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すべて真夜中の恋人たち
すべて真夜中の恋人たち
川上未映子/講談社
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総合評価

736件)
3.5
120
206
234
71
18
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    丁寧でゆっくーーーりとしたお話し。自信がない冬子が主人公で、ゆったりと自分のペースで仕事をして恋愛する模様が描かれている。私はスピーディで展開が早い小説が好きなんだと知ることが出来た一冊。ちょっと物足りない感じがあった。

    0
    投稿日: 2021.12.31
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    【読み終わって感じたこと】 最初は、陰鬱とした主人公にイライラしていた。しかし、最後にはなんだかスッキリした気持ちになっていた。人と関わることの難しさに共感できた。 【印象に残ったシーン】 聖と一緒に泣き出して、仲直りするシーン。この時、やっと聖と心から繋がれたんじゃないかと思い、心が温かくなった。 【好きなセリフ】 「楽なのが好きなんじゃないの?他人にはあんまりかかわらないで、自分だけで完結する方法っていうか。そういうのが好きなんでしょ」 自分にも突き刺さるセリフ。人と関わるのは難しいし、傷つくんじゃないかと思うと怖い。だけどそこから逃げちゃダメだ。それを突きつけられた。 【こういう人におすすめ】 ・優柔不断な人 ・不器用な人 ・心にモヤモヤがある人

    0
    投稿日: 2021.12.22
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    たぶんずっと心に残る本。 最後の方は泣きながら読んでいて、今も涙が止まらない。 三束さんと主人公の関係ややりとりが、自分と恋人にとても近くて、ぎゅうううっと胸が締め付けられた。 改めて恋人を大切にしたいと思った。 川上未映子さんの文体がものすごく好みだったので、これから読み漁りたいです。

    2
    投稿日: 2021.12.21
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    最初は主人公が自分に似ている気がして親近感を持ちましたが、なんかなんか、うまく表現できませんが、なんかです。

    0
    投稿日: 2021.12.14
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    このレビューはネタバレを含みます。

    2008年に『乳と卵』で芥川賞を受賞した川上未映子の2011年の作品である。 30歳を越え友達もなく、ただ漠然と生きてきた女性が偶然出会った初老のおじさんに恋をするストーリーだ。 週に一度だけカフェでコーヒーを飲み、話は盛り上がらないけどそんな雰囲気さえ愛おしい立場違いの2人の静かな恋愛はどう結実するのか。 光と情緒が揺さぶれる一冊である。 以下ネタバレ 入江が三束と結ばれなかったのが残念で仕方ない。 中盤から終盤にかけてのシークエンスで高校時代の親友の典子が旦那との不仲を告白する場面があるが、何故彼女がそのような告白をしたのか、それは彼女にとって入江は「自身の人生の登場人物でない」からである。それが終盤の三束さんが自身の嘘を告白したことと結びつき、三束さんと入江の関係が終わってしまったことを示唆している。 おそらく、三束さんは入江のありのままの姿を愛していたのだろう。入江が聖との喧嘩中に後悔したように、いつもの顔、服装、カフェでのデートを三束さんは望んでいたのだ。 本著は至るところで選択の必要性を説いている。今まで選択することなしに逃げ続けてきた入江は勇気を振り絞って三束さんをデートに誘ったが、その身なりは結局人から与えられたもので、入江はまたしても逃げたのだ。自身がずっと身につけてきたものを捨て誰かに身を任せたのである。 未開拓の土地に足を踏み入れることも大切だ。しかし、自分が今まで積み重ねたものを尊重するという選択肢を外してはならないのである。

    3
    投稿日: 2021.12.08
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    このレビューはネタバレを含みます。

    面白かったー! 言葉選びが柔らかくて柔らかくて文章を追うのが楽しかった 久しぶりに読み終わりたくないなあって思う本 水野くんの「与えられたものをどれだけ捨てられるのかが大事だと思うんだ」というのが1番どきっときた 私は欲しいものばかりで…欲しがってばかりで、、そういうことを言いたいんじゃないけど新しい選択肢が出てきたときにはそっち選んだ方がいいって本心は決定しているんだよね あとは私の想像する三束さんは出てきたときから清潔感が無いというか、男主人公であるのにかかわらず、すーっと入って来なかったけど最後になるほどねってなって、私の三束さんの第一印象を上手く作り上げちゃって、、この作家の言葉のチョイス好きだなと思う あとは、典子が言った、なんでこんな話ができたかというとあなたは私の人生に登場人物じゃないからなんだよって確かに過ぎる 人見知りする理由の1つに、今後人生で関わる必要性が高いから自己開示することが苦手だと話す友達がよぎってなるほどと思った

    0
    投稿日: 2021.12.02
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    このレビューはネタバレを含みます。

    読み始めたとき、とても閉塞感が強いと思った。でも自分の人生も状況は違うが同じようなものだと気づいた。この閉塞感に差し挟まれたような恋の配分のされ方に現実感があった。ここに書かれている「すき」が、茫漠としたものでもなく猛然としたものでもなく微妙なバランスの中でひとつひとつ渡し合っているという感じが好きだった。忘れていく過程と忘れてしまえるということが切ない。読後ズシリとした塊が残った。

    1
    投稿日: 2021.11.28
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    川上未映子さんの作品を読むのはずいぶんと久しぶりだけれど、文体のあまりの変わりように驚いた。本作は、徹頭徹尾ひらがなが多用されている。校閲者として、生まれながらに影の中を孤独に生きてきた主人公の、独白がほわほわと、切なくも不思議な感覚で漂っていく。

    1
    投稿日: 2021.11.22
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    静謐な言葉の紡ぎ方が美しい。 女子の心の内面を丁寧に描いている。 ただストーリー展開が冗長と感じられるところがあり、少し退屈に思える場面も

    0
    投稿日: 2021.11.19
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    この本を読んで、運命の人って成就するイメージだけど、成就しなくても自分の人生を少しでも支えてくれたり、影響を与えてくれた人が、運命の人なんじゃないかなと思うようになりました。 はじめて読んだのは中2のときで、最初はぜんぜん共感できないし読みにくくて途中でやめました。でも、表情と、言葉がすごくきれいだったことが印象に残っていて、なんでかまた読みたくなってまた読んで…やっぱりだめで…また読んで…を4回くらい繰り返した果て、ある日ビビビと感じられて最後まで丁寧に読めました。 この作品について川上さんがラジオで、女性はなにかの特技や特徴を持たないと物語に登場できないけど、そういう人は滅多にいないから、あえて特徴のないことが特徴の冬子さんを主人公にした、 というお話が忘れられません! その発想と切り口がさすがだ!と思いました。 みんながみんな個性があるわけでもないし、特技があるわけでもないし、でもそれぞれが自分なりに考えて、迷って、下がったり進んだりしながら生活している様がリアルで。 そんな日常に、冬子さんにとっての三束さんみたいな、一筋の光みたいな、夜の光みたいな存在と出会えたことが、かけがえのない財産で、これから生きていく糧になるんだと思います。 そういう存在を大切にしたいし、出会えたらいいなって思います。

    2
    投稿日: 2021.11.18
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    描写がきれい。主人公には共感しない。ラストそうくるかと思い、そこから考えると三束さんの設定に無理があるように見え小説だなぁと感じてしまった。途中まで読んでいるときは著者の別の作品も読んでみようかなと思ったが、読了してもういいかなと思ってしまった。

    0
    投稿日: 2021.11.15
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    このレビューはネタバレを含みます。

    読み終えた後、改めて最初のページを読んだときにじんわり満たされた。 冬子に全く共感できない部分と、冬子の気持ちに溶け込む自分もいた。 人物像と景色が浮かぶ。この作品の「光」を通して、風景の明暗も見えてくる。 美しい作品。

    0
    投稿日: 2021.11.10
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    孤独な女性の描写を通してなにを書きたかったのかイマイチよくわからなかった。手紙の告白は意表をついた展開だったがラストは少し陳腐な気がした。

    0
    投稿日: 2021.11.07
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    このレビューはネタバレを含みます。

    「すすんで嫌われる必要もないけど、無理に好かれる必要もないじゃない。もちろん好かれるに越したことはないんでしょうけど、でも、好かれるために生きてるわけじゃないじゃない。」 「すきな人がいたって、その人のとくべつになれるかどうかもわからないし、とくべつになることが果たしていいことなのかどうかもわからないし。妥協というとあれですけど、そこそこのすきで、そこそこの人間関係でもって生きるというのも悪いことじゃないんじゃないかってこと。」 「それでも目のまえのことを、いつも一生懸命にやってきたことはほんとうじゃないかと、そう思った。自分なりに、与えられたものにたいしては、力を尽くしてやってきたじゃないか。いや、そうじゃない。そうじゃないんだとわたしは思った。わたしはいつもごまかしてきたのだった。目の前のことをただ言われるままにこなしているだけのことで何かをしているつもりになって、そんなふうに、いまみたいに自分に言い訳をして、自分がこれまでの人生で何もやってこなかったことを、いつだってみないようにして、ごまかしてきたのだった。傷つくのがこわくて、何もしてこなかったことを。失敗するのがこわくて、傷つくのがこわくて、わたしは何も選んでこなかったし、何もしてこなかった。」

