【感想】漫画で描き残す東日本大震災 ストーリー311 あれから3年

ひうらさとる, 青木俊直, うめ, おおや和美, 岡本慶子, さちみりほ, 新條まゆ, ななじ眺, 二ノ宮知子, 葉月京, 松田奈緒子 / カドカワデジタルコミックス
(6件のレビュー)

総合評価:

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  • 震災の数は、人の数だけ存在します

    甚大な被害とその後の生活を一変させた2011年3月11日の東日本大震災に対し、「漫画に出来ることは何なのか?」と考え、『ホタルノヒカリ』で知られるひうらさとるを中心に始められた「ストーリー311プロジェクト」。

    1冊目は震災直後に出され、本書は3年後に出された続編。一度語って終わりではなく、関わった人々の経過もしっかりと共にすること、震災の記憶と被害と復興を風化させないこと。地に足のついた丁寧な活動に頭が下がる。

    震災後、北野武が言ったように、“この震災を「2万人が死んだ一つの事件」と考える”のではなく、“「1人が死んだ事件が2万件あった」ってこと”だと考えてみること。

    漫画家たちは、実際に現地に入り、現実の風景を凝視し、被災した人々の声を聞ききました。漠然と震災やその被害を語ることはしていません。取材したある個人とその周辺、そしてそれを取材した漫画家自身の声が登場し描かれるストーリーは、被災した人の数だけ無数にあるのです。

    すべてはそれぞれの震災であり、日本全体が被災したひとつの震災でもあります。忘れないために、そしてあの日からの日々の変化と蓄積を見つめるためにも。
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    投稿日:2014.03.12

  • 人気漫画家たちが、実際に被災地に足を運んだり、被災者の声を聞くことを通じて描き下ろされた競作集

    『ストーリー311』とは、『ホタルノヒカリ』のひうらさとるが2012年2月に立ち上げたプロジェクトで〈「漫画に出来ることは何なのか?」という問いへのひとつの答え〉として生まれた。その第1巻は2013年3月に刊行され、その続巻となるのがこの『ストーリー311 あれから3年』。執筆者は、ひうらさとる、青木俊直、うめ、岡本慶子、新條まゆ、二ノ宮知子、松田奈緒子、葉月京、ななじ眺、さちみりほ、おおや和美の11名の漫画家たち。人気漫画家たちが、実際に被災地に足を運んだり、被災者の声を聞くことを通じて描き下ろされた競作集である。

    とはいえ、実現に向けてはかなりの試行錯誤と苦難があったらしい。作家への声掛けから資金集め、出版社との交渉、流通、販売までを、いわば「手弁当」で賄ったわけで、それは〈全国に流通する本を作るというのは 金銭的にも体力的にも 大変なことなんだと実感しました〉と語る、ひうらの描くプロローグから窺うことができる。「第2巻を」という読者の声は多いものの、先立つものがない。さらには、〈そもそも……私たちのやることが今の東北に必要とされてるんだろうか……〉という迷いもある。

    この迷いは、おそらく震災から3年目を迎えた今、被災者以外の多くの人が感じていることだろう。復興がまだまだ道半ばであることは、誰でも知っている。原発事故がまったく収束などしていないことも。「何か力になりたい」とは思う。けれども、いまさら自分に何ができるだろう。逆に足手まといになるだけではないのか。そう考えて、躊躇してしまう。少なくとも僕はそう。だから〈みんな迷いながら精一杯描いた作品ばかり〉という、ひうらの言葉には、とても共感するものがある。だれだって、まだ、迷いの中にいる。

    それでもやはり、漫画の力、漫画家の力はすごいな、と感嘆せざるを得ない。例えば、さちみりほが描く第1話。原発事故対応にあたる福島第一原子力発電所所員たちの「あの日」を描いた作品だが、当然のことながら、これはのちの証言から描き出されたシーンだ。それでも、漫画であれば「あの日」の原発内の様子を、リアルに「再現」することができる。のみならず、そこに「物語性」を仮託することができる。テレビやネットで流される写真や映像は、たしかに「事実」かもしれない。けれどもそれらの多くは「断片的」にしか、私たちに情報を与えてくれない。それらを整理し、自分の中に浸透させるには、筋の通った「物語化」が必要だ。でもそれはなかなかに難しい。

