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世界99 上
世界99 上
村田沙耶香/集英社
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総合評価

437件)
4.1
177
130
73
13
7
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    このレビューはネタバレを含みます。

    小説というものの輪郭が、いわば地球を覗く窓の形が、本書によりまた大きく更新されました。それはつまり、この本の中で初めて寛げる人がいるということです。 救済と爆弾は同じ姿で在れるのだと気付かされました。 朝井リョウさん(作家) 本当は貴方もわかっていたんだろう? と迫る声が脳内に鳴り響く。熱に浮かされるようにページを捲る手が止まらない。これは本型ワクチン。世界99に誘われ、もう元いた場所へは戻れない。 宇垣美里さん(フリーアナウンサー・俳優) 足元の地面がふいになくなり、正常と異常の境目が消え失せ、目眩がする。人間という生き物の滑稽さ、グロテスクさ、美しさ、不思議さが、この本の中にすべて詰まっている。 岸本佐知子さん(翻訳家) 空子がこの世界で体に蓄積する小さな暴力の音とか、風とか、どれも僕の心に刻まれていきました。物語で一緒に過ごせた時間は、僕の宝です。 ロバート キャンベルさん(日本文学研究者) この世はすべて、世界に媚びるための祭り。 性格のない人間・如月空子。 彼女の特技は、〈呼応〉と〈トレース〉を駆使し、コミュニティごとにふさわしい人格を作りあげること。「安全」と「楽ちん」だけを指標にキャラクターを使い分け、日々を生き延びてきた。空子の生きる世界には、ピョコルンがいる。 ふわふわの白い毛、つぶらな黒い目、甘い鳴き声、どこをとってもかわいい生き物。 当初はペットに過ぎない存在だったが、やがて技術が進み、ピョコルンがとある能力を備えたことで、世の中は様相を変え始める。 3年以上にわたる著者初の長期連載がついに書籍化。 村田沙耶香の現時点の全てが詰め込まれた、全世界待望のディストピア大長編!

    3
    投稿日: 2025.04.01
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    むらさや先生の独特な表現が 想像力を膨らましてくれる作品だった。。。 ほぼ一気読みしてしまって、 ㊦を一緒に買ってなかったので、 色々探し回ったけど、 いざ㊦だけ買おうと思うと全然書店に無くて、 5件くらい探し回った。。 (くまざわ書店にはある確率高い) 早く㊦も読みたい。 ピョコルン ラロロリン人 クリーン・ワールド 初めて聞くと、は?なんそれ?って100%なる オリジナルワードを使って、物語は展開していく。 今までのむらさや先生の作品の融合体のような 感覚もあるとのことで、以前読んだ「消滅世界」と ストーリーが似てる文脈もあり、 他の作品にもあるのかなと、もっと読みたくなった。 今後㊦でどんな展開になるのか、 楽しみ〜〜!㊦でまた、感想書く✍

    7
    投稿日: 2025.03.31
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    相手や環境に合わせてキャラクターを変えて生きている主人公というのが、好きな作品である『孵化』(『生命式』収録)と同じだなと思い手に取った。 これまで読んだ本の中で、この本以上に不快な気持ちになった本はないと思う。よほど心が健康な人でないと読みきれないのでは? 登場する男性がもれなく男尊女卑かつロリコンのクズ男で、「処女ではない女に価値はない」「20歳を超えたらおばさん」と同調しあい、中学生の彼女がいることを自慢したり、行為中の動画を見せびらかす様が現実感がなさすぎて、男性読者として非常に嫌な気持ちになった。 とはいえそういう男に苦しめられている女性がいることも事実ではあると思う。女性が理不尽に被る地獄を煮詰めたような作品だと思った。 人間にとってあまりに都合のいい生物であるピョコルンの正体が判明した後の世界と、ラロロリン人の行く末を下巻で見届けたい。

    9
    投稿日: 2025.03.31
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    はじめての村田紗耶香さんの本を読みました こんなタイプのディストピアは初めてで、 どこか客観的に見れる自分にも理解できる部分もあり、 全く共感できない部分や設定もありと なかなかクセが強いけど、すんなりと読めました 誰しも、家族や恋人や友達や職場、はたまたSNS上で 違う言葉遣いや、態度等をとることがあると思う それを世界という表現で、 そしてピョコルンやラロロリン人といった 名前は可愛いけど世界観はえぐめの設定と相まって、 日常が思い浮かべれる生活の中に、 えもいわれぬ世界が醸し出されるのが面白い そして急展開の最後 ㊦が気になりすぎる終わり方

