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妊娠カレンダー
妊娠カレンダー
小川洋子/文藝春秋
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総合評価

345件)
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    出産を控えた姉に、毒薬入りのジャムを食べさせる妹。 妹はとても従順で素直。 本来は、世間的にも「おめでたい」ことである妊娠を、姉を苦しめる要因だと感じる妹は、また姉の子供への復讐をする。毎日単調な作業のすえに生まれるものは? 生まれた子供は、妹にとって復讐の証なのか罪悪の象徴なのか。 収録されているドミトリイも好き。 わたし、がハチミツを求めてさまようハチのようだ。 せんせいが同性愛者っぽく思えてしまうのはいかがなものか。

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    投稿日: 2008.08.12
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    以前読んだ小川洋子さんの印象とあまりにギャップがあったのでびっくり。 こういう何かを見せかけておいてやめてしまうタイプの小説、あたしは苦手みたいです。

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    投稿日: 2008.07.05
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     芥川賞受賞作である表題作が一番好き。  妊娠という事実をどこか上の空のままで受け入れている姉と、彼女に使えるかのようなその夫。同じく姉に奉仕するかのような妹はしかし、「毒かも知れないもの」を姉に食べさせることによって、その状況にささやかな変化を与えようとする。  結局最後まで妹にどのような意図とどこまでの本気があったかは解らないが、その変化が本当に起こったかどうか解る前に物語は終わってしまうが、それが著者の考える最も妥当な着地点だったのだと思う。

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    投稿日: 2008.07.04
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    芥川賞受賞の「妊娠カレンダー」を含む3編のストーリーからなる短編集。 なんとも難儀な作品。読了後、不思議な感情に陥る。 なんてことない風景や出来事、自分たちにとって普遍的と思える思想や思考なんかが実はなんとも危ういバランスの中で保たれていていることを強く感じる。 解説にも書いていたけど、世間に対応するさい自己を殺した<素直さ>で保たれている世界っては・・・どうなんだろうか。 <たとえ自分が手にしているもの全部をなくしたのとしても、自分自身は残るわ。だから、自分自身をもっと信じるべきだし、一人っきりでいることを哀しんじゃいけない。> 個人的には現状、置かれた状況を再度、確認しようかね。

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    投稿日: 2008.05.24
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    危ういバランスの上に成り立つ景色。 それを危ういとも感じない世界。 私の生活は、どんなバランスの上に広がっているんだっけ?

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    投稿日: 2008.05.08
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    「妊娠カレンダー」は芥川賞受賞作。 姉の妊娠をきっかけに揺れ動き変化していく主人公の心と姉の姿が面白い。 少し狂気を感じて、人によっては重たい感じもするかもしれないが、個人的には面白いと思ってしまった。 (08年4月16日)

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    投稿日: 2008.04.17
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    3編の短編集。表題作の「妊娠カレンダー」は姉の妊娠を冷めた目線で観察する妹の日記。それがだんだんと不気味な感情を生んで...。3編とも不思議な不気味な雰囲気に包まれています。ラストもはっきりしない感じなので、あとひく読後感です。

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    投稿日: 2008.03.29
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    美しくないとわかっていてもその絵を想像せざるを得ない生々しさ。漂う狂気に気づいたときどきりとさせられる。「夕暮れの給食室と雨のプール」の切ないかんじがすき。

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    投稿日: 2007.12.10
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    2007.11. 前、まだそんなに小川さんを好きでもなかった頃に「妊娠カレンダー」を、読み切れなかった。途中で、どうにもおもしろくないなぁ・・・と思い出して、終わりまでいかなかったのが嘘みたい。おもしろいよ。今よりずっと、毒を含んでて。特に「ドミトリイ」が好み。ホラーかと思う。小川さんの小説に出てくる男性は、なんだか普通では絶対にいなさそうなのに、全然奇異な感じがしないのがすごく不思議。

    0
    投稿日: 2007.12.01
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    どうしても私には博士の愛した数式のイメージがこの作者に根付いている。 だから読んで若干の衝撃を受けた。 「お約束」かもしれないがこれは映像化したらおもしろいかもしれない。 不思議な世界観を感じた。 ドミトリイは何だか切ない。

