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袋小路の男
袋小路の男
絲山秋子/講談社
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総合評価

174件)
3.7
30
51
65
6
0
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    2005年第2回本屋大賞第4位。 3つの短篇集です。 2つは連作になっており、同じ二人について、女性目線と第三者目線とで、それぞれ描かれています。 距離感って大事です。

    0
    投稿日: 2025.08.23
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    友達に勧められて読んで、めっちゃよかった。『海の仙人』のときも思ったけど雰囲気も文章も最高に好き。 若いころに切ない恋愛の本や映画を見て「うわぁ恋したい!」という気分が高まる感じがあったけど、そういうときの感じが思い出された。私がロマンチックだと感じる恋愛ってこういうのだなぁって思う。 男の軽薄な感じもいいし、軽薄さを断罪したり、軽薄さの背景を描いたりしないところがいい。なぜ主人公が袋小路の男を好きになるのかわからないし、男が何を考えてるのかわからないんだけど、恋愛ってそういうものだと私は思うから、そこにリアリティを感じた。 「小田切孝の言い分」は男視点でなく第三者視点なのがおもしろいぃぃぃ。 「アーリオ オーリオ」はなんか切なくて泣きそうになる。解説にも書いてあったけど、紙飛行機を飛ばしたところで終わらせないのが私もめちゃくちゃ好みだった。

    1
    投稿日: 2025.07.12
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    このレビューはネタバレを含みます。

    登場人物の立ち位置や距離感、禁欲的でありながら他者を拒絶していないところに好感がもてる。だからといって自己卑下もなくて、人づき合いに疲れている時に読みたくなる本。 てらいないように書かれているけど、きっとこんな作品を書くのは大変なスキルとセンスが要るのだろうと思う。

    0
    投稿日: 2025.04.17
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    2025.4.1 読了 今回も好きな感じのお話しだった。密かに絲山作品を追いかけております。 絲山さんの描く、男女の絶妙な関係が好きなのだ。今回は女性の片思いの話しだけど、だからと言って振られて辛い感じでもなく、くっつくでもなく。でもお互い必要なんだけど、恋人とかそんなじゃないような。でも、ずっと手出されないのはしんどいよなぁ…。 アーリオオーリオは、叔父と姪のお話しなんだけど、2人の手紙のやり取りが可愛らしくて。あんなに姪っ子と叔父さんて仲良いのねぇ〜と思いつつ、ちょっと叔父さんのこと特別に感じてるのかなぁとかも思いつつ。こちらは素敵な距離感だったなぁ。

    1
    投稿日: 2025.04.02
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    どうしようもない男と、そいつを一途に好きな女の両面エピソード 以下、公式のあらすじ ----------------------- 高校の先輩、小田切孝に出会ったその時から、大谷日向子の思いは募っていった。大学に進学して、社会人になっても、指さえ触れることもなく、ただ思い続けた12年。それでも日向子の気持ちが、離れることはなかった。川端康成文学賞を受賞した表題作の他、「小田切孝の言い分」「アーリオ オーリオ」を収録。 ----------------------- 表題作の方は女性の一人称視点で描かれている。 高校一年生のときに男と出会い、恋人未満で友達のようなそれでいて近しいという不思議な関係のまま十数年 就職して遠距離になっても気になるあいつという、何とも昭和的な風情が漂う 男の方はまぁ、典型的な「だめんず」なので、「嗚呼なるほど、これがだめんず・うぉ~か~か」という妙な納得感がある 顔が良くて、仕草や態度も無頼を気取っていて、大学卒業後も定職に就かずに小説を書きながらもまったく受賞しないという体たらく どうしてこんな男を好きになってしまうのか不思議ではある ただ、次の「小田切孝の言い分」になると、男側から三人称視点で描かれているので、二人の関係性の印象がちょっと変わる 「私」と「あなた」だったのは、「大谷日向子」と「小田切孝」となることで、二人に対する客観的な視点が見えてくる まぁ、それでもだめんずだし、だめんず・うぉ~か~だなという印象派大きく変わることはない だけど、こんな二人って、割れ鍋に綴じ蓋のように、丁度よい関係なのかもと思わないでもない ・アーリオ・オーリオ 叔父と姪との手紙のやり取りのお話 個人的にはこっちの話の方が好みだな 多分、テーマは「距離」もしくは「距離感」だろうか? 叔父と姪という関係もそうだし、年齢差もそう そして、手紙というツールを使うことで、やり取りに発生する時間を二人の距離として感じる 三光日というのは科学的には正しくないけど コミュニケーションの取り方とその手間を考えると良い表現だなぁと思った

    3
    投稿日: 2024.12.18
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     2004年第30回川端康成文学賞を受賞した表題作含む3編収録の短編集。  他人が自分のことをどう思っているのか、またあまり大きな声で言えないが、自分が他人のことをどのように捉えているか。このあたりの心理描写が巧みに描かれている。

    1
    投稿日: 2024.11.30
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    純愛というより、特定の他人に対して甘えることを通して、それによってなんとか自分と世界のバランスを維持している、そんな関係を描いている。それは一種の共依存なのだろうが、その言葉で簡単に片付けてはいけないと一方でそのようにも考えてしまうのは、描かれた二人の時間の確かさにあるのだと思う。

    2
    投稿日: 2024.05.23
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    3つの話から構成されていて初めの袋小路の男がラブレター?で2つ目がそなアンサー的な話になっている 不思議な関係の2人の物語 出会ってしまったが結ばれる事なく続いていく、これはもはや純愛なんだろうかと思いました くっついたらいいのにと思ってしまいますが、そうならないのが不思議な関係なんでしょうね 3つ目のお話は別の話と思うのですが、何か関係が隠されてるのでしょうか? 最後がすっと終わってしまいよくわかりませんでした

    0
    投稿日: 2024.04.08
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    うん、好きだ! 3編からなる短編集。 『袋小路の男』と『小田切孝の言い分』は 同じ男女を描く視点違いの2編。 この2つ好きだわ〜。 名前はつけられないような関係性。 とくに“バカだな”のくだりがしびれた。 『アーリオオーリオ』は叔父と姪の文通で、 星座や星がキーワードになっている。 こちらも静かな物語で素敵だった。

    1
    投稿日: 2024.03.06
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    このレビューはネタバレを含みます。

    なんかもぞかしいというか、厄介というか、お互いにどっちもどっちな気がする。人の恋愛を見てもぞもぞしたい人にはいいかも

    0
    投稿日: 2024.01.14
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    なんとやっかいな…指一本触れられないからこそ、前にも進めず嫌いにもなれず、諦めもきれずに生殺し 実際そんなに大したことない男でも、恋する女の献身的で盲目的な恋愛には、厚さ15cmくらいあるフィルターがかかっていて、周りの声もまったく耳に入らない そうなんだよねえ、知ってます 感情を持て余しすぎて自己消化不全に陥って、むしろ冷静に置かれた状況や自分の感情を冷静に捉えている日向子の分析や思いに多分に共感して読んでいて苦しくなりました

    0
    投稿日: 2023.11.11
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    こういう、どうしようもない、抗えない、恋かどうかすら分からないけれど離れられないって話、すごく好きです。同時収録の話も大好き。

    0
    投稿日: 2023.10.20
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    小田切と日向子、肉体関係はもちろん、手も握ることがない関係なのに、お互いなくてはならない存在のように感じていて、永遠に交わる事のないある一定の距離を保ち続ける。確かに純愛なのだろうが、私にはこの作品の良さが、あまりわからなかった(ー ー;)

    0
    投稿日: 2023.10.04
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    最初の2つは同じ登場人物を視点を変えた話で、そんな構成ありかよ!最高。と思いました。絲山さん2冊目にして何となく男の登場人物の傾向が分かった気がする。どっちつかずでダメだけど、セックスや結婚がセットにならない、友達とも恋人とも違うぬるま湯のような関係が心地よい。十円玉の温度で手のあたたかさを知る、すごい一文だった。アーリオ オーリオは美由の瑞々しい感性がが光る作品だった。時間のかかる手紙でのやりとり、哲と美由の距離感と星の話がリンクして美由の淡い恋心が流れ込んでくるようだった。かなり好き。

    1
    投稿日: 2023.02.06
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    最近仕事忙しくて本読めなかったけど、合間に読みました。短編が3つ。1つ目と2つ目は同じ登場人物の話。恋愛小説ですが、心理描写は細かくしているものの、全体的には淡々と簡明に書いている印象。共感とかはなかったけど、詩的で良いんじゃないでしょうか。

    2
    投稿日: 2022.12.15
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    このレビューはネタバレを含みます。

