
総合評価
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powered by ブクログ過去の山田風太郎賞受賞作を読んでおり、その中で出会った本。すごい!!!江戸~明治時代の捕鯨を題材にした短編集。巨大な鯨とのかけひき。鯨をえびす様と呼び、鯨の命をいただき人々を養ってくれているという敬いの気持ち。血なまぐさい描写は命をいただいていることを真っ正面から描いている。そして明治時代へ。最後の話は鳥肌がたった。
8投稿日: 2024.07.10
powered by ブクログあの巨大な生き物に生身の人間が戦いを挑んでいたという歴史があること自体がすごい。 その事実だけで魅せられる。 そして当然物語としてもめちゃくちゃ面白い。 再読でも初見と同様の興奮。 私が著者の作品を読み漁るきっかけとなった一冊です。
1投稿日: 2023.11.16
powered by ブクログ捕鯨を題材にした作品なので、鯨と人との勇壮な闘いが物語の中心なのだろうと勝手に思い込んで読み始めたのだが、視点が違っていた。 飢えて死ぬことが珍しくなかった時代に、鯨を捕ることで、地域全体が栄え、支え合って生きていける。集団で闘えば、集団みんなが生きていける。生きていくために強固に結びつき、生きていくためには強固に結びつかなければならない。その閉じた社会を維持するための絶対的な掟の下で、闘って生活の糧を得るために、特殊技能を磨き上げていく。それが生きることの全て。 集団として生きる個。生きる手段が生きる目的だった。そこに訪れた時代の大きな転換。題材は捕鯨ではなかったのかもしれない。
1投稿日: 2023.06.20「太い」作品
悲しみをたたえながらも力強いストーリー展開、方言を主体とした語り口、時系列に並べているのだが巧みな各短編の配列順 どれをとっても「太い」という印象を受ける短編集である。伝統捕鯨の終焉までをいきいきとした筆で描ききっている。現在、太子町は伝統的イルカ漁が残酷だ ということでシーシェパードからさんざん妨害されている。なんだか、感慨にふけってしまう。
0投稿日: 2023.06.14
powered by ブクログ『〝クジラ〟強調月間始めました!』7 第7回は、伊東潤さんの『巨鯨の海』です。 伊東潤さんは、時代小説を中心に書かれている方です。本書が初読でしたが、和歌山の太地で、江戸時代から独自の組織的捕鯨を行っていた人々と鯨の圧倒的な物語でした。 臨場感あふれる捕鯨場面の描写が素晴らしく、迫力と緊張感に溢れ、時・潮・風や鯨の動きを読みながらの漁は、鯨の情の豊かさや悲しい運命まで表現される秀逸さです。 専門用語や方言も多く登場しますが、丁寧な説明があり気になりません。また、太地の人々は、鯨を「夷(えびす)様」と呼び、古くから鯨に対して畏敬と感謝の念をもっています。更に、鯨と命懸けのやりとりをするため、太地の掟は厳しく、熱くヒリヒリした同胞意識も伝わってきます。 太地の古式捕鯨の栄華から終焉までを、壮大なドキュメンタリータッチの物語に仕立てた本書は、「凄い」の一言に尽きます。強烈な余韻が後を引く読後感でした。
25投稿日: 2022.11.03
powered by ブクログ鯨と共に生きる人々の物語。母を思い禁断の手を尽くす息子や掟破りで和を乱す人、短いだけに、簡潔な表現が、さまざまな思いを起こさせる。鯨についての古典を再読したくなってきた。
0投稿日: 2022.03.15
powered by ブクログ昨今有名になった太地の捕鯨。太地の人間側の制度説明も、捕鯨の方法も説明しつつ、大多数が見たことのない捕鯨シーンを描かないといけないのだから、これを小説形式でやったのは凄い。 太地の生き様が浮かんできて、現地に行ってみたくなった。最後の事故は実話がもとになってるのだな、、、。
0投稿日: 2021.05.25
powered by ブクログ捕鯨漁で生計を立てていた地域の人々の短編小説集。 死が近くにあり、掟に厳しい中での人びとの生き様を書いている。短編小説だけど、各ストーリーにしっかりと重みがあって、読み応えがあった。練りに練った伏線や読者を驚かせるようなカラクリがある訳では無いけど、読んでいても苦にならない、そんな小説でした。
0投稿日: 2020.10.03