    0
    投稿日: 2021.11.05
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    このレビューはネタバレを含みます。

    初めて読む川上さんの作品。 主人公の自分の人生においての『動』を無意識に恐れて、諦めともとれる『静』の人生を選ぶ感じとても共感してしまう、こう言う人は一見人間味が無いように思われがちだけど、世の中の流れに対してとんでも無く敏感で、それに振り回されすぎて、怖くなっていってるという意味でとても人間味があると自分は思う。 最後の最後本当にハッピーエンドとして終わらないのが良かった。報いだと思う

    0
    投稿日: 2021.10.26
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    このレビューはネタバレを含みます。

    読んだことを忘れており、再読。 主人公の冬子に聖に三束さん 冬子が三束さんと過ごす空間は、とても心地良くて、 でも、心地良いのに、 冬子はお酒の力をかりたり、三束さんも誤魔化していることがあったり。 こんなにも居心地が良い空間を作れる2人なのに、 どこか偽りの部分があり、 それをいつまでも抱えきれず、 最後はもう会うことを選ばなかった2人です。

    1
    投稿日: 2021.09.13
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    ー 真夜中は、なぜこんなにもきれいなんだろうと思う。 それは、きっと、真夜中には世界が半分になるからですよと、いつか三束さんが言ったことを、わたしはこの真夜中を歩きながら思い出している。 何もかもが美しい小説だと思った。 読み終わった後、その余韻でため息しか出ない… 人を思うこと。 その喜び、切なさ、そして苦しさ。余すところなく表現されている。 校正といえば、ドラマ「校閲ガール」の石原さとみを思い出してしまうが、主人公の冬子は、村田沙耶香さんの「コンビニ人間」の恵子をどこか彷彿させるところがある。34歳。ひとりでひっそりと静かに生きている。 ある日、カルチャーセンターで58歳の男性、三束さんに出会い、恋をする。 この小説は「究極の恋愛」について書かれている。そして、川上未映子さんにとっての究極は「成就しない恋愛」だという。 この小説は、光がモチーフとして扱われている。光はいつか消える。だけど今確かにある。「恋愛」はそのようなものではないか。だからこそ美しい。 そして、川上さんが「光そのものの演奏」と言う辻井伸行さんが弾くショパンの「子守歌」! これからこの小説を読まれる方は、この曲を聴きながら、真夜中に読まれるのをおすすめします。

    45
    投稿日: 2021.09.12
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    淀んでいた主人公の生活に、一束の光を注ぎ込んだ三束さん。繰り返しな日常にどうにか打開策を講じる主人公の勇気も、何も行動せずただ肯く三束さんも、校閲の仕事を振ってくれたキャリアウーマンの聖も、どこか欠けていてどこか美しくて、文章の行間に気持ちがどんどん深い夜に連れて行かれ、私はその一人でいる孤独も他者と一緒にいる孤独を感じました。

    1
    投稿日: 2021.09.05
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    恋の在り方はかくも人それぞれなのか、そう感じた1冊だった。 私はどちらかというと思い立ったが吉日、脊髄反射的に生きてきたため、主人公の入江さんのような静やかで繊細な感性をどうしても理解できないという悩みがあった。 しかし本を通して彼女の心うちを覗くことは、例えその全てを理解できなかったとしても、得るもの、学びがたくさんあった。 半分以上読んでも一向に付き合わない二人、とうとう付き合うことのなかった二人、静やかで、しかし衝撃的な展開は目を瞠るものだった。古本屋で良い本に出逢えるとどうしようもなく嬉しい気持ちになる。 半分を過ぎた大学2回生の夏休み、もっとたくさん読んで世界を知りたい。

    3
    投稿日: 2021.09.05
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    恋愛小説ってあんまり読んでないけど入江の三束さんへの気持ちと、告白で好きっていいですねと思った。結果はダメだったけど、人を好きになった、なれたってだけでまあまあ幸せですよね 聖の自分の感想、感情でも、結局どこか他人のものを引用している気持ちになる、自前のものなんて何もないってめちゃくちゃ分かります。感情が動くたびに白々しい だから個人の問題は結局個人の問題であると同時に個人の問題ではないって考えは結構いいんじゃない、?と思った、引用だからこそ誰かに怒り腹立たしさで苛立ち続けることができる

    0
    投稿日: 2021.09.04
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    このレビューはネタバレを含みます。

    静かに生きる、不器用なフリーの校閲者・入江冬子のもどかしく、狂おしい「初」恋を描いている……というと、違う印象になってしまうか。とても危うい冬子から目が離せず、でも見ていると辛くて、ちょっとしんどい読書経験になった。聖という編集者と彼女に対置する女性たちの「女性論」もしんどい。どちらが正しいとかじゃない。分断は何も生み出さないのだが。今後の聖の変化を見たいような、見たくないような。

    5
    投稿日: 2021.08.31
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    校正の仕事をしている主人公は、高校教師の三束さんと出会う━。 恋愛ってみんな当たり前にしているけれど、そんなに簡単なものじゃないよなと思わされた。 個人的には主人公には共感出来なくて、むしろ聖さんの人間らしさにとえと共感してしまった。

    0
    投稿日: 2021.08.29
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    このレビューはネタバレを含みます。

    とにかく光の表現がきれい! 肌寒い冬の夜が待ち遠しい。 冬の肌寒い夜中、ひとりアスファルトを歩いて街灯の無機質な光や住宅から漏れ出る柔らかな光、アスファルトに反射するキラキラとした光……誰もが見たことのある光景の表現に引き込まれる。 恋愛とは臆病でもあり、大きく暖かい心の土台にもなってくれる。 その分心に深くとどまる。 この作品は丁寧に恋をして丁寧に失恋をし、ゆっくりと時間をかけて気持ちを処理していく、恋愛のほろ苦さを思い出させてくれる作品だと感じた。 友人のズカズカと他人に踏み込む性格は好きではなかった。恋愛スタイルも好きではない。 しかし、自分はどちらかと言えばそのタイプなので、もう少し主人公のような丁寧さを持ち合わせたいと思った。 

    0
    投稿日: 2021.08.28
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    恋愛ってこんなふうにじわじわと心を侵食していくものだったなぁと思い出した。 じわじわ蝕んでいく病という感じ。 聖の言っていた、本当に自分の言葉なのか、受け売りの言葉を言っているだけなのかわからないという気持ちがすごくわかる。 全体的に文章がすごく綺麗だった。

    1
    投稿日: 2021.08.27
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    情熱的なストーリーなのかと勝手に想像していたが、むしろ穏やかで静かで、じわじわ蝕まれるような話だった。

    0
    投稿日: 2021.08.13
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    人生のままならなさと、他人とは真には絶対に理解し合えないという厳然たる事実。そして、恋。 あらゆる人生の、その「ままならなさ」「理解しあえないこと」の、完全な肯定 なんと繊細で優しく美しい物語なのだろうか 売り上げや世の受け入れられ方を見ても、川上未映子作品では圧倒的に読みやすい。しかし、紡がれる言葉の美しさと尖り方は、全く失われていない。

    0
    投稿日: 2021.08.07
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    人間関係に臆病(特に恋愛絡み)な冬子に共感しつつ、聖の正論に共感もし、聖の誰に正解を求めているのか分からない批判っぷりも自分に似ているなあ、と思った。2人は正反対の性格に見えるけど独りよがりで不器用な根元の部分は同じのように見えた。

    2
    投稿日: 2021.08.07
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    真夜中はなぜこんなに綺麗なのか。それは、真夜中には世界が半分になっているから。 校閲を仕事としている女性が三束さんという男性に会う。そして、光が好きだ。人と関わるには、傷つくこと、面倒な事が多い。だから一人でいる事で全てを完結している。それは自分を守っているかのようで何にもなっていないということに気付かされた。自分に起こることは全部自然に起きることだ。だからそれをただ受け入れようという考えは、神様がちっぽけな私たちにそんな面倒なことをしない変わろうとしない。そんな聖の言葉が重くのしかかってきた。そして、人生は少し楽観的になった方が楽しい。この小説は、特に誰も幸せにはならない物語だが、日常に多くある事だ。それを愛おしく思う。なんだか、気づかされる事が多い小説