    写真でも映像でもない。漫画だからこそ、伝えられる真実がある。キーワードは「物語」。そのことをこの『ストーリー311』は、改めて教えてくれる。ここに描き表わされた「物語」の主人公は実在していて、それぞれが東北の地に踏みとどまって生きている。名もなき一人一人の人生には、唯一無二の「ストーリー」がある。「被災者=悲劇の人」では、けしてない。喜怒哀楽に満ちた人生を、被災しなかった僕たち同様に(当たり前だけれども)送っている。そのうえで、僕たちはどのように震災と向き合えばよいのか。そのヒントを、漫画家たちは示してくれている。
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    投稿日:2014.03.13

ブクログレビュー

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  • NO Book & Coffee  NO LIFE

    NO Book & Coffee NO LIFE

     『温故知新3.11 #5 コミック⑤』
     ー『ストーリー 311 あれから3年』ー

     前作の続編・第二弾、2014.3.11の発行です。
    ひうらさとるさんが発起人でスタートしたこのプロジェクトは、前作が好評だったものの、漫画家さんたちにとって連載を抱えたまま印税全額寄付の仕事は当然大変だったようです。
     それでもクラウドファンディングであっという間に目標額達成! まさかの被災地支援が漫画家支援につながったようです。

     今回の参加漫画家さんも11名ですが、前作から連続が6名、新規に5名が加わっています。
     執筆漫画家さん(敬称略)は以下の方々です。
    ひうらさとる、青木俊直、うめ、おおや和美、岡本慶子、さちみりほ、新條まゆ、ななじ眺、二ノ宮知子、葉月京、松田奈緒子

     前作よりも、前を向き必死に頑張っている姿が多く描かれている印象です。互いに支え合うことが妙にクローズアップされますが、本来当たり前のことなんですね。悲しいことがあったりすると、それが身に染みるんですね。

     もはや誰も関心を持たないかもしれない一昔前のコミックを5冊続けて読みました。自分の当時の回想と共に、新たな気付きも得られました。まさに「温故知新」です。
     プロジェクトに賛同し、難儀された漫画家の皆さんには、いつかその後のストーリーを描いてほしいと思います。現に原発を始め、処理水問題、遠い廃炉など、解決にはまだまだ時間を要します。
     今後も漫画の力で、それぞれが「語り部」の役割を果たしてくれたらと、期待します。
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    投稿日:2023.07.07

  • 静華

    静華

     四年半前、まさか自分が大地震を経験するとは思っていませんでした。
     この地震があったからこそ関東圏に行くことができ、仕事も決まり、結婚その他諸々が決まったので、ほかの方々に比べてとてもとてもわたしは幸せだったのだと思います。
     勿論、実家は流されはしなかったものの半壊やら祖父母の家も浸水被害に遭い、生きていてよかったという状態でしたけれども。
     『Booklive』のお買い得ページをつらつら眺めていたらこちらが割引になっていたので、気になって購入しました。
     福島の友人のこと、家が流された友達のこと、いろいろとまざまざ思い出されて、胸にずしりと来ました。
     特に、ササキミヤさんのところで描かれた若林区荒浜海岸の一報はわたしも聴いた瞬間にぎくりとしたな、と。錯綜する情報と真偽のわからなさ、それはとても恐ろしいものでした。

     あの震災からどのように考え方が変わったのか?というレビュー形式のようなものでしたので、さくさく読めると思います。
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    投稿日:2015.10.19

  • makkinn

    makkinn

     震災後3年の話。どれも短いけれど中身のある前向きの話。漫画家さんがちゃんとそこへ行って取材していることに心が動いた。

    投稿日:2014.11.30

  • ohsui

    ohsui

    311から3年後の、物語。
    こちらもまた、全ての印税が寄付されるようです。

    前作の続きといった位置付けの話もあり、
    いろいろと考えさせられました。

    あれから3年、“もう”なのか“まだ”なのか。
    じ方は人それぞれにあると思います。

    個人的には“もう”3年が過ぎたが、
    “まだまだ”復興は進んでいないと、あらためて。

    こちらを手に取った後、私も震災後に初めて訪れました。
    やはり“現場”を視ているのと見ていないのとでは、感じ方が違うと、

    そんなことをあらためて実感しました。
    本日は311から、3年と5ヶ月目の月命日です。

    忘れずに折々で訪れていきたいな、なんて風に考えています。
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    投稿日:2014.08.11

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