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妊娠カレンダー
妊娠カレンダー
小川洋子/文藝春秋
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総合評価

343件)
3.4
39
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135
34
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    読むきっかけがある男性芸人さんがおすすめしていたこと。タイトルから男性が進んで読むものだとは思わなかったためどんなストーリーなのか気になりました。 「妊娠カレンダー」 もちろんフィクションとはわかっているのですが、どうも合いませんでした。登場人物全員、誰にも共感ができませんでした。妊婦検診の様子もちょっと違うのではと思いました。 「ドミトリィ」「夕暮れの給食室と雨のプール」 グッと引き込まれるストーリーでした。こちらの方を表題作としても良かったのではないかと思いました。

    0
    投稿日: 2025.10.30
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    「博士の愛した数式」がとても好きだったので期待してました。 でもこの作品はだめだ。私には合わなかった。 気持ち悪い。シンプルに好きじゃなかった。

    0
    投稿日: 2025.10.20
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    妊娠した姉との日々を綴った日記。自分本位な姉に振り回される日々。大きくなる姉の腹に歪んだ好奇心だけが大きくなる。 -農薬のかかった食べ物は胎児に影響するのか- 引き込まれる文章だが、真意が掴めそうで掴めず不気味、不思議が残った。

    0
    投稿日: 2025.10.19
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    初めてこの本を手に取ってから数ヶ月、あまりにも気になるので購入。 ネタバレになるのであまり詳しく書けないが、どこか薄気味悪い話だった。 そして読み進めるうちに第一子を妊娠中の嬉しそうな姉を思い出した。 「今、(赤ちゃんが)拳くらいの大きさで〜」と、妊娠した事が無い私にも分かるように説明してくれたっけ。それでか、あとがきを読んで薄気味悪い理由に納得がいった。 もしかしたらあの家は「家族」として機能していないのかもしれない。両親が亡くなっているのも気になるし、姉が精神科に罹っているのも読んでいる私の不安を煽る。 恐らく自分は何か大事な事を見落としているのかもしれないが、読んでも分からないのだから仕方ない事にした笑 (それにしても義実家への妊娠報告が早すぎでは? 30年以上前の話だし、当時は普通だったのかな) 全体的に難しい話が多かった。 私の語彙力じゃ表現できないけれど、どのお話も繊細で言葉が綺麗だと思った。一番好きな話は「ドミトリイ」。 最後の話の給食室を覗くお父さんは生きていくには繊細過ぎる気がする。毎日ジャムを食らっていたあの姉よりも。

    0
    投稿日: 2025.10.16
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    独特な視点から描写される世界。静かな嫉妬。妊娠=幸せという図式が必ずしも成り立つわけではない、幸せの裏側。他2篇も不思議な感覚の物語。キレイな文章。

    0
    投稿日: 2025.10.10
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    このレビューはネタバレを含みます。

    妊娠カレンダーに関しては、生命の誕生って奇跡的で喜ばしい事なのに、誰も心から喜んでいないような気がして怖くなった。 全体的に暗い印象をもつ物語で作者さんが何を思って作品を書いたのか読み取れない。だけど、作中の表現、文章が綺麗で透き通ってるなって思いながら読んだ。

    0
    投稿日: 2025.09.08
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    なんと感想を表現したら…と読み終わった後に考えたが あとがきに書いてある「生命」がキーな話なのかなと思いました。 今でこそ子育ての大変さを訴える媒体が増えているので珍しいことではないが発行された1994年には「妊娠」という現象、 変わってゆく身体に対しての不快感でもない様な…なんとも言えない気持ちを表現ている。 当時からすると価値観に反した非常に斬新な作品なんだろうなと思いました。 人は生きてゆくと、身体は変わるし、歪に老いて行く。変わってほしくない今と、変わってほしくない過去に囚われた短編集なのかなと思いました。

    4
    投稿日: 2025.08.12
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    姉の妊娠中の記録が、妹目線で描かれている。赤ん坊の染色体を破壊させるかもしれないグレープフルーツジャムを毎日のように作り、食べさせる描写には震えた。ものすごく怖いのに、頁を捲る手が止まらなかった。

    0
    投稿日: 2025.08.04
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    一年ぶりくらいに小川洋子の本を読んだけれど、ほんとうに美しい文章を書く…。文章が澄み渡りすぎて、きれいすぎて、なんかちょっと官能的な、怖いような。うまく言えないけど、なんせうっとりしてしまう。透きとおった悪夢って表現がほんとうにぴったりな一冊だった。夢が現実かわからない、ほのぐらい境目をたゆたうような感覚。はあ。良い。ため息出るわ。表題作がいちばんわかりやすくてすきだったけど、三篇ともよかった。溢れ出る小川洋子感。特に理由もなく、小川洋子作品を読んでいなかったけれど、ひさしぶりに読んだらまじでよかった。これからいっぱい読も。

    0
    投稿日: 2025.07.31
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    小川洋子さんの作品は何冊も読んできたが芥川賞受賞作は読んでいなかったなと手に取った。表題作を含む3編を収録。いろいろな形で身体的な何かと不思議な感覚を描く作家さんだなと思っていて、「ドミトリイ」は特にその後の作品につながる片鱗を感じる初期作品という感じで良かった。表題作で扱われる「妊娠」もまさに身体の変性にまつわる不思議で不気味な体験そのものという感じなので、なるほどこれが小川洋子の芥川賞受賞作か、と納得の作品だった。

    0
    投稿日: 2025.07.31
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    密に関わっている他者ではなく、自分からは遠い存在の他者を通して、自分というものを映し出す。そんな作家性を感じた作品たちだった。 台詞回しが独特で、描写は身体的なものが多いので、なんとなくなじめなさがある。 自分の心に秘めておく分にはちゃんとした背景のある悪意も、それを言葉にしたり公にしたら、途端にとてつもなく悪いことのように感じるかも。 他に選ぶ道がないと思っている時、自分の中に潜む黒い気持ちなんて誰かに言おうと思わないよなあ。

    1
    投稿日: 2025.07.17
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    中学の時に読んだ本を気になってもう一度読んでみた。あの時には分からなかった「妊婦の様子と、経過の恐ろしさ」が、妊婦の妹を通して不気味に描かれていて、三十代になった今読むとただただ妊婦の理不尽な要求の印象と、最後に妹が夢想する「破壊された赤ん坊」の印象が強烈に残る。 解説にある「人間はそんなヤワじゃないからおそらく姉の赤ん坊は普通に生まれてくるだろう」の一言と、「小川さんは一児の母」の情報に読後の不気味さが和らぐので、解説は読んでおいたほうがいい部類の本だと思いました。

    0
    投稿日: 2025.07.07
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    このレビューはネタバレを含みます。

    2回読みました。1回じゃ正しく理解できなかった。 ○妊娠カレンダー 単純に言ってしまえば復讐譚なのだけど、そんな単純な言葉で表現しきれないのがこの作品。 印象的だったのは、匂いに過敏になった悪阻中の姉に配慮して、主人公は庭で夕飯を作るのだが、食べられない姉をあざ笑うかのように、主人公は炊飯器の湯気が立ち上ってゆくさまを心安らかに眺め、大きな口を開けてシチューと一緒に「夜の闇」を飲み込むところだ。主人公は夜の闇とともに、心の闇を飲み込み自分のものとする。 かたや、悪阻が終わった姉は「彼女の存在そのものが、食欲に飲み込まれてしまったように」食べつくす。その姉のお腹には主人公がDNAを壊す(と信じ込んでいる)PWHにDNAを壊された(と信じ込んでいる)胎児が存在する。 どちらも体内に不気味なものを内包する姉妹。その外にいる義兄や姉が頼りにする精神科医の存在感・生命力の乏しさ。そして、この人たちが日陰なら、燦々と輝く日差しに照らされた明るい庭のような存在である義兄の両親。 こういった対比が複雑に絡み合った、すごい作品。この不気味さは小川氏ならではですね。 ○ドミトリイ 2人の大学生が失踪した寮が主モチーフだが、副モチーフとして蜜蜂と巣がくる。 夫が外国に単身赴任中の主人公は、夫からすること・持ってくる物を指定されるものの、そちらはほったらかして、寮の先生のためにお菓子を片手に日参する。 初めて読んだときは、なぜ「蜜蜂の巣」が出てくるのか分からなかったが、読み返してみて、主人公も寮という巨大な巣に誘い込まれてしまった蜜蜂なのだと気づいた。彼女は“夫”という巣に花の蜜を持っていくべきなのに、働き蜂が花の蜜をせっせと巣に持ち帰るように、主人公は食べきれないだろうと思われる量のお菓子を寮の先生に毎日持っていく。それはそれは懸命に。 ○夕暮れの給食室と雨のプール 子供の頃に雨のプールで泳がされたことと、一見非衛生的と見える方法で給食を作る様子を見てしまったことが強い記憶となって残っている宗教勧誘員の男。彼はそれを“集団の中に自分をうまく溶け込ませるための通過儀礼だった”と言う。通過儀礼=大人になるためのステップ。嫌なものを受け入れることが大人になること。 いくら手足をバタつかせても水の中に沈むしかなかったという男と、バツイチで年が離れていて司法試験に10年落ち続けているダメ男の婚約者が重なる。

    2
    投稿日: 2025.07.06
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    小川洋子さんは初読みだった。 なるほどこういう作家さんかと今さらながら知った。 本の後ろを読んで、買ってみたが表題作である妊娠カレンダーはほのぼのした、妊婦の日記ではなく、なんとも言えない鬱屈した気持ちというか、妊婦が全員朗らかな気持ちでいるわけではないとか、なかなか鋭い切れ味のお話で好みだった。 他の2作も良かったが、これは私の解釈が追い付かない部分もあった。これが小川洋子さんという作家という事が分かり、読んで良かったと思う。

    11
    投稿日: 2025.06.24
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    このレビューはネタバレを含みます。