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    投稿日: 2007.11.25
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    芥川賞受賞作。姉の妊娠をまるで喜べず、姉に毒(と勝手に本人が思う)を盛り続ける妹。 親を亡くし、姉夫婦と暮らす彼女は、「家族」とか「家庭」っていうものがどこか歪んで形成されているのかもなぁ。 赤ちゃんは可愛いもの、愛すべき存在というのは誰しもに自然におこる感情ではないのかもしれない。何しろ彼女は胎児を染色体としてしかイメージできない。 「毒を盛る」とはいえ、まるで激情はなく、むしろ淡々(冷淡?)とした主人公の感情と、刻一刻と変化する姉の体や感情の対比がおもしろい。 他2編の短編も不思議な魅力満載な小川ワールドを楽しめます♪

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    投稿日: 2007.11.15
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    姉妹の表面化してないズレ具合とか、その二人の新しい命に対して希望みたいなものを放棄してる感じが不気味でぐいぐい引き込まれた。静かで美しい文体、ときにグロテスクで小川さんらしい作品。

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    投稿日: 2007.11.12
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    すごく、すごく読みたかった1冊。 それだけに期待も大きかったのか、読んだ後は「なんだこれ?」って感じでした。 独特の世界なんです。 ホラーじゃないんだけど、なんか読んでいてゾクゾクとしてくる怖さがありました。 読み終わった後は「だから何?」ってちょっと突っ込んでしまう私。 この作品の良さが理解出来ない私はまだまだ子供なんでしょうか・・・?! (だって賞取ってるんですよ) いつか他の作品もトライしてみようかなぁ〜と思いましたが、以前に比べるとこの人の作品詠んでみた度数は下がりました。

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    投稿日: 2007.11.02
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    やっぱり小川洋子さんの小説って、もともとこういう空気の持ち主だったんだなーって改めて思いました。初期の作品なのでしょう。ほんとにほんとに、冷たい空気が流れてそれを冷めた表情で横目で見ながら描写しているんだと思う。「妊娠カレンダー」はあの甘酸っぱいちょっと苦いグレープフルーツジャムが、大量に食べたくなる。「ドミトリィ」は結末がないからこそ怖くなったし、「夕暮れの給食室と雨のプール」は小学校が怖くなった。朝の通学で2個も小学校見るのに。

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    投稿日: 2007.10.19
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    妊娠のイメージは一般的にピンクなどのパステルカラー、毎日楽しいなどという明るいイメージが付き物であるが、そうではない「妊娠」の話。

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    投稿日: 2007.08.30
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    お姉さんのヒステリックと食欲が読んでてちょっと怖かった。 そんでもって、グレープフルーツジャムをわざと姉に食べさせ続けてたんやったら、その主人公ももっと怖い。

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    投稿日: 2007.08.23
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    自分のお腹に宿る生命を愛しみ、その誕生を心待ちにする。妊娠とはそういうものだと思っていた。「妊娠カレンダー」の姉の感覚はそれと対極に位置する。彼女にとって妊娠は体を変化させる要因であるにすぎない。もしくは妊娠を、自身の妊娠として実感できていないのかもしれない。 両親を早くに亡くした姉妹。主人公の姉は妊娠を控えていた。主人公と妊婦の姉と義兄の、妊娠から出産までの日々を綴る。 農薬入りのグレープフルーツジャムを作る妹の悪意はどこからくるのか。妊婦の姉がどんなに理不尽な我侭を言っても、決して反抗せず従ってきた主人公。そして夫の義兄もまた従順であった。主人公はそんな義兄に対し「苛立たしい気持ちさえする」。義兄に対する苛立たしさは同時に、彼と同じように姉に対して従順な自分自身への苛立たしさでもあったのだろう。グレープフルーツジャムを作り続け姉に食べさせる行為は、姉に従順な自分自身への反抗であったのではないか。 当たり前に繰り返される日々に目を凝らし、そこに潜む闇を微細に描写する。小川洋子さんは天才だと、改めて実感した一冊です。 同時収録の「ドミトリイ」もまた秀逸。