    2005年(第2回)。4位。 「袋小路の男」日向子は高校の先輩に恋をした。しかし、大学に入りOLになっても、いわゆる友人以上恋人未満。その中で恋(日向子は浮気という)もしたけど。なんかさ、思い出すよ、若いころ。なんだかうまくいかない恋ってあるよ。 「小田切孝の言い分」男の側からの日向子との関係。 「アーリオオーリオ」中学生の姪と文通する30代男。パスタばかり食べてるらしい。これは、唐突に終わった感が。 不思議な世界観で、機会があれば読んでみたい作家かなぁ。

    0
    投稿日: 2022.11.12
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    このレビューはネタバレを含みます。

    表題作の『袋小路の男』、『小田切孝の言い分』『アーリオ オーリオ』の3編。  前2作は、12年間思い続け手を触れたこともなく「10円玉の温度で暖かさを感じる」。こういう男女の関係を純愛というの?女性が男性に振り回されている感はありますが、一線を超えたらこの今の関係が崩れてしまうのを恐れているのでしょうか。もどかしいけれど、なんだか懐かしい感覚も抱きました。 『アーリオ オーリオ』は叔父と中学生の姪が手紙でやりとりをするお話。微笑ましい。

    0
    投稿日: 2022.09.26
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    読書開始日:2022年9月19日 読書終了日:2022年9月24日 所感 【袋小路の男】 【小田切孝の言い分】 小田切孝は虚勢を張る。 つい弱音を吐くと、メッキが剥がれ、人が離れていく。 わたしは小田切孝がハリボテだと気づいているが、愛しているから離れない。 小田切孝もそれに気づいているから離れない。 でも近づきすぎると、小田切孝が自身の弱さを目の当たりにし、わたしもわたしで小田切孝の弱さを受け止めきれないかもしれないと不安に苛まれ、先に進まない。 それでも時間をかけ、進まないことこそが二人の関係性とお互いが気づき、袋小路のぺんぺん草になった。 【アーリオ オーリオ】 素敵なお話のようだったけど、理解ができなかった。 きっと自分は譲側であり、小島側なんだと思う。 でも哲のような、自然の中でも見えない自然にまで興味を示せる人間は、好奇心があってカッコイイと思う。 袋小路にはまってる。 反時計廻りに回った なんて無謀なんだろう、なんて素敵なんだろう

    1
    投稿日: 2022.09.24
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     切ない平行線。互いの心情は包み隠さずストレートに表現される反面、男女が心身共に交わる事なく時が流れる。読み手のその時の感情によっては歯痒くも感じられる場面が次々と繰り返されるものの何故か納得感も覚えさせられ、物語と読者との距離も接する事なく一定の間隔を保ったまま結びの行までだどり着いてしまうような不思議な短編たちでした。  気付かぬうちにするりと読み進めえられるのは話の展開だけでなく文章の書き方が上手なのかもしれない。滞りなく文字を追う目が先に導かれていった。

    1
    投稿日: 2022.06.29
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    このレビューはネタバレを含みます。

    これは恋愛?純愛?なんとなく綺麗だけど、実は、ものすごくドロドロで。 わかるようなわからないような…引きづりますね。 2話目でただの閉塞感は薄まりましたが。

    1
    投稿日: 2022.06.14
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    「袋小路の男」には三作品が掲載されていて、一番初めの物語、「袋小路の男」は書き方、いや主人公の語り口調がとても好きだと思った。その理由はなぜか、大抵改行があまり行われていない文字の羅列は、開くたびに時折うっとなってしまうことがある(そんなこというなら小説なんて読むな、という話であるが)が、絲山秋子さんは違う。 この改行のない文章は、主人公思考の過程を表しているのではないか、思考が思考を呼び、その思考はたしかに存在しているにもかかわらず、この主人公の身の一つとなる構成要素の一つとなる。 文字の繰り返し、会話、文字の繰り返し、会話、このリズムは、自然と私たちの頭の中に入ってきて、スッと消えて入っていく。

    0
    投稿日: 2022.05.29
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    最近、積読を積極的に消化しようキャンペーンをやっていて、この本も随分と前に古本屋で購入してあった本。 まず、袋小路の男と小田切孝の言い分。 デカダンス的な男女の何とも割り切れない十数年。2人が、世の中で名前がついている関係にならないのは、2人がどこまでも自己愛から抜け出せないエゴイストだからかなと思います。別にそれが良いとか悪いとかじゃなくて、2人はその自己愛の依存関係が心地良いのだから、そういう関係性もあるのだろうけど。臭いモノを、臭いとわかっていながら何度も嗅いでしまうような、そんな気持ちで読み進めてしまった物語でした。 私が好きだったのは、アーリオ オーリオの方。 中年独身男と姪っ子の文通のお話なのですが、中学生の伸びやかな、ともすると宇宙大の思想と、まだ何者にもなっていないただ歳を重ねた少年としての哲が、手紙を通して触れ合う様が美しくて、美しくて、夢中になって読んでしまいました。大人になれば、何かの役目や責任を引き受けなければなりません。それは社会にとって必要不可欠な尊いことなのだけど、親であるが故に子供の将来を心配するがゆえの制限は、1人の人間であるはずの親の思考そのものにも制限を与えていて、本来自由であるはずの思考の世界がどんどん枠にはまっていってしまうものなのだなぁと思いました。それが普通の大人になるということなのかもしれませんが、その不自由さに敏感でありたいし、その制限の逃げ場を常に用意しておきたい。それが私にとっては、読書であり、音楽であり、映画であると思いました。

    5
    投稿日: 2022.02.27
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    究極の片想いの話。 二人称のあなたで語られる事で、読者それぞれのあなたに重ねて物語を読むことができる。 小田切が入院して弱っている時、包み込んで抱きしめてあげたいけど、それは「してあげること」だから許されない。限りなく似ているのに、違うことだから... 彼女にしか許されないことをしてあげたいのに、今の関係が壊れることを恐れてできないもどかしさがうかがえた。

    0
    投稿日: 2022.01.21
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    家にあった本。意外や川端康成文学賞作品。 十年に及ぶ女性の片思いのの物語と思いきや、実は両思いだけどなかなか交際には発展しないもどかしい二人の距離感を、時に暖かく描いている作品。 淡々と読みながらも、ホントふとあったかい表現がうまく使われてます。直接的な表現は少ないのでぼーっと読んでると見落としてしまいそうな。 特別結論に向かうような作品ではなくゆる~い感じなので、はっきりしたエンディング好きな人はちょっと物足りないかも。 でもまぁどっちかというと女性向けでしょうか。

    0
    投稿日: 2022.01.06
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    大谷日向子の心境はさぞ辛いだろうなと思う。 読んでいる私からすれば、日向子と小田切、お互いの胸の内を読者として知っているから、これはこれでいい関係かもしれないと思うけれど、片思い中の当人にとっては、たまったもんじゃない。ただ、答えが出たら、そこで何かが終わってしまうかもしれない怖さもあり、改めて恋愛の複雑さを思い知る。 はっきりさせていないが、これは恋愛でしょう。 日向子はわかりやすいし、小田切にしても口は悪いし、駄目な部分も多々あるが、クズでもない。日向子への気遣いを持とうとしている時点で、「それだよ、あなたの~は」、と私は思ってしまうが、人の恋路に口出しは無用。だって、相手の心の内を微妙に勘違いしながらも、それでもなんとかなる人間の奥深さを感じたし、絲山さんの書く、人間心理の描写の巧みさもすごい。 それに、辛いだろうなと思う場面もあるが、それと対照的に心底楽しそうだなと思う場面もあり、そこでの幸せそうな日向子を見ていると、求めたいものがあるから、辛いことにも耐えられるのかもしれないなんて思い、そういえば遠距離恋愛していた頃、仕事終わりに、夜中車を走らせて待ち合わせしたことをふと思い出したが、なんでこんなことしてんだろうとは微塵も思わなかった。だから分かる部分もすごくあるし、私も当時の自分の世界が崩壊するのがすごく怖かった。 ちなみに、もう一つの短編「アーリオ オーリオ」は、まだ見ぬ世界の夢と不安に揺れ動く中学生の姪と、それによって違う未来が見えようとしている孤独な男との、ささやかな交流が味わい深い作品となっております。 小田切を庇うわけではないが、印象的な場面をひとつ書いて終わりにします。小田切の生き様を考えると、プロポーズのようにも聞こえてしまうが。 「ありがとう」 消え入りそうな声で日向子が言うと、小田切は、 「俺がこんなとこ来るの、最初で最後だろうな」 と言った。それから声のトーンを変えて、 「最後にしてくれよ」 と低く笑った。