    0
    投稿日: 2021.07.30
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    このレビューはネタバレを含みます。

    一言で言うと夜の星キラキラと共鳴する恋人たち。 夜闇に覆われて世界は半分になる。 そうすると余計な装飾は見えなくなり、自分や本質だけがくっきりとする。 無心で夜を歩くとき、誰も何もなく孤独だけをひきづる。 冬子と三束さんの会話がキラキラ輝いていた。 お互いを大切にしたいがために気持ちを抑えて、踏み込みたいけれど踏み込めない間合いが美しい感じる、そんな読書体験だった。 「今思い出したんですけど、子どもの頃よくライオンになっていました」 「ライオン?」 「今目が急に丸くなりました」 「そうですか。眼球は元から丸いので、目というよりまぶたの形がそうなったということですか」 「いつもライオンを思い浮かべながら寝ていたんです。さっき狩りを終えたばかりだからお腹も満たされていて、もう何もすることがないんです。ライオンは強い体と気持ちを持っていて、誰にも邪魔をされず、ただ眠るんです。その時は世界と眠りが同じ一つのものになるんです。」 聖も冬子も典子、恭子もみんな根っこで似ているのに立場や行動が異なり、時に反発する。 でも、夜闇が覆ってしまえば、すべて真夜中の恋人たちになるのだろうか。 象に乗る意味とは。 ただ乗りたいんじゃない? デザインしたセーターがとにかくよく売れる。 もう持ってない人がいないだろうに。 あらゆる人をセーターが包んでいるはず。

    1
    投稿日: 2021.07.25
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    このレビューはネタバレを含みます。

    美しい描写で、自分も夜を歩きたくなったし、光のことをぼんやり考えるようになった。 思い出したのは自分の初恋のこと。 流されたまま生きて、出会った大好きな人にすごく熱い気持ちを持ったこと、それが溢れ出たこと。 登場人物に100%明るい人はいなくて、それぞれの嫌なところに共感できるのがまた悔しかった。苦しい気持ちだった。 読み終わったあとに1番最初のページを読んだ。会話のシーンかなと思ったけれど、真夜中を歩いている冬子がショパンを聴きながら1人心で三束さんと会話しているのかなとか、思い出しているのかなとかを考えて、じんとした。

    0
    投稿日: 2021.07.17
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    この作者のことをある人が手放しで天才と褒めちぎっていたので何か一作読んでみようと思い本屋さんで裏表紙をいくつか見てみた結果、自分から一番遠そうな作品にしてみようと思って恋愛小説のこれを手に取ってみた。タイトルからして何かスタイリッシュな作品なのかと思ったのだけど…主人公はフリーで校閲をやっている女性。凡そ世の中のことにあまり興味がなく日中は部屋に閉じこもって出版社から回ってくる現行の粗探し…というか校閲作業を行い仕事終わりには安酒をあおって眠るだけ、という毎日を送っている。その彼女がふとしたことから出会った男性に惹かれていき…という物語。主人公にほとんど共感できず出てくるエピソードも冴えないものばかり。しかもめんどくさい長台詞がけっこうな頻度で出てきたりで、どういう読者に向けてこういう作品を世に出しているんだろうとすら思ったのだが…それでも続きが気になって読み進めてしまい最後にはこういう展開!?となったのでやはり力のある作家なのだろう。なんだろう…ちっとも明るい話ではないのに読後感も悪くなくむしろ希望を感じた。そういう意味ではやはり天才なのかもしれない。機会があれば他の作品も読んでみようと思う。

    0
    投稿日: 2021.07.16
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    主人公に感情移入できなかった。 使われている言葉がとても綺麗だった。 どのように生きていても人を傷つけることはあるんだろうな、と思った。 1人で生きていく2種類の女性の姿がみえたのが良かった。 恋愛というよりも、それの方が心に残った。

    0
    投稿日: 2021.07.03
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    真っ暗で、他のものがすべて、無い。 静かでひとつひとつの動作が疎ましいのに、衝動に動かされていく冬子の変化が手に取るように分かった。 光って、触れられないものなのだろうか。

    0
    投稿日: 2021.07.01
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    『毎日は何度でも夜になった。』p.198 なんてことない日も、嬉しいことがあった日も、楽しかった日も、つらいどん底の日も、訳もなく切なくて泣いちゃう日も、毎日は何度でも夜になる。 毎日が何度でも夜になるなら、つらい日もすこしは気が楽になるし、楽しかった日はずっと今日みたいな日が続けばいいのにって気持ちを噛みしめられるし。 今日も夜になるんだって思うとすこし感情の角度がかわって新鮮なきもちになる。

    0
    投稿日: 2021.06.20
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    今のところ、わたしが一番大好きな小説。しっとりとした美しい恋愛の印象がいつまでも忘れられず、今年こそ2度目読みたい。きれい。

    0
    投稿日: 2021.06.15
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    ゆるく流れる時間。 沢山の言葉を知っていても自分の内からでない言葉たち。自分の真意がわからなくなる時、どうか光が届きますように。

    0
    投稿日: 2021.06.15
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    このレビューはネタバレを含みます。

    「きのうまで平気だったことが今日もまだ平気だなんて、そんなのわからないじゃない?」 信用なんてたいしたことじゃないのよ。ちょっとした都合や風向きで簡単になかったことにできるものなのよ。でもね、信頼っていうのはわたしにとってそうじゃないのよ。信用と信頼は、ちがうの。信頼したぶん、わたしも相手に、何かをちゃんと手渡しているって、そういうふうに感じるの 「すすんで嫌われる必要もないけど、無理に好かれる必要もないじゃない。もちろん好かれるに越したことないんでしょうけど、でも、好かれるために生きているわけじゃないじゃない」 たかだかティースプーン一杯か二杯ぐらいの量の液体を体からだすことが、なんでこんなに大変で、なんでこんなに重要なんだと思う?わけがわからないわよね。でもね、重要なのよね。おかしいくらいに重要なのよね、これが。 わたしは三束さんのことを思いだして息を止め、ふたりで話したことを思いだし、とてもすきだったことを思いだし、ときどき泣き、また思いだし、それから、ゆっくりと忘れていった。

    2
    投稿日: 2021.06.12
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    お互いを構成するものを交換して、相手の記憶に思い出に少しずつ入っていって、それと季節や場所、匂いを紐付けるから失恋した時に立ち直るには時間がかかるんだろう。 思い出すたびに胸が痛くなってでも少しずつその痛みが遠くにいって、無くなりはしないだろうけどそれを懐かしむ隙間を持てるのが大人なのかな。

    2
    投稿日: 2021.05.24
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    『ヘヴン』の翌年、2011年に刊行された川上未映子さんの長編小説。  前作とは打って変わって、全編に静かさの雰囲気が漂っているのは、視点となっている「わたし=冬子」の、人とのコミュニケーションが苦手で、いつも一人で居て毎年誕生日の深夜には特に意味もなくしみじみと散歩する、といったパーソナリティが支配しているからだ。作中に出会う他者たちと会話をしていても、彼女は相手の主張をときどきうなずきながら聴いているだけで、ほとんど語らない。そのように静かに世界を受容する主体の在り方が、本作で持続される「時間」の美しさに結び付く。  34歳の彼女が58歳の男性に出会い、なんとなく恋情にまで発展してゆくが、最後は結ばれない。だがそのような動的な「できごと」もまた、やがて静かな時間のうちに消化されてゆく。  やや風変わりな女性の生と世界を繊細に描き出した美しい、純度の高い文学作品である。  なんだかマーラー辺りの交響曲の長大な緩徐楽章のような、深い情緒を湛えた良作だった。

    1
    投稿日: 2021.05.22
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    このレビューはネタバレを含みます。

    校閲の仕事をしている主人公。唯一の友人は、我が道を行く、美しきキャリアウーマン。流されるままに生きている主人公は、何か自分の意思で決断をしたことがないが、そんな自分を変えたくて?アルコールの力を借りて、カルチャーセンターへ。そこで出会った三束さんに恋をする。初めての自分の感情に戸惑いながらも、どんどん深みにはまっていく。はっきりと自分は三束さんが好き、と認めて、伝えて、高揚感に溺れながら帰宅したときに友人に会う。そして言われる、元彼?にも言われた、自我のないあなたをみているといらいらする、と。さらに、失恋。話の展開からすると衝撃という感じがするけど、長い時間をかけて自分と向き合って、そして、自分の恋心をしっかりと自覚した主人公は、そんな劇的な展開にもめげず?なんとか毎日を過ごし、そして、自分だけの言葉を、見つける。 ・孤独に、あえて感受性を低くして、毎日を淡々と生きる主人公の心情を丁寧に綴っている ・キーワードは、校閲、光、薄暮、感受性 ・聖の多面性も、一見乱暴だけど、でも丁寧に描写されてる ・何がいいとか悪いとかじゃない、全てのものに意味があるわけじゃない、でもみんな生きてる、その矛盾の中を生きてる ・多分そういうことを、あまり考えずに生きる人もいるけど、私は考えて、なんかいろいろ駄目になってしまうこともある人だから、沁みた