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    投稿日: 2007.07.27
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    読むと猛烈にお腹が空く。一人でいろんなものを食べたくなる。満腹になって苦しいんだけど、また読んでしまう。そんな物語。

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    投稿日: 2007.06.10
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    3つの短編が載っているが、どれも、そうだったんだ〜といったすっきりとした終わり方ではなく、あとは自分で想像するしかない。ごくごく小さな、細かいことを、作者独特のタッチで描いていて、なんだか、実は大したことなのかも知れない、と感じてくる。

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    投稿日: 2007.04.14
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    妊娠とは何だろう、と考えさせられました。妊娠によって変わるのは、妊娠した人なのか、それとも周囲の人なのか。そして、赤ちゃんとは何なのか。命なのか物体なのか。 僕にはあまりしっくりくる文体ではありませんが、妊娠という一見「めでたい」出来事の裏にあるどす黒い一面を、上手く書いているその技術には感服します。 もしかしたら、これは小説ではなくて、詳細なノンフィクションなのかもしれない、と思ってしまうほどの描写力は、卓越したものがあるのではないでしょうか。

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    投稿日: 2007.03.28
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    これ、凄い。ぐちゃぐちゃした気持ち悪いような感じがあるんだけど、血がぶしゅーってなって貧血起こすような気持ち悪さじゃないのよ。さっき食べた夕食吐きそうな感じ。

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    投稿日: 2007.03.24
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    博士の愛した数式で小川洋子が好きになり読んだのだが、短編は私には合わなかったみたいです。 「どうなのどうなの??」と続きが気になるところで終わってしまう。 余韻が楽しめればいいのだけど、そこまで話に引き込まれるわけでもなくて、ちょっと残念でした。

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    投稿日: 2006.12.12
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    「博士の愛した数式」で有名な小川洋子の作品である。 これはちょっとぞっとする話で、私はあまり好きではなかったです。 はまるひとにははまる。

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    投稿日: 2006.11.25
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    姉が妊娠する。つわりが激しく、料理の匂いも我慢できない。そんなわがままに付き合う妹はひそかにおなかの中の赤ちゃんに復讐を行う。 文庫本の表紙の絵がきれいなので買ってみましたが、内容はまったく反対で、どろどろしたものが渦巻くようないつもの小川洋子の世界でした。博士の愛した数式を最初に読んだので、その世界を求めたのに、それ以外の本は別の世界だったんですね。 2006.8.16読了

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    投稿日: 2006.11.18
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    ちょっと独自の世界観があって、きらいではない。初めて小川さんの本を読んだが、他のも読んでみたいと思った。

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    投稿日: 2006.11.10
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    『わたしの妊娠体験なんて、スーパーで買ってきた新鮮な玉ねぎそのもので、何の書かれるべき要素も含んでいない。その玉ねぎが床下収納庫で人知れず猫の死骸になってゆくところに、初めて小説の真実が存在してくると、わたしは思う。』この部分にマーカーで線をひいた。

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    投稿日: 2006.10.21
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    小川洋子の作品で 初めて読んだもの。 高校生のとき。 最初はなんともいえない たゆたう表現にとまどった。 それから四年後 妊娠カレンダーの著者とは 知らずにのめりこんだ。

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    投稿日: 2006.09.20
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    命の神秘をグロテスクでミステリアスに描いています。私が本当に小川さんを好きになったきっかけの本。 妊娠中は読まないほうがいいよ(笑)

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    投稿日: 2006.09.14
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    日常に潜む狂気を書かせたらこの人の右に出るものはいないと思う。 妹の狂気は誰の心にも潜んでいるものだ。

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    投稿日: 2006.08.08
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    短編集。はっきりしたオチがあるわけではないので、ミステリ好きには物足りない感もあるけど、静かに染みてくる狂気はなかなか。 「ドミトリィ」がいい。

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    投稿日: 2006.07.11
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    情景描写がリアルすぎるかな。どんな場面か想像することなく、ダイレクトに見えてしまう。しかし、シチュエーションを想像しなくてすむ代わりに、人間の持つ本能を考えさせられる。これは狙いなのか?普通の日常を描いているのに、怖いのよ・・なぜか(^-^;