    12
    投稿日: 2021.10.30
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    プラトニックながら心は差し出す。 ただ期待したような反応がないだけ。 恋愛って大部分がそういうもんじゃなかろうか。 差し出したものと同等のものが感じられる恋愛は、 相当の観察と場慣れの成果だと思ってる。私は。 (少数派なのかも。わからない。。) それでもどちらかの熱量が大きくて、その比重のデタラメさをもろともしない恋愛が、これなんだろう。 何度も傷を作って、泣いて、不貞腐れたり、腹を立てたり。そして落ち着いてホームと言うべきこの場所へまた戻る。そんな長くて辛い恋愛。 その大きな気持ちを受け取る男は、女のことを適当にしているわけではなかった。 《饒舌で自分の思うところはもちろん、関係のない仕事の話や友達の話までもしたがる。概して彼は聞き役に回ることを不快に思わなかった》 から解るように、一方通行と思われた恋愛にちゃんと応えていた。ただ、女が気づかなかった。空回り。 騒がしく空回りしながらも離れない2人を微笑ましく読みました。 小田切孝の言い分 を読んでから読み返すと全然違った話になって、再読おすすめです。

    0
    投稿日: 2021.09.17
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    高校時代から気になっていた異性とのドライ?クール?な付き合いに友達以上の関係性を感じられない主人公は連絡の途絶えた20歳の時に同じ大学の彼氏が出来るが卒業時に別れる、社会人になって東京を離れてもなんとなく恋人でもなかった筈の高校時のドライな彼を思い出す日々。。。  帰京の際に偶然に彼と出会い、何となく近くて遠いドライなお友達関係が復活する。彼はバイトをしながら小説を書き作家デビューを目指しているがある時自殺未遂をしてしまう、、、  彼の棲む家の場所は袋小路だが執筆に悩む彼も袋小路に陥って居りそんなドライな彼に恋心を抱く主人公もまた袋小路に捕まった女なのだ。  二人ともリスの様にヒマワリの種を食べてグルグル同じ所を走り続けるだろうこの後も、、、  著者は私の大好きな作家の一人でその作品はせつない恋がテーマとなったものが多く、車・タバコ・アルコール・小説・音楽を小道具として遠距離・事故・怪我・友人等が効果として主人公を際立たせ男女の切なくもほんのり暖かい物語を創り上げてます。  

    0
    投稿日: 2021.04.17
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    「袋小路の男」「小田切孝の言い分」 今までこういう話はやきもきしたりじれったいなあと思いながら読んで、最後は(軽い言い方になるけど)こういう恋愛にいい意味で酔って終わることが多かったけどこの作品だとなぜか穏やかな見守るような気持ちで見れたし、爽やかさすら感じる読後感だった かっこいい小田切からかっこ悪い小田切への変化が全然嫌じゃなく、まさに「嫌いも含めて好き」というやつだった 「アーリオ オーリオ」も素敵だった

    1
    投稿日: 2020.10.19
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    表題作「袋小路の男」は、高校のときに好きになった先輩の小田切孝を見つめつづける大谷日向子の物語です。一方「小田切孝の言い分」は、二人の関係を小田切の視点を中心に、三人称の文体でつづっています。 ある意味では、著者の文章は小田切と日向子の自意識を容赦なく抉っているともいえるのですが、突き放した視点でえがきつつも人間の哀れさのようなものを教えてくれるといったまとめ方には収まらない、不思議な読後感がのこりました。けっして温かいまなざしではないものの、どうしようもない二人をそのままに受け止めるといった感じでしょうか。 「アーリオ オーリオ」は、松尾哲とその姪の美由との手紙のやりとりを中心にした物語です。こちらは二人の心温まる交流がストレートにえがかれている、ロマンティックな内容でした。

    0
    投稿日: 2020.09.03
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    ばかだな、と言われるのが好きだと小田切は知っていて、それで毎回のようにばかだな、と言う。何度言われても日向子は快さを感じた。いつもきっちりしていて虚勢を張っている自分が、ばかだな、という言葉の前で角砂糖が紅茶に溶けるようにほろほろと崩れて、甘い気持ちになる。

    0
    投稿日: 2020.07.31
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    このレビューはネタバレを含みます。

    淡々とした文章だけど、降り積もって味わいが出てくる感じですごくよかった。 日向子は「かっこいい」の額縁を作って抱えてそれ越しに小田切を見ている感じ。一途と言えば一途だけど思い込みもあるし流されやすいし、平気で人んちの物パクったりする人間性。小田切は小田切でそんなかっこよくない、日向子以上にいい加減なダメ人間ではある。 あくまで日向子の額縁が前提で、額縁越しの関係だから続いてる関係なのは、二人とも薄々分かってる。日向子はあんなにしたがってるのに、そんな魔法が解けるようなことはお互い絶対しないという……。 長い年月を経て額縁が透明になってしまっても、それを掲げ続ける日向子の覚悟が好き。本当はかっこ悪いところも現実も全部見えてるのに、小田切さんは絶対大丈夫って確信する覚悟。 覚悟じゃなくて残った選択肢がそれしかないだけじゃないか、ということかもしれないけど、それにしたってきちんと自分の手で選び取った、というのが最後の決断で表明されているのだと思う。 そして最後の2行、小田切が自分の表明を受け入れてくれたことを日向子がそっと悟るのがあまりに良かった。関係は変化していないようで、決定的になったのだと感じる。「あなたにとって私って何なんですか」っていう自分の問いに、自分で答えを出したんだね。 アーリオ オーリオもロマンチックでよかったな、星と目に見えないエネルギー、終わりの話。ちょっとづつ距離を詰めてくる無邪気な美由がかわいいし、その純粋な終わりへの恐怖にせつなくなる。 「でもアーリオ オーリオがあるから大丈夫なのです」 彼女はそう最初に書いていた。そう、大丈夫なんだ、自分がいなくなってもそこに世界があるっていうのは、救いじゃないかなと思うのだけど。

    1
    投稿日: 2020.07.24
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    「袋小路の男」というこの本の中に収めてある三つの小説のうち、「袋小路の男」「小田切孝の言い分」という二つの小説は、いわゆる恋愛小説だが、ちっとも恋愛小説ではない。  同じ関係を男の側と女の側から描いて、二つの話にした感じだが、変な男と困った女の奇妙な関係が淡々と続くだけだ。まぁ、たとえば、高校生向けとはいえない。  三つめの「アーリオ オーリオ」という小説は中三の少女と叔父さんの話。叔父さんと宇宙の話なんかしているのは受験勉強の邪魔だとしかられた少女が叔父さんに出した最後の手紙には「私が死んでしまっても、世界はこのままなんでしょうか。宇宙もずっとあるんでしょうか。」と書かれている。  現実の生活の「終わり」に気づくと、現実は揺らぎ始める。自分がいつどこで生きているのかなんて、わかりきっていることだったのに。何万光年という宇宙の時間の、一体どこに私たちはさまよっているのだろう。そんな問いに、ふと取り付かれて小説は終わる。

    1
    投稿日: 2019.02.22
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    人の数だけ、絆の形 や 独特の距離感 があっていいんだと、肯定してくれる 女と男 双方の視点から書いているのがいい

    0
    投稿日: 2019.01.25
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    以前から読んでみたかった絲山秋子さん! 初読みです。 ただ…芥川賞受賞作家は…合う合わないがあるし…という事でたまたま出会った約170頁の薄い短編集のこちらを初読みに選びました。 #袋小路の男 #小田切孝の言い分 #アーリオオーリオ 3篇収録。 「袋小路の男」は女性目線の一人称で語られ、「小田切孝の言い分」では袋小路の男=小田切孝の目線も入り、三人称で語られている。 すると、この二作、同じ男女の関係を描いているのに、微妙にニュアンスが変わってくるんですよね。 この二作品は、うん、ちょっと癖になりそうな…面白い余韻が残りました。 でもでも今回声を大にして推したいのは! 「アーリオオーリオ」 この短編! 久しぶりに読みながらきたっ!きたっ!ってゾクゾクする感覚! いや、内容自体は簡単にいうと淡々とした叔父と姪っ子の交流の話なんです。 どこが?どういう風に?と上手く説明できないけれど… でも、でも、素晴らしかったのです〜✧‧˚ 傑作といってもいいのでは? 私の中では傑作決定ですよ✧‧˚ 30分もあれば読める作品なので、絲山秋子さん、興味あるけど未読…の方はぜひ! オススメいたします。 ただ純文学なので、読書にエンタメ性を求める方はご注意を!