powered by ブクログ正直言うとこれは「読まされた」本。強制されたから仕方なく読んだ本。分厚いし元ネタも雰囲気も男臭いし、最初は本気で読みたくなかった。なんなら2/3くらいまで読み進めても(今この本取り上げられても別に気にしないな〜)なんて思ってた。でも、気が付いたら夢中になってこの本を読む時間が少し楽しみになってた。想像もつかない捕鯨の様子を細かく描写していて、舟のようにいるような臨場感、鯨が眼前にいると錯覚させる迫力が文字通り文字だけで表現されている。すごい。こんな文章書けるようになりたい。そう思った。 私が好きな話は(本が手元にないので題名は分かりませんが…)鯨の脂だかなんか高価な部位を盗んだとかどうとかの話と捕鯨が衰退しつつある頃に海上で遭難した話。
0投稿日: 2020.04.07
powered by ブクログ古来の捕鯨の様子を、いまだかって誰も書いたことがない独特の世界観で書き込んだ小説。まさに、面白かった!の一言
1投稿日: 2019.12.28
powered by ブクログまず、太地では江戸時代から古式捕鯨が行われていた、という概要だけは知識としてあったものの、これまで知らなかったその組織の実態や、漁の具体的な役割分担などの仕組みのイメージを、本書によって掴むことができたことに意義があった。 今も太地町のコミュニティはある種の閉鎖性を備えているとは聞くが、当時のそれはとても現代の比ではないだろう。 連作を追うに従いおそらくは描かれている時代が下っていき、やがては実際にあった悲劇の”大背美流れ”をモデルとした最終話に至る、という流れも巧みにまとめられていると思った。 そして何より、鯨という巨大哺乳類の命を、一人一人は脆弱な人間が力を合わせて命懸けで奪おうとする、その命のやり取りたる営みは、理屈では表しきれない崇高な何某かを放っている、と強く感じさせられた。 ただ、それぞれの小話の筋はいささか類型的で、またヴォリュームが限られている故もあってか、読後の深い余韻のようなものは少なかったかも。
1投稿日: 2019.02.26
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
江戸時代から明治にかけての紀州太地における集団鯨漁を題材にした短編小説集。さすが伊東潤ブランド、捕鯨の迫力、人間ドラマ、漁という職種のもつ悲劇性…どれも漏らすことなく丁寧に描かれていて読ませる。この人、ホンマに上手いなぁ。 捕鯨については色々意見もあるだろう。 俺は「食うために獲る命ならやむを得ないだろう」派だが、一部反捕鯨団体とそれに対する一部反反捕鯨団体の、お互いヒステリックな応酬には辟易している派でもある。 命を戴くとは、という本来一番考えなければいけないテーマをないがしろにして、ああいうバカげたことをする連中のいうことなどなんの中身もない。 捕鯨文化の歴史、鯨の生態、経済や地域に及ぼす影響などを学び、情報と意見を冷静に交換して、これからの捕鯨について見定めることが必要だと思う。 (脱線するが、実はウナギやマグロについても同じ思いがある) そういう冷静な判断を下す、感情や怒りに流されすぎない意見を持つ大きな判断材料としても、こういう本は大切だと思う。もちろん小説としての面白さは絶品なのだが、妙なプロパガンダに流されないための、錨の役目も果たしてくれそうな1冊である。
1投稿日: 2018.03.15日本の捕鯨の歴史もわかる短篇集
読む前は、白鯨みたいな話かなと思っていましたが、もっともっと人間くさいお話でした。mogaさんがレビューで書いておられるとおり、まさに見てきたかのような古式捕鯨の描写が秀逸です。また、江戸末期から明治初期までの時代に沿った短篇集なのですが、その内容の並べ方が、これまたウマイ! 鯨を捕る話中心の何編かを読み続けて、少々食傷気味かなぁ、と思っていると、鯨にまつわる猟奇的殺人事件が描かれたりと、まったく飽きさせません。しかし、一貫して流れているのは、鯨を通して、ヒトが生きてきたという証の物語です。 これはお勧めです。
0投稿日: 2017.09.30
powered by ブクログ現在の和歌山県、太地の江戸時代から明治にかけての、古式捕鯨にまつわる6つの短編集。相変わらず、意地でもすんなりハッピーエンドにしない伊東節に、なにもそこまでと思いながら、人生なんでもいってこいなのね、とか思ってみたり。古式捕鯨の現場の臨場感が伝わってきて、読み終わると古代捕鯨に詳しい人になれる。だからどうだって言われても困るが、そのシステマチックさと、畏敬、感謝などのプリミティブな感情のマッチングは、純粋に興味深い。