    0
    投稿日: 2021.05.04
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    若い頃のキラキラした好き!って気持ちも素敵だけど、大人になって誰かの事を純粋に好き!って思える気持ちはそれだけでとても素敵な事なのではないかなぁと思った。大人になると色んな経験してる分人の事を純粋に思える事が少なくなるような気もするし… そんな大人ならではの好きの感情をうまく描写していたように思う。静かな恋愛小説だけど、なんとなく気持ちが逸れていくような本でした。

    0
    投稿日: 2021.04.27
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    星3か4か迷った。前半はすごく惹き込まれて、どんどん読んだけど、読み進めるにつれて、所々、ついていけないというか、読み取れない部分が増えていくような印象。でも、心情描写のしかたはすごく好き。だったです、っていう言い回しが何度か出てくるのが気になった。

    0
    投稿日: 2021.04.26
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    新しい仕事仲間、好きな人。自分の殻に籠って生てきた冬子がただひとつ、大切な繋がりを得る話。水面すれすれの綿菓子みたいに危うくて、あと少しで溶けてしまいそうで、心配しながら読んだ。辿々しい掌で、最後には掴めたものがあって良かった。

    0
    投稿日: 2021.04.25
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    人を好きになってしまった時の心の中の色んな想い。冬子の揺れ動く気持ちと真夜中の光とが合わさっていく。アルコールの酔いとも混ざり合う。 現実なのか夢なのか恋愛は奥深い。真夜中の光は半分って両方では無いってことか。 最後に真っ白なページに記したすべて真夜中の恋人たちという言葉。まるで作家冬子だった、 2年後の誕生日の話から、また冒頭の部分を読み返すとまた面白い。

    1
    投稿日: 2021.04.16
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    ずっと息をつめて読んでいた気がする。または、冬子の、吸って吐く息に合わせて呼吸していた。恋愛の、苦さ甘さ狂おしさが、まるで一人の人間が産道を通ってこの世に生まれ落ちるときのような暗闇と光の格闘みたいに表現されていて、最後は、こみあげた。

    13
    投稿日: 2021.04.14
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    人との関わりを持たずに暮らすフリーの校閲者で34歳の冬子のお話 そんな冬子と壮年の男性 三束との出会いと変化 川上未映子を読むのは初めてだな 芥川賞作家っぽい文章は確かに感じる 悪い意味ではなく、主人公冬子の内面の描写には同意する点がいくつかある ま、ここまで酷くはないのでそこまで共感はできないけど 所謂負け組と評されるような冬子とは対象的な石川聖(ひじり という読み方でいいのだろうか?せいではないと思うんだけど) 仕事もファッションも男も意見も自分の思った通りに表に出す性格 冬子が独立のきっかけとなった恭子が言うには、一緒に仕事をしたくないと周囲の人間はよく言うらしい ま、その恭子の言葉にしても、プレゼントが同じ香水という描写がされていて、同族嫌悪に過ぎないという事なんだろうね さらに補助的に描かれる同級生の典子 人並みに結婚して子供もいるけど、セックスレスで夫婦お互いに外で浮気をしていて冬子に愚痴を垂れ流す存在 そんな典子も冬子に開けっぴろげに話すのは「入江くんがもうわたしの人生の登場人物じゃないからなんだよ」と、冬子を軽んじるセリフを普通に吐き出す 登場人物の女性どれを見ても幸せそうに見えないなぁ…… あと同級生の水野くんも、冬子を軽んじてる発言をしつつも薄っぺらい人物に描かれているので、女性に限った事ではないのかも 唯一、三束さんだけはちゃんと理解できる 表の部分も裏の部分も含めて 穏やかで落ち着いていて、こんな人間になりたいとも思うな 冬子さんも、気持ちを自己完結させるところには共感する 勝手に舞い上がってしまうところとこも含めてね そんな痛いところをガシガシと指摘する聖 まぁ、最終的には聖も決して強い存在ではなかったんだけどさ 僕が読んだ物語の中で雰囲気的に似ている作品がいくつか アル中なところは中島らもの「今夜すべてのバーで」 大人の女性とさらに年上の男性との尊敬や憧れのような関係は川上弘美の「センセイの鞄」 他にも、どうしようもない女性は本谷有希子の作品の主人公に多く出てくるし 探せばいくらでもあるんじゃなかろうか なのに他のどの作品とも違う読後感 川上未映子の他の作品も読んでみたくなった

    4
    投稿日: 2021.04.13
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    このレビューはネタバレを含みます。

    真夜中の光についての描写と表現が綺麗でした。 この主人公のように少し光についての考え方が変わったような気がします。 ハッピーエンド!のような形ではないですが、 どことなくやるせ無さが現実的で、沁みる小説だと思います。

    0
    投稿日: 2021.04.11
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    2021.04.06 主人公にあまりにも共感できなくて「いやそれは甘えじゃん、、」とわりとずっと思いながら読んでたけど、読み終わったらなんかすごく寂しくて心臓が痛くなった。 読んでる最中は全然好きじゃないなこの小説、、と思ってたのに読後感としてあぁすごく好きだったなぁに変わってた。 「生きてるだけで、愛」観たときと同じ感覚、あれも全然好きじゃないしとても好き。

    0
    投稿日: 2021.04.07
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    冬子さんの純粋な想いが胸に突き刺さりました。 飲酒しないとまともに会話できないところ、痛いほど気持ちがよく分かる。 川上さんの他の作品も読んでみたい。

    0
    投稿日: 2021.04.04
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    このレビューはネタバレを含みます。

    胸が張り裂けるほどの大恋愛や大失恋のような描写はなく、ただ、静かで美しくてくっきりした恋心みたいな感じがして、心が洗われるようだった。ここまで純愛(?)な小説はあまり見たことがないくらい。冬子がお酒をたくさん飲まないと三束さんと話せないところや、職場にうまく馴染めず、フリーの校閲者となって、丁寧に1日を過ごす様子が、冬子のなんともいえない生きづらさのようなものを表していて、一部理解できるような部分があったので、お願い負けないで、という気持ちにさせられた。校閲者がヒロインの小説だからなのか、川上未映子著だからなのか、出てくる言葉やひらがなの使い方が独特で、慣れるのに少し時間がかかったけれど、綺麗な文章だった。 すべてが真夜中の恋人たち、という文字がまぶたを通っていく、ってどんな感じだろう?

    2
    投稿日: 2021.03.23
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    冬子さんの他人と関わらない殻にこもった人生が全く理解できなかった。 でも読み進めていくと段々とピュアな関係ながらも少しずつ三束さんと親密になっていく感じが羨ましく美しい表現に引き込まれていった。 そして!!!!三束さん、、、? ただの禿げたおっさん。。。うん。 私の涙を返して!笑

    0
    投稿日: 2021.03.23
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    前に「夏物語」を読んで、この本はタイトルから勝手にそれよりも軽い話だろうと想像していたら、全然軽くなかった笑 内向的な主人公の変わりばえのない日々の話なんだけども、結構見てらんなかったり、ぎょっとすること言われたりで感情のジェットコースター。 夏物語の時も思ったけど、たまにすごい密度でマシンガンのようにどす黒い本音みたいなのが吐露されて、何回かひぇえ、と声を上げてしまった。

    0
    投稿日: 2021.03.22
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    なんかわからないけどなぜか シェイプオブウォーターみを感じた。 描写が美しい けど、どうしても登場人物たち誰にも共感、感情移入できなくて... 主人公にもどかしさを感じたし 聖のデリカシーのなさには呆れた 私の周りにはいないタイプなんだよな。 終盤に聖が冬子にぶつける言葉はまあ刺さった。 そう、結局自分が大事で自分を守るために、傷つきたくないから面倒なことから逃げる、避けるのよね。 人が人を想う気持ちって本当に尊いものだから、さ、 もし一瞬でも想い合っていた時がある二人なら、 去り際は、二人で、終わらせようよ。()ここにきて感情移入 けどそんな心のざわめきも、時間が経つにつれて色合いが変化してって渦が小さくなって、気づいたら何でもなくなる。 知ってる。