    【妊娠カレンダー】 主人公は大学生の妹。姉夫婦と一緒に住んでいる。心が脆い姉が妊娠。 大きな病院ではなく,近くの産院で出産するという。そこは幼い頃姉と裏から中庭に入り込んで遊んでいた古い病院。窓から覗いた器具や、3階の病室の窓辺にいる女が記憶にある。 姉のつわりが酷くなってくると、色んな我儘を言い出す。食べるのも,家の中の匂いも。 姉がいる時にご飯を作れないし、食べれなくなる。 急にふっと長く続いたつわりが終わった。 途端にいろんなものをたくさん食べるようになってしまった。 仕事で大量に貰ったグレープフルーツを皮ごとジャムにすると,姉はパンにつけずジャムそのものもを食べてしまう。グレープフルーツの皮の表面にはアメリカて体に良くない農薬などが使われているだろう。でもそれを知らずに、姉はどんどん食べる。お腹の子にどんな影響があるんだろう? 【ドミトリイ】 旦那が海外に単身赴任中、年がうんと離れた従兄弟から15年ぶりに連絡があった。 大学生になるが、お金があまりなく下宿先がみつかならい。昔大学生の時に住んでいた学生寮(ドミトリィ)を紹介してほしい。 6年ぶりに学生寮に連絡する。そこは学校運営でなく、一般のアパートのような寮のようなところ。だがもう古くなり、住んでる学生もほぼおらず、シェフもいないし、大浴場も2日に1回しかお湯を張らなかなってしまったという。しかも、寮の管理人(オーナー)は両手と片足がない。それでもいとこはお金がないからと紹介して欲しいといって入寮。 何度かいとこに会いに行くけどいない。そしてほかの入寮生も見ない。 どうも、この寮に住んでいた学生がするっと行方不明になり、悪い噂が立って少なかった入寮生も去っていったらしい。 そして何度もいとこに会いにいくけど全然会えない。 そして、管理人はどんどん衰弱していく。鎖骨と顎でいろんなものを持ったりする不自然な姿勢を続けていたから、肋骨がいびつに歪んで心臓と肺を圧迫しているらしい。いつか骨が心臓や肺に刺さるかも? 【夕暮れの給食室と雨の日のプール】 古い家に引っ越した。司法試験に何度も落ちてる彼と結婚するのでお金がない。けど、犬のジュジュと生活できるのはこの家だった。 2人で式を挙げる数週間の間、ひとりで家を整える。お風呂の壁のペンキを塗ったり、花壇に花を植えたり。 ある日、男と小さな子がインターフォンを鳴らす。 何も持ってない二人。どうやら宗教の勧誘? でも、パンフレットも持ってない。「難儀なことはないですか?」 ジュジュと散歩していたら、その親子?とまた出会う。 小学校の給食室の前の道路で、学校をじっと見ている。 どうやら子供が給食室が好きで、よく行きたがるらしい。 その小学校は千人ぐらいいて、その給食をそこでつくっているらしい。大がかりな設備で調理されているのをみたり、その器具が洗われていくのを見たりするのが面白いらしい。 だけど、男性は給食室での調理風景をみて気持ち悪くなってごはんが食べられなく案った時期があった。 なんて感じのお話が3編。 全部、すっごい湿度の高い薄暗い空気感がある話。 めっちゃ芥川賞っぽいな~て思った。

    0
    投稿日: 2025.06.02
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    妊娠した姉への歪んだ愛情が毒入りジャムとなり胎児へ届く__不穏な空気を纏った短編集 美しい描写に引き込まれながら読み進めると、どろりとしたものが喉元を通るような不快感がやってくる。これは悪夢か現実か?曖昧で朧な結末が私たちを話の中に閉じ込めてしまうようだった。

    7
    投稿日: 2025.05.25
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    このレビューはネタバレを含みます。

    んー正直に話すと、私には分からなかった、としか言えない。まだまだ読書が趣味ですとも言えないレベルなのかもしれない。何が言いたいのか私には理解出来なかった。多分、表現する語彙力も、無いのだと思った。ただ、表現や文章が綺麗で柔らかな印象を受けたのと、2章のドミトリィという話しでは先生が居なくなった生徒さんの事が好きだったのかぁと勝手に想像してしまいました。あと、血だ!ってなった時に「え、ミステリー!?屋根裏に死体!?」とアホのように思ってしまった私は恥ずかしい人間です。 まだまだ読書量も理解力も想像力も足りないのかもしれません。他の方の感想を読んで気味が悪いとゆうのも思わなかったので。ただ、読書は自由ですからね!これからもどんどん本は読んでいきたいと思います。 よく分からない感想で申し訳ない。

    4
    投稿日: 2025.05.23
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    女性ならではの感性が、女性の私でも驚くほど鋭く反映されていて、もうそれだけで大変恐ろしく感じた。結婚して妊娠している姉と、姉の夫と、自分というなんとも居心地の悪い同居は行き場のない、名前のない悪意を生み出しているように見えた。『妊娠』という行為や母親という役割は時に女性の足枷となるが、本作や湊かなえの「蚤取り」においては独り身でいる身近な女性の劣等感を引き起こすものとして描かれる。女性としてこれまで求められてきた役割を、出来るけどやらない、と、出来ない、では大きな違いがある。そうした心の柔らかく弱い部分に触れる作品は、自分の隠してきた部分や見ないようにしてきた部分がそのまま映し出されるようで、決して読んでいて気持ちのいいものではないが、知らず知らずのうちに手にとっているものである。

    1
    投稿日: 2025.05.13
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    ラランドのニシダが紹介していたので読んでみた。 気味悪いのに描写の精巧さや文体が心地良い。比べるつもりはないけど、村上春樹を読んでいるみたいで、読書そのものの時間を楽しめた。 ストーリーというか、内容は不気味で懐かしくてよくわからない感じだったけれど、あとがきで急に現実に戻され、その感覚がエンタメとしてめっちゃ爽快で読み応えがあった。

    1
    投稿日: 2025.05.07
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    このレビューはネタバレを含みます。

    妹の視点で、妊娠した姉とその周りの人々の変化を描いた作品。 つわりに苦しみ、精神的に不安定になっていく姉の様子が、妹の冷静な視線を通して描かれており、姉を心配する一方で、妹はどこか常軌を逸した行動をとるところがポイントかな。 妊娠から出産という喜ばしい出来事とは反対に、不気味で不穏な空気が漂ってました。

    0
    投稿日: 2025.05.04
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    表題作の「妊娠カレンダー」はゾッとして面白かった。三篇とも結末までいかずに文体で勝負しているように思えて、純文らしい感じだった。小川洋子さん、個人的にあんまり合わないかもしれない…。

    0
    投稿日: 2025.04.25
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    短編3篇。結構昔の芥川賞作品ですね。ラランドニシダが、本がボロボロになるまで読んだというので、興味を持ちました。 自分は小川さんの作品は「博士の愛した数式」以降しか読んでいないのですが、いつも優しく、ふわふわとして、不思議なイノセンスを感じる、エンタメとも純文学とも言えないイメージを持っているのですが、本作品は、かなり純文学よりかなといった印象でした。 それぞれの主人公たちは、社会性もあり、周囲ともうまくやっているはずなのに、孤独感がつきまとっている。 表題作品の最後、「破壊された」という言葉が気になって仕方がない。

    8
    投稿日: 2025.04.19
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    風景や物の描写がとんでもなく丁寧。静謐で幻想的な情景を下地にして、嫌悪感と共感が入り混じる人間のグロテスクさが描かれていくのが、心地よい違和感というか、幻想的な世界に浸っているようでとても好きです。

    1
    投稿日: 2025.04.11
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    姉の妊娠に対する妹の日記。 あとがきにもあったけど、ヒトのお腹にヒトが入ってるってSFぽさがあるなぁと思った。 染色体異常を起こすと言われる防腐剤を含んだグレープフルーツのジャムを作り食べさせた妹。 喜んで食べていた神経質な姉。 きっと妹は、生まれてきた子がちょっと平均より身長が低いとか、そういう異常ではない事でも染色体異常だと思い、やっぱり効果はあったんだ…と思うだろう。 きっと姉は、妹が防腐剤を“妊婦”である自分に食べさせていたと知った時、心を病むだろう。

    0
    投稿日: 2025.04.04
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    だいぶ昔に読んだ本です。確か、芥川賞をとった作品だったかな。妊娠している姉に、悪阻に良いからと、防腐剤が母子に悪影響を及ぼす可能性があるグレープフルーツを搾って飲ませてた話だったと記憶しています。読後感がゾッとしすぎていて、そういうのが好きな人には良いかも知れません。

    0
    投稿日: 2025.03.30
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    表題作『妊娠カレンダー』のみ取り急ぎ読了。 小川洋子さんの小説久々に読んだら、やっぱり世界観や雰囲気が好きだなと改めて感じた。 妊娠した姉に対する、妹目線の観察日記。妹は未婚で学生なこともあり、結婚や妊娠が未知のもの。特に妊娠は日々身体も精神状態も変化していくもので、ある意味得体の知れない不気味さを感じている妹の感性は少し理解できるなと思った。

    5
    投稿日: 2025.03.28
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    夕暮れの給食室と雨のプールが1番好きだった どの作品もはっきりしたラストは描かれず、文学的な表現で締めくくられる 私には難しくて、なぜそのようなことを表現したのか、はてな ただ、1Q84のときのような不完全燃焼感、筆者への苛立ちはない それは作品全体の雰囲気のためなのかな 柔らかく霧がかった、温かいようでどこかじめっぽさがある、雨の水彩画みたいな雰囲気だから、最後のもやもやも作品の一部として受け入れられた 結末をはっきり知りたい!という焦燥感がない 不思議と満足感がある これが小川洋子の作品なのかな 角田光代のクリアな世界とは全然違う 最初は馴染めなかったけど、3作品読み終わった頃にはその世界観が心地よく感じた 小説の中で日常の風景が言語化され、自分の日常も言葉で表現したら特別なものなのではないかと感化されるのことが私は好きみたい ただ流れていく日常も、改めて表現しようとする、捉えようとすると、特別なものに感じられる気がする ふわっと心が浮遊するなだらかな高揚感に幸福を感じている気がする だからSFとかじゃなくて、日常を描いた小説が好きだったんじゃないかな そういうことに気づかせてくれたのも、この作品の雰囲気のおかげなのかな

    3
    投稿日: 2025.03.22
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    小川さん2作目。今村夏子さんを思わせるゾクッとした話、だけど、こちらの方が先ですね。「妊娠カレンダー」はとにかく先が気になってドキドキした。妊娠すると、本人もだけど周りも戸惑うよね。今までと違う人になってしまったような気になるかも。密かに実験的なことをしてしまう妹の気持ちも少しは分かるかな〜「ドミトリイ」はもっと不思議な話だった。スウェーデンにいる健全な夫の世界には、もう戻れない気がするなぁ

    0
    投稿日: 2025.03.17
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    短編集。 何かで取り上げられていたので読んでみた。 妊娠カレンダーは、姉夫婦と同居してる妹目線で、妊娠している姉の理不尽な要求に答えたり、姉の変なこだわりを描写してるのですが、姉がそもそも変人な気がする。 ドミトリィという話は、両手片足がない寮の管理人さんが出てきて、その寮で行方不明になった男の子の話や自分のいとこと連絡が取れなくなって、で、管理人さんの部屋の天井のシミが広がって屋根裏には蜂の巣があった、、、なんなの、これ。 結論とか結局どうなったの?!ってのが分からなくて気持ち悪い。。