1投稿日: 2017.03.08
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
短編でありながら徐々に鯨捕りの用語や組織が説明されていき、自然と物語に入っていけた 最後の2編はそれだけだとちょっと理不尽なとこがあるけど、それまでの話で刃刺制度や漁の具体的方法、危険が丹念に説明されていて、登場人物達の葛藤がリアルに感じられた
0投稿日: 2016.09.18
powered by ブクログ伊東潤氏の作品は戦国物を何作か読んだかハズレなし、何れも素晴らしかった。 伊東氏の目線を通すと戦国武将の誰を描いても生き生きしていて読み応えがある。 今回は太地という鯨漁を生業とする土地の歴史を江戸初期から明治初期に渡って描かれた物語。 今まで読んだ物とは趣向が違ったが又素晴らしかった。 日本人が生まれ育った土地に縛られながらも生を全うする過酷さと尊さをこんな風に描けるなんて! 司馬遼太郎さんを信奉する私だが伊東潤氏の作品からも同様の感動を得ることが出来る。 これからも読み続けたい作家だ。
1投稿日: 2016.07.16心に銛を刺す
江戸末期~明治初期にかけての古式捕鯨の村、太地(和歌山県)の男たちの生き様。それはまさしくハードボイルド。緻密な古式捕鯨の描写を描きつつ(これだけでも十分読む価値あり)の6話構成。成長、情、冒険(スタンドバイミー?)、サスペンス、家族、そして・・・。鯨と太地は変わらず、時代と人を巧みに変えて男たちの話が綴られます。 戦闘や合戦シーンがなくても、「生きる」という営みの中に本当の闘いはあるのだと、心震えます。 捕鯨用語や方言が多少取っつきにくいかもしれませんが、それもまた必要十分なリアルさを増します。お勧めです。
14投稿日: 2016.04.30
powered by ブクログ太地町の捕鯨を舞台にした短編集 ・旅刃刺の仁吉 ・抹香の竜涎香→朝鮮人参 ・喘息の与一×耳が聞こえない喜平次 ・船虫の晋吉×血を好まざるを得ない菊太夫 ・吉蔵、才蔵、太蔵 ・大背美流れ、M11.12.24
0投稿日: 2016.02.13
powered by ブクログ短編なのに巨編。 巨鯨ではなくて巨編だ。 短編はあまり好んで読まないが、伊藤潤氏の作品ということで読んでみた。 六編すべてが太地の人々と鯨の物語。小説の世界にずっと浸っていたいと思う作品はまれだが、これは別格。いつまでも太地の世界に浸っていたいと思わせる。 グーグルマップで太地町を拡大して眺めながら、尚且つストリートマップで街中を彷徨いながら読了。伊藤潤氏の鯨シリーズはもっとあるそうなので、また読もう。
2投稿日: 2016.02.11
powered by ブクログ鯨の捕獲で有名な伊勢太地町を舞台にかつて男たちが生死を賭けて鯨と闘ってきた物語。伊東潤の小説は、丁寧な取材や資料づくりにより、江戸期の太地の鯨捕りの細かな描写を投影しながら、庶民の生活に視点を当てながら、人情話を織り込んでいく。此処でも読み手の期待を裏切らなかった。。
0投稿日: 2016.01.18
powered by ブクログ和歌山の太地と呼ばれる漁村を舞台に、江戸末期から明治にかけて行われていた捕鯨を題材にした短編集。直木賞を獲っても不思議ではないレベルの作品のように感じたが、当時の選考会では北方謙三が猛烈に推したものの受賞には届かなかった。 人間vs鯨のダイナミックで命がけの戦いの描写に目を奪われがちだが、太地という治外法権がまかり通る特殊な地域における様々な人間ドラマが、すごく丁寧に描かれている点が非常に印象的だった。あと、鯨親子の絆に象徴されるように、鯨はただ人間に捕られるだけの道具として描かれているわけではないので、捕鯨に嫌悪感を持たれているであろう欧米の方々にも是非読んでいただきたいと思う。 内容的に実現は非常に困難であることを承知のうえで、いつか本作を実写映画で観てみたいものである。
2投稿日: 2015.12.09
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