    1
    投稿日: 2019.01.01
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    新聞の読書コーナーでその存在を知り、「ピース又吉がお勧めするスゴ本25選」に入っていたので買うに至った一冊。 二人の微妙な距離感を描いた三つの短編。同じ男女をアングルを変えて描いた『袋小路の男』と『小田切孝の言い分』は、恋人とは呼べない男と女の微妙な距離感が印象的。仕草の意味もクセも知り、一緒にいれば無言でもいい、でも身体を合わせるどころか手をつないだことさえない。ややもすれば辛くて苦しいものになりそうな二人の関係を淡々と描いているのに、なぜか明るい空気さえ漂って、こんな関係もアリだよね、と思わせてしまう。 『アーリオ オーリオ』は、清掃工場に勤める男と姪の中学生との手紙のやり取り。特に40代男子はこの微妙な切なさにやられる可能性大。

    4
    投稿日: 2018.11.18
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    小田切は著者の理想の男性像で、描かれた関係は著者の理想のあり方なのかもしれない。路地、バー。薄暗さと湿り気と、タバコと少しかびたにおい、昭和の終わりを感じながら読んだ。

    0
    投稿日: 2018.10.18
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    「ぬるい毒」を読んだ事に伴って、その晩に再読 こちらの方が心地よい この本の紹介文は違うと思う うっすら狂気が漂う感じがないと。

    1
    投稿日: 2018.10.05
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    絲山秋子さん「袋小路の男」読了。微妙な距離を持つ男女の物語が2篇。理系のおじさんと中学生の姪による物語「アーリオ オーリオ」の計3篇からなる。一言で言うと男女の何気ない日常が描かれている作品。大きな起伏もなく、ゆっくりと物語は進んでいく。個人的に「袋小路の男」より「アーリオ オーリオ」の方が良かった。清掃工場に勤め、毎日パスタばかり食べているおじさんと中学生の美由ちゃんによる文通が微笑ましい。星座、恋愛、動物の話題など。ラストもほっこりする終わり方で温かい余韻が残りました♪

    0
    投稿日: 2018.07.14
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    切ない恋の話、かと思いきやそうでもなかった。 互いを分かっているようで分かってなくて、でも一喜一憂したりして、もどかしいようなイライラするような。

    0
    投稿日: 2018.01.17
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    ■指一本触れないまま「あなた」を想い続けた 高校の先輩、小田切孝に出会ったその時から、大谷日向子の思いは募っていった。大学に進学して、社会人になっても、指さえ触れることもなく、ただ思い続けた12年。それでも日向子の気持ちが、離れることはなかった。川端康成文学賞を受賞した表題作の他、「小田切孝の言い分」「アーリオ オーリオ」を収録。

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    投稿日: 2017.12.18
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    このレビューはネタバレを含みます。

    人を好きになるって理屈じゃない! 袋小路に住んでいる小田切を好きな日向子。 小田切は日向子の名前を直ぐに忘れるし逢うといつも説教するし約束も平気ですっぽかすし…なんでこんな男が好きなのか最初は全く理解できなかった。 でも物語が進み小田切なりの言い分を読むと、他の人には決して入り込めない二人なりのバランスがあるのだと分かった。 この二人が持つ絶妙な距離感は二人にしか分からないだろう。 離れてもいけないしくっつきすぎてもいけない。 そのさじ加減は二人以外ではあり得ない。 これって頭で考えるのではなく、心や肌で感じる距離感なんだろうな…。 ラストの短編も伯父と姪のもどかしい距離の取り方に唸った。 リアルタイムのメールではなく、敢えてアナログな手紙でのやり取りは、送ってから届くまで3日間のタイムラグがある。 この3日間の時差が二人の間にある淡くて穏やかな優しい雰囲気を醸し出している。 今回の短編集を通して、人と人との距離感についてしみじみ考えさせられた。正解なんて他の誰も知りようがない。 絲山さんの作品は相変わらず読後の余韻がたまらなくいい。

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    投稿日: 2017.10.13
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     表題作の「袋小路の男」とそれに関連する「小田切孝の言い分」も普通に好きだけど、もう一つの短編「アーリオ オーリオ」がとても好き。いや、この本の話はみんな好き。  私が惹かれる本は、登場人物の絶妙な距離感が描かれている本だと少しずつ気が付いた。表題作の話は恋人でもないし家族でもない。近くも遠くもない。でも必要とする存在。0か100かでないと成立してはいけないような世の中で、77くらいの距離感を保ってもいいんじゃないかな?ってふと感じた。すごく羨ましかった。  「アーリオ オーリオ」もそれに近い。姪が徐々に大人になり、現実から自身の世界を作り上げ始めるところの感じや、そこに一種のあこがれを抱いたり、おじさんと男の狭間で付き合っている哲の感じがすごく好き。  私もこういう間柄の人がほしいと思った。

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    投稿日: 2017.08.06
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    この人のかく文章が好きだなぁ。 20年近く片思いをし続けている女。 片や男の方は何だか飄々としていて、付かず離れずの二人。 もうさ、くっ付いてしまえよ!と突っ込みたくなる。 でも片思いがやっぱり一番いい気がする。

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    投稿日: 2017.07.29
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    表題作を読んでいたら、昔のことを思い出してむず痒い気分になってしまった。好きなだけでは一緒になれないし、一緒になっても幸せになれるとは限らない。なんともむず痒い。

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    投稿日: 2017.07.27
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    何回も読んでる。内容もわかってる。たまに会う友達みたいな感じ。『櫛』の読みが『くし』だと知ったのは、この話のおかげ。装丁がよくて、立ち読みしてたら『櫛』が出てきて、何て読むんですか?って本屋のおじさんに訊いたら、『くし』って教えてくれた。20歳から23歳のあいだのいつか。 何も変わらん。見た目と住所は変わったし、知ってる漢字とかちょっとした知識は増えたけど、もともとのもんは変わらんから、成長はしてない。頭がよくなりたいと思ったのは成人してから。まったくならんかった。今はそういうことは諦めて、おもしろおかしくやってる。楽しいけど、心にほんのちいさな異物があって、それがたまに意識されて、途方に暮れたりする。遠くへ行きたくなる。 匿名化された言葉は実に素直だ。誰にも話さないことがらが、誰にもしない話し方で、誰に宛てるわけでもなくぽろぽろ零れる。 その日は朝から雨だった。傘を持たない沼田は、自宅マンションを出、近所のローソンの傘立てから一本、黒の傘を抜いて歩き去ると、国道を跨ぐ歩道橋の真ん中まで来、立ち止まった。視線の先には電光掲示板があり、赤の光で、『光化学スモッグ注意報発令中』とある。上下線ともに車列で埋まり、排気ガスで脳と身体をやられた小学生の一団が、沼田の背後を通り過ぎていく。沼田が見遣ると、ひとりの男児が、沼田を試すようにして流行りのギャグを披露した。沼田は笑みを浮かべ、おもしろいねと返した。ちょうどそのタイミングで、沼田が上がってきた階段とは逆の階段を上がってきた中年の女が、不信感を露わにした無遠慮な視線を沼田に向けていた。沼田は何て不躾な女だと思ったが、当然ながら何も言わなかった。今の時代、雨の歩道橋に立ち小学生に話しかける中年の男は、不審者でしかないのだ。女が通り過ぎ、沼田が小学生の後方から歩き出すと、女の声が背中に飛んできた。 「沼田くん?」 沼田は声に応じることなく、歩道橋を降りていった。雨は止んでいた。時計を視て、一時間以上歩道橋に立っていたことに気付いた。沼田は傘を捨て、晴れ間が広がり始めた空を仰ぎ、今日はたいへんなデモ日和だなと思った。首都ではいろいろなことが起きており、政治だの人権だの文化だのと、沼田には何ら興味のないことで盛り上がる輩が蠢いている。ここは首都から西に下った地方都市。日常はどちらでもよいことで埋め尽くされている。食って働いて飲んで寝て、またあした。面倒はぜーんぶ首都まかせ。沼田は笑いながら、先ほどギャグを披露した男児のランドセルを思い切り蹴った。その男児は俺で、35歳となった現在もふとした拍子に沼田を思い出し、アレはなんだったのかと考えたりする。あの中年男に沼田と名付けたのは俺だが、確かに沼田は存在していて、時おり自分が、沼田を生きているような錯覚に囚われることがある。 嘘だ。嘘。これもあれも全部出まかせ。でも全部本当だとしても、人間の生涯に大した違いなどないということを、ミシェル・フーコーの著作が物語っている。俺はミシェル・フーコーが言うことを何一つ理解できず、ソシュールの言うことも、デカルトの言うことも、ウィトゲンシュタインの言うことも、何一つ理解できなかった。解らない事柄に於いて、嘘も本当もない。人間なんて、人生なんて、よく解らない。ただ一つだけ言えるのは、何事もビビってちゃダメだ。ビビっていたら、沼田になるぞ!