    60
    投稿日: 2025.03.31
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    ラロロリン人とピョコルンとかいう耳馴染みする様子もない単語を当たり前に放り込んでくる。 今の繋がりすぎた社会を抽象化して魔改造して具体化したのがこの小説みたい。

    3
    投稿日: 2025.03.30
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    分断された世界とそれらを俯瞰してみている世界99の世界。 実際の世の中を凝縮して、言語化しているところがすごいなぁと私もある意味俯瞰して世界99からみていたのだけど、上巻最後で、世界99がメイン舞台になってしまった。 そのきっかけを作った博士の言葉を読んだとき、驚愕して口がぽかーんと開いて涙まで出てきた。 白藤さんだけでなく、私自身も世界99へようこそと言われているようで震えた、、、

    5
    投稿日: 2025.03.30
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    試しに上巻だけを購入。それで正解でした。 私にはこの世界がとてもリアルで気持ち悪くて見ていられなくて苦手でした・・。 私自身が認めたくなかった部分を世界化されたようで、読みたくないけど読む手が止まらない・・ 吐き気がするくらいの気持ち悪さで上巻をなんとか読み終わり、続きが気になるけど「やめておこう」と思いました。 村田さんはなぜこうも人間の醜い部分や、人が言葉にしない目を向けないような嫌な部分を言語化する天才なのか。

    11
    投稿日: 2025.03.30
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    読む人が読んだら病気になってしまうと思う。とんでもなく恐ろしい世界の見え方。逆・人間賛歌。 でも、意外と思い当たる節があるな...?と思ってしまったが最後、見たくなかった世界の見え方が自分に新しくインストールされているようでつらい。 こんなもの消化しちゃダメだ、と思いながら消化できてしまう恐ろしさ。家畜人ヤプー、ファンタスティックプラネット、哀れなるものたちを自分の目を通して見たディストピア。

    15
    投稿日: 2025.03.30
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    「ディストピア」というと、今生きている世界からかけ離れた荒廃した場所といったイメージが漠然としてあるけれども、ピョコルンという、呼びやすいが実態が不気味な生き物(?)の存在以外は、世界①・世界②で演じる自分を分けるようなシーンなど含めて、今現在の嫌な部分が描かれているように思える(いや、ピョコルンもそうなのか?)。平野啓一郎さんの「分人」の考え方をよりディストピア寄りにした感じだなと思った。『殺人出産』を読んだ時も思ったが、何をしているとこんな発想が出てくるのか、村田沙耶香さんの思考回路に恐れ慄く(しかしYouTubeでの語り口はこれ以上ないくらいに穏やかだ)。 「私だけではなく世界が分裂していると感じるようになったのは、いつのころからだろう。それぞれの世界が、並行する異世界として、私の日常の中に同列に並ぶようになっていた。世界は分裂したまま、同時進行していて、どの世界でどんな情報や言葉、感覚を注がれるかで違う私になる。(p.300)」とあるように、それぞれの「世界」でまったく常識が異なり、別の世の中で生きているのでは?という感覚はなんとなくわかる。コミュニティが変われば話す言語もトピックも考え方も変わる。主人公はそれぞれに応じたキャラ設定に切り替えて生きている。夫婦間の描写などを見ても、「これで良いものなのだろうか、いや絶対に良くない」と読んでいる身としての価値観として受け付けないところも多々ある。 上巻だけで消化しきれないくらい頭にモヤモヤが残って、「下巻を消化できるのか?読むパワーか果たして残っているのか?」と不安に思いつつ、早く読みたい気持ちもありつつも、少しだけ間を置こうと考えている。

    5
    投稿日: 2025.03.29
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    凄い。村田さんは、社会の歪みをこんなにも分かりやすく描ける、唯一無二の作家だなぁと思う。ピョコルンはアルパカとチョコボを足したようなイメージ。気持ち悪い描写が続くので、吐き気を催しながら読んだ。小早川さんが出てきて、いい感じにまとまるのかなぁと思ったけど、そんな訳ないかー。先が気になるので、すぐに下巻にいきます

    8
    投稿日: 2025.03.29
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    読了。 ものすごい熱量の塊、そしてそれをみて腑をつかみ抉られるような感覚。目を覆いたくなるような差別や蔑視や罵倒や暴力を目の当たりにする。フィクションだが、読めばそこの住人である自分を見つけることは容易く、そして他人事のように距離を置きつつ読み進める中で、物語の中の自分に出会うとハッとして息を呑んでしまう。 恐ろしい麻薬のような書物。 花村萬月氏の「ゲルマニウムの夜」を読んだ時も田口ランディ氏の「アンテナ」を読んだ時も衝撃を受けたが、単なる性愛や性欲に対する描写にとどまらず、ある種のマイノリティの人格に対して自分たちが普段どのようなスタンスをとっているのか、ということを自分に見えるように晒されてしまう感がある。続く