鯨漁を生業として生きる太地の男たち。躍動感のある鯨漁を背景に、6つの物語が紡がれる。 江戸から明治にかけ、激動の時代の中、地域ぐるみで捕鯨を守る一組織であった太地。閉鎖的だがそうでもしなければ生きられない人々の悲哀や意気込みが伝わって来る。 鯨がよく獲れた頃は羽振りもよかったが、明治になってアメリカの捕鯨船が幅を利かせるようになり、鯨の数が激減した太地は衰退して行く。その移りゆく時代に生きる、人々の心の襞を丁寧に描いており、読んでいるとつらくなってくる。 私は学生時代から鯨に興味があり、学生時代大学の先生にお願いして鯨の眼球の解剖をさせていただいたこともある。鯨に関する本も相当読んだし、太地町立くじらの博物館にも足を運んだ。そういう知識を持ってしても、この小説に描かれた太地の組織だった捕鯨の様子、その組織の一員としての生き方は衝撃的だった。はじめは専門用語、というか太地の言葉がとっつきにくいが、最後の頃になると捕鯨船での職業の位置関係や太地弁がすんなり入って来るようになる。 鯨漁の是非や日本における鯨漁の精神的な位置に関して問うつもりはないけれど、アメリカをはじめとする捕鯨反対の立場の人々にも読んでもらいたいと思った。いや、かえって逆効果かな……。 以下各物語のあらすじ。 「旅刃刺の仁吉」刃刺(鯨の銛打ち)の息子の音松は、妾腹であるがゆえに虐げられて暮らしている。かわいがってくれる流れ者の刃刺・仁吉に憧れるが、仁吉には故郷で刃刺を続けられなくなった理由があって…… 「恨み鯨」刃刺の息子末吉、その母は病弱で少しでも長く生きてもらいたいと願う末吉と父。そんなとき、皆で獲った抹香鯨から、龍涎香(抹香鯨の腸内にある分泌物。香水の減量などになり高価で取引される)が盗まれて……。母を思う子の心、太地の厳しい掟に消えていく命が哀しい。 「物言わぬ海」刃刺の息子、喘息の与一、その友達の耳が聞こえない喜平次。太地でしっかりした身体でないものは、捕鯨には携われない。一生下働きで終わるであろう喜平次に対し、喘息が治った与一は一人前の刃刺になっていく。ふたりの距離が開いたとき、殺人事件が起こる。太地に生まれたゆえの運命が切ない。 「比丘尼殺し」熊野信仰を伝えるべく旅をして護符などを売って歩く女たち、熊野比丘尼。食べていけないものは春をひさいでいたという。その比丘尼の連続殺人が起こり、傷の具合から鯨取りの手形包丁によるもの、しかも左利きの犯行だと推測される。岡っ引きの晋吉は潜入捜査を命じられ太地の捕鯨船に乗り込むが……。時代物ではあるが、現代のサイコパスミステリーのような切り口の作品。 「訣別の時」太地に生まれ育ちながら鯨の血をみると嘔吐してしまう太蔵。刃刺であり美しい婚約者もいる前途洋々の兄の吉蔵は、そんな太蔵にもやさしい。成長につれ、太蔵もいよいよ将来の選択を迫られる。太地で鯨漁に就けない者は丁稚か仏門しか道はない。どちらも嫌だと太蔵は捕鯨船に乗るが、その航海で兄の吉蔵が脊髄損傷になってしまう。その事故から避けられぬ運命を歩み始める太蔵。がんじがらめの掟の中で生きる太蔵の姿は、そうするしか守れない生活、現在の田舎に住む私にも共感できるところがある。 「弥惣平の鐘」地元太地の水主(かこ:船員)の弥惣平と、東京品川から流れてきた旅水主の常吉。体力の無い常吉を弥惣平はかばうが、大きな背美鯨を狙う漁でふたりを含む太地の船団は漂流を余儀なくされ……。時は明治になり、アメリカの捕鯨船に押され、太地の昔ながらの鯨漁が衰退して行く、そこで藻掻く太地びとの姿が描かれる。 滅びの図式は哀しい。鯨の脊椎には絶滅した動物と同じ特徴がある、ということを書いた本を読んだことがある。鯨と共に生きる太地もまた、衰退は道理であるのか。何とも切ない話である。
0投稿日: 2015.10.18
powered by ブクログ日本人の心 生きるためにすること 風土と文化 を久しぶりに感じた。 行ったことのある地域ですので非常にリアルな感じ非常に読みやすく良かった なんか最後涙が出た
1投稿日: 2015.10.13
powered by ブクログ太地の鯨漁をテーマにした短編集。網と銛での古式漁は命がけ。捕鯨シーンは壮絶で臨場感溢れる。そんな厳しい生業を暮らしの基にしている共同体のヒエラルキーや掟の厳しさ、絆の強さ、閉塞感が伝わってくる。心に残る1冊。
2投稿日: 2015.10.06
