【感想】赤朽葉家の伝説

桜庭一樹 / 東京創元社
(208件のレビュー)

総合評価:

平均 4.0
61
81
42
4
1
  • ま、「渾身の雄編」と言うよりは、大河小説的ホラ話だよね

     にゃんぱすー。

     富士見ミステリー文庫から出た「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」を読んだ時は、おいおいおい、ライトノベルのレーベルからこんなん出していいのかよ、これ中学生が読んだらトラウマになるんじゃね?と思ったのも今となっては懐かしい想い出の桜庭一樹の代表作、と言ってもいいのではないでしょうか。

     第60回日本推理作家協会賞を受賞したことからも分かるとおり、ミステリ的な要素も多少はありますが、どちらかというとファンタジー、それもマジックリアリズム寄りのホラ話、もとい、年代記で、今のところ個人的にはこの作者のベスト作だと思います。

     なお、桜庭一樹は「青年のための読書クラブ」も好きなので、新潮社は早く電子書籍化するように(ナゾの上から目線)。
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    投稿日:2013.10.19

  • 昭和世代のノスタルジー

    未来が見える千里眼をもつ女性の話,などというと大昔のことのように思いますが,昭和の高度経済世長期の山陰地方の街が舞台です。
    個人的な物語とともに,昭和の日本の歩みと神話の入り込む余地の残る地方の村落の変わりゆく様が描かれています。
     昭和を歴史でしかしらない世代には難しいかもしれません。私はかなりマッチする世代ですけど。
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    投稿日:2015.08.09

  • 女性三代記

    おばあちゃん、お母さん、私の女性三代にわたる三章からなる物語です。

    最初は昭和の製鉄所を舞台にしたサンカの捨て子で千里眼を持つおばあちゃんの話です。出目金との変な友情物語が良いです。
    次は中国地方最強レディースヘッドであるお母さんの話です。無敵すぎて爽快です。そして後半、思わぬ方向へ話が進みます。(この章が一番面白かった。)
    最後は何の特徴もない私の話です。おばあちゃんの章の謎が明かされます。

    どの章も女性が主役で男性は脇役の話なので、女性のほうが楽しめると思います。
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    投稿日:2015.08.17

ブクログレビュー

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  • 午年生まれのいちばん目

    午年生まれのいちばん目

    終戦後から平成の中頃までを、実際の出来事にも触れながら紡がれる女三代記でした。

    語り部である三代目、瞳子が私と同じ頃の生まれで、誰か人伝に聞いた話のように読むことができ、社会情勢や価値観、暮らしなど移ろう時代を登場人物に想いを馳せて読んでいました。

    特に一代目万葉の時代の話が、実家に伝わる古い話とどこか似ていて、お気に入りです。
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    投稿日:2024.03.24

  • planets13

    planets13

    あとがきで「全体小説」という表現が使われているが、その名に負けない、色々な要素の詰まった作品。たくさんの要素の中で個人的に注目したいのは万葉の健気さと律儀さ、そして時代という名の大きく加速するエントロピー。
    ただ、ミステリーではないので出版レーベルの選択は間違えだと思う。また瞳子につけようとタツが考えていた名前が「自由」というのにも違和感を禁じえず (どうせなら「転機」とか...)、また万葉の一代記 (を瞳子が語るの) でも良かったと思う。
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    投稿日:2023.12.24

  • クークー

    クークー

    話は3部作構成。鳥取の名家赤朽葉家の女三代の物語。里で拾われた山窩の子供、千里眼の万葉。未来に起きることを幻視する。大奥様のタツのひと声で赤朽葉に嫁入り。その娘でレディースから漫画家になった毛鞠。恋愛、抗争、友情、そして青春の終わり。更にその娘、まだ何者でもない瞳子。万葉、毛鞠が主役の2部目までは、これはいわゆる大河小説か?という展開。日本の経済発展、オイルショック、バブルへと。

    当時の風潮を思い出しながら波乱万丈の2人の人生を愉しむ。それが面白い。自分の親の世代の万葉も、自分の世代の毛鞠も私の知ってる時代とは少し違う気もするが地域の違いか、個人の違いか。そこは小説だから御愛嬌。