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    投稿日: 2006.06.04
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    とてもとても愛しい。 とてもとても難しい。 とてもとても悲しい。 とてもとてもよくできた話です。小川洋子という作家とこの作品で出会えて救われました。

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    投稿日: 2006.06.03
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    妊娠って、実はすごいことで、でも怖いことだと思う。どんどん体が変わっていくわけだし。 この作者の淡々として、ちょっとひやりとした現実味のない文章が妙に好き。

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    投稿日: 2006.04.05
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    家の中にあるものがヒントになって小説が書ける。才能だなーと思う。書ける人は何だって書けるんだと思った。

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    投稿日: 2006.03.15
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    恐らく妹のつけている日記なのだろう。出産を控えた姉とその妹、姉の夫による、出産までの記録である。 姉は元々神経質で、約十年間に渡って精神科医の所に通っているが、妊娠の為にそれがよりいっそう激しくなっている。匂い全てに異常に敏感になり、苦しがって泣き始める。ものが一切食べられなくなる。その時期が終わると今度はひたすらに食欲が増し、「食べる」というよりも、食べ物を休み無く「補充する」というのに近い行為を繰り返す。土砂降りの夜に、急に枇杷のシャーベットが食べたいと訴えだしたりする。 妹と、姉の夫の二人はその姉の要求にただ付き合う。弱々しい印象のある夫は、雨の中シャーベットを探しに出かける。特に妹はとにかく姉の神経質さに反抗しない。泣いている姉を慰め、化粧品や石鹸等の匂いのあるものは残らず姉から遠ざける。キッチンを使う事をやめ、庭で食事をとる事にする。一転して食欲を回復させた姉の為に、空っぽ同然のキッチンストッカーから、どうにか食べられそうな物を見つけようとする。 しかし、その妹の行為から、ほっと安らぐような優しさや温かさを感じとれないのは何故だろう。そういえばこの物語自体、妊娠を通じて心に感じられる喜びや決意や責任感、困難だけれど胸を震わせるような期待感等で埋め尽くされてはいない。(そういう話だと思っていたので今まで手に取らなかったのだが)むしろそういうものは全く描かれていないに等しい。 姉を通じて妊娠の経過を知る妹も、その当事者である姉も(取り乱しはするが)どこか冷静だ。「おめでとう」の言葉に辞書をひき「それ自体には、何の意味もないのね」とつぶやき、赤ん坊を「染色体」としてしか認識できない妹や、産まれてくる子供がもしも指がくっついていたりシャム双生児だったりしたならと恐ろしい想像を、しかも普段の他愛もない話をするのと同じように、次々に口にする姉の様子を見ると、妊娠とは実態の掴めない、ぐにゃぐにゃ変形する、未知の巨大な生き物のように思えてしまう。五ヶ月目のお祝いの日にも、盛り上がっているのは夫の両親だけで、当の三人だけが実感から隔離され、周りを取り囲む人々の笑顔を、まるで硝子一枚隔てて眺めているかのような、互いの感情の呼応しなさを感じる。 子を持つ事が、即喜びばかりでない事は私にも解るが、しかしこの状況にはそれ以前のものを感じるのだ。真っ白で柔らかな産着や笑顔、新しい命というものよりは、白く冷たい病院のタイルや手術道具等の方が何だかしっくりくる。 妹は、日に日に食欲を増幅させる姉の為に、大量のアメリカ産グレープフルーツでジャムを作る。妹の頭の中では、そのグレープフルーツには防かび剤PWHが使われており、染色体をも破壊するという警告の記事と、目の前のジャムの鍋と、姉のおなかの中の子供の事とが結びつく。そうと知りながら姉にジャムを作りつづける妹の行為は、呪いをかけている姿を連想させた。しかし「呪い」などという、強烈で濃い感情を伴うものに例えるのは誤解を招く事かもしれない。そういう毒々しい感情が露わにされているわけではないからだ。姉の体内でPWHは着々と堆積していく。しかしそれはきっと目にはっきり見える変化としては現れてこない程度であるだろう。その微かな破壊を知っているのは妹だけだし、その進行状況は恐らく赤ん坊や姉よりも、妹の頭の中で明瞭な映像として膨れ上がっていくものだろう。ささやかな侵蝕は、実体は伴わないものの、むしろ妹の中で進行していくものかもしれない。

