
総合評価
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powered by ブクログキッカケはネズミの死体。そこから死の病、黒死病ペストが広まっていく。ペストが広まり、町が閉鎖され、血清によるペストの浄化、再び町がひらかれるまでの様子が淡々と書かれている。淡々とした中にひっそりと息づく恐怖。まるで記録映画のような。カミュは『異邦人』しか読んでなかったけど、こちらも傑作。2013/300
0投稿日: 2013.10.16
powered by ブクログペストに襲われた町。死を、特に悲惨な死を、身近に感ぜざるを得ない状態。 そこに置かれた人々を描くことによって、普遍的な「死」を考える。のかな。 はっきりとは言えないんだけど、2つのテーマが語られているような。 関係しているようでもあり。でもけっこう遠いような気もする2つ。 ひとつは、ここで描かれている死は病気によるもの。天災。 神の意志?「我々に与えられた罰です。試練です」教会は言う。 主人公の医師リウーは献身的に治療にあたるが、さしたることはできずどんどん死んでいく。 この「天災」がキーワード。 タルーという登場人物がいます。死刑反対運動に一生を捧げてきた。 彼曰く、自分自身が天災になるようなことがあったとしても、少なくとも自分でそれに同意はしない。罪なき殺害者たらん。 いつか原文で確認したいなあと思うんだけど、この訳で理解しようとすると、 ここで「自分自身が天災になる」とは、死刑によって人を殺すこと。反対はしていても実際死刑制度は続いている。そんな社会に生きている自分は天災。 リウーの独白。 悪はほとんど常に無知に由来する。 最も救いのない悪徳とは、自らすべて知っていると信じ、自ら人を殺す権利を認める無知。 2つ目のテーマのように読めるのが死刑反対。こっちが本筋なのか??
0投稿日: 2013.09.27
powered by ブクログ現在は何でも人間でコントロールできる、と思ってしまいがちだ。コントロール出来ない天災や不条理はあるということを、まず、受け入れるところから難しいような気がする。不条理を受け入れられずに、誰かを非難し続ける人、楽観主義で乗り切ろうとする人、あらゆる手段をとって抵抗し続ける人。不条理を受け入れて、祈り続ける人、チャンスとばかりに自分の利益となるように行動する人、犠牲者と共に在りひたすら職務を全うし続ける人。これまで、不条理がある時には、それを受け入れて、祈り、大きな力に身を任せ、流されることが、最善の対処法かもしれない、と私は考えていた。だが、私は、医師リウーの生き方に感銘をうけた。「ペストと戦う唯一の方法は、誠実さということです」「僕の場合には、つまり自分の職務を果すことだと心得ています」 ー 誠実さで戦うということ。 それは、不条理を受け入れた上で、犠牲者と共にいて、犠牲者にとって今、本当に必要なことを、ひたすら行い続けるということ。それも、戦い、なのだと。
1投稿日: 2013.09.18
powered by ブクログアルジェリア出身のフランス人作家カミュの代表作。アルジェリアの小さな街が突如としてペストに襲われ、瞬く間に数多くの市民が死んでゆく。そんな不条理に立ち向かう人間たちの物語。 「不条理」というのはカミュの主要なテーマなんだけど、この作品には不条理に対抗するものとして「連帯」が強調されている。必死にペストと闘う医師リウーを中心に、それぞれに事情を抱える人間たちが彼らなりの方法でペストに立ちむかってゆく。 けっこう長い話で、分かりにくいところもあるけど、なかなか読みごたえが あるし、考えさせられる一冊。
0投稿日: 2013.08.21
powered by ブクログカミュはアルジェリア人で、フランスに渡り作家として成功した。 彼の中のアラブ人としてのアイデンティティーは、アルジェリア独立運動の最中、フランスとアルジェリアの間で揺れ動いていた。彼は「最初の人間」の中でその複雑な葛藤を描き、どちらの側にもつけないこと、そしてどちらの暴力にも反対することを述べていた。 私は2013年の6月28日から始まったエジプトでの、反ムルシデモおよびその後のクーデターに至る一連の出来事の中にいた。 その中でこの本を思い出し、レビューを少しだけ書きたくなった。 エジプトでの民衆の閉塞感の高まりを感じつつ、日本人である自分にとっては不条理とも呼べるデモや軍、警察の規制の中、カイロで過ごした。