    21
    投稿日: 2025.03.29
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    SNSで面白い、一気読みしたとの評判を見て購入。評判どおり、平日の夜にノンストップで読み続けて5日で上下を読破した。 ただ現代社会の女性の扱いを風刺した作品かと思いきや、SF的に思いもしない展開に発展していき、目が離せない。やや作品に登場する男性の描写が露悪的な感はあったが、それすら自分が恵まれていただけで、このような男性の言動がリアルだという世界で過ごしてきた人がいるのかもしれないと思わされる説得力がある。 個人的には、上巻で空子が誰にでも適応して生き延びる様子の描写が秀逸で共感でき、面白かった。空子が自身の年齢を超え出すと、まだ今の自分には理解できない感情もあり、またいずれ読み返したいと思う。

    9
    投稿日: 2025.03.28
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    話題になっていたので、何の前情報もなく読み出し…後悔。 女子が学生の頃にあった嫌な事を煮詰めた様で 嫌な気持ちになる。が、主人公が淡々とこなしており 何故だかサラッと読める。 ウシジマ君を読んだ時の様な鬱蒼とした気持ちになった。 あぁー狂ってる。

    6
    投稿日: 2025.03.28
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    このレビューはネタバレを含みます。

    初めての村田沙耶香作品、かなり面白かった。 受動的で何も選択しない割に若干選民意識強い主人公に終始イライラw 男の描写が極端に露悪的なのも女性が社会に強いられてきた役割を強調させ読者に意識させる為なのか 下巻では、おそらく女性の生物的、社会的に要求される性、出産、育児から解放された先に何が残るのか? 人間が性や人種で強いられる役割が無くなれば 差別がなくなり自由を得ることができるのか答えがありそう 出てくる登場人物全員にむかつきながらも読み進めてしまう不思議な作品

    4
    投稿日: 2025.03.25
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    このレビューはネタバレを含みます。

     最初は他人から性格をトレースし呼応する1人の少女の話で、それだけで十分面白かったし、自分も話す相手やコミュニティによって “まるで違う自分”を演じたりしてたことがあったなと。時にはその別々のコミュニティが一緒になって、「やばい、どうしよう。どの自分がいんだろう」と自分はどう振る舞うのが正解なのか考えてた時もあった。  特に影響を受けやすい性格だから、尊敬できる人とか、こうなりたい人と出会ったときはその人の喋り方を真似てしまうことも良くある。前半はそんな空子になんとなく「わかるな〜」と思いながら読み進めていた。  空子が35歳になってから、第1章で散りばめられていた伏線があれよあれよと回収されて、村田さんがこの本で書きたかったテーマが、「今この世の中に蔓延る “何となくの疑問”とこの世界を構築する “空気”(特に日本人にはありがちな同調性)」だったんだなと気づくました。  『世界99』の中で起こっていることは、一見するとこの世界ではあり得ないと思うことかもしれないけど、貧困、差別、自殺、宗教、賃金、労働、性、ジェンダー、多様性、どれもこの世界で実際に起こっていることですよね。  映画もドラマも小説も観てて読んでて、頭の中が一回転するというか、それを体験した後に180度見方が変わる作品が好きなのだけど、村田さんの今作は読んでる途中に何度もそれが起こりました。  下巻、これから読みます!  

    4
    投稿日: 2025.03.25
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    DNAや女性差別、性、育児家事、虐め、ペット、世間の目、などいろんなテーマがあるけど自分を守るために何かを犠牲にしたり摂取したり人間のいろんな醜さや弱さがこれでもかと言うほど詰め込まれてる本。ちょっと奇妙なこの世界観がとても好き! やっぱり私結婚したくないし、人間関係の面倒くささが改めて感じられた ピョコルン、、 "この世はすべて、世界に媚びるための祭り" クレイジー沙也加さんと呼ばれている村田沙也加さんの本、その他の本も読んでみたくなりました! 凄い本を読んだなーって思います。アニメ化したらいいのにな 下巻もスグ読みたい!楽しみ