    1
    投稿日: 2025.03.02
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    小川洋子さんの作品は初めて読みました。情景がリアルに想像できるような文章が印象的でした。なんでこんなことをするんだろう?と理解しようとすればするほどわからずだったけど、淡々としたひんやりと心地よい冷たさの文章にいつの間にか魅了されてました。優しさの中の冷たさ、常識の中の非常識相反するものが混在して社会は成立している矛盾を感じました。

    0
    投稿日: 2025.03.01
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    芥川賞受賞作であり、3つの作品が納められた短編集。表題作でもある「妊娠カレンダー」が個人的には最も読み応えがあった。妊娠した姉に染色体を破壊するというグレープフルーツのジャムを食べさせるという部分がすごくシンプルに描写されていて余計におぞましさが際立ったように感じます。文体も色々な物事について具体的に書かれているため、想像しやすいのはもちろんですが、異様な感じがするという体験ができました。

    4
    投稿日: 2025.02.27
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    「妊娠カレンダー」は姉が妊娠して出産するまでの出来事が妹目線で語られている。静かさの中にある人の悪意みたいなものが描きだされていると感じた。 妊娠・出産という事象にもかかわらず、姉も義兄も妹もどこか嬉しそうな様子ではなく、妹も姉の助けになればと思っていたはずなのにいつの間にか悪意の萌芽が意図せずに自然に生まれたという感じがしました。そして妹がどこまでいっても無感動な観察者といった感じがひしひしと伝わってくるようでした。

    8
    投稿日: 2025.02.19
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    小川洋子さんの作品は初めて。 芸人さんがテレビで絶賛していたので気になって読んでみた。 描写が細かくて丁寧で、言葉が美しい。 でも、ちょっと冷たい感じが私は苦手。 これが小川洋子さんの書き方なのか、この作品がそうなだけなのか… 別の作品も読んでみたい。

    0
    投稿日: 2025.01.27
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    小川洋子の『妊娠カレンダー』を読んでいなかったので、今さら読んだ。ほんとにこの人は美しい文章を書くな… 薄い氷みたな冷たくて繊細で割れたらその角が尖ってる感じの 文章の美しさを咀嚼していたらいつのまにか終わってる。ただ妊娠と出産という事象に祝祭的な雰囲気は作中ほぼ見られず、そこには強く惹かれた 私も妊娠・出産という事象に対しては正直なところ気味が悪いと思っている。主人公”わたし”の姉が言ったようにに人間の身体のなかで10ヶ月もの長いあいだ、もうひとりの人間が育つという事象が私にはどうにも良きことだと思えない。ひたすらにおそろしいと思う 妊娠・出産に対しては村田沙耶香もSF的な設定を用いて性別による非対称性などを描いたりもしているが、やっぱり安直なめでたきこと、という内容よりもそのグロテスクさやシビアさを描く作家が私は好き

    5
    投稿日: 2024.11.24
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    どれも静かに不穏な空気感な短編集。描写の繊細さがすきです。 表題作の妊娠カレンダー、度肝を抜かれました。姉が狂って妹と義理兄がいなしているような描写でしたが、、、。私は主人公も十分怖い。言葉こそ寄り添っているけど中身は別にあり、妊娠カレンダーって妊婦本人がつけてるのではなく妊婦になり狂ってる姉の変遷を時系列に日記にするのって狂気! 偶然ジャムブーム真っ只中の私ですが食べるたびにこの本を思い出しそう。 ドミトリイも難解でしたが、先生の特徴が明かされるタイミングが驚き。主人公が未来に向かって動かず縫い物したり看病に熱心になったりモラトリアムにもほどがある、、、。  謎が残りもやもやがあります。  給食室の話もよかったです。 この人と出会って新しい日常へ 向かう感じもこの本ではじめて希望が、見えた気がしました。

    5
    投稿日: 2024.10.02
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    読むのが遅かったかなぁ。小学生のときくらいの原初的な感覚(食べるという行為に関して感じる気持ち悪さ)の表現をしたかったのは分かるんだけど、あまりそこで醸し出される雰囲気に魅力を感じなかった。「妊娠カレンダー」の姉も、つくり話の中の謎の女性という感じであまり感情移入ができなかった。

    0
    投稿日: 2024.09.06
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    現実世界を描いているはずなのに、流れている空気が違うように感じる。この本の中には音が少ない。登場人物の周りの音しか聞こえない。暑くも寒くもない。主人公の目線の先に常にフォーカスが当たり、それ以外の世界を見せつけないような印象を受けた。主人公の感覚が理解し難いものであるから、全く違う世界にいると感じたのかもしれない。

    0
    投稿日: 2024.08.24
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    簡単に言うと、妊娠している姉に 毒のジャムをせっせと作って 食べさせる妹の話 ストーリー中に姉への嫌な思いが 一切語られていないのに 突然始めた奇行に驚いた 最後はどんな子どもが生まれたのか 分からない結末で終わっていて スッキリしない。 でもわたしは何事もなく 無事に子どもは生まれたのだと 思っている その他2作品も含まれるオムニバス

    0
    投稿日: 2024.08.14
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    すごく昔に『博士の愛した数式』を読んだ事もあるが楽しめず…芥川賞の本集める中で読んだこの本も…単純に作家との相性合わないのかも。今芥川賞ばかり読んでるせいか、表題作は"あー芥川賞っぽいな"という印象。だけ。

    0
    投稿日: 2024.08.09
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    目次 ・妊娠カレンダー ・ドミトリイ ・夕暮れの給食室と雨のプール 学生寮の生活というのに憧れていた。 実際職場の研修施設で40日以上も狭い個室に過ごしても、全然つらくなかった。 今でも入院することにも、たぶん高齢者施設に入所することになるとしても、あんまり抵抗はない。 たぶん、義務は部屋の外においておけるからなのだと思う。 なにかとやらねばならないことに追われる日々の中で、寮生活は上げ膳据え膳で、ルールさえ守れば狭い個室の中で好き勝手に過ごせる。 ところが『ドミトリイ』は、そんな薄っぺらい自由の怖さを突き付けてくるのである。 具体的に何が怖い、というわけではないけれど、徐々に体の自由がきかなくなってくる先生を、毎日ただ見舞うだけの主人公。 毎日見舞っているのに、入寮しているはずの従弟に会うことができないという不穏。 夫の待つスウェーデンに行く準備をしなければならないというのに、彼女は、「今自分にできることはパッチワークを作ることだけだ」と思っている。 なにかから逃げ、なにかに追いつかれたような読後感。 しまった。 白眉である『妊娠カレンダー』について書く前に、ずいぶんほかの作品のことを書いてしまった。 『妊娠カレンダー』はいびつな物語である。 語り手である妹は、姉夫婦と暮らしている。 義兄は歯科技工士で、妹は大学生でありバイト生活者でもある。 3人は同じ家で暮らしているのに、温かな心の交流というものを感じさせない。 義兄は外で働いて生活の糧を得て、妹は家事全般を請け負っている。 そして、姉は妊娠している。 つわりの時は一口のクロワッサンとスポーツ飲料以外のすべての飲食物の存在を否定し、つわりが終わると有り余る食欲を抑えることができない姉。 一応心配なまなざしを向けるけれど、強く止めることのできない義兄と妹。 これでは姉が胎児のようではないか。 本来は仲の良い姉妹だったのだと思う。 しかし今は胎児に振り回される姉と、それに振り回される妹という図式になっている。 いったい胎児とは何なのか。 染色体から想像し始めるのは、さすが小川洋子という気がしないでもないが、家族全員が妊娠という事態に振り回され、なすすべもない。 「妊娠は病気じゃないからね」とは、「病気じゃないのだから今まで通りきりきり働け」という文脈で最近は語られるけれど、本来は「病気じゃないから薬で治せないところが難儀だよね」という意味の言葉だったらしい。 温かな心の交流が本当にないのかというと、本当はあるのでは?と思う。 たぶん姉と自分の間にある胎児が、それを阻害しているのだ。 そしてそれは姉からしてみると、労わってはくれるけれど代わってはくれない、所詮他人事だと思っているでしょうという僻みになっているのかもしれない。 そういう齟齬を乗り越えて、本当の家族になっていくのだと思うけど、果たして彼らにそれができるのかは…読み手次第だと思った。

    0
    投稿日: 2024.08.09
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    人間は自分たちが動物的な要素を持っていることに気づくと、何故だかすごく嫌悪感を抱いてしまう。 妊娠カレンダーを読みながらこの事実に私も共感せざるを得なかった。 神経症傾向の姉は、それまでルールに基づいた生活をしていたが、妊娠してあるときから異常な食欲を見せるようになる。人が変わったように貪るように食事をする姿、これはきっと姉の子宮の中にいる新しい命がそうさせている。これに対して毒薬にどっぷり染まったグレープフルーツを使って、連日ジャムをたっぷりこしらえる妹であった。 理性的であるはずの人間もやはり動物だと認めるのは、人間にとってひどく嫌悪感を抱かせるということがうまく描写された作品だと感じた。 妊娠によって姉が変わるのはもちろん、妹がジャムを作る行動もまた本能に突き動かされたものになっていて非常におもしろい。 小川さんの言葉選びは、心地よさの中にとんでもない刺激があり中毒性があるように思う。 わたしの中で小川洋子ブームがまた訪れそうな予感。

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    投稿日: 2024.07.15
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    このレビューはネタバレを含みます。

    人間をパーツで見たり、器官として見たり。 妊娠中だったり、海外に行く前の準備期間だったりの、ある一時期の、不思議な雰囲気のお話。文章は美しい。でも不気味で、よくわからない。村上春樹の読後感に似ているような。 そして、「ドミトリイ」では、ちょっと『ハンチバック』を思い出した。

    0
    投稿日: 2024.07.07
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    出産までの日々は、幸せよりも苦労が多いかもしれない。狂気的な姉の言動、正気の妹、傍観者の夫。妊婦の不安と苦しみは、当事者にしか分からない。幼くして両親を亡くし、子に向ける尊さや愛情を知らないからなのか。新しい命を純粋に喜ぶのではなく、黒い渦の中へ巻き込まれていく様が怖かった。喜ばしいこと、おめでたいこととしてしか扱われないライフイベントが全く逆の色で描かれていた。素面で見つめると、そうなのか?嬉しいけど悲しい。辛いけど楽しい。アンビバレントで、表裏一体。