まさにペストで描かれるような閉塞的な状況であった。外国人や知り合いは軒並み国外に出ていき、交通量の大幅に減った市内を見渡し、なんとも言えない、どうにもできない不条理を感じた。 ペストではアルジェリアの街を舞台に、じわじわと進行していくペスト、誰もが逆らえないペストの死を通して、絶望感が広がっていく。 エジプトにおける状況も似たようなところがある、インフレによって値上がりする物価、頻発する停電、悪化する治安、その結果として観光客が激減し収入源が減っていく。 民主主義とは、そのプロセスが大事である。 選挙によって必ずしも、良い政権ができるとは限らない。 また、常に反対派や少数派とのコンセンサスを必要とする。 そしてすぐには変わらない。 エジプトにおけるクーデターの成功は、明らかに民主主義プロセスの後退であり、敗北である。 この「ペスト」においても、人々は「敗北」する。 そんな中、医師リウーは以下のように答える。 『しかし、あなたの勝利はつねに一時的なものですね。…』 『…それだからって、戦いをやめる理由にはなりません』 『…しかし、そうなると僕は考えてみたくなるんですがね、このペストがあなたにとってはたしてどういうものになるか』 『ええ、…際限なく続く敗北です』 彼はそういいながらも医師として人を救おうとし続ける。 その姿勢や行為にこそ価値があるのだと思う。 私は外国人であり、安易にエジプトにおける反体制派(反ムルシー)と大統領支持派(ムルシー支持派)の両者のどちらかにつけるわけではないが、暴力の応酬に対しては反対である。
1投稿日: 2013.07.23
powered by ブクログ簡潔にして美しい文章. 原文で読めたらもっとよかったんだろう. もう無理ではあるけど... でも, 今更ながら自分もこういう文章が美しいと感じられるようになったんだな, と思うとうれしくなった. ところで, 「神を信じる者」と「神を信じない者」が極限の中で見いだす答えが全く同じであることを描くことで, この作品は最も反キリスト教的であるとカミュは考えていたそうである. この辺りは自分の抱える疑問ともかなり相通じるところがある. もちろん, 自分自身については別に反キリスト教的だと思ってはいないが, 人生もそう短いものでもなさそうなので, ゆっくりと時間をかけて, そういった問題に対峙していきたい. 年を取ることでわかることもたくさんありそうな気がする.
0投稿日: 2013.07.22
powered by ブクログ「神様のカルテ」の夏川草介さんの書いた記事に紹介されていて、興味を持ち、読み始めた。「ペストと戦う唯一の方法は、誠実さということなのです」と言う主人公の姿が印象的。
0投稿日: 2013.05.06
powered by ブクログ最初に印象に残るのは、句読点を多用しながら思弁を紡いでいくその特異な文体。読点の多用は思考の逡巡を露わにし、逡巡しながらも先に進もうとする誠実さの表れか。突如発生したペストによって封鎖された街中で生活する人々の描かれ方は、ペストに限らず我々が不条理な世界でどのように生きていけばよいのかを指し示している。「心の平和を得るための方法は、あるね。共感することさ」痛みに対する共感、悲しみに対する共感。それは不条理に引き裂かれた世界に橋を架けようとする意志そのものであり、やがて喜びや誠実さに対する共感への轍となる。
0投稿日: 2013.02.01
powered by ブクログ読了してすぐに物凄い小説を読んだという気分になりました。 前半は、まぁ、面白くもないんですよ。 実際、ペストというのは、人間にとって決して面白い物ではないですし。 (後から思えば懊悩や退屈や疲労が表現されていて、 それもまた誠実さという気はするんですけどね) ただ、後半は圧巻でしたね。 登場人物同士の対話やそれぞれの変化が丁寧に描かれていて、 それがすごくいいんですよ。 誠実で丁寧で、著者の情熱が感じられる良い小説だと思います。
0投稿日: 2013.01.20