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    投稿日: 2017.06.28
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    それは袋小路の男でも、隣町の男でも、地下室の男でも、バーで出合った男でも何でもよかった。 心が震えてしまうほどの片思いをしてしまった相手なら誰でも。 学生の頃から話がスタートして十年以上。そしてそれは続く。まるでMだ。辛すぎる。しかし、幸せだ。 こんな2人を「袋小路の男」と「小田切孝の言い分」という2つの短編で書き上げている。 一気に読んだよ。ゆっくり読んだらその分揺さぶられ過ぎるからね。 さっと読んで結末を見てから、再読するに限ります。美味しいところを探すんです。きついところを探すんです。苦しいところも味わうんです。 あ~これこれ・・・こんな事するよな~。しちゃうよな~。あ~やっちゃうよな~~。 綺麗ではないし人間らしさが満載。2人の距離感が昭和末期から平成初期な感じだ。 1つの話をわざわざ2編に分けて書いたのが絲山秋子的な表現なのでしょうか。最初の「袋小路の男」では片思いする私からのアプローチであり2人の名前さえ出てこない。しかし「小田切孝の言い分」ではみんなに名前があり、家族があり、生活があり小田切孝からの小説である。端折った部分はあっても2編が重なり合わず微妙な距離を取りつつ話が進む。 男的な女的な部分もあるのではと思うけど、なんかね、それだけではない現実的な曖昧さを感じてしまうのです。あ~現実ってそんな感じ。言葉にできない現実感をうまくうまく表現している。 いつも絲山秋子の小説で揺さぶられるのは其処かもだな~~参った! こんなに揺れてるときに冷静に書評がかけるわけないか。。。(; ̄ェ ̄)

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    投稿日: 2017.05.08
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    つわり後初めて読み終わった本。 つわり中は読書をする体力がなくて、これの前に読んだ町田康は病院の待合室とかでしか読めんかったししんどかったし、それ以来全然読書ができてなかったのよ。 その間何をしていたのかというと、2ちゃんねるの生活系のまとめサイトを漁って、ひとんちの修羅場を読んで気を紛らわしてました。あはは。 つわりが和らいでからは、楽に読めそうな本から読もうと思ってとりあえずこれにした。 表題作はまだましやったけど、にこめがぜんぜんだめやった。この内容小説でやる必要あるか?完全に蛇足やわ。 一番最後のおっさんと姪のは面白かったので辛うじてほしさんこ。手紙でやりとりええやなーい。

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    投稿日: 2017.02.14
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    久々に読んだ絲山秋子さんの小説。 この、想像力を掻き立てられるタイトルに惹かれた。 2人の人物の間の距離感が心地良いようなもどかしいような、そんな3つの短編集。 高校の先輩である小田切孝に出逢ったその時から、大谷日向子の想いは募っていった。 大学に進学し、社会人になっても指さえ触れることもなく、微妙な距離にある間柄のまま、ただ想い続けた12年。それでも日向子の気持ちが離れることはなかった。 表題作の「袋小路の男」と続く「小田切孝の言い分」はまったく同じ2人が主人公の物語。 表題作は“あなた”と“私”で綴られていて登場人物の名前は一切出てこず、「小田切孝の言い分」で2人の具体名がようやく出てくるという、面白いつくり。 表題作は日向子目線で綴られているから、あくまで日向子が思うことと彼女から見た小田切の姿が描かれていて、小田切は身勝手で自立心もあまり無いように見えるのだけど、どこか憎めない部分がある。 そして引き続くもう1つの物語は日向子と小田切が交互に語り部になっていて、小田切が思っていることや感じていることを知り、さらに憎めない感が高まる。 ものすごく、巧妙なつくりだわ、と思う。小田切を嫌いになれない…この小説の日向子の心境になってしまう。 キスもセックスもないどころか、まともに触れあったこともないまま、それでも会うことはゆるく続いていった12年。 その間に女は現実的な仕事を得たけれど、男は物書きというものを、夢と呼んで良いのかも分からないくらいの温度で追い続けている。 未来がうっすら見えるような見えないような、というところで、どこにも着地しないままのラストが素晴らしい。結果が出ることばかりが、物語のすべてではないと再確認。 そしてラストシーンで小田切のことが益々可愛くなるという…。 3つ目の「アーリオ オーリオ」は、40歳間近の役所勤めの男(物語内では清掃工場に配属されている)が、中学3年の姪をサンシャインのプラネタリウムに連れて行ったことがきっかけで、星の世界を交えての文通を始める、という物語。 LINEでもなくメールでもなく手紙という、書いて出してから相手が読むまで少なくとも2~3日のタイムラグがある交流の仕方が、光が届くまでタイムラグがある星とリンクする。 思春期真っ盛りの美由が叔父の哲に対して手紙で語ることは、おそらく両親には話してはいないこと。親ならばごちゃごちゃ口出しすることも、哲は静かに受け止めてくれる。 恋ではないけれど淡い恋にも近いような関係が、星の世界とも相まってとても美しい。 遠すぎず近すぎず。現実にもたまにあるこういう関係を保つのは、どちらかが踏み込むよりも、実は困難だったりする。と、思う。

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    投稿日: 2017.01.19
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    このレビューはネタバレを含みます。

    煮え切らない男ばかりを集めた短編集とでもいうべきだろうか。 表題作「袋小路の男」は、私はあなたに思いを寄せているが、あなたはそっけない。適度な距離を保っている関係を描いている。 ほんの少し、島本理生さんの「夏の裁断」を思い出した。 「小田切孝の言い分」も、小田切に片思いしている日向子視点で描いており、少しも振り向いてくれない切なさを感じる作品。 ラストの「アーリオ オーリオ」は先の二作と違い、姪っ子美由と手紙での交流を優しいタッチで描いている。こちらも主人公哲の回想シーンに煮え切らない場面がある。 これといった場面があるわけでもないが、最後まで読めてしまう。絲山ワールドが展開されており、楽しめました。

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    投稿日: 2016.11.09
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    かっこいい小説でした。 絲山秋子さんの小説初めて読んだのは「逃亡くそたわけ」 でした。これもしびれましたが、この片想い小説もセンスが良くて心に響きました。

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    投稿日: 2016.11.09
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    べったりしたつき合いが極端に苦手な人にも夢を見させてくれるいい話だった。『袋小路の男』では献身的で一歩引いていて一途に尽くすけれど、2人の関係はどこか一方的な感じがする。双方向性が欠けてるよなあ、純愛とは一方的なものでしかあり得ないのだろうか、いくら純愛に見えても双方向性がないと関係は発展しないし無意味だよなあ、などと思っていた。けれど続きの『小田切孝の言い分』では、ささいなやりとりのうちに知らず知らず双方向的に関係が発展し、積み重なっていたことが明らかになっていく。そして各々辿り着いた最適な距離感の答えが、最終的に2人の間でぴたりと一致する。そこに感動を覚えた。美しい関係だなと思う。婚姻どころか同居もしない、これも現代ではおかしくない結婚観の一つなのだろう。

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    投稿日: 2016.10.13
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    絲山秋子さんが描く、男女の微妙な距離感が好きだ。「沖で待つ」を初めて読んだときと同じように、今回もじわじわと暖かい気持ちになった。

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    投稿日: 2016.09.25
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    読書日記作家 宮下奈都(1) 『袋小路の男』血が沸き肉躍る強烈な感覚 2016/9/8付日本経済新聞 夕刊  絲山秋子の小説が好きで、デビュー作を「文学界」掲載時に読んで以来、いつも新作を楽しみにしている。何年かに一度ずつ、私の中のベスト絲山は更新され、もしも一作挙げよといわれたらこれ、とその理由も考えながら選ぶのを趣味としてきた。  たいていの本のよさを紹介するとき、どこがどうして面白いのか理由をつけるのはそう難しいことではない。しかし、絲山小説に限っては、それがとても難しい。なぜなら、自分の中の気持ちがその都度変化するからだ。読むたびに反応する部分が変わる。この理由を、この魅力を、どう伝えればいいのかわからない。  さて、更新され続けるベスト絲山ではあるが、今回、広くおすすめする一冊を選ぼうとしたら、10年以上も前の『袋小路の男』(講談社文庫)になったことに自分でも驚いた。この本を読んで、血が沸き肉が躍った、強烈な感覚を今も忘れない。 ――あなたが私の車に乗ると、とてもいい匂いがした。嗅いでいることが恥ずかしくて煙草(たばこ)をひっきりなしに吸った。  この文章だけで私のひよわな胸は撃ち抜かれたのだが、続く一節には身(み)悶(もだ)えした。恋の話だ。指一本触れないままの12年間の恋の話。それがこれほど響くとは。  私の手元にあるのはサイン本である。「群像」掲載時に拙くも熱い感想文を送ったら、著者のホームページに掲載される栄誉に与(あずか)った。副賞が為書き入りのサイン本だった。私の大切な思い出、ひそかな自慢のひとつだ。  みやした・なつ 1967年福井県生まれ。作家。上智大卒。2016年『羊と鋼の森』で本屋大賞。