    6
    投稿日: 2025.03.25
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    性被害の描写が、あまりにもリアルで若い頃の記憶が蘇る。 フィクションなのに実生活とリンクしすぎて、読んでから人や世間が怖くなってしまった。 ホラー小説の読後感と似てる。

    4
    投稿日: 2025.03.22
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    村田さんの作品はよく同じフレーズが出てくる。例えばトレースや呼応など。日常で使わない言葉も多いので村田ワールドに入る前にはそのワードを復習しなければ、と思いながら読み進める。 村田さんの作品はいつも架空の人物やキャラクターが出てくる。「地球星人」のポハピピンポボピア星人の時は流石に架空のものだとわかったものの、ラロロリン人やピョコルンはこの世界に存在しそうで一度調べてしまったレベルにリアルだった。空子はその時の状況に合わせて「トレース」しその場に適応する。私が好きな空子はプリンセスちゃんと姫の時、私的に空子の全盛期と言える場面。その場の空気を読んで皆から愛されるキャラへとなるのはまさに「トレース」の連続だと思った。また、匠くんは「コンビニ人間」の白羽に似てるなと思いながら読み進みていた。基本的に村田さんの作品はフィクションに過ぎないと思い読んでいるが、物語の所々に人間の問題点が提示されていると思う。ラロロリン人は人種で差別してしまっている世界を表しているだろうし、大衆迎合によって起こるいじめも文章で書かれているのにとてもリアルだった。そして、着地点が全く見えない。そこがどんどん読む手が止まらなくなる理由である。上巻は1日で読み終えてしまったので空子の物語は何歳まで続くのか、ピョコルンという意味のわからない生き物はどこまで進化を遂げるのか、下巻が楽しみである。

    10
    投稿日: 2025.03.21
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    初読み・村田沙耶香先生の作品。 先に読んでいた知人から「身体を壊さないように」との助言を受けており、んな大袈裟な…とのんきに構えていた頃が、アァ、いまは何もかも懐かしい…。 これは私も声を大にして言いたい。調子がいい時に読まれることをほんとに強くお勧めします。 色々なインタビューで先生自身が語っておられるが、本書は「女性がこの世界を生き延びるには」ということを少女時代から中年世代にさしかかるまで、延べ45年余りの年月を、絶望感と不気味さ、痛みと苦しみに溢れたこの世をどう生きるかについて、〈如月空子〉という「中にはなにもない。」(p14)ひとりの女性の姿を通して模索する物語。 空子は「何もとりえがなくて、やりたい夢もなくて、意思も感情もない、かといって『女』としての奴隷労働もあんまり好きじゃない。そういう『無』の人間」(p235)と自己を評しており、ここで言う「『女』としての奴隷労働」とは家事・出産・育児・男の性欲処理・介護などのいわゆる妻・母・彼女といった、これまで女性へ押し付けられ求められてきた負担全般を指す。そしてこれらの負担は大人になってから出現するのではなくて、子供時代からすでに背負わされているのである。性欲の対象として無遠慮な視線に絶えず晒され容姿や体型などを評価され続け、痴漢や強姦などの性犯罪に巻き込まれるリスクが「女性」として生まれたというだけで課されている。逆に、これらの対象に選ばれないことも揶揄の矛先を向けられる。これをディストピアと言わずしてなんと言うのか。 作中に登場する男性は揃いも揃ってクズでクソしか居らず、さすがにあんまりでは…とも思った一方で、あぁ、でもこういう考えの奴は確かに現実に居るしなあ。と否定も出来ない。「女性はちょっとバカな方が可愛げあって良いんだよ」とか本気で真顔で言ってる人、いまもいますもんね。 とはいえ、空子は他者を搾取することに抵抗はないし、自らが搾取されることも全く厭わない。そういう主義は無くて、ただ「人間を演じ続ける」(p59)だけの存在であり、「それなら同じだ、結局一生、人間を演じるなら、ロボットでも人間でもゾンビでも。」(同)と、徹頭徹尾一貫して意思すらも持ち合わせていない‘ヒト’として描かれる。 本作がディストピアSFとして極まっている要因は空子の特殊性に加えて大きくふたつあり、ひとつは本作を唯一無二に押し上げている存在「ピョコルン」と、もうひとつが「ラロロリン人」という概念である。 ピョコルンは「「ガイコク」の研究所で、パンダとイルカとウサギとアルパカの遺伝子が偶発的に組み合わさって出来上がった生き物」(p36)で、キューキュー鳴くかわいいふわふわの存在。ピョコルンについてはネタバレもあるので下巻の感想でまとめて書こうかと思いますが、上巻終盤で明かされるあまりに衝撃すぎる真相に吐き気を催しました。 ラロロリン人とは「ラロロリンDNAを持つ人」(p110)であり、「優秀なラロロリンDNAを持つ人は就職でも優遇され、それに不満を持つ大人たちの水面下の悪意が、じんわりと子供たちにも伝染してきていた。」(同)という社会背景がある。作中においてはそれ以上の説明はなく、ちょっと感じ悪いな、くらいだったのだが後にひとりのラロロリン人がセンセーショナルな事件を起こしてしまった事から一気に風潮が傾き、目を覆いたくなるような差別の嵐が社会全体に吹き荒れる。 《第一章》で描かれる空子の中学時代のラロロリン人同級生に対するいじめ描写は本当に胸糞悪くなるのでご注意を。自死に追いやられてしまった〈レナ〉はもとより、〈権現堂さん〉については後の成人後の描写も相まってグロテスク過ぎる。「犬の糞を食べさせられたりパンツを脱がされたりしていたことを、こんなにあっさり忘れられるものなのだろうか。カフェのデザートに毒が入っていてここで全員死んだほうが納得できるような狂った光景に見えた」(p208)とある通り、壮絶にいじめ・いじめられていたはずの20歳になった女の子達は何事もなかったかのように楽しそうに過ごしており、読んでいるこちらも混乱する。クレイジーだよ。けど根本の差別は残っており、35歳になった時にも「権現堂さんは、取り分けたりお酌をしたりすることはあまりない。ラロロリン人が触れたものを食べない人は今も多いからだ。」(p266)と書かれている。 (ふと思ったが、なんで女の子同士のいじめだと下着を脱がせたがるパターンが多いのだろうか?) 本作においては女性であることがそもそも苦界であるのだが、女性の内でも貧富の差や環境の差、そして上述のラロロリンDNAの有無によって複雑に『世界』が枝分かれしている。 空子は『世界』に合わせて自分を変化させることで世渡りする訳だが、ピョコルンの真相に触れた後の世界ではどう過ごすのか。 「ね、あなたの住んでいた世界はずっと広くて、とっても素敵な世界でしょう?」(p429) 下巻へ続く。 1刷 2025.3.20