powered by ブクログ「最も救いのない悪徳とは、自らすべてを知っていると信じ、そこで自ら人を殺す権利を認めるような無知の、悪徳にほかならぬものである。殺人者の魂は盲目なのであり、ありうるかぎりの明識なくしては、真の善良さも美しい愛も存在しない」 感情を抑制した語調。淡々としたオラン市での悲惨な災厄の描写。 外界との接触を遮断され、絶対的な力のなすがままに、可能性のない戦いを強いられた人々。 堅固な精神を持つ、医師リウーですら「際限なく続く敗北」と述べ、疲労と無感覚との中で終わりのない忍耐を続ける。 「ペストはすべての者から、恋愛と、さらに友情の能力さえも奪ってしまった。なぜなら愛は幾らかの未来を要求するものであり、しかもわれわれにとってはもはや刻々の瞬間しか存在しなかったからである」 背後にせまる恐怖、単調な毎日の繰り返しに、未来を描く能力を失わざるを得なかった人々は、放心した様相でよどんだ目を宙に泳がす。 人としての尊厳を脅かす、不条理と対面した時に示される、種々の人間の様相を、「神」「愛」「英雄主義」などの側面から描く長編。
0投稿日: 2013.01.05
powered by ブクログ異邦人が面白かったので。ちょっと趣が違うが中々面白かった。 それにしても最近の本はやはり段落が短くなったものだなと思わざるを得なかった。読者も著者も頭悪くなったんだろか
1投稿日: 2012.12.02
powered by ブクログ再読。最初はピンとこなかったが、二回読んでこの乾いた作品がじんと腑に落ちた。書評はおろそかに書いてはいけないわけですね。
1投稿日: 2012.10.22
powered by ブクログペストが蔓延して隔離された中で真摯に生きる人々を 描いた作品。医師リウーを中心に、ペスト発生から隔 離が終るまでのドラマが淡々と描かれており、分量も少なくはないのだが、続きが気になってスラスラ読め た。 同じカミュの『異邦人』は私には難しかったが、こち らは楽しめた。不条理だらけの世界でどう生きるべき か、ペストに立ち向かう登場人物の生き方はなるほど 参考にもなるし、色々考えさせられた。
0投稿日: 2012.10.16
powered by ブクログ全編を通して絶望的な状況に人々はおかれるわけだが、しかしなんともすがすがしい文体。街にいながらにして流刑の状態を味わい、外との時間と隔絶されながらも社会を維持し続けている個人個人の動態を描き出した点ではとても素晴らしい作品だと思う。街にいる彼らは落ち着き払い、「死」という不可避の着地点をただ間近に感じ取るだけで、根底にはいつか終わるという楽観主義さえ感じられる。そういった個々の主体性が物語りを紡ぎだすが、ペスト=災禍というものは一過性のものではなくいつでも避けられない状態であなたの前に発現する可能性があり続けると定義した。第二次対戦終了直後の疲労と喚起の時代の精神がこの作品の登場を求めたのだと感じた。
1投稿日: 2012.10.13
powered by ブクログ思い出のある本なので毎年読んでます。 「別にどうでもいいや・・・」 「やりたくないし・・・。」 無責任や罪悪がじわりじわりと広がっていく・・・ 悪に対して立ち向かう無名の人々・・・ そんな様を冷静に描いたこの作品を読むと その時々で自分にできることを考えてしまうのです。 カミュの不条理は「異邦人」だけじゃないぜ!
0投稿日: 2012.10.09
powered by ブクログ面白かったです。 でも私には難しいようなので、また読み直したいです。 今更ですが、 ダニエル・デフォーさんの 『ペスト』先読んだ方が良かったですかね。 ペストって日本に来た事もあるのですね。怖いです。 この本をについて社会の先生と少し話が出来て楽しかったです。
3投稿日: 2012.09.14
powered by ブクログいろいろな方がレビューで書いてるが、ペストがじわじわと広がっているのに誰もが「たいしたことないでしょ」という雰囲気で、いつのまに感染が広がっていく様が、本当に原発事故と同じだ。 『天災というものは、事実、ざらにあることであるが、しかし、そいつがこっちの頭上に降りかかってきたときは、容易に天災とは信じられない』→が、人間の性質を端的に表していると思う。どんなに気をつけて気をつけていても、いざとなれば人間てこんなもんだ。
0投稿日: 2012.06.22
powered by ブクログ誰にも責任のないペストの蔓延という逃げられない異常な状況下での集団心理が、緻密に描かれていると思う。結局のところ、いざとなったら自分にできることをするしかないんだけど、ペストを現代社会の諸問題に置き換えてみると、いろいろと考えさせられる。
0投稿日: 2012.06.12