    0
    投稿日: 2021.03.22
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    土砂降りと落雷。 動く予定だった電車は、落雷による信号機の故障で動かなくなり、その影響で、行く予定だった場所に行けなくなってしまった。 ぽっかりと空いた時間。 まるでこの作品を読み終える時間が用意されたかのように、そこにすっぽりとはまり込んだ。 この作品は「静謐」という言葉が似合う。 土砂降りと静謐。 この対極の空間。 その空間の中で。 ひとつひとつ紡ぎ出される言葉が、それらがまるで濁点のないひらがなだけが、はらはらと降ってくるような、静謐な文字の世界。校閲という主人公の職業と、ぴたりと重なる。 ひらがなの使い方、句読点の打ち方、段落の分け方。 それらすべてが美しく、絶妙なバランスでもって支えあって、緻密に計算されたように構成されている。 ある三角形があるとして。 頂点Aが動けば、それに合わせて頂点Bも動き、全体のバランスを調整している。この三角形は、常に流動的に頂点が動き、移動を繰り返す。動きながらにして、その三角形は、常に美しいバランスを保っている。 それほどまでに、美しい言葉で構成された、究極に繊細な世界。 その世界で、一粒の結晶も逃さないように、上に手を伸ばす。しっかりと歩く。言葉が雪のように静かに降り、しんしんと積もってゆく。 じっくりと足で踏む雪の感覚を味わうように、ミシッという一瞬の音を聞き逃さないように、読み進めてゆく。 恋そのものが苦しいのではない。きっと、主人公自身の苦しみが、恋を苦しくさせているのだろう。彼女はその、主人公が抱える痛みを、静謐な世界で描ききる。主人公の生きづらさにフォーカスしながら、恋の美しさを描いた、長編傑作。

    104
    投稿日: 2021.03.13
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    図書館で本を探していると目に入ったこの本は、本のタイトルと絵柄が普段よく聴いてる曲のタイトルとジャケットが酷似していて、とても気になって借りました。(後から調べると、その曲はこの小説から影響を受けて作られたとのこと) その曲は本当に夢の中で空中浮遊するような優しさを持った曲できっとこの本もそのような本に違いないと思ったんですが、その直感に間違いはありませんでした。 この話に出てくる冬子は、僕のメンタリティそのもので本当にびっくりしました。 そして聖という女の存在がふわ〜とした話に良いアクセントになっていました。 この本を心の底から5つ星評価する人に出会ってみたい。

    4
    投稿日: 2021.03.13
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    繊細で美しい恋愛 真夜中の散歩がすきだったり、好きな人に教えて貰った本や曲が頭から抜けなかったり、主人公に共感できる部分が多かった 主人公だけてなく、聖にも共感できる部分は多く、特に信用と信頼の話や仕事への姿勢に対する考え方に大変共感した 直接的な表現はないが、情景描写や主人公の言い回しで想いを感じ取ることが出来る あからさまなハッピーエンドではないけれど、この恋愛が主人公に与えた影響は大きいのが伝わった 最後の、ベッドに横たわりながらすべての真夜中の恋人たちという言葉を書き出すシーンが頭に残る 今まで読んだ中で1番好きな恋愛小説

    1
    投稿日: 2021.03.08
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    主人公の女性は本当に変わった人のようにわたしには映った。水筒に日本酒を入れて持ち歩くなんて奇妙だと思った。ただ、好きな人の前で正気でいるためにお酒を飲んで気を紛らわせるというのはわたしもわかる気がした。終わり方は少し物足りなかったが、あまり美しくない状況も、書き方が綺麗な気がした。

    1
    投稿日: 2021.03.04
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    あまり魅力的な主人公じゃないし登場人物も少なく前向きな話でもないのに、最後までするする読めた。 言葉と表現が綺麗。 元気なものに疲れてる時はこんな薄い光のような話が心地いいかも。

    0
    投稿日: 2021.02.28
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    このレビューはネタバレを含みます。

    冬子は自分の頭で考えるよりも、環境や物事に流されていくような性格だった。それに対して、聖が最後に冬子に向かって言っていることは正しいと私は考えた。周囲の状況に流されていった結果、自分の側面でしか物事を見ることができず、三束さんに裏切られたことに気づくことができなかったからだ。私も教訓として、常に自分の意思で行動していくことで、物事を多角的に見で考える視点を確立したいと感じた。切ない物語であったが、三束さんと出会う中で、冬子が自分の意思で行動していくようになる姿に胸を打たれた。また、光と自分たちを重ねる表現を美しいと感じた。

    1
    投稿日: 2021.02.24
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    主人公の冬子さんは超コミュ障。お酒の力を借りないと外にも出かけられない、人とも喋れない。自我が希薄で流されるままに生きているようなキャラ。そんな冬子さん、校閲者としての能力は高く、取引先の聖さんの信頼も厚い。 ある日冬子さんは何か始めてみようかと思い立ってお酒を飲みながらカルチャーセンターへ。そこでとある男性と出会い…というお話。 しっとりと味わえる文章。そして言葉が綺麗。冬子さんのキャラはもどかしいのだけれども、自分にも似たようなところがあって、わかりすぎて辛くなる部分もあった。対照的に描かれた聖さんのキャラも良く、「しょせんは誰かの引用なのかもしれない…」のくだりは脳内のモヤモヤした感覚をよく言語化したなぁ!と感嘆の思いで読んだ。 ゆーっくりと景色が変わっていく様、面白かったです。

    8
    投稿日: 2021.02.15
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    涙にしろ精液にしろ、たかがティースプーン一杯か二杯ぐらいの液体を体から出すことが、なんでこんなに大変で、なんでこんなに大切だと思う? ゆったり流れる、藍色っぽい小説だった

    0
    投稿日: 2021.02.08
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    冬子さんの言葉にできない思いとか、正反対の華やかででハキハキしてキラキラしてる聖とか 三束さんも みんなそれぞれの内に秘めた想いがあるんだよな 良かったのだけども、、暗かった どうして暗くて淋しい女性とその対象に幸せですねオーラ出してるような女性がいつも出てくるんだろう 結論、幸せは自分で掴みにいかなくてはダメだ 言葉にして人に伝えないとだめだ ぶつかって 分かり合えることがある 幸せは人それぞれで小さな幸せでも それを見つけてコツコツ生きていくしかない 人の温もり 大切なんだな 好きな人がいることって心が温かくなる

    0
    投稿日: 2021.02.05
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    川上未映子さんの本は初。 描写がとてもとても綺麗。 物語はゆるりゆるりと進んでいく。 冬子さんみたいな生き方をしてる私にとって、最後の聖の言葉は突き刺さるものがあった。

    1
    投稿日: 2021.02.03
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    川上未映子さん初めて読みました。サラサラと読み終えてしまいました。こんな世界観もあるのかと、また小説にはまり込みました。冬子、聖の感情は読み解けるのですが、三束さんの気持ちが今ひとつわからなかったんです。少し男側からの感情が欲しかったかな...と思いましたが、それ、書いちゃうとつまらない話になってしまいますかね?

    0
    投稿日: 2021.02.01
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    アル中の30代女性の冬子と50代の男性教師三束さんの恋愛の話が一応メインではあるのだが、ドラマのような展開やはっきりとした起承転結があるわけではない。 では何が書かれているのかというと、冬子の内面の話だ。 冬子の中にはとにかく言葉があふれていて、360ページほとんど彼女の頭の中の話だ。 アル中になったのは劇的なことが原因だったり単なるメンヘラであったりするわけではなくて、彼女のこれまでの人生の中でのままならないもやもやの行きつく先だった。 冬子が関わる人物は三束さんのほかは女性ばかりで、彼女たちの話はとりとめない。 女性社会の牽制、いがみ合い、愚痴。 そして結局何が言いたかったのかわからない、いかにも女性っぽい話。 それらに加えて冬子には結婚や出産など30歳を超えた女として意識することもある。 冬子には何か悲劇があったわけではないが、特別幸せなできごともなかった。 そんな彼女が三束さんに認められて、すべてを吐き出してもいいんじゃないかと甘えてしまう瞬間は妙に納得してしまった。 冬子の姿は結構現代人に当てはまるのではないだろうか。 私もそうだ。 すべての幸福を手にできるわけではないが、悲観するような人生でもない。 日常の小さなストレスはあっても、それはほとんどの人にもあるもので、同情を得られるわけでもない。 でも日々確実にそれは蓄積していって、反比例するように神経はすり減っていく。 本作はそんなもやもやと、それをもし吐き出すことができたらという希望をよく描いていた。

    6
    投稿日: 2021.01.22
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    初めましての川上未映子さん作品。うまく感想を言えないけど、出会えてよかったと、こんなふうな気持ちや、ものの思い方にさわれてよかったと思えた作品やった。 真夜中も、朝も昼も薄暮も、台所の床で寝てしまうような夜までも、好きになれるような、素敵な描写やったな。 わかるすぎる、、と十分すぎるくらいに、胸がきゅってなる場面。繊細で美しい文章も、読みながら自分を思い起こしてしまう場面も、ぜんぶよかった。 2021年よかった本にランクインしそう。