powered by ブクログ鯨漁で繁栄した村とそこに生きる人々という設定だが… まあ… 鯨の血の臭いがしてきそうで残酷だという感じは拭えない。なら、鮪ならいいのかと言われると困るが… 豊かであるがゆえに、厳しい掟と閉鎖された社会の息苦しさが辛い。
1投稿日: 2015.09.26
powered by ブクログ紀伊半島の漁村・太地。そこで組織捕鯨を確立し、日々鯨に挑む漁師たちの姿を描いた連作。 「なんという迫力……」 この小説を読み終えた時の感想を最も簡潔に表すとこうなります。 太地の人々の鯨漁はもはや漁ではありません。それは戦いなのです。時に十数メートル以上の鯨に対し銛を打ち込み、何度も網をかけ少しずつ弱らせ最後にとどめを刺す…。言葉にすればただそれだけの話なのですが、その描写力たるや… 太地の漁師たちの息遣いやピリピリした感じももちろん伝わってくるのですが、さらにすごいのは狩られる側である鯨の生きたい、死んでたまるか、という気持ちすらも伊東さんが書き込んでいること。 作中で鯨のエピソードで、過去に鯨漁から逃げ切った経験を活かし太地の人々の漁から逃げ切ろうとする鯨や、子を思う鯨の姿が描かれるのですが、そうしたエピソードだけでなく、死に際の鯨を描く場面がまた秀逸です! 作品全体を通してみると鯨もまた主人公なのです。 最終話の「弥惣平の鐘」の漁の描写と自然の厳しさの描写は圧巻の一言! いかに人間が自然の厳しさの前に無力かということを感じさせられます。 もちろんそれぞれの短編の人物描写、心理描写も伊東さんらしい情念が込められた作品ばかりです。 厳しい掟が支配する閉鎖的な共同体の太地。そこで暮らす少年たちは何を目指すのか、男たちはどう行動するのか。掟に縛られながら生きた人、掟を全うした人、時に太地に疑いをもち外の世界を夢見るもの。それぞれのドラマが伊東さんの圧倒的な筆勢で描かれます。そこにあるのはただ生きるだけでは満足しない、本物の「生」を渇望する男たちのドラマだと思います。 伊東潤さんがどんな人か全く知らないのですが、もし会うことがあればいきなり「兄貴ィ!」と読んでみたいです(笑)。こんな例えで伝わるかどうか不安ですが、本当にそれだけ伊東さんの作品には迫力があります。男が漢に惚れるってこんな感じなのかなあ。 第4回山田風太郎賞 第1回高校生直木賞
2投稿日: 2015.09.26
powered by ブクログ「山田風太郎賞」受賞作ってことで、文庫化を待望していた作品。過去の受賞作品から、まず期待外れってことはないだろうと思っていたけど、これもまた高品質でした。捕鯨に生きる村を舞台にした、時代をまたいでの短編集。迫力満点の捕鯨シーンもさることながら、それに対峙する人々の描写も活き活きしていて、どの作品も素晴らしかった。この作者の他の話題作も読んでみたいと思いました。
1投稿日: 2015.09.24
powered by ブクログ太地の捕鯨をテーマに江戸期から明治の衰退期までを切り取った短篇集です。 捕鯨という仕事の性格上、集団の掟が厳しく設定されており、それによって起こる悲劇が中心ですがと、よっぽどきちんと調査したのでしょう、綿密な捕鯨シーンの描写とともに描かれておりいっきに読まさせられました。 あらためて鯨取りは日本の重要な文化だなと認識させられ、鯨を食べに行きたくなりましたww
0投稿日: 2015.09.21
powered by ブクログ太地・鯨シリーズの第一弾。江戸時代末期から明治時代までの紀伊半島の漁村・太地で組織捕鯨に携わる男たちを描いた連作短編集。いずれも読み応えのある6編を収録。 鯨と人間が対等に近い立場で、命をやり取りをした時代…太地鯨組の厳しい掟と捕鯨に携わる男たちの勇気と苦悩。若者は捕鯨を通じて成長し、若者を導く年長者はいつか身を引いていく。 『旅刃刺の仁吉』。流れ者の刃刺の仁吉が太地鯨組の中での地位を確立していくと共に妾腹の音松に刃刺への道を示す。 『恨み鯨』。鯨組の厳しい掟の中で生きていく親子と物哀しい家族愛を描いた佳作。 『物言わぬ海』。耳が聞こえない喜平次と刃刺となった与一の友情とその間に立ちはだかる太地の厳しい掟。 『比丘尼殺し』。本作の中ではミステリーの色合いが強い異色の短編。一番、面白かった。比丘尼や遊女を連続して殺害した犯人は太地鯨組の刃刺と目されたが… 他に『訣別の時』と『弥惣平の鐘』を収録。
1投稿日: 2015.09.16