    56
    投稿日: 2025.03.20
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    このレビューはネタバレを含みます。

    上下巻を読み終えた所感。 あまりにも村田沙耶香の集大成的な作品。 『コンビニ人間』『地球星人』『消滅世界』『孵化』『しろいろの街の、その骨の体温の』『信仰』『パズル』などの断片をすべて分解し、再構築したひとつの壮大な物語だった。 世界を駆動させる信仰が変容しても変わらない人間の発狂と発情を、彼女はずっと描き続けている。 いままでその銃口は多数派の人間に向いていたが、今回は少数派の人間にまで射程範囲が広がっているように見えた。まさに「世界」のすべてを描こうとしていて、圧巻だった。 「記憶は多数決」で、「光は麻薬」、そして「世界は粒子」でできている。 朧げなものを的確かつ鋭利に言葉で切り取る感性と技術がほんとうに見事で、なんども繰り返し咀嚼したい言葉であふれていた。 個人的には、明人と空子・空子とピョコルンが対応関係になることで、明人が見ていた世界を追体験できておもしろかった。自分自身はどちらかというと空子に近いため、彼の視点は自然に発生しえなかったのだが、彼女を通して見ることで、はじめて腑に落ちた感情があった。「記憶のワクチン」とは、この作品(ひいては物語というものを摂取すること)そのものなのではないだろうか。わたしたちは、物語というワクチンを打つことで、他人を害する存在にならずに済んでいるのかもしれない。 空子の完成形である、小早川音という人物像も圧倒的だった。 物語世界の構成や俯瞰的な視点があるところなど、朝井リョウの『生殖記』や中村文則の『R帝国』と読後感が似ているなと思う。このどちらかが好きな人にもぜひ読んでほしい。 総じて、すばらしい作品だった。

    10
    投稿日: 2025.03.18
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    イメージしていたお話とはいい意味で違かった。 自分にも世界が何個もあるから重ねて感情移入して読めた。 ここからどうなっていくのかが楽しみ。 下も読むぞぉぉ!