    0
    投稿日: 2024.04.30
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    妊娠カレンダー、ドミトリィ、夕暮れの給食室と雨のプールの3作。いとこや先生との温かい関係性が好きでドミトリィがいちばん好みだったけど、最後不穏な雰囲気でどきどきした。風景描写が好き。

    0
    投稿日: 2024.04.23
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    どこか恐ろしいが、いたって静かな文章。 一文一文つぶやきながら読んでいきたいような手触りや重みのある文章。

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    投稿日: 2024.04.14
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    妊娠の時の感想は、本人も同性である未経験者も、そんな淡々としたものなのだろうと思う。 男の側からは知る由もない。ただそういうものなのだろうと、ただ思う。という読後感でした。

    0
    投稿日: 2024.03.31
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    不思議な話。 姉の妊娠を喜ぶことも無く祝うこともせず、何かの観察対象とするかのようにただ、眺めている妹。 そして胎児に悪影響を及ぼす農薬が入ったアメリカ産のグレープフルーツを使ったジャムを連日作り、食べさせる。 おいおい、それは殺人ではないか、なんて妹は性悪なんだ。 と思ったが、姉はそれが食べたいと言っている、から作って食べさせた。 までのことだ。 それは果たして完全なる悪意なのか。 姉も姉で、妊娠して嬉しい、早く子供に会いたい!などと感情の昂りが一切ない。 エコーで赤ちゃんの動きを見た。悪阻でフォークから変な匂いがする。気持ち悪い。 それだけだ。 お互いロボットなのか、という無感情無感動な淡々とした関わり。 こんな冷めた親のところに産まれてくる子供の成長を心配してしまった。 ドミトリィは、なぜ蜂蜜が上から? 大きな蜂の巣、、あ、だから頻繁にミツバチが出てくるのね。と納得。 しかし数学好きの男子生徒といとこはどこに行ってしまったのだろうか? 最後の話は、 素朴な表情の 怪しそうで怪しくなかった男が語る過去の話、特に倉庫街の廃屋のエピソードがなんか心に残った。 ガチャガチャとした変な匂いのしそうな場所で上を見上げると、ハサミで切り抜いたような空が見えていた。という比喩もいい。 それぞれの人物の行動がわりと特異だが、実際にそういう人いそうだと思えてしまう、不思議な話だった。

    1
    投稿日: 2024.03.22
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    こんなに気持ち悪くもあり淡々とした表現というのができているのは独特であった。 表面的な妊娠時の精神の不安定さだけではなく、設定として姉は精神が不安定で妹は不自然な程に従順であることがこの作品をより不気味にしていると感じた。 特に食べ物の気持ち悪さの表現などは食欲が失せるほどに秀逸だった。

    1
    投稿日: 2024.03.04
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    表題の中編と他二篇。 小川ワールドの原点を感じる。 ホラーの様な怖さとコメディの様な微笑ましさが同居する不思議な世界。 いつも情景の描写に感心させられる。 「ドミトリイ」のお茶の淹れ方は特に情景が目に浮かぶ。

    1
    投稿日: 2024.02.17
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    文章が醸し出す異世界のような雰囲気。 不思議と惹きつけられる。 何か普通ではない家族構成。 日記を綴る妹は、妊娠した姉の為に日常の世話をこなしている。 姉のつわり、食の偏り、体重の増加と姉の体調に振り回される妹と義兄。 姉のお腹が大きくなるにつれ、読み手の不安も大きくなる。 何かが起こりそうで怖い。 妹は毎日、姉の好きなグレープフルーツジャムを作り続けるが…。 最後の一文に、声をあげてしまった。 そして、どうなったのか答えはわからない。 他2篇も不気味で残酷。 登場する人物の描写が、とにかく容赦なく江戸川乱歩のよう。とにかくゾワゾワする怖さ。 改めて小川洋子さんの良さを味わった。 とても好みだ。もっともっと読みたいし、知りたい。

    22
    投稿日: 2024.02.08
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    空から落ちてくる雪のように静かな言葉。そう、小川洋子さんの文章はどこかひんやり心地いい。「妊娠カレンダー」は、妊娠した姉を観察する妹の目線で描かれている。姉に対して、奇っ怪な生物でも飼育しているかのように接するところがおもしろい。喜ばしくも嬉しくもない、少し迷惑なハプニングとしての妊娠は、誕生や成長の背景にあるのは美しきことばかりではないことを象徴する。

    11
    投稿日: 2024.02.05
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    タイトルの妊娠カレンダー含めた3話の短編集。 正直3話とも結末ががよくわからなくあまり楽しめなかった。

    1
    投稿日: 2024.02.03
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    品のある、冷たくて美しい文章。 読んでいると、自分の中の感情がゆらゆらと波打ちながら徐々に静かになっていく。

    0
    投稿日: 2023.12.15
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    芥川賞受賞の表題作ほか、3編の短編集。 どの作品もなんとも言えないざわざわとした気持ちが残る。 うまく言語化できないけれど、 読み終わっても気になって気になって仕方がない。 読み解けた自信はないけれど、 静謐な雰囲気が好きで、他の小川洋子さんの作品を読んでみたくなった。

    0
    投稿日: 2023.12.06
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    第104回芥川賞受賞作の「妊娠カレンダー」と受賞後に書いた「ドミトリィ」、「夕暮れの給食室と雨のプール」を納める。「妊娠カレンダー」では妊娠した姉を不思議なものを観察するように見つめる妹が、防かび剤入りのグレープフルーツのジャムを作り続ける。「ドミトリィ」では、かつて暮らした学生寮が入居者の失踪を機に変質していく。「夕暮れの給食室と雨のプール」では、宗教の勧誘に来た親子と一緒に小学校の給食室を見に行く。どれもありえないような不思議な話なのに、静かなたたずまいと秘めやかな毒がある。作者は言う、「床下にしまった玉葱がいつのまにか猫の死体に変わっている、それを描くのが文学だ」。

    1
    投稿日: 2023.10.18
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    このレビューはネタバレを含みます。

    高校の時に読んでからずっと忘れられなかった。 とにかく描写が美しい。それでいて静謐で冷たい温度を感じるのが小川先生の文体。 表題作の不気味なところが、主人公の一人称で淡々と進む物語でありながら主人公の姉に対する心情描写がほとんどないところ。悪阻で精神の不安定な姉に辟易していることは読み手に推測できるが、姉に対する憎しみや悪意のようなものは一切描かれていない。にも関わらず、胎児の染色体を破壊する可能性のあるアメリカ産グレープフルーツで作ったジャムを姉に作り、スーパーでは「アメリカ産のグレープフルーツですか?」と確認する。実際には防カビ剤は大した影響はないのかもしれない。でも影響を及ぼす可能性を知っていてジャムを作り続ける。それがそこはかとなく不気味で上品な不穏。

    1
    投稿日: 2023.10.04
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    文章が美しくてうつくしくて…。 頭の中で思い描く景色に色や風や匂いがつくような、そんな文章に惹き込まれました。 決して明るく爽やかな作品とは言えませんが、嫌な気分にはならずスッと心に入ってくる作品ばかりでした。

    2
    投稿日: 2023.09.05
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    このレビューはネタバレを含みます。

    芥川受賞の表題「妊娠カレンダー」と、「ドミトリィ」、「夕暮れの給食室と雨のプール」の3編。 妊娠カレンダーでは姉が妊娠した妹の話。農薬入りのグレープフルーツを体に悪いものと認識しながら、姉に与える。人間はそこまでやわではないという思いもありつつ。 これほどの短編で芥川取れるんだなあと思った。応募要項的なのはないのかしら。申告賞じゃないということなのか? 次はドミトリィで、両手と片足のない学生寮の管理人がいとこを殺して血が垂れてると思いきや蜂蜜だった話 次が夕暮れの〜で、宗教かなんかの勧誘やってる親子が給食室でたくさんのご飯食べてるところが好きな話。 短編で読みやすかったけど、自分にとってはそこまで…だった。松村栄子さんが解説。

    0
    投稿日: 2023.08.12
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    とても綺麗な文章を書かれる方です。また、描かれる風景やシーンはどこか異質で、同じ現実世界に思えないのが不思議でした。ストーリーには余白があり、どれも不可解さを残すところが良かったです。

    1
    投稿日: 2023.06.01
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    紹介文にあるように、どれもうっすらと霞んで漂う悪夢のようだった。誰にも悪意は無いが、必然的に悪い方向へ傾いていっているかのようなバランスの取れない感覚に陥った。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 姉が妊娠した。つわりに苦しみ、家族に八つ当たりし、 母となる不安に苦しむ姉と接するうち、妹の心に芽生える不思議な感情。姉を苦しめるモノから姉を妹は守りたいという気持ちと裏腹に、妹はやがて、めまいのするような悪意の中へすべりこんで行く。出産を控えて苦しむ姉の傍らで、妹は鍋でジャムを混ぜる、その中には、ひそかな「毒」が。 家族の妊娠をきっかけとした心理と生理のゆらぎを、きらめく言葉で定着した芥川賞受賞作「妊娠カレンダー」。 謎に包まれた寂しい学生寮の物語「ジミトリイ」、小学校の給食室に魅せられた男の告白「夕暮れの給食室と雨のプール」。透きとおった悪夢のようにあざやかな三編の小説。

    1
    投稿日: 2023.05.12
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     久々に読んだ同著者の小説。基本的には好きな小説が多かったのだけど、この小説はなんというか駄目だった。  主人公は、姉夫婦と同居している独身女性。姉の妊娠に祝いの気持ちを抱くこともできず、胎児の染色体に異常を来す果物を使ってジャムを作り姉に与え続ける。  ……というストーリーの筋からしてかなりきつかった。発売年である1991年ではインターネットがないから日の目を見ることは少なかったかもしれないが、こうした腐りきった感情はネットで腐臭を放ちながら蠢いている。腐臭は腐臭を求め、最終電車で放たれた吐瀉物のように世界を不快感に染めてゆく。どうせ共感を覚える人はいるのだろうが、無事共感を覚えず終わるとしてもどうしてこんなに筋書を汚くしてしまったのか。  装飾で現実味を得ようがなくなるまでにゴテゴテになった文体で描かれる悪意、または悪意でないならば人として致命的な感情の欠損。

    1
    投稿日: 2023.04.21
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    あれ、まだブクログに登録してなかった…!? もう何周目だろう。 何がそんなに好きなのか、何を期待して表紙を開くのか、もう忘れてしまったくらい何度も何度も読んでいる。妊娠カレンダーを読むことが人生の当たり前になっている。のにまだグレープフルーツのジャムを食べられていない。