powered by ブクログWikiによれば、「この作品は第二次世界大戦時のナチズムに対するフランス・レジスタンス運動のメタファーではないかということだ。」 でも、どんな風にも読めますね。自分なりのメタファーとして使える物語になりそうです。 いろいろな台詞が心に残りますね。
0投稿日: 2012.06.11
powered by ブクログ(1972.09.08読了)(1972.08.06購入) (「BOOK」データベースより) アルジェリアのオラン市で、ある朝、医師のリウーは鼠の死体をいくつか発見する。ついで原因不明の熱病者が続出、ペストの発生である。外部と遮断された孤立状態のなかで、必死に「悪」と闘う市民たちの姿を年代記風に淡々と描くことで、人間性を蝕む「不条理」と直面した時に示される人間の諸相や、過ぎ去ったばかりの対ナチス闘争での体験を寓意的に描き込み圧倒的共感を呼んだ長編。 ☆関連図書(既読) 「異邦人」カミュ著・窪田啓作訳、新潮文庫、1954.09.30 「シジフォスの神話」カミュ著・矢内原伊作訳、新潮文庫、1954.11.15
0投稿日: 2011.12.23
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
高致死率の伝染病に見舞われ封鎖された町の様子が、ある人物の目線で淡々と生々しく、しかしどこか幻想的に描かれている。様々な立場や考えをもつ人物が登場するが、この淡々とした視線とのギャップが印象的だった。 この本を読んだ人に聞きたい。あなたが聖人と思ったのは、豆を数える爺さんですか?恐縮ですのオッサンですか?それとも、別の人物でしょうか。-私はオッサンでした。
1投稿日: 2011.11.02
powered by ブクログタイトルから陰惨な内容を想像して、なかなか手が伸びなかった1冊。小林秀雄がこの作品について触れていたので読む気になった。何のことはない、徹夜で一気に読むくらい面白かった! 秀雄のレビューも併せてぜひ。「Xへの手紙・私小説論」で読むことができます。
1投稿日: 2011.10.02
powered by ブクログ病は病原菌から。 疫病はおそいかかり、 人間社会を破壊する。 それは戦争もテクノロジーも一緒。
1投稿日: 2011.09.15
powered by ブクログ正に記録と言った文体で、やはり読みにくいと言う感じはあった。初めは取っつきにくかったが、だんだん文体に慣れてきてはまれるようになってきたのは、いつも通りという感じだ。それにしても、これだけの壮大な、記録のような文章を、作ってしまうのは凄いと感じた。医者や神父や囚人など、非常に変わった立場の人間からの意見が程良く入っていた。その意見がそれぞれなのだが、妙にバランスが良かったような気がした。一種の恐慌状態なので、どんなことでもまともであり、まともでない、と言う感じだろうかと思った。最後の所で、ペストは何時幸福をおそうかわからない。と言った記述はあまりにも予想でき過ぎた物だった様に感じる。
0投稿日: 2011.08.20
powered by ブクログ-ペスト菌は決して死ぬことも消滅することもないものであり…(中略)…そしておそらくはいつか、人間に不幸と教訓をもたらすために、ペストが再びその鼠どもを呼びさまし、どこかの幸福な都市に彼らを死なせに差し向ける日が来るであろう- 1940年代、アルジェリアの港町オランを襲ったペストが人間社会に与えたインパクトを描く。その濃淡に関わらず、ペストは次々に人間関係を引き裂き、生を奪い、都市を閉鎖させる。そのような抗いがたい不条理に立ち向かった1人の医師が、物語の最後に残した一節が、冒頭の抜粋である。 カミュの作品を読んだのはこれで2作目で、1作目は「異邦人」。個人の自由を奪う社会の不条理を描く彼の小説は決して明るいものではないが、自分の思想が周囲の環境に依存していないか、自分なりの根拠をもてているのか、という問を想起させてくれるという点が好きです。 「異邦人」と「ペスト」では中心人物の性格が大きく異なりますが、物語として伝えようとしていることは同様でした。しかしまあ、読み返すとすれば、「異邦人」かなぁ。
1投稿日: 2011.07.31
powered by ブクログ人間の本質が描かれている 「ペスト」を通じた人間の変化 人間は弱いもの、しかし強いものでもあると実感した 人生は無意味 カミュの思想がよく表れている本
1投稿日: 2011.07.31