    8
    投稿日: 2025.03.18
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    このレビューはネタバレを含みます。

    まずは長編を書いてくれてありがとう 村田沙耶香はコンビニ人間から入って地球星人が一番好きで、全て読んでいて、全て最高です そしていつかぶっとい、上下巻等の長編を書いて欲しい、村田沙耶香ワールドにどっぷり入りたいからと思ってて、ついに…!そして大きく期待してた物語は、期待を大きく飛び越えて、とても満足です…とても幸せです…下巻に行くのがもったいないくらい…ずっとページを捲りたい いやーー現代の人間をこんなに面白く言語化出来るの、感心します 男の暴力性、騙されやすい人、差別する人、大袈裟に書いて落とし込んでるのがあっぱれで美しい それによって小馬鹿にしてる?人間は嫌いなのか?いやでもこれが実際の世界か…と思わせるこの文体、この書き方、読んでて楽し過ぎる 白藤さんは、結局軸なんだね 人間家電…コンビニ人間や地球星人ばりの単語のインパクト 膣で筆の所は笑ったし、自分が変な事だと思ってしまうものにのめり込んでる人はこう見えるよなー 音ちゃん…大丈夫か…? とにかく最高です こんなに解像度を上げて世界を見てるの、尊敬する…どう見えてるんだ世界を…文章を書いてくれてありがとう…ありがとう…下巻楽しみです

    5
    投稿日: 2025.03.18
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    近年稀に見る傑作。村田沙耶香先生は今までの作品でだいぶマイルドな表現をしていた、手加減していたんだな!?というような内容 性差別に人種差別、新しい生物、生殖、村田沙耶香ワールドの真骨頂だ…… 読んでて本当につらくなった、村田沙耶香先生がトークショーで「辛い気持ちにさせてすみません」と言っていた理由がわかった

    9
    投稿日: 2025.03.18
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    このレビューはネタバレを含みます。

    そんなに読書してる方ではないけれど、これは自分の人生で忘れられない(忘れたくない)体験の一つになると思う。 下巻でどうなるかまだわからないけれど、自分含めた人類が、気持ち悪くなってしまう。 それはこの本で描かれている事が、極端かもしれないけれど普段の生活で自分が感じる事とリンクしすぎているからかもしれません。 村田沙耶香さんは自分みたいなバカにも伝わるのに文章が綺麗でかつ生々しい。 これから下巻です。 世界99が村田沙耶香さんの作品で1番好きになりそうです。

    5
    投稿日: 2025.03.18
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    上巻読了 あり得ない程気持ちが悪く悍ましいのに どこかで真っ当な事を突きつけられてる気になってくる 思っているけど言葉にしてこなかった事を目の前に垂れ流されて「あれ?この世界の方が普通かも?」と思わせて来るところが村田沙耶香様の恐ろしくて面白いところ 好きだわ #読了

    5
    投稿日: 2025.03.17
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    面白すぎる、、 極端に見えるけれど、人はいくつも世界を持っていて呼応とトレースをして自分を作り上げてるなと読んでいて納得してしまいます。人間世界をある意味的確に書き上げてる気がします。 自分って人格をどう棲み分けしてやってるんだっけ?を改めて考えたいなと思いました。 村田さん作品からは、押し付けがましい世界って意味わからないよねを感じます。それを羅列していく感じがカオスで痛快なんですよね。 早く下巻も読みます。

    4
    投稿日: 2025.03.17
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    村田沙耶香ワールドが凄い。 よくこんなの思いつけるよなぁ… 上巻だけでこんなに分厚いのにすぐに読み切ってしまった。下巻も早く買わなきゃ。 ピョコルン、最初は凄く凄く可愛くて、私が今飼っているワンコみたいな感じかな?と思っていたけど、正体を知ってからは気持ち悪すぎて……(笑) あと、空子ちゃんにはMBTI診断をやってみてほしい。

    6
    投稿日: 2025.03.16
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    既刊全て読了している大好きな村田さんの新作。 待ってました…!!! おそらく、かなり好き嫌いが別れる作家さんだと思うけど この「人間」を踏み潰してくるような作風がたまらない。 さすが村田さん。 倫理観も正義も道徳も常識も、根底から覆してくる設定で、 狂いに狂った世界観が徹底されている。 空子が行き来する「世界」は たぶん皆が無意識に使い分けているものだけど、 ここまで自覚して意識的に行うのも生きづらそうだなと思った。 意識的に使い分けすぎて、各世界に飲まれている感じもする。 こんな既成概念ぶっこわしの狂った世界を400ページ超で読めるのが幸せすぎる。 結末が楽しみ。下巻に続く。

    8
    投稿日: 2025.03.15
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    2025.3.13 読了 上巻読了したけど、すごいぃ♡(興奮)村田沙耶香さんの今までの世界をギュッとした感じでおもしろーいᵕ̈* (全部読んでるわけではないです( ; ; )) 下巻楽しみすぎる。詳しい感想は下巻の方に書きます。

