですぐに殺してしまう。
この本の主人公は保、当時保と同棲し結婚するつもりになっていた小料理屋の女将、犯人を捜す警察の面々なのだが彼らがどうやってこの町にたどり着いたかというのを親の時代から丹念に追いかけている。例えば保は福島県の石川町母畑温泉と言う所で生まれ子供の頃アカギレが原因で感染症にかかり足が不自由になる。大人になる頃には素早く動けるようになっているのだが早くから容疑者になりながらもシロと見なされていたのにはこの足が一つの理由だった。また歩かないでいい仕事と言うことで時計の修理工になるのだが、預かった時計をかってに換金した借金の返済に困ったことが犯行の動機になっている。借金額は最も大きいのが6万5千円で他にも合わせて12万円ほど。実家に帰っての金策を試みるも結局は頼みに行くまでもなくあきらめ野宿をして上野に帰る。そしてほぼその足で犯行に及ぶのだが身代金は当時としては大金とは言え50万円だった。
最後には逮捕された後細かな証言の矛盾をつかれ自白をするのだが、それまでは尋問中も何時間も黙秘を続け時には猿のまねをしたり、刑事に殴り掛かったりとどうも行動は支離滅裂だ。しかし、自白後はすっかり罪を認め死刑執行までの間に反省を込めて俳句を作り続ける。保の歌は1980年に昭和万葉集に収録されている。
著者の本田靖春は小原保を責めると言うよりはそういう事件が起こってしまった時代背景を書こうとしているように見える。また復刻版の解説の佐野眞一は読者は「小原の犯行の無慈悲さに戦慄する前に、小原のように忘れられた人間に何一つ手を差し伸べてこなかったこの国の政治の無策さに、あらためて激しい怒りを覚えることだろう。」と書いてるのだがこちらは全く共感できない。昔は良かったと捉えられがちだが、やはり今の方が豊かにはなっているだろう。
wikiによると第二次世界大戦後2006年6月までに日本で発生した誘拐事件は288件で被害者が殺害されたのが34件、そして未解決の8件も身代金は取れていない、犯人側からすると成功率0%だ。例えばコロンビアでは2002年に3千人近くが誘拐されているし、誘拐保険に加入するのが当たり前の国もある。格差がいくら問題になっていても日本は暮らしやすいいい国になってるんだと思うけどね。続きを読む投稿日:2016.05.18
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重厚なノンフィクション。とても読み応えがあった。どうも文章が古臭えなと思ったら46年も前に書かれた本だった。多角的な視点で事件を捉えてて、回りくどいなと思う事もあったけどそのおかげで色々時間がくっきり…見えた。うまい。続きを読む
投稿日:2023.10.26
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