    1
    投稿日: 2023.04.20
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    病院の本棚にあったから読んだ。 読みやすかった。 後半のドミトリイと夕暮れの給食室と雨のプール、どちらも夫が不在だね。それが出産する時に似てるね。ドミトリイ、血と蜂蜜を間違えるか? 全員、主人公が専業主夫。 子供いなくて専業主婦なんてなかなかできないよ。平成初期まだバブルだったのかな? 表題作品 あんまり共感できる部分とか無かった。 妊娠初期に眠り続けることが、冷たい沼の中って表現されてたけど、私なら眠りは暖かい沼だと思うなあとか、 12/30を切りが悪いから嫌いなんて思わない。高揚感が最悪じゃん。とか、 そういう感覚が私とは全然違うなあ。と思った。 あと、イメージで適当に書いてるでしょ。って思うところも多かった。 ガッツリご飯の代名詞みたいにフランス料理のフルコースと書かれていたが、日本でポピュラーなフランス料理って全然お腹いっぱいにならないじゃん!とか、 妊娠初期はお腹からエコーなんてできないよ!とか。 歯医者のシーンもよく知ってる人からしたら、違うよ。って感じなのかな。 姉がお姫様みたいだね。 家事とかあんましないで、妹を家政婦のように。 平成初期の香りがした。

    0
    投稿日: 2023.03.10
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    妊娠カレンダー 小川洋子 妊娠している姉を持つ妹が主人公。 姉と義兄の間に子供が産まれることが、御目出度いことなのか疑問を覚える。子供と想像できず染色体としか理解ができない。 つわりが始まり衰弱する姉。 グレープフルーツが染色体を破壊すると耳にする。 グレープフルーツジャムを毎日作り、姉はそれを方張る日々。 そして陣痛が始まる。主人公は染色体が破壊された(?)子供を見に病院に向かう。 日記形式で出産日までを綴る。

    1
    投稿日: 2023.02.15
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    解説を読み、少し分かった気がしました。 ただ、私には十分に理解出来ませんでした。 何故か、小説からはとても綺麗だけど鋭利なピアノ線をイメージしました。 「犬の気持ちにお構いなく、雨が降るみたいに」

    4
    投稿日: 2023.02.11
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    全体的に、不穏で不気味な雰囲気が漂います。小川洋子さんの作品は、文章に透明感があり、大きな起承転結はない、日常を描いたものが多いと思います。私には少し難しかったです。

    1
    投稿日: 2023.02.03
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    不穏な空気を纏いながら物語が進み、現実が非現実かも曖昧な独特の空気感が漂う。今村夏子が多大な影響を受けているのがよくわかった。

    0
    投稿日: 2023.02.01
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    この人は風景を書く人だと思う。 人物描画も、会話も、主人公の心理描写であっても風景画のようだと思う。 荒いキャンパスの上に、なるべく重ね塗りの少ない方法で描いた風景画。

    0
    投稿日: 2023.01.28
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    不気味だしグロテスクなのに全体的に綺麗で洒落てるなーと思った。作者の変態性と芸術を感じる… しずるのオシャレ映画風コントと世にも奇妙な物語っぽい雰囲気を感じた。 個人的にはドミトリイがお気に入り。蜂蜜のシーンが印象的だった。 小川洋子、人体の欠損とか数式好きだろ。

    0
    投稿日: 2023.01.18
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    どれも余韻を残した終わり方 その余韻が心地良い。 2024.12.28 再読 「何事も定義しようとするとたちどころに、本当の姿を隠してしまうものですね。」

    0
    投稿日: 2022.12.19
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    このレビューはネタバレを含みます。

    姉が妊娠した妹の、歪んだ考えや行動に不思議と引き付けられてしまった。 登場人物のキャラクターの温度差がはっきりと伝わってきて、淡々と綴られる日常の変化が印象的だった。 全てはグレープフルーツジャムに集約され、姉は無事に出産できたのかどうか気掛かりな終わり方だった。 妊娠という現象を、こんな風変わりな小説にできるのはすごいと思った。

    4
    投稿日: 2022.10.22
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    このレビューはネタバレを含みます。

    読むことを避けていたのだが近所の図書館にあったので読んでしまった。 『妊娠カレンダ―』 妊娠した姉に対して妊娠経過を日記調で妹目線で物語が進んでいく。M病院の中庭の緑と光と身体感覚の表現が美しい。十二月三十日の好きになれない感じ、つわりがひどいからと部屋の中では炊事ができず追い出され庭で一人食事していると心が安らかになるところとか、姉は『妊娠』という言葉をグロテスクな毛虫の名前を口にするように気味悪そうに発音していたととらえたり、「どんな赤ん坊がうまれてくるか、楽しみね」とつぶやいてみたりとか、妹自身の閉塞感や攻撃性を感じてぞくぞくする。 グレープフルーツを見ると思いだしてしまいそう。 『ドミトリイ』『夕暮れの給食室と雨のプール』 もう会うことができない失われたものへの希求と身体器官の異常に細かい描写が緊迫感を強める。息をするのもはばかれるような感じ。読み終わっても、続きが気になるような不思議な余韻。

    10
    投稿日: 2022.10.15
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    この小説は読む人の想像により、完成する。 作者が描写した字を追うだけなのに、脳内に広がる光景はさまざまな色を映す深い海になる。(だから映像化しないでほしい!) 小川洋子さんの作品は、体の描写が特徴的だが、 表面的なことにとらわれるのは人間の社会性が生み出しているのであり、、生物学的にみればみな同じヒト科なのだ、と示唆されているような気づきがあった。 『ことり』でも感じたけど、インクルーシブと言うか、だれもが包括される世界と言うか、外見や生き方、考え方の違いもふくめてありのまま受け入れたいというメッセージがあるような…ことばにできない!

    1
    投稿日: 2022.09.25
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    本当は星2.5。 芥川賞受賞作品は、私にはいつも難しい。 作品の誰にも共感できないし、興味も持てないことが多い。 人間味がないわけではないのに、なぜか距離を感じてのめりこむことも嫌悪することもできない。 この作品も然り。 特段の感想も、ない。 読書好きを自負しているので、芥川賞受賞作品やいわゆる文学を苦手とすることは恥ずかしい気もするのだけど…。 ただし、情景の描写は細やかで美しく、とても好きでした。 2018年13冊目。

    0
    投稿日: 2022.09.13
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    小川洋子の小説は、薬指の標本、博士の愛した数式に続いて3冊目。短編集で3つのお話が入っているこちら。淡々としたお話だったが3つとも独特な不気味さで良かった。 ほっこりする話でもなく、かと言って胸糞とも言いきれない。

    0
    投稿日: 2022.08.24
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    何気ない生活の中にある美しさ 小川洋子氏の小説は小難しいストーリー展開はないのだけれど、読みやすくて何より美しい 日常の中にもこんなに自分たちが気づいていない半透明な宝石があるんだなぁと感じさせられる 日常のささやかや美に感謝!

    0
    投稿日: 2022.07.23
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    双子の幼虫。毛虫でもなく芋虫でもなく青虫が近いかもしれない。双子の幼虫はやがて離れれ、違う双子の幼虫の片割れと一緒になって新たな双子の幼虫となる。セックスしないと新たな双子の幼虫は出来ないの。おねいちゃんが妊娠したのは義兄としたのね。でも想像は出来ない。覗いてみたくもない。そういえば小さい頃、おねいちゃんと産婦人科の裏窓覗いたことある。双子の幼虫がちゃんと育つ様に、人間の染色体を破壊する防カビ剤が塗布されてグレープフルーツのジャム作ってあげる。アッ 双子の幼虫、破壊されちゃわない? そうそう、双子の幼虫って染色体の事よ。コボさん(安部公房)の初期短編集を読んだら、知っていたコボさんのイメージとは異なる感覚で刺激的な体験でした。では最近嵌っている洋子さんの初期作品はどうなのか?と思い、この本を読んでみた。基本毎度の洋子さん感。ストレンジガール登場。って姉、私どっち?「妖しい&艶めかしい」はまだありませんが、科学大好き少女感は伺えます。なんたっておねいちゃんの妊娠状況観察日記。実験までしちゃう。一寸嫉妬してるでしょう。私もおねいちゃんもストレンジガールだったのね。 「博士の愛した数式」の原点は「ドミトリイ」にありました。私といとこと先生。ほらこの3人パターン。そして先生の身体の状態とその状況からくる死の匂い。ハートウォーミングとゾクゾクの共存。もう洋子愛が止まらない。Myヨコフェス 第10弾。  中村さん、洋子さんは初期の頃から「物語は既にここにある」ですね。姉が妊婦となったことで今までにない生活環境。普通ならお目出たい、幸福話になるんですが、私の生活は一転、日常生活の冒険を体験する感覚へ。「私」は感情を表現しないので私の行動は姉に対するプチ復讐ともとれるし、妊婦となった姉の双子の幼虫観察日記とも取れます。(エサは私が作ってあげているからね)この感覚が読み手の想像が膨らんで面白いからやめられません。

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    投稿日: 2022.07.07
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    スッキリでもなく胸糞でもなく、不思議な結末の3話。まるで何もはじまっていなかったかのような、そんな気分

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    投稿日: 2022.04.13
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    「妊娠カレンダー」 凄まじくよかった。子どもを孕む、悪阻、お腹が大きくなる、痩せる、太る、そして出産。子どもを産むまでの過程はとてもグロテスクで不思議で怖い。美しい言葉で形容されがちな妊娠期間が淡々と賛美なしで描かれる。 グレープフルーツのジャムや枇杷のシャーベット、そぐわない食べ物たちが魅力的すぎた。 「夕暮れの給食室と雨のプール」 胸が締め付けられるほどの切なさと寂しさが漂うお話

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    投稿日: 2022.04.04
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    小川洋子、「博士の愛した数式」のイメージが強いのでタイトル的に感動モノだと思ってあらすじ読んでいい意味で裏切られた。内容、しっかり芥川賞受賞作品でした。理解不能です。 妊娠カレンダー 姉の妊娠の様子を綴る妹の日記。変わっていく姉の様子を見て、姉も本人も不安定になっていくのが分かる。アメリカ産の農薬まみれのグレープフルーツをそのままジャムにして姉に提供し続ける妹、狂ってる。何が怖いって、無意識とか疑いながらとかじゃなくて、主人公が「胎児の染色体も破壊するのかしら」って意識的に毒を与え続けるところが怖い。ぞっとする。最後は赤ちゃんの泣き声が聞こえて階段を登っていく訳だけど、「破壊された姉の赤ん坊に会いに」行っている。どこまでも続く狂気を感じる。自分の意志と関係なく、嫌でも変わっていく身体と、その様子を隣で見ている同性の妹の不安定さが全ページで表現されていたと思う。妊娠、てか女の体、なんか怖いなあと思った。 ドミトリィ ただのホラーだった。こわすぎる。最後の蜂の巣と消えていった関係者たちの関係性なに。 夕暮れの給食室と雨のプール なんとなく江國香織感あって好きだったよ。給食室を見るのが好きは、謎の親子。主人公の今後はどうなるんだろうか。何で最後、ジュジュの鎖が「冷たい」のか。マイナスの終わりに見えなかったけど、未来の暗さの暗示なの? 文庫じゃないけん解説なかった。解説よみたひ。