powered by ブクログ困難な状況のもとで、絶望に負けず手立てを尽くす人々を描く。彼らは「英雄」的なテンションも持っていないし、なにか大活躍をするというわけでもない(むしろペストには負けっぱなし)。しかしそれでも前に進み続けるその姿が、非常に印象的。人間にはなにか誠実で高潔なものがあるのだということを感じさせられる。 ところで、こういう時に「天罰」とか口走る人はどこにでもいるのだな、と思った。
1投稿日: 2011.05.26
powered by ブクログ辺見庸のNHK番組を見ていまさら読み始める。 まだ序盤だが、ペストに対する人々の反応は、驚くほど原発の状況とシンクロしている。 ……と書き始めたのは、ペスト禍の下での集団心理の描写が的確だと思ったからだが、小説自体は当然個の内省に迫る内容になっている。 解説を読んでその言葉自体が存在することをすっかり忘れていたが、本書は「不条理」下の人間の心理・行動をあぶり出すことを目的として、成功していると思う。 続いて読み始めたユン・チアンの『ワイルド・スワン』が多く人災による不条理なのだとしたら、『ペスト』は天災による不条理劇である。 人々はペストをはじめ軽視し、楽観的に考えるが、やがて絶望し、身を預けるようになる。今回の原発事故とその点は通じていると思う。 しかし原発事故の、引き金は天災であっても、人災によって収拾不能に陥り、ペストのごとく不可視の災いとして、われわれに襲いかかってくる。そして直ぐには誰も死なないし、ゆえに責任をとろうとしない人が多い。『ペスト』で発揮される主人公医師・リウ—の良心は、批判すべき、あるいは憎むべき対象の無き中で行われる。 原発は、東京電力と、政府という明確な対象が存在する。ゆえに人を助けようとする良心がそのまま別の人を傷つける事にもなり得る点で、より複雑である。たとえば福島の野菜を良心から使い客に振る舞うレストランがあるとしたら(実際にあるのだが)、単純に賛美することはできないのだから。 とはいえ「不条理」にいかに抗い、いかに身を委ねるのか、というヒントは多く含まれている。
3投稿日: 2011.05.14
powered by ブクログ実際にペスト流行の話なのですが、現代社会に置き換える、ものの広がり。例えばネット。そこから起こる弊害に人はどう対処するのか。この描写をペストの一例で表しています。物語性の骨格もきちんとあり、読み応え十分。作者全盛期の長編。
0投稿日: 2011.05.08
powered by ブクログ不可抗力の天災に襲われる、その現実の中でこの本を読むことは易しいことではないに違いない。しかし圧巻の結末。 この文庫の装丁は、かなり格好いい。作品を読ませる期待感あふれる表紙。
0投稿日: 2011.02.20
powered by ブクログ有名な本だが、読んだことがなかったので読んでみた。100冊プロジェクトをしていないと手にしない本だろう(これも妻の蔵書)。でも、私はこの本の良さを理解する能力なし。全くおもしろいと思わなかった。妻に言わせると「行間をよまな!」とのこと。すみません私には力不足です。
0投稿日: 2011.01.21
powered by ブクログ異邦人と微妙にリンクしているので異邦人を先に呼んだほうがいいかもしれないが物語にはあまり関係ないので読まなくても大丈夫かな。 内容はすでに知っていたが改めて読んで見るとさらに面白い。
0投稿日: 2011.01.07
powered by ブクログフランス領時代のアルジェリアの都市オランで、疫病ペストが発生。疫病対策として外部との接触を断たれ、オランに閉じ込められた人々。その顛末を、主に医師リウーの視点で淡々と描写した作品。 ペストとの闘いの目的は、ペストを殲滅することではない。ペストの衰退(いつ訪れるとも分からない)を粘り強く待つ間、社会を何とか維持させること。要は、耐え難き持久戦。その持久戦を耐え抜くために必要なものは、医師リウーの場合、誠実さ=自分の職務を果すことだった。
1投稿日: 2010.08.06
powered by ブクログ『ペスト』が老若男女、地域や生活習慣、信仰の違いを越えて読み続けられているのはなぜか?そのひとつの答えとして日本語翻訳者の宮崎嶺雄氏は「この作品の簡潔なリアリズムが、さまざまな角度からきわめて明瞭な象徴性をもっていて、読者の一人一人がその当面の関心を満足させるものをそこに見出しうるからだ」と分析しています... 【開催案内や作品のあらすじ等はこちら↓】 http://www.prosecute.jp/keikan/004.htm
