【感想】戦略読書日記<本質を抉りだす思考のセンス>

楠木建 / プレジデント社
(50件のレビュー)

総合評価:

平均 4.0
14
21
8
3
0
  • この本を読んでも何かが身に付くわけではけしてない。ちゃんと帯にもそう書いてある。

    楠木氏は自分のことを経営学者ではなく経営論者だという。正しい理論を作ると言うより少しでも役に立つ方を目指すあたりはこの本でも取り上げられているものづくり論の藤本隆宏氏のような方向だ。とは言え「ストーリーとしての競争戦略」を読めば上手い競争戦略が作れるようになるとかではなく、この本もどうやって戦略的に本を読むかなんかではない。楠木氏が読んだ本を脳内で著者や登場人物と対話しながらその競争戦略はこういうことかと日記風に綴ったものだ。語り口はとにかく熱い、松岡修造かっ!

    そもそも良くあるビジネス書はスキル系にかたよっている。しかし、楠木氏は経営者に必要なのはセンスだという。いくらスキルを高めてもセンスを磨くことにはつながらず、基本的には体験からしかセンスは磨けない。鞄持ちなんてのもセンスを磨く方法の一つだが楠木氏のお勧めは読書、特にノンフィクション系がよくあらゆる自伝などは疑似体験をするにはもってつけらしい。しかし、いちいち本を読むたびに自分だったらこうするだとか、 この戦略はこうかとかやってられるかいな。まあ、インプット目的で読むのは趣味であり仕事はアウトプット目的だそうなので趣味の本読みは面白いかどうかだけでいいと思う。ちなみに楠木氏は仕事以外に趣味でも本を読み、重い本を読むのに疲れたら軽めに、そしてさらに軽めに同時に3冊くらい読むと言う。ちょっと本好きなら年間300冊くらい読むでしょうとかいうが・・・読めるかいな。マンガ入れれば行くけどね。

    本書のテーマではないが競争戦略は因果関係の連鎖であり、良い競争戦略はそれ自体がストーリーとして良く成り立っていると言うことらしい。豪速球もものすごいフォークもないピッチャーが直球とカーブとスライダーをどう組み立ててバッターを打ち取るかと言うようなものだと言う。内角高めを投げた後外角低めに投げれば打たれにくいという因果関係がありその連鎖がストーリーになるのだがみんなで同じことをすると差がでない。そこで違うことをするのがセンスで、ただピッチャーが違えばバッターも違い絶対の正解はない。楠木氏はその因果律を読み取りストーリーとして切り取って提示しているだけなのだ。それがはまる人には効くだろう。

    取り上げられているのは例えば柳井正の「1勝9敗」いつのまにか楠木氏にも柳井氏の口癖が移ってしまった様だ。「当然ですけど。当たり前ですけど。」ほかにもマクドのレイ・クロックを取り上げたかと思えばレコーディング・ダイエットの岡田斗司夫、井原西鶴の日本永代蔵やら石原莞爾と一件とりとめもない。なんせある本を読むとズルズルと関連図書を読みあさるらしいのだ。何冊も読みたい本が見つかっただけでも十分な収穫だわ。

    と言うことでこの本を読んでも何かが身に付くわけではけしてない。ちゃんと帯にもそう書いてある。こういう本の読み方もあるよってことであり、しかも楽しそうにやってやがんなと思うだけだ。これもこの人のセンスなので、センスをまねしても意味がないだろう。どういう本を読んでそれがどう役に立つのか立たないのかは人それぞれ。当然ですけど。当たり前ですけど。
    ちなみにかの出口治明氏(本人も取り上げられている)が大絶賛していることは付け加えておきます。
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    投稿日:2014.01.01

ブクログレビュー

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  •  arata

    arata

    経営ストーリーの本を書いた著者が、経営戦略やストーリーに触発された本を紹介している本です。
    経営関連の本ばかりでなく、人伝やダイエット本などもあるのが興味深いです。
    難しくて飛ばし読みしてしまったところもありますが、自身の経験や紹介した本の著者との話などもまじえつつ、解説が面白くて読んでみたくなる本がたくさんありました。Kindle化されていない本も多数なのがちょっと残念。
    本書はKindle unlimitedで読みましたが、しばらく手元に置いておいて、紹介されていた本を読んだらまた解説を読み直したいです。

    『クアトロ・ラガッツィ』『直球勝負の会社』『おそめ』『ホットペッパーミラクルストーリー』『最終戦争論』など

    巻末のロングインタビューで、著者が好きな本のジャンルの話をしているのも面白かったです。ここでも本がたくさん紹介されます。自伝や日記が好きで当時の生活ルーティンや世の中の文脈を理解してるというのは確かに面白そうですね。歴史小説も面白いけど、日記も読んでみようかな。
    続きを読む

    投稿日:2023.11.23

  • kaido

    kaido

    自分の読書のスタイルとか感想がいかにチープかと思い知らされる。たぶん読書をしている限り自分でも読んだ本から何かを感じたり考えさせられたり関心が深まっていることは確実にあるとは思うけど、それを言葉にする能力に圧倒的な差があることを突きつけられる。しかし言語化能力の差はつまりは感じる力とか考える力の差なのかとも思う。
    でもそんなことは抜きにしても、やっぱり読書はとてつもなく有意義だということが強く共感できて、自分なりに読むことを続けていこうというモチベーションが上がったというか、読書が好きでよかったと思った。
    読書の効果を大きくするためにも、読んだ本について書くことをしていかないとなとも思った。
    続きを読む

    投稿日:2023.03.01

  • elastica

    elastica

    具体と抽象。センスとスキル。
    自分の興味関心と離れた章は読みにくかったけど、この2つのキーワードは今の自分には引っ掛かった。
    そして巻末のインタビューが面白かった!論理に触れるのが好きと仰っていて、まさにそんな本だった。
    本を重量級、中量級、軽量級で分けて並行して読むのは私もやるなあ。

    読みたい本が増えたので、これから読んでいくのが楽しみ!
    続きを読む

    投稿日:2022.10.28

  • 浦島くん

    浦島くん

    書評が本になるというのも面白いですね。
    しかも著者が好き勝手に書いているという。。。

    いくつか良い内容がありますが一つだけ代表して抜粋。

    長所と短所は全く同じもの。
    長所を伸ばして短所を直すという考え方はそもそもありえないと思っています。
    無邪気にそう考えている人は、トレードオフというものが理解できていないのです。
    人はすべて、三角形や四角形であり、長所を伸ばして短所を直そうとすれば、
    三角形や四角形の中に収まるちいさな円になってしまうだけではありませんか。
    (「直球勝負の会社」出口治明)
    続きを読む

    投稿日:2020.10.24

  • ムギュラ

    ムギュラ

    抽象化と具体化
    バカなる
    完全分業と一貫型の違い
    歴史に学ぶ
    直列型のシナリオ
    冷たい経営
    豪放磊落
    自分の色

    学びを一言で綴っていくとそう言うこと。
    プロフェッショナルマネージャーとレイクロックの自伝は読んでみなくてはと思う。続きを読む

    投稿日:2019.09.15

  • maple

    maple

    著者の好みの本とともに、繰り広げられる世界。
    この方、かなり本がお好きだとわかります。
    読みたくなった本がまた増えた。

    投稿日:2019.06.12

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