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    投稿日: 2022.03.19
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    これなに?何を伝えたかったん?  読後に?が頭に浮かぶがそんなに悪い気はしない。時間の切り取り方がなんともおもしろい。 芥川賞らしい作品だなあって印象。 センスあふれる作家さん☆

    0
    投稿日: 2022.03.15
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    読書開始日:2022年2月20日 読書終了日:2022年2月21日 所感 【妊娠カレンダー】 妹はなにがしたかったのか。 姉と義理の兄への苛立たしさはあれど、2人の間の胎児を壊す動機がわからない。 この3人の奇妙な生活も理解ができない。 純粋な興味なのだろうか。 兵器であるジャムを淡々と作り、そのジャムを淡々と食べる後半の日常が怖い。 妹は、妊娠により苦しむ姉を助けたかったのか。 歪んだ正義がそうさせたのか。 謎。 【ドミトリイ】 先生や数学科の彼といとこ、共通する部分は美しさと消滅。それが屋根裏の蜂の巣とどう結びつくのかわからない。 美しさは悲しみの対価。心の屋根裏で悲しみが増長し溢れたときには漏れ出しいずれ消えるのか。 難しい。 【夕暮の給食室と雨のプール】 人間が何かに恐怖心や嫌悪感を抱いても、なにかがきっかけでいつのまにか克服していることがある。 おとこは、除け者にされている祖父に連れられて見た「廃墟のチョコレート製造機」によって克服した過去があった。その話を聞いたおんなは、そんなおとこの話をもっと聞きたくなった。それほど優しい時間だった。 そこから急速の落下。 ジュジュの冷たい鎖でハッとする。 残された問題の女の旦那の問題が、浮き彫りになりほったらかされたまま終了する。 怖い。 【妊娠カレンダー】 こんな分かりきったありふれたせりふを、いかにも親切そうに喋る癖があるのだ 彼女は典型を嫌う どんな種類の人にも気持ちを乱されず、同じように冷静に微笑んでいる方が楽 【ドミトリイ】 【夕暮の給食室と雨のプール】 透明な清らかさを持つ霧 刷毛

    0
    投稿日: 2022.02.21
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    短編集。これからどうなるのだろうかと思うまま全ての話が終わってしまう。本当なら納得いかないのかも知れないけれども読んでいる間の時間はその世界にやみつきになってしまう。明るい世界でもキラキラした世界でもないのに読み終えるとほっとため息をついてしまう感じ。

    8
    投稿日: 2022.02.17
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    「妊娠カレンダー」「ドミトリィ」「夕暮れの給食室と雨のプール」の3つの短編集。どれももやっとした終わり方で怖いです。特に「妊娠カレンダー」は怖いですね。私には妹も姉もいないのですが、姉妹って嫉妬したりすることが多いのかな。この話の中のお姉さんは少し神経質で妹さんの気持ちがわかるわ。私の周りにこんな人はいないけど、自分がお姉さんみたいにならないように気を付けなくては。

    2
    投稿日: 2021.12.27
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    3つの短編が入っています。 妊娠カレンダーという題名からほっこりする話かなと思っていたら、妊娠カレンダーもドミトリィも不穏なお話でした。日常に隠れた毒みたいなものがあるように思いました。印象に残る話ですが、読後感はザワザワします。

    0
    投稿日: 2021.11.12
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    さて、 「妊娠カレンダー」「ドミトリイ」「夕暮れの給食室と雨のプール」の3短編。 日常こまごましたことの描写の正確さと、その普通のことが異常になるという展開にびっくりした。 例えば「妊娠カレンダー」のジャムづくり場面、私もまったくその通りに作っている。ただし、果物の種類と産地がちがう。 知り合いの庭で生った夏みかんを頂き、オレンジマーマレード作る。皮をごしごしたわしでこすり、「み」をほぐした後、皮の白いところを削り、薄い薄いオレンジ色の皮にし、細く刻む。「み」とお砂糖を加え、ことこと煮るだけで甘酸っぱいジャムが出来上がる。部屋中いい香りがする。 ここ「妊娠カレンダー」では『…のとろける音がぐつぐつとひそやかに夜の底を漂っていた。』と表現されていた。それが怖い。 その過程を知っていればこそこの物語は恐ろしい。思考がそれからそれへと流れて辿り着くところは現代の食生活。 ストーリーの組み立てが自然なのだ。小川洋子自身のあとがきにも書いているが、「床下収納庫にあった腐ったタマネギを猫の死骸と見間違える」感性。これはきわどい。日常性に潜む毒。 私は毒気に当てられ文章が多すぎるのかどうかは感じなかった。決して嫌ではなかった。むしろ静かめの語り口、つじつまのある書きっぷり、構成。むしろ饒舌は奥深いところにあり、という思いになった。 他の作品はどうだろうか?

    1
    投稿日: 2021.09.12
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    このレビューはネタバレを含みます。

    姉妹と姉の夫が登場人物。精神的に過敏な姉が妊娠し、その様子を妹が観察する感じ…。"つわり"によって、食べ物の匂いにああだこうだケチをつける姉(ワガママ)に気を遣いながら、"妊娠""夫婦""子"といったことにイメージがつかず懐疑的である妹。子供(胎児)に対して「モノ」としての人間の描き方が強い。"妊娠"に対する喜びというものは一切描かれない、淡々と進む感じがした。汚染されているかもしれないグレープフルーツを姉に与えて子供にどんな影響を与えているんだろう…といったゾッとする描写は、はじめは妹は姉の妊娠をどう思っているんだろう…といった応援してるのか殺したい?死を望んでいるのか?と色々な疑問が生まれ不思議だったが、ラストの"破壊された"姉の赤ちゃんのいうのが、赤ちゃんは無事に生まれて妹の中でのってことなのかなと考えた時、こういうこともあるのかもなぁと思った。 現実に対して、怖いことや悪いことを今したらどうなるんだろうっていう人間の心の奥の純粋な疑問と好奇心とそれを実行したら…という恐怖。 私も想像上で色々考えるので、意識のある中妹は姉の状態に懐疑的であったのかなと。

    0
    投稿日: 2021.08.26
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    このレビューはネタバレを含みます。

    小川洋子、3冊目。博士の愛した数式、薬指の標本とも異様な・不快な雰囲気を醸し出す。この本もすなわち「それ」であった。妊娠した姉に対し妹が米国産の農薬にどっぷりつかったであろうグレープフルーツのジャムを作り続ける。姉は毎日そのジャムを美味しそうに食べる。妹はさらに農薬付きのジャムを作り続ける。姉にジャムを作り、食べさせる行動は一体目的は何?嫉妬なのか?復讐なのか?コンプレックスなのか?嫌がらせなのか?単なるサイコパスなのか?ただ、妹の表情が全く分からない。妹の無表情と行動が異様な雰囲気を醸し出していた。

    25
    投稿日: 2021.08.23
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    モヤモヤする短編集という感じで、 解決しないけれど想像できる余白があってよかった。小川洋子さんらしい作品達だなと思った。

    1
    投稿日: 2021.08.02
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    なんともいえない後味…。 なんとなくこの描写、伝わってくるなぁーってのが 所々あったよー。 妊娠カレンダー (毒薬のついてるジャムを妊婦に食べさせる) ドミトリイ (学生寮にいとこが入る。でも、会えない。蜜蜂の巣発見) 夕暮れの給食室と雨のプール (最先端の給食室。難儀ってなんだろうね。) 「夕暮れの…」の話の中で、 「夕暮れの給食室を見ると必ず、あの頃の、 通過儀礼に手間取っていた頃の、 胸の痛みを思い出すのです。」って言葉に、 あぁー、なんとなく伝わるって思ったよ。 何かと何かを連動させてたりして記憶にあると、 1つのことがキッカケで思い出すことあるもんね。 どの話も、スッキリとはせず、 なんとなく含みを持たせたまま終わったーって感じ。

    2
    投稿日: 2021.06.20
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    久しぶりに小川洋子さんの作品を読んで、とても懐かしい気持ちになった たまに説明しづらい自分にしか分からない不思議な感情を抱くことがあるが それを美しい文章で描写されると不思議な世界に引き込まれる