0投稿日: 2010.06.03
powered by ブクログペストの「恐怖」ではなく、ペストによって閉鎖されたことによる人間の核のような部分を淡々とした口調で描く。淡々でしかも長いので結構読んでて疲れるが、読後感は良い。
0投稿日: 2010.05.10
powered by ブクログ途中。読んでて、感じる部分は多いけど、夢中で息もつかずに読む、というようなストーリーではなく、どちらかというと、閉鎖された町の中で、ペストと隣り合う恐怖で感覚が麻痺して無気力になってる住民の雰囲気が移って眠くなってくるというか…とにかく読むのに時間かかってる。 主要人物が病気にかからない(後半でかかるみたいだけど)のが不思議(笑)。新聞記者の人とか、町を抜け出す前日に発病!とか予測してたのですが、意外~。 これは、単に疫病に襲われた町の描写、と捕らえるとひたすら淡々としているけど、そこで生じる人々の心理状況とかを深読みすると、俄然面白くなる。幸福とか、仕事とか、福祉とか、全部ひっくるめて、人間の本性とは何か、を書いているんだろうなあ。 終了。少年の死から、俄然面白くなった。パヌルーの言葉、タルーの最後(リウーとの友情)など、テーマが拡大していくにつれて、ペストというものが、より普遍的なものの象徴であることが見えてくる。最後は悲しかった。
1投稿日: 2010.04.23
powered by ブクログ異邦人に続き、カミュの著作。アルジェリアの都市オランでペストが発生した。閉鎖されたこの都市の中で、人々はそれぞれの反応をする。絶対的な力の前に、人間はどのような反応を示すのか?を記した小説である。 どうしようもない現実を突き付けられても、その現実に立脚し、その時点で自分がなしうるベストを尽くす、それだけなんじゃないか?
0投稿日: 2010.01.05
powered by ブクログこれはペストを描いた小説だけれど、ペストのみを描いた小説ではない。 カミュはペストという疫病の流行に、ありとあらゆる不条理を写した。ペストによって変わるもの、変わらないもの…。 個人的にはランベールが一番好きかな。脱出しようと奔走する間に、恋人に傾ききっていた想いが、いまいるオランの街へシフトしていく、心情の描かれ方がよかった。 解説にもあるように、これは彼の「不条理の哲学」の集大成です。 しかし読むのに時間がかかりました。言い回しが難しい…。
0投稿日: 2009.07.19
powered by ブクログある街のペストが流行していく様を描いた作品。 ドラマティックな所があるわけでなく、あくまで客観的に登場人物の心情と事実描写が続く。 白鯨に似てるな〜って思いながら読んでたら、白鯨に影響を受けて書いた作品らしい。 ただ白鯨ほど説明が長ったらしくなく、分かりやすいし変な思いも入ってない。 淡々と続くけど、結構引き込まれる作品でした。
0投稿日: 2009.06.27
powered by ブクログサラマーゴの『白の闇』と引き合いに出して、本書を褒めている書評を見かけたので読んでみた。 感想としては、確かに『白の闇』同様集団感染モノなんだが、これと『白の闇』では全然性質が違う印象。 文章全体が客観性をもった描写に徹しているのと、併せて劇的・急激な展開が一切ないのとで、ずいぶん静かな印象。 そして『白の闇』が無理やり人間の上っ面を引っぺがして人間の本性をむき出しにしたという感じだったのに対し、本書は「人間が生きていくこととは」といった、人間そのものだけでなく人間が社会に与えるもの、あるいは社会から影響を受けるもの、をも包括したもっと広い対象を描いている。 同じ取っ掛かりを用いて文学作品をものしようと思っても、書く人によってここまで違った作品に仕上がるもんなんだなあ。 作品の持つ教訓という意味では『白の闇』同様素晴らしいものがあったが、エンターテイメント性も兼ね備えている『白の闇』に、個人的には軍配を上げたい。 まあ、冒頭で述べたように、あまり比較するのも適当ではないとは思うが・・・。
10投稿日: 2009.06.20
powered by ブクログインフルエンザが流行っている。 未来はどうなるかわからないけれど、 パンデミックのことを考えながら読んだら、 とても怖い小説でした。
0投稿日: 2009.06.16