    そして瞳子の出てくる3部目になって思い出したかのように殺人の話が出てくる。登場人物が、その昔の殺人を告白するのだ。誰が殺されたのか?なぜ?どうやって?という謎解きに瞳子が挑む。その謎を解く伏線は前の2部、大河小説部分に隠されている。だからこんな突飛な2人の女性の人生を描いたのかと、そこで気づく。
    そもそもこれは推理小説なのか?と思いながら読んで、違うけど面白いなと思い始めた頃に謎が提示されるから、そのときにはもう推理小説としての興味を失っている。謎解きはどうでも良いのだが、上手に作っている。それが良いのか悪いのかわからんが何より小説にいちばん大事なこと、お話として面白いので十分だ。










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    投稿日:2023.11.19

  • はる

    はる

    何度目かの再読!
    桜庭一樹さんの長篇、いつも前半部の面白さがとてつもない。後半になって減速する印象は否めないが、それでも最後まで面白い。

    投稿日:2023.10.22

  • ちてこ

    ちてこ

    このレビューはネタバレを含みます

    2008年。(第5回)。7位。
    GOSICK好きなのよ。
    鳥取の旧家女性3名の歴史。万葉はフィリピン系の感じで山の民に捨てられ、鳥取で育った。中国山脈あたりって八咫烏も住んでいたような。旧家の大奥様タツの指名により輿入れ。世の中は鉄鋼業が盛んだった。泪、丙午の娘の毛鞠、鞄、孤独の4人を生む。毛鞠は中学生より暴走族で中国地方を配下に収める。やがて引退、そして人気漫画家に。長男の泪の死により、父の決めた男と結婚、瞳子を産む。鉄鋼業も衰退していく。この話は瞳子が語り手。
    昭和の歴史と絡めた一族の歴史。

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    投稿日:2023.03.09

  • kinu

    kinu

    このレビューはネタバレを含みます

    三部の最後までネタバレしてるので注意!

    通勤時間にちまちま読む私には超大作すぎるけど、その分すごく面白かった。

    万葉の見る神話の世界にぐっと引き込まれ、
    毛鞠の突き抜ける衝動と喪失の歴史に踏み潰され、
    一部・二部に対して比較的軽く、二部の喪失から癒えてきた傷口をさらっと爽やかにグリグリされる瞳子の三部。

    視覚的にずっと美しい。
    鉄砲薔薇と箱の渓谷や、曜司の乗るお座敷列車が浮き上がるシーンは、死にまつわることなのに美しすぎる。
    桜庭一樹は生きている人間はもちろん、死んでゆく人間も美しく書き上げてくれるから信頼と愛を捧げたい。
    最高。最高で最高に辛い。

    泪がすごく好きだったので生まれると同時に作中での死が確定して、亡くなるまでずっとしんどかったし、
    いざ死ぬと喪失感がすごくてそのあと泪の話が出てくる度に静かに本を閉じて休憩した。

    最後に瞳子のことを抱きしめる三城の気持ちを考えるとつらい。
    男に生まれてしまったが故に三城と結ばれる未来を選べず、自死してしまったかもしれないかつての友人(まぁおそらく恋人)の泪とそっくりに生まれた女の子の瞳子を、泣いている瞳子を抱きしめるなんて……。
    優しいな三城は。
    女に生まれていたら、って泪はきっと1度は思っただろうな…………。
    しんどい。

    そして豊寿さんも好きだったのに……そんな……ってなる。
    友人の枠からはみ出ないように節度を持って万葉に接する豊寿が大好きだったので、死ぬなんて……。

    この作品に出てくる男たちはみんな魅力的すぎる。
    女たちももちろん魅力的なんだけど、男たちに狂わされる。

    瞳子の今の自分に対する評価とか、未来への不安は共感できるところがあって最後の「ようこそ」は、瞳子を含む生まれた人間たちに対する歓迎の言葉。

    瞳子とは違う種類だけど、三城もまた傷と不安を抱えて生きていくしかないのだ……。
    今生きている私たちと同じように。

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    投稿日:2022.11.05

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