    1
    投稿日: 2021.06.19
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    先日、また一つ歳を重ねた。 もう祝われてもめでたくない年齢になってきたけれど、やはりお祝いされたのは嬉しかった。 妊娠も、本来祝福されるべきものだ。 なのになぜ、わたしは同僚の妊娠を、素直に喜べないのか。 比較、嫉妬、変化。 きっとそれらがわたしの心の中で轟轟と渦巻いているのだろう。 そんな中でこの作品を手に取る。わたしの中にある、この毒。 蜂蜜のように、経血のように、わたしの身体のどこかから、どろりと溢れ出てくる毒。 行き場をなくした可哀想なその毒は、もう溢れることでしか居場所を確保できなくなっている。 その、あふれ出した瞬間をつかみ取ってみる。 P40「二階の姉の部屋を見上げると、ぼんやり明かりが点いている。においにぐるぐる巻きにされ、ベッドでうずくまっている彼女のことを思いながら、わたしは大きな口を開けてシチューと一緒に夜の闇を飲み込む。」 P58「彼の指先が、口の粘膜を何度も撫でた。わたしは思い切り、彼の指とそのピンクの塊を噛み締めたかった。」 表題作「妊娠カレンダー」。あとがきでは、主人公である妹はとても素直で優しいとの描写があったけれど、わたしは彼女をそんな女と思えなかった。もともと神経症的気質の姉の顔色を窺いながら生活を送ってきたに違いない妹が、今度は妊娠を盾にして家中の空気を塗り替えてしまう姉をどう思うか。それは素直さでも優しさでもない。ついにやってきた反撃と復讐の瞬間、ではないだろうか。 そしてこんな風にこの物語を捉えるわたしも、ある種の毒に犯されている。 次の収録作「ドミトリィ」 音の描写で始まる。 具体的なその音について。 様々な音が、ドイトリィの中に溢れている。義足の音、電話の音、咳の音、蜜蜂の羽音、雨音。 それらはとても静かで、哀しみに満ちている。 美しい人と、その人が持つ身体の全部への愛おしさが最高潮に達した時、物語は、ある恐ろしさを植え付け、残し、終結する。 最後の作品「夕暮れの給食室と雨のプール」 P182「ただ単に嫌なにおいというのなら、他にいくらでも種類はあるでしょう。それらと決定的に違うのは、給食室のにおいがこれから自分が口にする食べ物と、結びついていることの不気味さです。大量のクリームシチューとポテトサラダが発するにおいは、給食室の中で合体、発酵、変性していたのです」 この部分を読んでいた時、休憩中に入っていた珈琲館で軽く飛び跳ねそうになった。直後、身体中に走る鳥肌。 小中学校の頃。わたしの学校は給食センターから給食室に給食が送られてくるところだった。授業中、給食が送られてくる際に教室に漂ってくる、食べ物の匂い。お腹が空いている子どもたちの様々な部分を刺激するその匂い。その匂いは、漂っている間にゆるやかに変化をし、時に、すでに人間の身体から出てきた、つまり吐瀉物のような匂いを放つ瞬間がある。それに気付いた時、授業中に味わった孤立感。あの時のクラスメイトは、どう思っていたのだろう。そもそもわたしが嗅いだことのある吐瀉物が、たまたま給食と同じ匂いを発していただけなのだろうか。誰にも言えずにいたあの時の複雑な心境を、言葉にしてくれた、ような気がした。 全ての収録作品に共通するもの。 静謐な世界観と、その中に潜んでいる毒。 答えを明示せず、読者に謎を残しながらもはっきりと残すしこり。 人間の身体というものの器官と細部への丁寧な描写。 パートナーとは別の男性に対する慕情。 これらが、独特の筆致で、とても丁寧に、静かに、きめ細やかに描かれている。 「妊娠カレンダー」で妹が義兄に歯を褒められる場面、「ドミトリィ」でのいとこと、ある寮生の描写、「夕暮れの給食室と雨のプール」で描かれる子持ちの男の語り口。 すべて、はっきりとした輪郭を持っているわけではないのに、浮かび上がってくる彼らはとても美しく、華奢で、どこか生と少し距離を置いたところにいる。 その儚さが、作品全体の空気感と絶妙なバランスで散りばめられている。 第104回芥川賞受賞作品。

    84
    投稿日: 2021.05.17
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    芥川賞受賞作を含む、三つの中篇集。 小川さんの、何気ない描写の中に感じる、ささやかで上品な美しさは、相変わらず素晴らしいものを感じたし、神秘的でノスタルジックで本能的な恐怖を思わせる素材が多いが、その裏にはそれぞれの主人公の、やり切れない孤独さも潜まれており、単純に不思議で怖い物語だけで終わらせていないところに、やはり小川さんの底知れぬ凄さを感じた。

    18
    投稿日: 2021.05.17
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    「妊娠カレンダー」 小川洋子(著) 1994年 2/10 文庫第1刷 (株)文藝春秋 2020年 12/20 第25刷 小川洋子月間中。 1991年第104回芥川賞受賞作妊娠カレンダーを含む ドミトリイ 夕暮れの給食室と雨のプール の3編。 柔らかで淡く美しい日本語で描かれているのは どこか不気味でドロリとした世界。 とても魅力的だ。 ハマる順番として 村田沙耶香 ⇨ 小川洋子は正しかったと思う。 逆じゃ村田沙耶香にはハマれなかったと思う。

    24
    投稿日: 2021.05.15
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    あなたの兄弟姉妹が妊娠したそうです。さて、あなたはそんな兄弟姉妹のことをどのように思うでしょうか? そうですね。もちろん、それは今までの関係次第といったところもあるとは思います。残念ながら何らかの事情でその関係にヒビが入っているような場合にはその報告にも複雑な感情が巻き起こる場合もあるかも知れません。しかし、『今夜の夕食なあに?』、『ブイヤベース。イカとあさりが安かったから』というような『ありふれた会話を交わ』すような仲の良い姉妹だとしたら、それはもう満面の笑みで”おめでとう!”とまずは声をかけるのではないでしょうか?まさか『おめでとう、というのさえ忘れていた』とか、『姉と義兄の間に子供が生まれるということが、おめでたいのだろうか』というような冷めた見方をするようなことは普通には考えられないと思います。 しかし、ここに、仲が悪いというわけではないにも関わらず、姉の『妊娠』報告を聞いて、『おめでたいのだろうか』と思うだけでなく、『わたしが今、自分の頭の中で赤ん坊を認識するのに使っているキーワードは「染色体」だ。「染色体」としてなら、赤ん坊の形を意識することができる』と思うような妹がいます。そんな彼女は『どんな赤ん坊が生まれてくるか、楽しみね』と姉に対して、一見、あたたかい言葉をかけます。しかし、彼女が主人公となる物語を読み終えた読者はそんな一見あたたかい言葉が、冷たく、暗く、そして恐ろしく感じる読後を体験することになります。そう、これは〈妊娠カレンダー〉という書名が違う色に変化するのを感じる物語です。 1991年の芥川賞を受賞したこの作品は、特に直接的な繋がりのない三つの短編から構成されています。今からもう30年近く前の作品にも関わらず、そこに時代感をあまり感じさせない、いつの時代にも通用しそうな普遍的な味わいが魅力の短編集だと思います。そんな中でも強く印象に残ったのが表題作でもある〈妊娠カレンダー〉でした。 『十二月二十九日(月)』、『二階堂先生の所以外、ほとんど病院に掛かったことがな』く、不安がる姉がようやく『年末最後の診察日に』M病院に行くことになりました。しかし朝になっても『基礎体温のグラフは、いったい何ヵ月分くらい見せたらいいのかしらねえ』と愚図々々訊く姉に、『あるだけ全部見せたらいいんじゃないの』と答える『わたし』。『全部といったら丸二年分、二十四枚もあるのよ』、『だって、もったいないじゃないの。せっかく二年も計ったんだから』というやりとりの結果、結局二年分を持っていくことを決めた姉。そんな姉が選んだのが『わたしたちの祖父の代からそこにある、産婦人科の個人病院』であるM病院でした。そんな病院の『中庭に忍び込んで遊んだ』ことを思い出す『わたし』は、『何よりもわたしたちを一番夢中にさせた遊びは、病院の中をのぞくことだった』と過去を振り返ります。『見つかったらきっと、怒られるよ』と言う臆病な『わたし』に『大丈夫。わたしたちまだ子供なんだから、そうひどく怒られたりしないわよ』と平然と返す姉。『午後の診療が始まる前の診察室はひっそりと人影がなく、隅から隅までゆっくり眺めることができた』という光景を思い出す『わたし』。そんな姉が診察を終えて帰ってきました。『どうだった?』と訊くと『二ヵ月の半ば。ちょうど六週め』と答える姉。『まあ、そんなに厳密に分るの?』と訊くと『こつこつためたグラフ用紙のおかげ』と淡々と返す姉。『今夜の夕食なあに?』、『ブイヤベース』と普段の会話のようになり『おめでとう、というのさえ忘れていた』という『わたし』は『姉と義兄の間に子供が生まれるということが、おめでたいのだろうか』と考えます。『辞書で「おめでとう」という言葉を引いてみ』ると『ー 御目出度う(感) 祝いのあいさつの言葉 ー とあ』るのを見て『それ自体には、何の意味もないのね』とつぶやきながら『全然おめでたくない雰囲気の漢字が並んだその一行を、指でなぞ』った『わたし』。『産婦人科に行ったことで、姉は正式に妊婦になったのだが、特別変わった様子は見せな』いことに『喜ぶにしても戸惑うにしても、もっと興奮すると思っていたので意外だった』と感じる『わたし』。『ついに、つわりが始まった』、『今日姉が初めてマタニティドレスを着た』、そして『とうとう臨月に入った』と姉の出産のXデーに向けて、姉と義兄と三人で暮らす『わたし』が姉の変化を”観察する”様が描かれていきます…というこの短編。姉の妊娠という本来『おめでたい』ことが描かれる内容にも関わらず、最初から最後まで冷たい硬質な雰囲気感が漂うこの作品。その中に隠された不気味な毒っ気がなんとも言えない雰囲気を醸し出し、背筋がぞくっとするような怖さに魅了される不思議感漂う作品でした。 …と、ご紹介した表題作の他に、『学生寮は果てしもなく絶対的な地点に向かって変性しているのです』と、『先生』が管理する謎に満ちた学生寮の姿が描かれていく〈ドミトリイ〉。『ただここから、給食室を眺めていたいのです』、『やはり、午前中の給食室の方がずっと見応えがあります』と給食室を偏愛する男に魅せられていく『わたし』が描かれる〈夕暮れの給食室と雨のプール〉と、三つの短編は、物語的な関連こそないとはいえ、そこに醸し出される独特な空気感、雰囲気感は小川さんらしさに満ち溢れています。 そんな中で私が注目したのは嗅覚と聴覚を表す表現の数々でした。まずは嗅覚を刺激するのが一編目の〈妊娠カレンダー〉です。妊娠の影響もあって『ひどいにおいね。何とかしてよ』と嗅覚が過敏になった姉は、『どうにかしてほしいの』と『わたし』に訴えます。そんな姉が感じる感覚は『口も肺も胃もひっかき回されて、内臓がぐるぐる渦を巻いてた』というすざまじい表現で表されるものです。『どうしてうちには、こんなににおいがあふれてるの』と嘆く姉、『ベーコンエッグだけじゃないわ。焦げたフライパンも、陶器の皿も…』とありとあらゆるものを例示し『容赦なくどんどんわたしを犯しにくるの』と悲痛な叫びを上げる姉。そんな姉の感覚は狂気にも似た印象を受けます。次に、聴覚を刺激するのが二編目の〈ドミトリイ〉です。『ある時ふと気が付いたら、わたしはもうそれを聞いていた』と『音』を意識する『わたし』。それを『透明なシャーレの培養基の中に、突然微生物が精巧な斑点模様を描き出すように、音はどこからともなくやってきた』と、さらっと説明されるその表現。そんな独特な表現を理解できる読者が果たしてどれだけいるのでしょうか?そして、三編目〈夕暮れ〉では、もっと無機質な形で印象的に聴覚が刺激されます。おじいちゃんに連れられやってきた廃工場。その『床には赤茶けた錆と埃が混じり合い、三センチくらい積もってい』るという状況の中、『足を少しでも動かすと、じゃりじゃり音が』する、という表現がその空間の荒んだ雰囲気を見事に表していきます。また、おじいさんが飲み終えたビールの空き缶を放り投げた時の音をこんな風に描写します。『ガラン、と淋しそうな音がして、それはもう何年も前からそこにあったかのように、がらくたの中に紛れ』たというこの表現。決して突飛な表現を用いているわけでもないのに、たった一言でこんなにも音の存在感を感じさせる、その表現の上手さをとても感じました。 そんな小川さんらしさに満ちたこの作品で注目すべきはやはり表題作の〈妊娠カレンダー〉だと思います。〈妊娠カレンダー〉というタイトルだけだと、マタニティ小説なのか?という印象も抱くこの短編。マタニティ小説ということでは、私は、角田光代さんの「予定日はジミーペイジ」という作品を以前読みました。同作では、妊娠した主人公が出産のXデーを迎えるまでのさまざまな思いを日記として綴る形式をとっています。我が国の出生率は下がる一方ではありますが、時代が変わっても『妊娠』、『出産』というライフイベントは、人間が生物であることを実感する一つの機会であることに変わりはありません。角田さんの作品はこの一般的な『妊娠』の感情をそのまま物語に落とし込んだ素晴らしい作品でした。一方で、小川さんのこの作品は、主人公の姉が『妊娠』、『出産』のXデーへと向かう日々を送るのを主人公が”観察する”中で物語は進んでいきます。そもそも姉から妊娠の報告を聞いても『姉と義兄の間に子供が生まれるということが、おめでたいのだろうか』というところから出発する時点で、何か不穏な空気が流れるこの作品。それを象徴するのが『わたしが今、自分の頭の中で赤ん坊を認識するのに使っているキーワードは「染色体」だ』という主人公の感じ方でした。『「染色体」としてなら、赤ん坊の形を意識することができる』というその表現は、読者の目を点にさせるには十分な破壊力を持つ表現です。『科学雑誌か何かで染色体の写真を見たことがある』という主人公は、それを『双子の蝶の幼虫が、何組も何組も縦に並んでいるように見えた』と語ります。『その双子の幼虫を思い浮かべる。赤ん坊の染色体の形を、頭の中でなぞってみるのだ』という主人公は、その後も、姉の身体の変化を見る度に『胎児の染色体は順調に増殖しているのだろうか』と、まさかの考え方で姉の身体の変化を見続けます。それが、この作品の核心でもある『強力な発癌性を有する防かび剤PWH』に関する情報を『PWHは、胎児の染色体も破壊するのかしら』と『わたし』の思考を繋げていくキーになっていきます。『妊娠』、そして『出産』を『おめでたい』と思う普通の感覚からは全く遠くに離れてしまった薄ら寒ささえ感じさせる『わたし』の冷え切った感情には嫌悪感さえ感じます。そこで、そんな嫌悪感の正体を考えてみました。この作品の核心である『防かび剤PWH』を意識しだした『わたし』は、姉の『妊娠』、『出産』に『おめでたい』と感じずとも、悪意を抱いていたわけではありません。『「染色体」としてなら、赤ん坊の形を意識することができる』と、まるで何か微生物を”観察する”かのような感覚で人間の『赤ん坊』を捉える『わたし』。そんな『わたし』は、姉にこんな言葉を投げ掛けます。『どんな赤ん坊が生まれてくるか、楽しみね』。普通に考えれば、仲睦まじい姉妹の姿が思い浮かぶこの会話の光景が、この作品を読んだ読者には、凍りつくような光景に変化してしまう、その読後にはもう驚愕しかありません。では、そんな風に”命”を捉える感覚はどこからくるのでしょうか?昨今、無差別殺傷事件が報道されることが時々あります。単に”人を殺してみたかった”という理由で殺人が起こる現実。まるで生物の実験の延長線上にあるような考え方で人間の命を捉えてしまう、そんな感覚が注目を浴びています。この〈妊娠カレンダー〉という作品で描かれた主人公『わたし』の感覚、そこから発現する行動には、確固とした目的もなく”無感情”に人間を殺める感覚が発現する瞬間を垣間見たような気がしました。1990年という時代に、このような感覚を小説として描いてしまう小川洋子さん。ただただ凄いと思いました。 『わたしと姉と義兄の三人の間に、赤ん坊がプラスされる状態について想像してみようと思うことがある。でもいつもうまくいかない』という主人公の『わたし』。生命の誕生を前にした時、それが初めての体験であるなら、その誕生により起こる変化を具体的にイメージすることは難しいと思います。しかし、この表題作の主人公には『浮かんでくるのはただ、科学雑誌で見た染色体の写真だけだ』と、ある意味で具体的な生命のイメージが浮かんでいます。しかし、それは単に生物の誕生のことであり、人間の誕生に結びつけることのできないその感覚には薄ら寒さを感じざるをえません。 『妊娠』、『出産』という言葉から思い浮かぶあたたかくやわらかい感覚。そんな感覚と対極にある冷たい硬質な感覚の中に『妊娠』、『出産』というライフイベントを重ね合わせていくこの作品。強烈な違和感と不気味さを感じさせる表現の中に、全編に漂う不穏な空気感が逆に癖になってもしまいそうな、そんな不思議な魅力をたたえた絶品でした。