    0
    投稿日: 2021.01.16
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    このレビューはネタバレを含みます。

    フリーランスで校閲をしている主人公が、初めて自分に光をあててくれるような人に出会い、少し変化しつつも結果的にもとにもどるけど、ちょっとは成長していた。そんな話。 校閲という仕事柄か、主人公は自分の言葉や主張をあまり持たない。でもそんな中でも自分の気持を発することができるようになる。 自分自身も周りからの評価も、自分が主人公というタイプではないと思っている主人公が、自分を少し見つけることができたような、そんな気がした。

    0
    投稿日: 2021.01.12
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    登場人物がワーッと語り出すと、そんなの分かってるんだけど、でも、受け入れたくなくて、それなのに突きつけてくるなんて、しんどいよってなってくるんだけど、読むのは止められない。的を得ているからなのかな。三束さんのことを忘れるまでの短い描写でさらに胸がキュッとなりました。

    0
    投稿日: 2021.01.09
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    描写が繊細で美しい。 恋愛小説は苦手だけど、 この小説はすっと入ってきた。 主人公や周りの人の不器用さが苦しい。 よく考えたら、現実世界でもみんな不器用で、みんなもがいているんじゃないか…とおもった。

    0
    投稿日: 2020.12.27
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    細かな感覚の表現が豊かで、 主人公の感覚に寄り添えたという意味で、 とても楽しく読めた。 人生って、 三束さんや聖のような人たちとの出会いがあって、 いつかはその出会いのことも忘れてしまうんだけど 心の奥底にずっとそれはあって、 その人を形成していくんだろう。

    0
    投稿日: 2020.12.27
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    登場人物たちが不器用すぎて胸が痛い。 溢れるほどの想いと、それをうまく言葉にできないもどかしさ。 息が詰まりそうなほど繊細で美しかった。 冬子が「三束さん」と呼ぶたびに、胸が締め付けられる想いがした。 三束さんと接するうちに少しずつ冬子自身の意志を感じられる描写が増えるので、結末がどうであれ、もうそれだけで十分な気がした。

    2
    投稿日: 2020.12.23
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    ☑︎"感情とか気持ちとか気分とか、そういったもの全部が、どこからが自分のものでどこからが誰かのものなのか、わからなくなるときがよくあるの。" ☑︎"ふれるというのは、むずかしい状態です。ふれているということは、これ以上は近づくことができない距離を同時に示していることになるから。"

    0
    投稿日: 2020.12.11
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    わたしはこれは古本屋さんで買いましたが、前の持ち主でしょうか?四葉のクローバーが押し花にして挟んでありました。しかも3つも。本の内容でこのクローバーの意味合いが変わってくるのではないかと思っていますが、まだ読んでません。楽しみです。

    0
    投稿日: 2020.12.06
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    「ほんとうにひとりきりだった。こんなにもたくさんの場所があって、こんなに無数の音や色がひしめきあっているのに、わたしが手を伸ばせるものはここにはただのひとつもなかった。」 静謐な物語だった。 波瀾万丈というわけではないけれど、ページをめくる手が止まらなかった。 しずかに生きる主人公を文字で追っているうちに、なぜか気持ちが洗われていくような、逆にこちらが寄り添ってもらっているような、不思議な感覚に。 なんでそんなに心ない言葉を発することができるんだろう、と思うような人がでてきたり、 もしかして…と思わされるような反面教師的な描写があったり、 妙にリアルでドキッとすることも。 その緩急が、また惹きこまれる理由だったのかな。 「光が去って、明日の朝また光がここを訪れるまでの短いあいだ、わたしはしずかに目を閉じた。」

    0
    投稿日: 2020.12.05
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    忘れかけていたけど、人を好きになることに年齢って関係ないんだなぁ… 大人になってから、こんなに純粋に人を好きになれる主人公の姿が眩しい。

    0
    投稿日: 2020.11.25
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    主人公は30代だけれど、初々しい恋愛小説。 端的に言えば、自分に自信が持てなくて、人と交わることも苦手な冬子が、還暦近い三束さんと出会い、三束さんに恋するお話。 お酒を入れた状態じゃないと三束さんに会えない弱さのある冬子、それに対し、周りを気にせず自我をゆく強い聖。最後のこの2人のやり取りが好き。 それにしても冬子はアル中なのか?と思うほど、飲むね。

    0
    投稿日: 2020.11.21
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    聖と冬子のさっぱりとした関係性が好きで、自分もいつかそういう関係の人と出会えたらいいなぁとおもいつつも終盤の聖と冬子の言い合いにはグサグサ心にくるところがあり、引き込まれつつもハッとさせられるところがありました。 こういういわゆる恋愛小説というものは最後主人公はハッピーエンドで終わるとおもっていたのですが、三束さんが冬子の誕生日の日に来ず、またそこから永遠に会うことはない結末には驚きました。冬子には幸せになってもらいたいです

    0
    投稿日: 2020.11.18
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    10代か20代の初々しい恋人たちの話かと思いきや、 しっかり大人の年齢に達しているアラフォー女性と、アラカン男性との、これまた初々しい恋のお話。 情景描写の美しさや心情描写の繊細さは、川上未映子さんならでは。 「(あの人は)毎日何を食べて、どんなふうに過ごして...どんなところで眠って、どんな本を読んで....私は何も知らない」って、こんな感じ(本文のままではないです)の、主人公(女性)が男性を思って、思い悩む描写があるのだけれど、 片思いか両思いかわからない時期って、会えると嬉しく楽しいのだけれど、会うたびに苦しくなって...会えない時間に、その人の"わからない今"を想像して思い悩むって、まさに恋ってそうだな〜って、しばらく忘れていた恋というものを思い出しました(笑) 反対に、知らなくても良かったことを知ってしまうのが結婚かしらねーーー(笑) さておき、 この2人が共感しあうものが「光」。それも、「真夜中の光」。 男性が、ショパンのピアノ曲「子守歌」は光のような曲だ、と言って、女性に贈るのだけれど、確かに、この曲、ショパンというより、ドビュッシーのような感じがするメロディーで、「光」というのも分かるなーなんて思いました。 後半は、ショパンの「子守歌」を聴きながら、この2人の恋の行く末を見守るように読みました。 やっぱ、 どんなに年齢を重ねた大人であっても、 切なく、時にはズルく、そして、淡く、夢のような儚さを孕んだ幻想のようなものが 「恋」なんだかなぁ〜〜〜。

    2
    投稿日: 2020.11.12
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    この作品に出てくる人たちは(というか人間みんなそうなんだろうけど)、人間らしさ、もっと言えば人間の弱さ、みたいなものを持っていて、それがしっかりと表現されていると感じた。だから、所々とても苦しかった。特に、冬子さんが苦しんでいるところは涙が出そうになった。 著者が何を伝えたかったのか、恋をするということの苦しみなのか、はたまた「伝える」ということの難しさなのか、今のわたしにはまだよくわからないのが正直なところだった。もう少し大人になってからまた読みたいと思った。

    2
    投稿日: 2020.10.25
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    サイレント。 自分の気持ちがわからない。 女。 時間経過がリアルじゃない気がしますが。 恋って不思議

    0
    投稿日: 2020.10.24
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    女性ってこえ~って書くとポリコレ的にはダメだろうか。 魔法瓶に日本酒いれて出歩くやつやりたい。

    0
    投稿日: 2020.10.23
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    美しくて切なくて、気付いたらとても感情移入してしまい冬子の生きづらさを自分のことのように思ったり抱きしめてあげたいと思ったり三束さんに惹かれていったりした。三束さんの優しさに触れるたびに自分の好きな人のこと思い浮かべてどうしようもなく会いたくなってしまった。なんだかめちゃめちゃ泣いてしまった。

    1
    投稿日: 2020.10.10
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    ゆるやかにページを進めていたけれど、ラストにかけて続きがものすごく気になって一気に読んだ。 最近夜が憂鬱で嫌いになっていたけど好きだった夜のことを思い出させてくれる作品でした。 私が感じたことや経験したこと今までのこと、好きな人たちのこと全部ぎゅっと抱きしめたくなった。 大事なものがたくさんあってよかった。 まだまだ生きられる。出会えてよかった。

    2
    投稿日: 2020.10.09
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    読んでいる間、私は冬子だった あんまり楽しい気持ちになれなくて常に陰なのか静なのか開けていかない未来を思って毎日を流れていた 夜を思って光を考え、そして三束さんを想った どんな女もどんな大人にもその人の人生が流れていて、時となり関係がある そこに時間が存在してこの本があった