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    投稿日: 2016.09.17
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    「袋小路の男」 私とあなたの関係。距離。 ・ぺんぺん草がすいすいと二本はえていた。あれが、あなたの原点だと私は決めた。パンツからはみ出た陰毛みたいだと友達は笑った。 ・死んだ魚にも似ていた。 ・「二十歳になったらセックスしても犯罪にならないだぜ、機会があったらやりましょう」 ・どこか知らない国に咲くグロテスクな花のようだった。 ・ベランダから飛び降りた ・カッコ悪い。カッコ悪すぎる。あなたが持っている最後の担保はカッコ良さなのに、そんなのはひどい、裏切りだ。 ・あなたのドライでクールなイメージ、あなたの付加価値はセックスをすれば消えてしまうかもしれない。 ……つまりは少女漫画的恋。桜庭和樹や羽海野チカの描きそうな。 これを、 「小田切孝の言い分」 で、ひっくり返していく。「私」→大谷日向子。 彼は決して最高のカッコ良さではない。 ネットでエロ画像を集めもすれば執筆に悩んだりもする。 セックスすれば消えてしまう幻想を抱き続けるのには、距離が必要なのだ。 ここで、「あなたを袋小路に追い詰めるようなことは一切しない。/静かな気持ちだ。」という前作の結末が二重に響く。 いい連作だ。 「アーリオ オーリオ」 は、叔父と姪の手紙の遣り取り。 何よりも姪の溌溂さ、成長の伸びしろが、胸を打つ。 「今日、私は新しい星を作りました。私だけにしか見えない星です。たったの3光日の距離にあります。(略)でもアーリオ オーリオがあるから大丈夫なのです」 この「大丈夫なのです」が実に素敵だ。

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    投稿日: 2016.08.27
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    作者名と受賞した文学賞名だけで、小難しい純文学と思い込んでいた。表題作は、まるでラブレター。「あなた」と綴るように語りかけるお話を、記憶する限り初めて読んだ心地がしました。 自分が嫌いにならない限り、いつまでも断ち切れない。つかず、離れずの関係は、時の空白を挟みながらも、綿々と感情を伸ばし続ける。どひゃー。

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    投稿日: 2016.07.27
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    最初の1、2ページを読んだだけで片思いの相手のろくでもなさとそれでも魅力的であることがわかってしまいます。 付き合ってもいないし、先にも進めず、戻れもしない、今更ほかの人を好きになれないというまさに袋小路のような片思い。永遠に交わらないまま年を取っていってしまう。考えようによってはホラーのように怖い話かも知れません。 江國香織の「ウエハースの椅子」の結末を思い出しました。 「アーリオ・オーリオ」もいい感じでした。眼前に無限の選択肢が広がる中学生の姪と相通じるものがありながらも、女性と交際しても未来を決定する言葉は言えない、日常の細かい習慣(パスタを作るとか)を変えることもできない、中年期の主人公の閉塞感がなんとなくわかる気がしました。

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    投稿日: 2016.07.26
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    「ともかく、俺とおまえは喧嘩くらいしかやることねえんだから」「しっかり喧嘩して、ちゃんと仲直りして仲良くやろうな」

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    投稿日: 2016.07.19
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    何年振りかで再読 前に読んだときよりこの2人の関係にもやもやしないのは自分がオトナになったからなのか。 単なる自分勝手に女を振り回すいけすかないオトコ、としか思えなかったのが、こんなに長い時間一人のオンナを片思いさせ続けるのはある意味すごいことだよな、と。 アーリオオーリオはやっぱり好きだ。この3光日のもどかしさと待ち遠しさがとてもとても素敵だ。

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    投稿日: 2016.06.20
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    ブックピックで気になった一文があったけど迷って別な本を購入した後にググってみたら自分にぴったりではないかと思い早速図書館で予約。文庫で手元に置きたいな。体の関係がないまま付かず離れず…いっそのことセックスして終わりにしたいと思ったり…終わらないでと思ったり…終わるのが怖いから触れるけど触らない。関係を壊したくないけど進みたい…みたいな、これは、恋愛の一番辛くて最高に楽しい部分ではないか!彼の家の近くにマンションを買った主人公、今後は、いかに!?読み手の想像に任せる的なラスト(ややハッピー)もたまらない。

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    投稿日: 2016.06.08
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     表題作と二つ目のお話は、恋人同士ではないけれど好き合ってないわけでもない男女の関係が、人肌の温度で書かれていて良かった。女性からしたらのらりくらりと交わしてばかりの小田切は確かにろくでもないのかもしれないけど、私が日向子でもきっとあのままの距離を保ったまま付き合うだろうと思ってしまった。  三つ目の「アーリオ オーリオ」は王道のラブストーリーではないけれどむしろときめいた。著しく変化する中学生の姪に少し触発された哲が前向きになれるラストが印象的。

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    投稿日: 2015.12.08
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    小田切が駄目男すぎる。 小説家になっても救われない小田切は可哀相だった。 小田切を諦めない日向子は小田切に片想いしているなら、他の男と付き合うなと思った。

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    投稿日: 2015.10.14
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    2005年本屋大賞4位 連作短編と他1つ。 好きになってしまった高校の先輩に女として振り向いてもらえず、指一本触れたことのない12年間の距離間を描いた話とその先輩側からの話、叔父さんと中学三年生の姪っ子とが星を通じての交流を描いた話の3つ。 女性の性欲が描かれているこの手の話は、男に入ってくるなと言われているようで、個人的にちょっと苦手。 でも、その辺の理解がついていけなくても最後まで一気に読んでしまったw 内容が全くリンクしていない最後の話と「距離感」で合わせているのかぁと納得するも、冒頭の引用とはどうやってリンクさせているのかわからんかったorz

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    投稿日: 2015.06.28
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    「女に対してすることは三つしかない、女を愛するか、  女のために苦しむか、女を文学に変えてしまうか。」 本書の冒頭に引用されていた言葉の一部である。 本書は3つの短編からなっている。 「私」が「あなた」に、続きが見えるわけでも 終わりが見えるわけでもない、正に袋小路に迷いこんでしまったような 激しさを内に秘めた恋心を抱くさまを描いた表題作。 それを三人称の視点でとらえなおした「小田切孝の言い分」。 そして、中学3年生の姪と、そのおじさんとの手紙での やりとりを描いた「アーリオ オーリオ」。 どの話も嫌いじゃないけれど、乾いた文体や 余韻を容赦なく拭い去るような現実的な表現が わたしの好みには合わなかったかな。 本書に出てくるどの男も、女(の子)を 文学という架空の世界におしこめようとすることで その不可解さやある種の恐れから、逃れようとしている。 本当に袋小路に迷いこんでいるのは、この世界の中では いつだって男だった。

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    投稿日: 2015.04.13
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    主人公が大好き。2人の距離感も、最初に読んだ時はもどかしかったが、人間関係はすべからく「友達」や「夫婦」や「恋人」というような名前をつけられないオリジナルなものだし、それを物語を破綻させずにひたすら描いている。僕らはもっと自由でいい。

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    投稿日: 2015.04.01
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    本屋大賞2004年度4位。2編目、読み終えたときはあれオチは?って思うけどあとからジワジワくる。最初のほうはそうでもなかったけど、途中からどんどん文書が研ぎ澄まされていくような感じがした。全編を漂うなんともいえないもの悲しさがクセになりそう。

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    投稿日: 2014.12.19
  • 不器用な人間関係を描いた三篇

    12年間想いを寄せている相手と、つかず離れずの関係を続けている男女の物語。表題作が女視点、『小田切孝の言い分』が男視点と、それぞれの視点で読むことができます。 最初はダメ男に引っかかる女の気持ちがわからなかったけど、なんだかんだで釣り合いが取れているのかも? こういう関係を「いいな」と思うか、全く共感できずに終わるか、真っ二つに分かれそうな作品です。 『アーリオ・オーリオ』は、清掃工場で働く40男の話。ある日、中学生の姪をプラネタリウムに連れて行ったことがきっかけで、2人の文通が始まりますが・・・ ちょっとせつない終わり方にじんと来ました。