    8
    投稿日: 2025.03.13
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    とんでもない作品に出会ってしまった。想像の範疇を超え、自分の頭では到底処理できない事象の数々に、ただただ頁を捲ることしかできない。 性格のない人間。この時点で共感などできっこないはずなのに、全てを俯瞰して全ての人間の内情を言語化し、それに見合う返答をする空子が、あまりにも出来た人間だと感心してしまう。それは、普段相手の心を分かりたいと思う自分の欲望の憧れなのだと途中から気付かされる。 そう、みんな誰だって所属するコミュニティによって性格も話し方も感情も変えているではないか、と。社会に適応するため、自分を殺す。相手に合わせる。そんなこと日常茶飯事ではないか。 空子自身は呼応とトレースを繰り返していくことしか生きていけない自分を早くも認め、特別な自分に酔いしれてさえいる。 しかし、キャラクターを作り続けていくうちに、孤独という感情に芽生える。ああ、どうか救われてくれと願わざるを得ないくらいに、空子の人生にはなりたくないと強い拒絶感が襲う。 結局は幸せになれない不条理を目の前に、女性としての尊厳さえ失う空子に、ピョコルンが救世主となることで、秩序が保たれていく。まさに弱肉少食。 こんなにも既成概念をぶっ壊された気持ちになる作品にも関わらず、あくまでも日常空間がベースにあり、人間誰しもが抱く嫉妬や妬み、苦しみ、性への衝動が淡々と描かれているだけという恐怖。 フェミニズムへの描写は、出ました村田節!分かりたくもないし見るに耐えないけれど、現実にもあることなのだよなと諦めが勝つ。気持ち悪さへのベクトルは非常に共感する部分が多いので、リアルさに苦しみながらも、私だけの偏見でないと安心した。 一切の息抜きも余白も持てぬまま、上巻は目眩く展開に終わった。下巻はどうなるのか、期待しかない。

    11
    投稿日: 2025.03.13
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    村田沙耶香作品なので覚悟して読んだけど、描写がキツくてウッとなってしまった第一章だった。感想は下巻に。

    5
    投稿日: 2025.03.13
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    脳内がバグり、精神が崩壊しそうな読書体験は初めてでした。 主人公は感情が空っぽの如月空子。 空子は感情を持たないため、自分と接する人間に『呼応』し、『トレース』することで人間関係を築いていきます。自分を守りながら社会に在り続けるため、色々なキャラクターを使い分けていきますが、この多面性に驚きつつも、自分にも身に覚えがあることに気付かされます。どこかで、「あなたも色々な人物を演じて生きてきたでしょう?」と囁かれている気がしてゾワゾワしました。 上巻は空子の10代〜30代が描かれていますが、女性の生き方についても生々しく描かれています。10代の若さゆえに受ける性的な搾取。20代〜30代の結婚観。養われる代わりに自分ではない人間にとっての便利な家電になるのか、自分を養うためだけに自分の奴隷になるのか。村田さんのこの強い言葉に洗脳され、どんどん物語の深みにはまっていくような感覚になりました。

    24
    投稿日: 2025.03.12
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    今までの村田沙耶香のエッセンスを最大に詰め込まれた作品。登場してくる人達があまりにも(型)にハマりすぎてて気持ち悪く思うけど、ファンタジーと思えば苦ではない。最後のカオスがたまらなかった。 下巻に期待。