    78
    投稿日: 2021.04.24
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    三篇から成る短編集。 どの話も不思議で薄暗い感じがして、少し不気味。うーむ…こういう不思議な世界観は自分はあんまり得意ではないな。 芥川賞はいつも難しくて分からない…

    6
    投稿日: 2021.03.18
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    小川洋子さんの短編集。 表題の「妊娠カレンダー」と、「ドミトリー」「夕暮れの給食室と雨のプール」の三篇から成ります。 背表紙にある紹介文を読んだ感じでは、悪意を持った妹が妊婦である姉に毒入りジャムを食べさせる……という感じで書かれていますが、実際にはもっとソフトな感じでした。 思うに、この姉妹は“妊娠”というものに対して人並み以上に恐怖や憧れ、赤ん坊に対する神聖視があったのだろうと思います。それが、姉は神経質に理不尽なことを言い散らすようになってしまい、見た目もどんどん崩れていくので、妹はある意味で(「仕返し」「罰」などではなく)「救済」の意味を持ってジャムを作り、食べさせたのではないかと私は考えました。 実際問題、グレープフルーツの農薬については不確かな情報だけを頼りにジャム制作に踏み切っているわけですから、ラストシーンで対面した赤子にも、彼女の姉にも何ら異常はなかったでしょう。 それでも、三階から覗く顔に幽霊めいた不気味さ、もの悲しさを感じ取っていたのは、彼女が妊娠というものに対しての憧れと過度な期待を持っていたからではないでしょうか。 実際に彼女たちは疲れ果てていたのかもしれないし、この先々を想うと憂鬱だったのかもしれない。 けれど、この妹の中には幼い頃から妊娠に対する好奇心めいたものが根を張っていて、実際に姉が妊娠してからの行動を間近に見るにつけ、「こんなものなのか」と驚いている。つわりが突然に始まり、突然終わったことを心の隅では同情しながら、しかし一方で面白がるというのか、少し冷めた目で観察している。 その「妊娠」への憧れを交えた妄想が現実になって、それほど素晴らしくないと分かると、妹は姉を助けたくなってくる。そうしてジャムづくりが始まる……私にはそんなお話のように思えました。 描写のところどころにグロテスクで鮮明すぎる(?)描写があり、グラタンを食べるシーンなどはホラ―小説かなと思うくらいでした。そこがまた好きなのですが(笑) 残りの二篇も素敵な作品で、「ドミトリー」はミステリーチックな話の構成でどんどん世界に引き込まれましたし、「夕暮れの給食室と雨のプール」は情景描写が美しく、熱気に溢れた給食室と雨が降る外の温度差が肌に感じられるようでした。 しかし、どの作品を読んでも思うのですが、登場人物が悉く「小川洋子」なんですよね(当たり前といえば当たり前ですが)。男性も女性も、子供もおじいさんも、表現とか感受性が寸分たがわず脳内小川洋子、という感じです。 おじいさんに見えていない世界が主人公である女性には感じられる、とかではなく、この世界に登場する人物は全員が小川洋子とまったく同じ水準で世界を見ているんです。 それってある意味では、大枠のSFチックだなと思ったりもしないではないのですが、いかがでしょうか。 「妊娠カレンダー」という題名と、あらすじを見るといかにもドロドロした物語のように思えてしまいますが、実はそうでもないので、興味のある方は一度読んでみると良いかもしれません。

    2
    投稿日: 2021.03.05
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    どの話も後味が悪い感じでモヤモヤする。 妊娠カレンダーは、どことなく悪意を感じてしまう。 無意識に悪意が出てくるような感じで、読み終わった後のインパクトが凄かった。

    1
    投稿日: 2021.02.16
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    第104回芥川賞受賞作の表題作を含む3篇の短編集。 小川洋子さんは天才なんだな、と改めて実感。 妊娠カレンダー 評価5 姉の胎児を傷つけようとする密かな悪意。 純粋にしれ〜っとした文体で静かに描いていく。 怖い。しかし、日常はこういう恐怖が渦巻いている。 スポーツクラブのトレッドミルを速歩きしながら読了。 ドミトリィ 評価5 村上春樹さんからの影響を強く感じさせた。特に比喩の使い方とか。センスがキレキレで明確で力強くて、読み返してはため息が出てしまうような表現ばかりだ。 反面、ストーリーはモヤモヤしたまま。 先生や、美しい左指の彼や、完璧な肩甲骨のいとこがどうなってしまうのか。不思議な空白感が余韻で残る。これが良いんです、なんて(笑) 散歩の際立ち寄ったタリーズでソイラテを飲みながら読了。 夕暮れの給食室と雨のプール 評価4 私が出会った宗教の勧誘員にとって、学校の給食とプールは鬼門だった。追い詰められていた勧誘員を救ってくれたのは、家族から厄介者扱いされた酒浸りのおじいさんだった… 何事も定義しようとするとたちどころに、本当の姿を隠してしまう。 ビールを飲みながら読了。

    35
    投稿日: 2021.02.14
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    このレビューはネタバレを含みます。

    タイトルの妊娠カレンダーは 登場人物たちに愛を感じなかった。 姉はただ妊娠は出来てしまったものとして そこに愛情がなく、いつも精神的に不安定。 義兄はいつも顔色を伺っているイメージ。 わたしは生まれてくる赤ん坊が破壊されていて欲しいと願っていそう。 グレープフルーツが胎児に良くないからこそ 毎日姉に与える。不気味… ドミトリイは疑問がとにかく残る 先生がなぜ両手と片足がないのか いとことなぜ会えなくなるのか シミだったのは果たして本当に蜂蜜だったのか 消えた学生はどうなってしまったのか いや〜な感じで終わります。 夕暮れと給食室と雨のプール あの親子は一体なんだったのか、、

    1
    投稿日: 2021.02.10