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    投稿日: 2014.10.18
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    読んでいる時の雰囲気を楽しむ作品だなと感じました。 「袋小路の男」は読んでいて(良い意味で)気持ち悪くなりましたし、「アーリオオーリオ」はほっこりしました。 ただ個人的には「後は読者の想像に任せます」的な終わり方より、ちゃんと完結するストーリーが好きなのでそういう意味では少し物足りなく感じました。 アーリオオーリオの二人がとても好きなので、この後どうなったのかすごく気になります。

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    投稿日: 2014.10.10
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    恋愛小説。小田切に振り向いてもらえなくてもずっと思い続けている日向子。切ない。でも片思いだからこそ、べったりの距離感でないからこそ、持続するのかもしれない。

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    投稿日: 2014.09.21
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    大好きな人と、ずーっと、つかず離れず、そばにいる。それって、とっても幸せです。 行間を読む、そんな小説。

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    投稿日: 2014.08.28
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    【本の内容】 高校の先輩、小田切孝に出会ったその時から、大谷日向子の思いは募っていった。 大学に進学して、社会人 になっても、指さえ触れることもなく、ただ思い続けた12年。 それでも日向子の気持ちが、離れることは なかった。 川端康成文学賞を受賞した表題作の他、「小田切孝の言い分」「アーリオ オーリオ」を収録。 [ 目次 ] [ POP ] つかず、離れず。 この距離感がすごくリアルに表現されていた。 好きな人に触れることさえ出来ないでいる日向子は、自分の想いをもてあましている。 自室から飛び降りて骨折して入院している小田切を病室で見ながら「私はこの人にとってなんなんだろう。自分のことをのっぺらぼうに感じるのはそういうときだ」という本音が書かれている。 目の前に居る、それなのに近づけない苦しさで浮気をしたり、二人の関係について自問したり、ぐるぐる考えが巡っている。 他人から見るとじれったいこと極まりない二人なのだが、一人の人を何年も一途に片思いできることは奇跡に近いとも思える。 純愛とはこんなにもみじめで地味なのか?! 日向子が友人に別の男はいないのか?と問われて口にした「(小田切とは)歴史がある」の言葉が胃のあたりでぐっと締め付けてくる。 恋ってなんだ? 好きってなんだ? 私の頭も袋小路に迷いこんでしまった。 [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]

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    投稿日: 2014.08.23
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    何度ページを開いても、どんどん読んでしまう本です。 絲山さんの独特の空気感は大好きなのですが、その絲山作品の中でも、この本は最高峰のうちの一つだと思います。 ベタベタな恋愛小説とは違う、よりリアルな距離感がなんとも言えず、言葉の一つ一つがとても洗練されています。 何度でも読み返したい本です。

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    投稿日: 2014.08.18
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    付かず離れず、時に離れ、時に近づき、でも交わらない、ゆらゆらした線のような人間関係。失いたくない、拠り所のようなお互い。人と人のつながり方って、面白いと思う。

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    投稿日: 2014.08.13
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    話しかけたいけど話しかけられない 話しかけられても あんまり深く質問してしまうのは 恐ろしい 尊敬 憧れ 畏怖 敬愛 信じて疑わないこと そして 少しずつ知ることのできる 驚き と 喜び が まるで うすい層のように重なり続け 固まっていく 18年 まだまだ続くのか それとも。。 彼女と彼の歴史の地層の たった一部を見た。 もう1つのお話は 現在と未来と 星の話。 対になっているかのような。 2011.11.17

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    投稿日: 2014.06.20
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    読み終わって、すぐ読み返し。 12年の片思い―――付かず離れず、微妙な距離感。破局が無ければ、幸せな結末もない。けれども12年間、彼女はきっと幸せだし、これからもっと幸せになると思う。俯瞰すると切なく、狂おしい偏愛。倒錯愛。もう一方では静謐で美しい純愛かなと。それって表裏一体何かな。いやいや、とにもかくにも良かったということ。

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    投稿日: 2014.05.20
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    さすがの川端康成賞受賞作品、短編ながらインパクトがあった。とはいえ本当にさくっと電車に乗っている間に読めてしまうくらい軽い。絲山秋子さんの文章は重くなく読んでいて、凄くゆったりとした気持ちになれる。お上手という感じです。3編とも普通の恋愛や男女関係の話ではないのに、おもくなく世の中にはこんな話は沢山あるんだよ、みんな力を抜いて生きようよと言われている気になった。いい短編集でした。

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    投稿日: 2014.04.27
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    3本の短編。 友達以上恋人未満の関係。 その関係が長すぎてそれ以上に持っていきたいかどうかも本人たちも分からなくなってしまった。 姪と叔父が手紙で文通する。 メールではなく、手紙である事が新鮮だった。 どの短編も日常生活にスポットを当てたものだった。 特筆すべきことは無いが、何か心に残った。

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    投稿日: 2014.02.08
  • ちょっと怖い

    一歩間違うとというかこのままでも,今はストーカーと呼ぶんでしょうね.純粋な気持ちといえばその通りですが,行動にでてしまっていて,相手に受け入れられていない時点で. 共感できる部分は見いだせませんでした.

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    投稿日: 2013.12.08
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    淡々と降り募るような思い。 指さえ触れる事もなく、ただ思い続ける12年という歳月。 主人公のそんな恋愛模様を描いたお話でした^^ もどかしい気持ちを掻き立てられる物語でしたね(=▽=) 最後の最後で、少し歩み寄った感じで物語が終わるので・・・その先は どうなったか、読者が想像する形なのでしょうかね? うーん。友達以上恋人未満のまま行きそう(=▽=; 同時収録されている「アーリオ オーリオ」素敵なお話でした(=▽=) 「星が放つ光が地球に届いて私達の目に届くには、実はタイムラグがある」 という事と、 「手紙が出してから到着するまでのタイムラグ」を重ねあわせて語られる話が なんとも心温かくなるエピソードなのです。「光が・・・手紙が届く頃には 星や手紙を書いた人は存在しているかどうかわからないものね」なんて。 なんか不思議な空気が素敵でした(=▽=)

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    投稿日: 2013.11.29
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    「袋小路の男」だけでも満足だけれど,「小田切孝の言い分」があってくれてさらにこの世界が好きになれた。

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    投稿日: 2013.11.01
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    このレビューはネタバレを含みます。

    この作家さんの良さを思い出して、 積読したこの作家さんの本を新しく読み、 やっぱりいいな。と思って、忘れて、 またふと、この作家さんの良さを思い出す。 心の端に小さく引っかかってくれる 作品が多い。 短編3つ。 なんだか今回のは登場人物の 魅力を感じなかった。 だけどこれだけ読ませるのは凄い。

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    投稿日: 2013.08.07
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    「袋小路の男」 「小田切孝の言い分」 「アーリオ オーリオ」 の3篇を収録。 (うち、ふたつは連作短編) 体に悪いと知りつつも、 すっと体に溶ける、 バファリンのような優しさ。 登場人物の 日向子のように恋をして、 小田切孝のように生きていきたい。 どれだけ苦しく、甘美なのかを味わいながら。 個人的に絲山秋子さんは メンヘラな小説しか書かない(書けない)作家さんなのかと思ってましたが、 「アーリオ オーリオ」では童話、少女小説みたいな柔らかさ。 もちろん純文学として大人の目にも耐えうる文章なのだけれど、 大人だからこそ惹かれてしまう思春期の世界の広がりを 描いているのかも知れない。

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    投稿日: 2013.08.05
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    はじめは表題作をさらりさらりと読んでいて、まぁ短編だしこんなものかなぁと思っていたら、連作短編の「小田切孝の言い訳」で引き込まれ、もう一編もなかなか好み。絲山秋子さん、他の作品も読んでみたい。20130617 ------------------------------ 再読。やはり好き。201401

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    投稿日: 2013.06.17
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    ホント微妙というコトバが当てはまる男女の物語。距離感が絶妙だな。クルマの使い方が上手いな。嫌いじゃない。