powered by ブクログアルジェリアのオラン市で、ある朝大量に発見されたネズミの死体、ついで原因不明の熱病患者が続出──それは、ペストの発生を意味した。 外部と遮断され、孤立した中で必死に「悪」と闘う市民たちの姿を描いた、カミュ揮身の一冊。 ペストに対する人々の恐怖や抑圧を、筆者の卓越した文章がよりリアルに伝えている。 自らの職業が医師であることに対する主人公リウーの心の葛藤、ペスト発生時にたまたま街にいたために外に出れなくなったランベール、リウーの良き友となるタルー、そしてその死──。 様々な人物を巻き込みながら展開されるストーリーは、「いのち」と向き合うことの意味を教えてくれる。
0投稿日: 2009.06.03
powered by ブクログアルジェニアのある町にペスト(黒死病)が発生し、町の完全封鎖下で人々の心情や行動の変化を詳細に追っていく小説。 物語の流れがよく整理されていて、よく言われるカミュの不条理の描写のうまさに驚かされるが、長くて飽きてしまう…異邦人もそうだがカミュの作品とは相性が悪いようだ。 時代背景の共有がなかったというのは、ほとんどの作品についてそう言えるので言い訳にならないと思うが不思議だ。 個人の利益の追求から、社会全体の利益への貢献に個人の心境が変化していく過程が読み取れて面白かった。
0投稿日: 2009.05.23
powered by ブクログペスト発生によって外部と遮断されたアルジェリアの町オランの物語であり、医師リウーが語り手となる。リウーは「熱病」を「ペスト」であると言語化し、町に防疫体制を敷くのであるが、疫病の流行とともに、「治療」するものから、死を「宣告」するものになっていき、感情を殺すことにしか、安息を見いだせなくなる。それでも「誠実」としての医師のつとめを辞めることができない。そこへ、死刑制度に疑問をもち、世界各地をさすらった政治運動家タルーが合流し、また、妻に逃げられ、妻にかける言葉を探すために小説を書いている市役所臨時職員グランや、神父パヌルー(彼は当初ペストを神の裁きとしてただ跪くように説教するが、子供の死をみてから、ただ善意の道をすすむしかないと態度をかえる。ペストの流行収束にむかったとき、罹患し医師にかかることを拒否して死亡)、新聞記者ランベール(はじめは恋人に会うために町からの脱走をはかるが、しだいに町へ残って防疫を手伝うようになる)、犯罪者コタール(ペストのなかで暮らすのが心地よいといい、投機で儲け、みなが自分と同じように不安を抱いていることに溜飲をさげる。ペスト収束後に歓喜する市民に銃を乱射し逮捕される)など、多彩な人物が自らの立場からペストについて語り、ペストという疫病を通して、社会や国家や人間や神といったものを重層的にかたっていく。とにかくものを考えさせられる小説である。文章は読みやすいが理屈が多いので、哲学書を読んでいるような感じがある。また、リウーとの友情の記念に海水浴に出かける前、タルーがいった言葉、つまり「心の平安」の問題、「神なくして、人間は聖人になれるか」という言葉は、東洋の思想が常に考えていた問題であり、この点は西洋人の問題であると感じる。翻訳の面は、最初にある「赤い白墨」には少し引っかかった。意味は分かるが形容矛盾であるから、ちゃんと「赤いチョーク」と書けばいいと思う。「ソフトを阿弥陀にかぶり……」というのもちょっと、現代の若者には解読しづらいんじゃないだろうか。そろそろ改訳が必要だろう。
1投稿日: 2009.03.08
powered by ブクログカミュです。セインカミュのおじいさん。「不条理の哲学」を大衆的に位置づけさせたいわずと知れた大御所。「異邦人」が個人的不条理だとすれば、これは万人型不条理ですかね。 ペストが勝手にきて勝手にいなくなる。という有名すぎるお話。。 とても社会性の強い作品。てことはまあつまり象徴性の強い作品でもあります。 ただただ不条理を受け入れよってワケじゃなく、不条理の中でも幸福のために足掻くべきで、神がいようといまいと人としてつまるとこは大して変わらない。 共感すること、連帯感を持つこと、人間的であることが肝要。。。てこと?? ただ伏すのではなく、蔽晦せずに、真っ向から立ち向かえってことですかね。 そえば昔の作品てこういう`象徴`する作品多いですよね。。。 なによりもそういった思考を織り交ぜつつ複雑なお話を細部まで描ききる、このカミュの筆才に感動してみてはー! ところでカミュは戯曲の天才でもありますYO。