    1
    投稿日: 2020.09.29
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    このレビューはネタバレを含みます。

    運命的な三束さんとの出会いに最初呑み込まれた。けどだんだん、聖から貰った服で全身を纏い、聖から貰った香水をつけて聖からもらったコートのポケットに入ってたお店の名刺を取っておいて予約したあの先取日にすごくもやもやした。面白かったけど。冬子さんとその関わり合った全ての人たちの物語は面白かった。典子さんの話や、恭子さんの聖の話など。最後やるせない気持ちになった。節々で面白くも感じたけど最後はその面白さが個人的になかったです。でも読んでる時は言葉の響きが心地よいものばかりでとてもよかった。

    1
    投稿日: 2020.09.20
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    このレビューはネタバレを含みます。

    一度読みたいと思っていた作家。題名に惹かれて読んでみた。冬子のような人は男女を問わず同級生には必ずいる人と思いつつ読み進めた。ラストはハッピーエンドではなく、冬子の失恋で終わる。現実はこういう事なのだろう。自分の気持ちを言葉や文章でうまく伝える事ができない人は自分も含め沢山いて、もどかしさを抱えなが生きていくのだろう。登場人物心理や場面描写はすごく巧み。でもなぜかしっくりこなかった。自分には合わないのか、もしかする上手すぎるのかも。冬子よりも聖に惹かれる、三束はこういう人はいると思うが理解はできないなと思った。恋愛小説ではあるが、生きるって幸せってなんなんだろうが、読後感。

    2
    投稿日: 2020.09.19
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    これが、究極の恋。帯に書かれていたようにこの本は儚くてつらくて今まで読んだ恋愛小説とは全く異なっていました。器用に人前で立ち振る舞える人もそうじゃなくて繊細な感性を持ってて言葉に詰まる人も色んな人がいる世の中で、その一人一人に物語があることを愛おしく思いました。1年前、私は冬子と同じようにこんな気持ち初めてというほどの恋をしました。その時のことが思い出されると同時に、自分の気持ちを伝える勇気が出ました。読んでいる途中もどかしくなることもあったけれど、至高の名作です。

    1
    投稿日: 2020.09.17
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    川上作品に初めて触れた。 こんな女性もいるのだろうなと思った。 読み終え感じたのは、今後主人公の冬子は変わるのか、それとも今までと同じ生き方に戻るのかということだ。 自分を出せない人は男女問わず大勢いると思う。 また、自分を見つめることができない人も。 変わることは難しい

    1
    投稿日: 2020.09.14
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    とても静かで、でも激動で、ぎゅっと苦しくて、そして美しい。サッと読み過ごしてしまうのは勿体ない文章が繊細に詰め込まれていて、行間を漂う空気感や文章の美しさをゆっくり味わいたくなる。 冬子より聖の不器用さが愛おしい。冒頭の手紙の文章が美しくて好き。 昔「乳と卵」が馴染まず、なんとなく遠ざけていた川上未映子さんだったけれど、苦手意識が払拭された気がする。

    1
    投稿日: 2020.09.14
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    いわゆる青春的な恋愛とは異なる、大人のかなり現実味のある恋愛といった感じでよかった。また主人公の入江さんもキラキラしているわけでもない’’普通’’の女性で正直魅力に溢れているわけではないがそこがリアルで良かった。しかし三束さんとの光についての会話などはロマンチックな要素もあったと感じた。

    1
    投稿日: 2020.09.13
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    誰かを想いはじめると必ず手に取る物語。 『10』からの”わたし”の描写、感情の表現がとても突き刺さる。

    0
    投稿日: 2020.09.08
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    発表する作品たちがすべて賞をもらっている印象のある川上未映子さん。 そして、新人賞の審査員をされていたり、村上春樹さんとの対談本をだされたり、 なんか凄そうだよな、と思いつつ作品には触れずにきましたが、 ようやく、積読になっていたものを手に取りました。 読みながら、いろいろとその都度考えながら、言葉にしようとするも、 つかみきれなくて、腕組みしちゃうくらいなのでしたが、 読み終わった今ならこういいます、「これは、言うことないなあ」。 想像していたよりもずうっと質が高かった (まあ、僕ははじめての作家の作品はちょっとなめてかかる癖がありはするのですが)。 哲学的でもなく、気難しげでもなく、 日常のニュートラルなレベルくらいの無理のない内容、 そして、言葉自体も閉じ開きでいえば開いた言葉がおおくて読みやすいし、 目やあたまにやさしいしっていうような使い方をして始まっていきます。 言葉は最後まで読みやすかったです。 これは読者にしてみればすらすら読めて好いことだし、 なおかつ、この作品自体を構成する素材としてもちゃんと適っているし、 両立しているよなあと思えました。 「べつにこれっていう話はないけど、いいじゃん。なんか話しようよ。」 主人公・冬子をお酒を出す店に誘った聖からの電話。 この会話が成立する仲を「目指してきた」なんていうと、 堅苦しいし力が入りすぎなのだけれど、 僕も自然とこの感覚をもとめて人と繋がったり接したりしてきたかなあ、 と人間関係にのぞむ好い力の入り具合を再確認した箇所です。 こういう感覚って好きなんですよね。 だけど僕は飲まないから、 聖の言うような誘い文句へのハードルが高めです。 ささっと言えない。 いくぶんの重みが生じる覚悟じゃないと言えない。 まあ、それだって、人生観・世界観によるもので、 肩の力が入っている人生観をもっているほうがヘンなのかもしれない。 はじめに書いたように川上さんの作品に触れるのははじめてで、 ほうほう、こういう文体で書かれる方なのか、と軽い驚きがあった。 もっと、というか、若干の、しかつめらしさを感じさせるような文章を書くのでは と勝手に想像していた。 あふれだす言葉が流暢にながれていく感じがする。 おおげさな言い方にはなるのですが、 言葉の洪水感があって、そこに強く細い糸がピンと芯として存在している感覚もある。 だけどなんていうか、とても読みやすいのは同世代だからっていうのはあるのかなあ。 また、読書は、文章を読みながら、言葉たちにたびたびひっかかりながら読んでいくものですが、 その抵抗が軽く、だからといって文章が流れていったあとにはしっかり残っているものがあるので、 内容・意味をすくいとるときに、 より主観的あるいは直感的にこっちがなって構わない文体なのだろうかと思えました。 そういう意味で、思いがけずフレンドリーな文体であるな、と。 それと、はじめの1ページ目、詩的傾向のつよい文章がぐんとこころを揺さぶって、 読み手としても好スタートをきれるのです。 で、中盤まで読むと、もうそういう洪水的に感じた言葉の流れは、 そういった体で安定しているものなので慣れてしまい、 読み手が慣れてしまえば小説の基盤として透明になって作用します。 つまり僕は、ミイラ取りがミイラになるみたいに、 小説をいくらか分析しようとしていても、 透明な働きによって分析すべきものを見失い、 小説の方に飲みこまれていたのでした。 そんな「やられた」状態でもち帰った感想はこうです。 「いろいろと丁寧に書いているし、作られている」。 だから、センテンスも内容もシームレスに移動していく感じがする。 その丁寧さは、ふわりともした羽毛のような丁寧さです。 それも、言わぬが花的に、 お客さん(読者)の意識にのぼらない水面下でなされている。 言い換えれば、抜刀せずに鞘におさめたままで真剣勝負できる、 そして今作では実際にそうしてしまった使い手なのです (もっとも、抜き身でばっさりくるような鋭い箇所や考察はすこしあるのですが)。 とね、ここだけでもそうですけど、全体をぐるっととおしても、 ちょっとやられたな、っていう感じがします。 もちろん、夢中になるくらいおもしろくて、 離れがたいくらい素敵な小説なんです。 最後になりますが、「これはこうだぞ」っていう、 少ないながらもわかりえた部分をもうひとつ。 今作は主人公の冬子視点ですし、 もっともながら彼女を中心としてはいるけれども、 彼女がちょっと我が淡めの、希薄なかんじのキャラクターなこともあって、 他の登場人物たちの世界や世界観、人生がちゃんと彼ら独自のものとして 独立して存在している中で物語に登場しているんだっていう匂いがすごくしました。 主人公は他の考え方や価値観の浸食を許してしまうんです。 そういう主人公だからこそ浮かびあがったところがあるのでしょうが、 個人それぞれを尊重する度合いは、他の作家よりも強く感じました。 対等なキャラクター同士の群像がしっかりしている、といえばいいのでしょうか。 だからこそ、いろいろな個人世界(環世界)の重なった部分が、 この小説で書かれたものでありました。 さながら、冬子の範囲を広く取った集合図のようでした。 というところです。 もう川上未映子さんの違う作品も手に取らないと気がすまなくなってしまった。 この出合いは、ちょっと事件でした。