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    投稿日: 2013.06.04
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    高校の先輩、小田切孝に出会ったその時から、大谷日向子の思いは募っていった。大学に進学して、社会人になっても、指さえ触れることもなく、ただ思い続けた12年。それでも日向子の気持ちが、離れることはなかった。川端康成文学賞を受賞した表題作の他、「小田切孝の言い分」「アーリオ オーリオ」を収録。(「BOOK」データベースより) エグジット・ミュージックでのカウンターを挟んだ距離、それが正しいのだ、と日向子は思った。離れていてもいけないし、ぴったりくっついてもいけない。大事な気持ちがいつも、二人の間で子供のように遊んでいる。ぴったりくっついて窒息させてはいけない。 袋小路に住んでいて、置かれてる状況ももうずっと長いこと袋小路。そんな男の人を一定の距離間で好きなお話。近い距離でずっと平行線な恋ってビターチョコみたいな味がしそうで憧れるけどしたくはないな。「小田切孝の言い分」読んでもう一回読むとさらにもどかしい2人の関係。でもまたそこがいい。「アーリオ オーリオ」も好き。日常的にパスタを食べる男の人ってセクシーな気がする。どこかミステリアスで孤独で優しい哲に惹かれる。 今日、私は新しい星を作りました。私だけにしか見えない星です。たったの3光日の距離にあります。名前はアーリオ オーリオ。 自分が見たいのは光っている天体ではなくダークまたーなのだということに気がついた。見えないものを見たいのだ。

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    投稿日: 2013.04.05
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    わたしならこんなに長い間待てないよー!と思わず叫びそうになった。こういう距離感の恋愛もあるんだなあ。気負わずさらっと読める。

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    投稿日: 2013.03.19
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    寿命まで生きれば夫を見送るのは自分。お世話をしたいとか、骨入りカフェオレとか女性として共感する部分が多かった。この2人は結婚していないから余計そう思うんだろうな。 ろくでもない男にひっかかっている人は身につまされると思う。んっ?

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    投稿日: 2013.01.26
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    微妙な距離感を保ちながら延々と続く男女関係。 恋愛関係でもなく、友人でもなく、片想いとも言えない。 そんな一般的な定義を超越している。 誰かのことを大切に思い、 お互いに惹きあいながらも、 決して近づこうとしない。 まるで、月と地球の物語のようだ。

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    投稿日: 2013.01.12
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    んー。。こういう男と女の関係はわかるよ~。私にもそういう関係の男友達あるけど、、、、 ま、私の場合は恋心って言うのは全くないんだけどね~。 この話では、主人公の女が高校時代から好きだった小田切孝にずーっと恋心をよせてながら、なぜかすーっと敬語で話してるし、指一本も触ったことがないんだよね。 それなのに、お互いを好いてて、お互いが大事だと何気なく思ってるんだよね~。 こういうのってどうよ。 最初の章では、主人公の女を軸に、2章目では主人公の男の視点から書かれています~。 おもしろい構成ではあるけれど、どうもこの二人パッとしない性格だよね~。 男のイメージが読んでいくうちに段々変わっていくんだよね~。 なんか冴えない感じ。。。女も女。よくありそうな影の女。 どうも共感出来ず、そのわりにスラスラ読めたわ~。 三章目は、全く話が別の短編。 叔父と姪の手紙のやり取りを書いた心温まるお話。 星のこと、天体のことを中心にして手紙のやり取りをするんだけど、何気ない小さなことなのにちょっと心が温まるお話になってました~。 今の時代、なんでもPCで済ませちゃって便利だけど、私は手紙というのが結構好き。 書く人が送る人のことを思って直筆で書く手紙こそが心のこもってる最高の物だと思うの~。 手紙を送るときは絶対に印刷したりワープロでタイプしたものを友達とかに送りたくないな~。

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    投稿日: 2012.11.27
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    3作品収録。 1作目。言わずもがな。共感できるからとても胸苦しく見苦しかった。 2作目。ちょっと退屈。ここまでくると、男の気持ちは結構どうでも良かったり。 3作目。 星を見にいきたくなりました。 鉛筆で誰かに手紙を書きたくなりました。 じっくりと時間をかけた人との交流は、慌ただしい現代の中でとても貴重で素晴らしいもののように思えます。

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    投稿日: 2012.11.11
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    友達から借りた本シリーズ! 一つの話を別の視点から見ると見えてくることってあるね。 私はよく相手にとって都合のいい女でいたいと思ってるとこがあるんだけど、相手からしたら全然都合いい女じゃないんだろうな。むしろ急に泣き出したり勝手なとこが目立つかもしれない(笑) 恋愛小説を読むのが苦じゃなくなってきた最近だけど、読めば読むほど恋愛ってなんだかわからなくなる。考えすぎると出来なくなることってよくある。もっと直感的なものを大事にしなきゃ。 最後の「アーリオ オーリオ」の話好き。手紙の距離を3光日と言うところがいい! 2009年01月24日

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    投稿日: 2012.08.28
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    近いのか遠いのかよくわからない関係。しかもセックスレスで二十年近く付き合っているという珍しい愛の形を描いている。凹凸もなく盛り上がりもなく静かに終わる。淡々としすぎていていつのまにか終わってしまった。

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    投稿日: 2012.07.14
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    短編3つ。良くできていた。女の身勝手、男の身勝手。最後の話もよい。どちらも心地よい。 過去と現実は繋がっている。そしてもう戻れないのだ。

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    投稿日: 2012.07.10
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    最初の一文で惹き込まれました。  あなたは袋小路に住んでいる。つきあたりは別の番地の裏の塀で、猫だけが何の苦もなく往来している。ー7 終始、"わたし"から見た"あなた"の空気で綴られており、ただひたすらその空気を吸って吐くだけの"わたし"。 出会った時から縮まることのない距離が時の流れに溶け込んでしまい、やがて離れることも出来なくなった。その瞬間、距離感という物差しが消えて小気味よい二人の関係が浮き彫りになる。 もしも純愛が測れないからこその恋愛だとしたら、この作品はまさに純愛。したいとは思わないけど。 また、『袋小路の男』という題名が最後の最後で内容と重なりました。 人が人を好きになる行為とは、相手を袋小路に追い込むこと。逃げ場のない場所に追い込んで、そこでことを起こす。 この窮屈さが許されない作品。 表題作『袋小路の男』の他に『小田切の言い分』『アーリオ オーリオ』が収録されています。静かな作品を読みたいのであればオススメ。

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    投稿日: 2012.07.01
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    他人に対してのいとおしさ。 それがこの本からあふれていて、よむたびほうっと、そしてきゅーっとなる。 ただ相手を愛するだけで得られるしあわせと、関係に始まりも終わりもないことが決して虚しいことではないこと。 なにがしあわせかは本人にしかわからないな。 袋小路の男は高速を走るシーン、小田切孝の言い分は産婦人科のシーンが好きだった。 アーリオオーリオも、手紙のやり取りというのがすごく良かった。わたしもアーリオオーリオに行って、3日前のわたしや好きな人たちを覗きたいな。

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    投稿日: 2012.05.23
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    恋愛小説三編が収められているが、表題作とその続編、そしてもう一つという構成になっている。袋小路の男は小山田と日向子の危うい関係が何故か惹きつけられる。なんて嫌な奴と思っても離れたくない気持ちが不思議な魅力。アーリオオーリオは短編集に埋もれるにはもったいないくらいの快作。エンディングの余韻に浸る心地よさ。

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    投稿日: 2012.05.17
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    決して交差する事もなく距離も縮まらない2人の物語。 女の子は彼の事が好きで、頭の中は 彼の事でいっぱい。 男は 自分の事でいっぱい。 男女ってこんなもんだな…

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    投稿日: 2012.04.12
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    まがりなりにも恋愛小説なのにこのタイトル。 作者の性格の表れのようで好ましい。 “袋小路の男”とはつまり片思いの相手を指していて、その家の立地からそう呼んでいるのだ。日向子は高校の先輩である小田切に恋い焦がれたまま12年、曖昧な距離の交際を続けている。確実に何か特別な感情で結びついているにも関わらず、決して恋人にはならない2人。こんな蛇の生殺しみたいなのは嫌だなぁと思いつつ、ちょっと「おっ?」という動きがある度、こういのもいいなぁとふらふらと揺れ動きながら読んだ。 ☆川端康成賞

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    投稿日: 2012.03.26
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    行き止まりにいた男にはまっちゃってニッチモサッチもいかなくなった女の子のハナシ。続編に救いがみえた。心情の文章が大変よい。

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    投稿日: 2012.02.07
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    袋小路の男・小田切孝の言い分 語り手があれ?いつから変わってた?ってくらいいつのまにか変わってて不思議な感じになった。 小田切孝の言い分があってよかった。 アーリオオーリオ 個人的にはこっちがすき! タイトルがこういうとこでまた出てくるとは!ロマン。星を見る目が変わりました。

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    投稿日: 2012.01.23
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    対になった短編。 こういうのを読むと、噛み合わないことというか、どれだけ願ってもダメなものはダメというか、そういうことが当たり前と感じられ、かえって爽快な気持ちになれる。

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    投稿日: 2011.11.26