
総合評価
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powered by ブクログかつて昭和の人々が〝大正ロマン〟と名づけ、ひとつ前の時代を懐かしんだように、いまや昭和も懐かしがられる時代になってしまったのですネ。本書に漂う古き良き時代の空気感に、ついつい惹きこまれてしまいます。戦争についても声高に何かを伝えようとするのではなく、あくまで市井の人の視点で描かれ、わたしたちの知らない日本の姿がここにありました。 この小説の大半は、女中という職業に誇りを持って、昭和という時代を生きたタキという女性の、最晩年に書き綴った手記〝心覚えの記〟からなっています。戦前から戦中にかけて奉公した、東京郊外のある家庭の様子が、女中の目を通して綴られているのですが、当然彼女ひとりの視点で書かれたものなので、随所に散りばめられた小さな謎は、最後まで解き明かされることなく、すべて読者の心に委ねられます。それどころか手記を綴ったタキさんの心情さえ、最後まで明かされることはありません。このあたりの構成がとても巧みで、読後に深い余韻が残ります。赤い三角屋根の家で女中として過ごした日々が、60年以上の時を経て、美しくも哀しい物語として甦ります。第143回直木賞受賞作。
0投稿日: 2012.12.15
powered by ブクログ始めは読み難かったのです。 戦前の、ちょっと我儘な所はあるけれど善良で若い美人の奥さんと、主人公の少女の女中の交流の思い出が淡々と綴られて行きます。いったいこの話はどこに向かおうとしているのかと。。。 半分を過ぎたころから物語が動き始めます。戦局の悪化に伴い崩れて行く小さな家で過ごす幸せな日々。善良な人々の、愛情にあふれる交流の中で起こる様々な齟齬。そうしたものが浮き出してきて、俄然ページのめくりが順調になります。例によって電車の中で読んでいたのですが、最後の10ページほどで悩みました。急げば降車駅までに間に合うが。。。。その先で、何かが起こるのは判っていたので、一旦ページを止め、家に帰ってゆっくり読み切ることにしました。 最後は驚くほどの切り返しではなかったけど、それはむしろこの物語に似合っているように思いました。
1投稿日: 2012.12.14
powered by ブクログ淡々と読める本。 長年に渡って家政婦をしていた語り手が、家政婦になりたての頃から振り返りながら半生を綴っていく、というスタイルで進んでいく。 語り手の性格を表すかのように、静かに、淡々と進んでいく物語だけど、語り手が移った最終章、最後の最後でどんでん返しされた気分でした。 読み終わったあのときの気持ちを、なんて言ったらいいかわからない気分。 答えはない、というかたぶん想像するしかなくって、本人にもわかってはなかったんじゃないかと。 映画化が決まったそうで、あの静かな世界をどう表現してくれるかがひそかな楽しみ。
3投稿日: 2012.12.06