    8
    投稿日: 2025.03.11
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    面白すぎて、上巻を一気読み。 強烈な読書体験。 これまで読んだ本が全て吹き飛ぶくらい、肉体からくる、ぞわわわ〜とくる感覚。 頭ではなく、ほんとに内臓から感情が湧いてきた感じ。 新世界を見た! 村田沙耶香作品は、フェミニズムに当てはめられて読まれるらしいが、まさに女性のためのディストピア小説。 これまでの村田沙耶香作品のエッセンスを全て注ぎ込んだ作品。 現実世界も破壊するような、究極の傑作と言っていいと思う。 もう、カルト宗教にハマったのかというくらい、のめり込んで読んだ。 女性が男性から”便利に使われ”、男性も”女性は得している”などと考える。 女性に向けられる性的な視線や、性的価値の有無などの品定めを、無機質に描く。 こんなふうに言語化されると、ほんとに人間社会って不気味だなとすら思う。 強烈な言葉遣いで表現されるので、現実の見方すら変えられそうなのが怖いほど。 生理的嫌悪感をもたらすほど”気持ち悪い”という感覚に繋がる。 さらに、作中出てくる謎の動物ピョコルンに当てがわれた役割。 これがキツイ。 人間の欲望のために生み出されたピョコルン。 倫理観が強いほど、もしかしたらこの作品の展開に強い嫌悪感や衝撃を感じるかもしれない。 でも、この作品の欲望の吐き出し方って、ある意味合理的で、合理的なものって、突き詰めるとこんなにもグロテスクなものになるんだなと思う。 ピョコルンに込められた人間の強い”欲望”は、一つではないらしい。 人間の生々しい部分を、淡々と、アイロニーも含めて言語化していく。 名前のつけられた世界。 それぞれの世界は混じり合うことがなく、本来はそれぞれの世界には、それぞれの住人がいる。 主人公はロボットみたいだが、この世界への観察力は鋭く、的確に状況を捉えている。 空子は性格もない、感情もない。 さまざまな世界に適応した人間をトレースし、生き延びる。 感情がないのにも関わらず、彼女なりの孤独感はしっかりと持っている。 空子自身の人格は、本人には理解されていないのだけど、読者はその世界を見つめることができる。 だからこそ、上巻の終盤の、とある人物との邂逅は、かなり心に響いた。 彼女が見たさまざまな”世界”を比較する場面も興味深い。 そして徐々に、実は私たちだって、誰と一緒にいるかによって、世界を変えているよね?と気づく。 これまで感じたことがないような、強い拒否感。 小説に描かれた世界の言いようのない気持ち悪さは、現実世界で全くあり得なくはない。 だからこそ見たくもないと感じてしまう。 なのに、読んでしまう。 続きが気になって仕方ない。 なんだこの小説は。 時には吐き気すら感じるような展開もあるのに、最後までページをめくるのをやめられない。 長いのに全く気にならないほど面白い! 上巻だけでもすごい展開ばかりだった上に、下巻はどうなってしまうのか、全く想像ができない。

    27
    投稿日: 2025.03.10
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    天才すぎる……。上下巻長いなあと思ったけど週末で読み終わったわ。 村田さんが創り上げた世界が素晴らしいのなんの。私たちのリアルな世界とは違うように見えて、全方位にエンジンふかしたらしたらこうなると思えるような、誰しも少しずつ思い当たることがあるような世界。 アルパカ見るたびにピョコルン思い出しそうやわ。当分忘れられそうにない。

    6
    投稿日: 2025.03.09
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    このレビューはネタバレを含みます。

    めちゃくちゃ面白かった。 「キャラ」を使い分ける空子の空虚さが面白すぎる。これまでの村田沙耶香の短編が集結したような大長編。 空子がコミュニティごとにキャラを使い分けてるのは「生命式」の「孵化」だし、鼻の穴のホワイトニングは「信仰」だし、ピョコルンの進出で社会の認識がどんどん変わっていき、「汚い感情」がなくなっていく様は「魔法少女ミラクリーナ」の「変容」だった。これまでの短編で断片的に描かれていたものを、より詳細に記しているのが「世界99」で、それがとても面白かった。 相変わらず村田沙耶香は小学校高学年女子が「こども」から「女」になる時期の描写が上手い。痴漢関連の話は「地球星人」を思い出した。 匠くんはミソジニーホモソ男の典型例で、あまりにも「染まって」いて、本当にこのレベルの人っているのかな……と思うが、Twitterでさえ見たことがあるしいるんだろうな、と思う。 ラロロリン人を差別しているのに、ラロロリンラブストーリーが流行った途端手の平を返す人達は馬鹿みたいで、そしてとても現実だと思った。 上巻は主に空子が様々なコミュニティでキャラを使い分けている話で、その中にピョコルンとラロロリン人が絡まってくる。世界①、②、③はそれぞれ「うわこういうコミュニティあるな……」と思わされるもので、なんなら④のかわいいゆる界隈も、⑤の結婚できない・しない選択をした人達がサイゼ奢り論争をしているのも、⑥の子持ちママ垢界隈も、⑦のオタク界隈もめちゃくちゃ「こういうのあるな」と思わされるコミュニティで、それが面白かった。

    7
    投稿日: 2025.03.09
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    ピョコルンがゲシュタルト崩壊 相変わらず「ふつう」や「正しさ」といった価値観、共通認識について揺さぶってくる作品でページを捲る手が止まらなかった。

    8
    投稿日: 2025.03.04