水の時計

初野晴 / 角川文庫
(106件のレビュー)

総合評価:

平均 3.6
22
25
36
10
1
  • 意外にも悲しい「ハルチカシリーズ」の原点。

    心臓がキューっと握りつぶされるような、そんなせつない物語だった。自分の生を他人に分け与えていくという悲しい儀式の運搬役を任された主人公。その過酷な運命から十代にして髪が白くなってしまった。

    正直言ってまだ謎な部分が多く、それを全部説明したいたら作品の質が落ちてしまうかもしれないのだが、すべてを明かしてほしかった。

    「ハルチカシリーズ」とは一味違うシリアスな物語に作者の原点を見たような気がした。
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    投稿日:2018.02.26

  • 摩訶不思議なファンタジックミステリー

     第22回横溝正史ミステリ大賞を受賞した初野晴のデビュー作である。さて本作では第一章が語られる前に、序章と言うべきなのか・・・いきなりオスカー・ワイルドの『幸福の王子』という童話の要約が記載されているのだ。それはさらに要約すると次のようになる。

     ある町の中に、金箔に覆われ、両目は蒼いサファイア、剣の柄にルビイをあしらった王子の像が立っていました。王子の像は足元で休んでいたツバメに、町の困っている人々に、自分の体の一部分を次々に運んでゆくように懇願します。
     ツバメは南の国へ旅立つ日を延ばして、王子の頼みを聞いてあげることにします。そして王子の像が灰色に成り果てるまで、町の人々に少しずつ金箔やサファイアなどを運ぶのでした。

     読み始めたときは、一体何の比喩なのだろうかと考えていたのだが、この王子とツバメの童話こそ、本作のメインテーマだったのである。本作では王子の代わりに、葉月という脳死と診断された少女が登場し、ツバメの役は暴走族のアタマである高村昴が演じることになる。
     奇妙なことに葉月は、脳死と宣言されていながらも、月明かりの漂う夜に限り、特殊な装置を使って会話することが出来るのだ。そして彼女は高村に、自分の内臓などを移植を必要としている人々に運んでくれと哀願するのである。

     それにしても、何とも言えない摩訶不思議な雰囲気と、おどろおどろしさが漂うファンタジックな寓話ミステリーだ。ラストは、童話のツバメと違って、なんとなく光明を見いだせるところに救いを感じた。まさに横溝正史ミステリ大賞に相応しい作品と言えるだろう。
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    投稿日:2016.08.24

ブクログレビュー

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  • tomosaku

    tomosaku

    澄んだ物語だ。臓器移植、暴走族、生と死、扱われているパーツはハードなのだが、主人公たちの願いはどれもピュアで、それ故に残酷でもある。

    自分を犠牲にして他人を助ける、オスカー・ワイルド「幸福の王子」を下敷きに繰り広げられる本作は、現代の寓話と言える。

    オムニバス形式で進みつつ全体としてひとつの大きな物語となる構成で、個々のエピソードは心に染み入るものなのだが、「この伏線回収されてなくない?」や「あれは結局何?」が散見され、ワシは気になってしまった。とはいえミステリ賞の受賞作なので、ワシの読み込みが甘いのかも。
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    投稿日:2019.06.06

  • もるがな

    もるがな

    幸福の王子を下敷きにした、ダークファンタジーミステリ。幸福の王子を臓器移植になぞらえた設定は面白いが、そのせいか内容が重く、どう足掻いても幸福な結末にならない感じがあるので読み進めるのはやや苦しい。臓器を運ぶ密命を受けた主人公が、途中で狂言回しの役割を演じ、中盤が臓器移植を巡る個々の連作短編集のような趣になるのは非常に面白く、類を見ない構成だった。重たい物語だが、皆が皆幸福に過ごせるわけではなく、理不尽さから目を背けずにあますところなく描き切ったあたりは好感が持てる。どこか寓意的な雰囲気や、ビジュアル面も良い。
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    投稿日:2019.05.27

  • bubu-o

    bubu-o

    よくわからなかった。
    人に臓器を分け与えながら生きる、
    その理由にいまひとつ共感できなかった。
    主人公たちの関係性も。。

    何か意味ありげな登場人物の設定が最後まで
    あまり回収されなかったのが残念です続きを読む

    投稿日:2019.04.25

  • anri0912

    anri0912

    脳死の状態で延命治療を受けている少女から依頼を受け、臓器を必要としている人の元へと運ぶ役を請け負った、暴走族の昴。

    うーん、何とも言い難い。伝えたいイメージや書きたい雰囲気はなんとなく理解出来るものの、ここぞ!という所にパンチがないと言うか、色々と詰め込みすぎて熱が分散してしまっている印象。
    昴は一体どうなりたかったのか。進みたかったのか落ちてしまいたかったのか。
    ちょっと惜しい一冊。
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    投稿日:2018.05.19

  • まじめがね

    まじめがね

    ハルチカシリーズからこちらへ。
    読んでいて同じ作者であることがよくわかる、良くも悪くも癖の強い文章。私は好き。
    ただところどころガス欠感があり、書きたいことが書ききれなかったのではないか、と推察。

    投稿日:2018.03.13

  • ラビ

    ラビ

    冒頭、「幸福の王子」の引用が示唆するもの。
    引き込まれるように文章を追ったけど後半その勢いは失速したかな。でも他の著作が気になる感じではあった。漆黒の王子はいつか読む。

    投稿日:2017.09.25

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