【感想】暗幕のゲルニカ(新潮文庫)

原田マハ / 新潮文庫
(558件のレビュー)

総合評価:

平均 4.2
206
234
79
13
0
  • 時や場所を超えたメッセージ

    10歳のときMOMAで出会った一枚の絵,そこに描かれた目に捕らわれた瑤子。
    この絵に運命を左右されるのは必然でもあり,またその絵に宿る力に導かれた結果でもあったということか。

    ピカソの描いた中でも異質なモノクロの絵をめぐり,描かれた大戦当時と姿なき敵と戦う現代の2軸で展開されて行きます。この作家さんお得意な仕掛けでもあります。

    美術館は堅苦しくて嫌いという拒否感のある方には苦痛かもしれませんが,ある絵の前で立ち尽くすという経験が一度でもある人なら,絵のもつ力をテーマとするこの作品も受け入れ易いと思います。特別な知識なしでも十分読み進められるので,そこは心配無用です。
    原田マハワールドを満喫してください。
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    投稿日:2018.12.27

ブクログレビュー

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  • クミ

    クミ

    ゲルニカ。聞いたことはあったが、ピカソの故郷であるスペインの田舎町の名を冠したこの作品に、こんなにも色々な逸話があったとは知らなかった。
    その政治的メッセージ性故に多くの当事者から狙われ、第二次大戦中は戦禍を逃れてアメリカニューヨークにあるMoMAに40年超も疎開させられていたこと。その後民主主義を取り戻したスペインへ帰還したこと。ゲルニカを守るために奔走した人々の平和への願いや戦争との戦い。
    それらが2001.9.11に起こった同時多発テロを発端とした世界情勢に重ねられて物語は進んでいく。
    終盤の展開はちょっとお腹いっぱい感があったが、さすがの原田マハさん。美術の心得のない自分でもすっかり没頭して読んでしまった。そしてアートの力とその可能性を再認識した。

    しかしながらゲルニカが制作されてから90年弱。ウクライナやガザ地区の現状。ゲルニカのタペストリーが掲げられている国連本部の安保理会議場は機能不全に陥っているとも言われる。ピカソが生きていたら、今の世界を見て何を思うのだろう。我々人類はピカソのゲルニカを受け継いできたが、果たしてそのメッセージを受け継ぎ引き継いでいけるのか。


    "あの作品が持つメッセージ性、時代性が放つ、目もくらむほどの強い光。有史以来、戦争を繰り返してきた人類。どうしようもなく愚かで、どうしようもなくあわれな生き物である人間。あの作品には、愚かしい人類に対する画家の怒りが隅々まで透徹し、もうこれ以上過ちを繰り返すなとの警鐘が鳴り響いている。同時に、人間をあきらめきれないアーティストの切ない思いが込められている。" 209
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    投稿日:2024.05.15

  • aoi3594

    aoi3594

    スペインにゲルニカを観に行くにあたって読んだ。ゲルニカを舞台装置とした小説という形を取ることで、ピカソやゲルニカの想いを、読者に直感的にありありと伝えることに成功している。これを読んだ上で実物を観に行けて良かった。ドラ・マールの視点で描かれている部分も多いため、ゲルニカ制作過程の写真をゲルニカと併せて見れたのも非常に感慨深かった。
    小説自体としては、ストーリー展開など、著者の他作品と似た部分を多少感じてしまうが、ピカソらの想いや絵画の価値を広く読者に伝えるという点で、この作品は成功を収めていると思う。
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    投稿日:2024.05.07

  • mio

    mio

    お恥ずかしながら原田マハさんの作品を読んだことがなく“美術小説”という前情報のみで読み始めました。

    主人公は、現代を生きピカソ研究に命を捧げたMOMAのキュレーター八神瑤子と、過去を生きるピカソの恋人で写真家のゾラ。時代や性格の異なる2人をピカソが、そして彼の作品“ゲルニカ”が繋ぐ。
    美しく熱い、手に汗握るアートサスペンスです。

    小難しい美術史がメインの作品かと思い何の気なしに読み始めた小説ですが、あっという間に物語に引き摺り込まれページを捲る手が止まらなくなりました。
    瑤子のシーンでは彼女の悲しみに共に涙し、期待や恐怖に震え、はたまた喜びに胸を震わせ、またゾラのシーンではピカソの愛したパリの行末を共に案じ、夢中でページを繰りました。こんなにも感情が揺さぶられる作品だったとは…

    ピカソに関しての知見も得られる、学びと感動の一冊です。


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    投稿日:2024.05.06

  • ぴ

    このレビューはネタバレを含みます

    事実を元にフィクションを創り上げるのが本当に上手い。楽園のカンヴァスに比べると恐らく事実に近いためか、カタルシスは弱め。

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    投稿日:2024.05.05

  • こまつな

    こまつな

    4.5。楽園のカンヴァスはルソーをめぐる史実を中心に書かれていたけれど、今作はさらに9.11からイラク侵攻や、スペイン内戦からWWⅡとピカソの時代の歴史的な動きも絡めて書かれていてものすごい読み応え。歴史苦手人間としては丁寧に読むのに時間がかかったけどその分学ぶものも大きかった。ノンフィクションとフィクションをとっても自然に面白く混ぜ込む天才。それでいて内容の引力もすごいし、ヨーコ・ヤガミとドラ・マールという2人の女性のピカソやピカソの作品に対する熱量もひしひしと伝わってきて、作者の画家や作品に対する愛やリスペクトがものすごくて好き。続きを読む

    投稿日:2024.05.05

  • みくちゃん

    みくちゃん

    ピカソの生涯、第一次世界大戦の背景が物語と共に勉強になり、また絵の知識もつく。面白く勉強になる作品。

    投稿日:2024.05.05

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