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    投稿日: 2006.02.09
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    とても大好きな作家さんです。この人の作り出す世界感がわたしの身体を透き通るように消し去ってくれるんです。 読みながらいつもそう思います。好き。 個人的には母が亡くなる直前に読み終わった最後の本でした。

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    投稿日: 2006.02.08
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    あれ、誰だったっけ? ほら、狭い空が広がったところを抜けたところに昔チョコレートを作っていた機械が置いてあって、今でも錆びた匂いに混じって微かにチョコレートの匂いがするって言ってた人! って思わず友人に尋ねてしまいそうになります。それくらい印象的な作品。(『夕暮れの給食室と雨のプール』より)

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    投稿日: 2006.02.05
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    芥川受賞作と言うことで手にとりました。さすが芥川賞、むずかしい・・・なぜ芥川賞って難しいんでしょう?当の芥川氏の著書は近代文学の中では読みやすいエンターテーメントな作品が多いのに・・・不思議です。

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    投稿日: 2006.01.09
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    一番初めに読んだ小川洋子はこれだった。妊娠カレンダーの淡々した私にとても共感してしまって、破壊された赤ん坊を見たい、と思った。

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    投稿日: 2005.12.03
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    表題他全3編まったりとした雰囲気で独特の表現が面白い。のんびり読みたい午後のひと時の1冊。05.11読所要日数4日

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    投稿日: 2005.11.28
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    女性向け。妊娠のエッセイだと思ってたら全然違った。女性が主人公の短編3つで、それぞれが本当は孤独じゃないはずなのに孤独な人たちが淡々とでも非日常な風景と出会う。現実味と非現実のバランスが良い。

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    投稿日: 2005.11.11
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    妊娠も出産も祝福に満ちあふれている。多分経験のないひとならそう思うかもしれない。経験のあるひともそう思うかもしれない。 でも必ずしもそうではなく、たくさんの黒い部分を持っている。 恐怖、不安、体調不良。 妊婦に読ませたくないというレビューもちらほらみかけたけれど不安に思っている妊婦にはぜひ読んでほしい。自分だけではない事を知ることができるのだから。

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    投稿日: 2005.08.09
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    レビューはブログにて。http://tempo.seesaa.net/article/4248721.html

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    投稿日: 2005.06.10
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     小川洋子さんの短編集。ただ芥川賞受賞作の「妊娠カレンダ−」の方は、まあ、ふつう。すごいのは同時収録の「ドミトリイ」。お話はこんな感じ。「東京の古い学生寮を、主人公は数十年ぶりに訪れる。そこには相変わらず、手足のない老管理人が住んでいた。ただしその学生寮に、学生はもう誰一人住んでいない…。」この手足のない老管理人が水を飲む場面の描写なんかぞわぞわしてくる。で、物語自体に含まれた謎も気になる。物語のうねり、そしてカラダがむずむずするような描写が合わさって、傑作短編ができあがった。(けー)

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    投稿日: 2005.01.08
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    小川洋子のファンは多い。きっと女性に。  というのも、その語り口によるものだろう。 この『妊娠カレンダー』にも小川洋子らしい語り口は健在。 静かで、流れるような文体。 『ブラフマンの埋葬』にしても、『博士の愛した数式』にしても、その静かで、やさしい雰囲気が漂っていた。  そしてこれは、静かで、冷ややかな空気が漂っている。  ひんやりとした、冷たい、空気、よりも重量のある水?が、流れているような、その流れに流されるように読まされる。そんな作品だった。  妊娠カレンダーはいまいちしっくりこなかったけど、ドミトリィや、給食室の話は、だいぶそのひんやりとした雰囲気に慣れてきたのでうまく流れることができた。 ひんやりとしたその空気に、女特有の冷たさというか、冷酷な部分を好む女の性?を感じられた気がする。

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    投稿日: 2004.12.09