0投稿日: 2009.01.02
powered by ブクログカミュといえば「異邦人」ですが、個人的にこちらのほうが好き。 ペスト蔓延で隔離された村の人々の絶望や苦悩、そして希望が力強く描かれています。 現在、批評作成中。
0投稿日: 2008.11.27
powered by ブクログYさんが哲学ではなく医者を志したきっかけとなった本。高3のMくんとの話。Who's Pestなど。読む時期がきていたのだろう2007年最後の一冊。淡々とした語り口は難しくないのだが、陰気で長い話だった。確かに頭で読む小説である。ナチスとの闘争を寓意、とか、キリスト教とコミュニズムのあいだの人間的な第三の道を表現、とかいうあたりは最後のタルーの独白の中に。不条理とは?生活に満足している今の私には実感が湧かない。
0投稿日: 2008.01.01
powered by ブクログ〜アルジェリアのオラン市で、ある朝、医師のリウーは鼠の死体をいくつか発見する。ついで原因不明の熱病者が続出、ペストの発生である。外部と遮断された孤立状態のなかで、必死に「悪」と闘う市民たちの姿を描く〜 カミュの「異邦人」を見て衝撃を受けたので、その延長で読みました。先入観も下調べも無く読み始めたのですが、登場人物が多いなか、その説明が少なく、最初は入り込めませんでした。しかし、そこはカミュ。気付けばのめり込みました。語り手が誰かと思っていたら、なるほど…彼だったのですね。それで淡々とした内容だった事も頷けます。 しかし深い…。 本当に怖いのは、果たしてペストそのものなのか…この作品において「ペスト」と言う病気は、主題でありながら主題では無い様に思います。カミュの作品は、一度読んだだけでは全てを味わえませんね。
0投稿日: 2007.06.04
powered by ブクログアルジェリアのオラン市で、ある朝、医師のリウーは鼠の死体をいくつか発見する。ついで原因不明の熱病者が続出、ペストの発生である。外部と遮断された孤立状態のなかで、必死に「悪」と闘う市民たちの姿を年代記風に淡々と描くことで、人間性を蝕む「不条理」と直面した時に示される人間の諸相や、過ぎ去ったばかりの対ナチス闘争での体験を寓意的に描き込み圧倒的共感を呼んだ長編。
0投稿日: 2007.05.12
powered by ブクログ「人間のあらゆる不幸は、彼らが明瞭な言葉を話さないところから来るのだ」というタルーの言葉に思わず頷く。では、何故人々は言語を所有しているのだろうか!
0投稿日: 2006.11.25
powered by ブクログ非日常が日常にくみこまれていく様とか、それが日常に戻る様とか、観察描写がすごいんだろうなあ。ものすごく緻密なかんじがする。 そのなかに差し込まれる、空や風、匂いもまた効果的というか、お見事。もっと読書筋肉がついたら、また、丁寧に読み直してみたい。
0投稿日: 2006.10.03
powered by ブクログカミュは「異邦人」での衝撃が強すぎたので、こういった「普通」のストーリーを書かれると逆に肩透かしをくらった気になった。それでもこの小説も良い。
0投稿日: 2006.04.09
powered by ブクログペストが流行し、隔離された街での人間模様。人間の醜さ、エゴなどを描き出すので、読後感はよくないです。でも読まずにいられない。そんな作品を書く作家です。
0投稿日: 2006.02.11
powered by ブクログ圧倒的な死の病とともに閉鎖された町と、そこで生きる人々の生 アルジェリアの港町オランにペストという、死病が発生する。その拡大を懸念し、市は町をを閉鎖する。逃げることの出来ない状況下で圧倒的な死を目にしての人々の行動を描く。冒頭のねずみの死の描写から、筆者は読者をぐいぐいと物語に引き込む。主人公の医者リウーの心の中の苦悩、人々が抱える別離の悲しみ、様々な人間の感情とともに、物語られる一つの町の話。 僕はまだ完全に理解はしていませんが、よい小説だと思います。
0投稿日: 2005.05.07
powered by ブクログ重みをもった文章、しかしリズミカルでよみやすい。死とは、生きるとは、宗教とは、そして、悪とは、このような議題の話がすすんでいきます。そして、読み終わると、だれしもが”ペスト”にかかった状態になるのではないか。少なくとも私は、犯されてしまったようです。
0投稿日: 2005.02.09