    5
    投稿日: 2020.09.04
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    「孤独の中に繋がりを感じる」 ✼感想✼ 川上未映子著書。 恋には様々な形があることを教えてくれ、 決して手を繋いだり、身体を重ねることだけが 恋というものではない。 ただ相手のそばに居たい。それだけでも充分 恋というものに定義されるものだと感じた。 主人公である“入江冬子”が物語中に出てくる 心の表情や動きや感じ方の文中の表現が本当に綺麗で これを文で読者に想像させることが出来る 川上さんの表現力にとても驚いた。 ✵あらすじ✵ 「真夜中は、なぜこんなにもきれいなんだろうと思う」。 わたしは、人と言葉を交わしたりすることにさえ 自信がもてない。誰もいない部屋で校正の仕事をする、 そんな日々のなかで三束さんにであった---。 芥川賞作家が描く究極の恋愛は、 心迷うすべての人にかけがえのない光を教えてくれる。 渾身の長編小説。 ✣参考サイト✣ https://www.amazon.co.jp/すべて真夜中の恋人たち-川上-未映子/dp/4062172860/ref=nodl_

    22
    投稿日: 2020.09.02
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    このレビューはネタバレを含みます。

    前半の冬子と聖との会話は、同じことの繰り返しのような気がして、ところところ飛ばして読んでしまうこともあった。物語が後半に入って、冬子の恋が現実味を帯び、その気持ちが自分の中だけでは収まりきれなくなってしまうくらいから、やっとこの本にのめり込むことが出来たような気がする。 冬子と三束さんの会話は、いつも温かみを持ったぎこちなさで、わたしはそれを読むのが楽しみだったから、もっとたくさん2人が会えるといいのになと思った。 三束さんのお誕生日会の日、冬子が本当の気持ちを吐露し、自分の誕生日の真夜中に一緒にいてくれと泣く場面はわたしも一緒に泣きたくなった。よかったねって。 その後の展開は衝撃的だった。2人には穏やかなハッピーエンドが訪れるはずだったのに、そうじゃなかったなんてびっくりだ。 どんなに愛していても、どんなに傷ついたとしても、時が経つにつれ静かにその想いは薄れていく。時々生々しく蘇り、激しい痛みに悶え苦しむ夜があっても、それでもその回数はだんだん減っていく。喪失と再生を繰り返し、人は強くなっていくんだなと思った。 聖のように自分以外の人間を非難することによって自分を守る人もいるし、冬子のように人との繋がりを拒絶し、ひとりで生きていくことで自分を守る人もいる。この地球上でひとつひとつの小さな命が、見える人だけに輝く光で満たされているのを、この本を読み終えた夜に感じた。

    1
    投稿日: 2020.08.24
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    冬子に終始イライラしてしまい…かといって、聖や恭子さんにも共感できず…私には合わなかったなぁ。 また、何年後かに読んでみよう。

    2
    投稿日: 2020.08.22
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    本屋でつい手を取って、そのまましばらく立ち読みして、はっとなって買って一気に読みました。もっと純愛な感じかと思っていたのだけれどそうではなくて、生々しいところは苦しかったけれども、最後の方よくってちょっと泣いてしまった。川上未映子、前に読んでしっくりこなかったけれども、すごくはまりました。

    0
    投稿日: 2020.08.17
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    あなたのことを知りたい 知りたいけど、知るのには勇気がいる だって、 あなたを知るためには、話しかけなきゃいけないし、話しかけたら自分のことがあなたに知られてしまうということだから。 自分のことを知られてしまうのは、私にとって勇気がいるのです。 自分に自信がない私は、自分のことを知られるということが不安で怖くて、億劫なんです。 それに、 もし、もし、もし、話しかけたとして、私の一言で気分を害したりするかもしれない… そんなことを思うと、一言を発するだけでも怖くてぎゅっと縮こまってしまう。動けなくなる。 とにかく、勇気がいるのです。 そんな、主人公の姿は、どこか私と一緒でした、 へなちょこで、この世を生きるのに自ら生きにくくしているような… でも、彼女は、ある人を知りたいと思い、なんとかしようとしている。恋をしている。 私は、その不器用だけど恋する姿に憧れを持ちました。

    2
    投稿日: 2020.08.15
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    恋愛小説読みたくて買う。繊細で、儚げでタイトルの印象とはちがったけど良かった。 主人公の生き方はもどかしくもあり、でも一度はこんな経験したことあるなー人付き合いって大変だよなぁーうまく生きてるように見えても、悩みや不器用さはみんなあるよなーなんて感じながらちょこちょこ読了。 誰にでもみんな生活があって、人と繋がりたくて、上手くいかないこともあって、過去があって。 みんなそれぞれ、その人の人生の主人公だと感じた。

    0
    投稿日: 2020.08.12
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    そう言えば女性作家の純小説殆ど読まないな、と思い村上春樹つながりで読んでみた。女性作家と男性作家の恋愛小説ってこんなにも違うものかとちょっと衝撃。ちょっと描写がグロテスクに感じる部分はあるけど読み切れたということはまだ楽しめる余地はありそう。他の作品も読んでみようかな

    0
    投稿日: 2020.08.10
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    このレビューはネタバレを含みます。

    初の川上未映子さんの作品。ひらがなの使い方が素敵で、かつ、冬子の感じたことが忠実に描かれていて、二人の関係性も相まって、作品全体から温かさを感じられた。川上さんの美しさや母性たるものが出ているのではなかろうか。そして最初の1頁目に、胸が苦しくなるほどに魅了された。 冒頭は、冬子に少し苛立ちを覚えながら読んだ。アルコールを入れていないと三束さんと話せないところ、聖も言っていた、自分の中で完結させてしまうところ、など。最後に三束さんが「嘘をついていた」と手紙に記すが、冬子のアルコールも十分に嘘のように感じられた。だが、そういうところにお互いを思いやれる二人の関係性が滲み出ていた。 個人的に最も心を揺さぶられた言葉を発したのは、水野くん。 「与えられたものを、……どれだけ捨てられるのかが大事だと思うんだ」(中略)「……家族も家も、親も、学校も、この町もさ、何ひとつ僕が選んだものじゃないんだよ。(中略)僕はね、ほんとうは東京に行くときに名前だって変えたいくらいなんだ」 私自身も今就職活動をしているし、地元にずっと居座っていては視野が狭いままだと感じているので、この言葉にとても共感した。同時に、高校生でここまで考えられていることに尊敬さえした。後に「いつも一生懸命やってきたことはほんとうじゃないかと、そう思った」と言うが何も考えていない冬子に苛立ちを覚える気持ちにも共感した。だが、怒りの感情など何も好意を抱かずに、男性は女性に性的な行為をできるのかと思い知らされ、ぞっとした。 作品の最終部分で、冬子が三束さんへの気持ちに気づく。そこからの冬子のどうしようもない感情、触れたい、つまりそれ以上近づけない状態に至りたいと思う感情、今何をしているか、一緒にいるわけではない三束さんに尋ねてしまう感情、三束さんをもっと知りたいと思う感情、全てが透明で美しいと思えた。私自身もそのような思いを抱くことは勿論あった。だが私のものは汚いと感じていた。だがそれは否だった。人に恋い焦がれる思いは、私のものでさえも、こんなにも美しいのかと思うことができた。 冬子は三束さんの誕生日を祝った後に、自らの感情を吐露する。化粧を施された顔をぐしゃぐしゃにしてまで吐露する。それを見て三束さんは頭を撫でる。この場面がとても素敵だった。私自身が人の前で泣けないからこそ、その後の冬子の 「誰かにただ見守られながら泣くことが、こんな気持ちのするものだということを、わたしはこのときにはじめて知ったのだった。」 という気持ちを、私も味わいたいと思った。 そんなに優しくしてくれた三束さんだったが、会うのはそれきり。冬子は歪んだ感情を抱くことなく、ゆっくりと恋慕を忘れていく。私自身もそういう感情を抱いたことはあるし、現在それに惑わされ今朝も泣き狂っていた。だがそんな感情も、いつかは忘れていくのだ。そう信じてまた一歩、明日からも生きていきたいと思えた。 川上さん自身も性の問題に積極的な面もあってか、この作品は様々なフェミニズム的な場面が多かった。先ほど述べた水野くんに加え、一人で子を生み育てることを親に反対される聖、旦那とのセックスレスに悩む典子、聖や恭子など女性同士の諍い。これは冬子と三束さんの恋愛小説ではない。色んな登場人物によって現代のジェンダー意識に警鐘を鳴らす作品となっただろう。

    0
    投稿日: 2020.07.14