トヨタ物語 強さとは「自分で考え、動く現場」を育てることだ

野地秩嘉 / 日経BP
(14件のレビュー)

総合評価:

平均 4.5
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  • 反発と危機感がカイゼンに不可欠だった

    意外の連続だった。
    ふつう車メーカーの創業の物語といえば、まず造りたい理想のクルマ像というのがあって、それを実現していく話かと思ったら、創業者のジャスト・イン・タイムという生産方式のアイデアをいかに具現化していくかという物語だった。
    しかもいまでは全能のように語られる生産方式も、確かにトヨタを強くはしたが、どん底から救い、かつその生産方式の礎にもなったのは、朝鮮戦争と不良トラックに激しくクレームをつけたアメリカ軍だったという事実。
    そもそも現場での創意工夫や改善も、裏にあったのは怯えにも似た強烈な危機感だった。

    いまではなかなかその危機感を共有することは難しいが、アメリカが本格的に日本で車を売りはじめたら、トヨタはつぶれるという恐れは、是が非でもトヨタ独自の生産方式を会社全体に根付かせなくてはならないという悲壮な使命感につながった。
    しかしこの生産方式も、いかにも勤勉な日本人らしい発想から生まれたものだと誤解していたが、その実はむしろ欧米人の方が親和性が高いのではないかと感じるほどドライで、現状維持をよしとする日本社会の風土への挑戦であり、真面目な優等生タイプより要領のいい横着なタイプの方が発想しやすいという。

    この本を読んでトヨタ生産方式なるものがわかった気になるのが、最大の錯覚だろう。
    これでよしといった終わりのない不断の試行錯誤の繰り返しで、パターン化された公式は存在せず、解決策も現場と指導員の数だけ無数に存在する。
    本書にもある通り、社内で幹部から直接研修を受けた従業員が、実際に工場でラインを見るまでは、その真の革命性を理解できなかったというのだから、本書を読んだだけでわかった気になるのがいかに愚かなことかわかるではないか。
    その著者も、いわゆるトヨタ生産方式の亜流を見て「これは違う」などと書いていて落胆した。

    カイゼンの生みの親である大野耐一のエピソードが強烈だ。
    幹部でさえ大野が近づいてくるだけで足がすくみ膝の震えが止まらなかったという。
    極めつけはしのぶ会での一件で、当時の現場での大野の姿がビデオ上映されただけで、それまで談笑していた会場の雰囲気が一変し凍りついたというのだから相当なものだ。
    それほど厳しい大野を追い返すほどの反発が当時には存在していたが、現在はどうか?
    「トヨタがつぶれる」という切迫した危機感が裏返しに使命感を強くしたが、その危機感は現在も共有されているか?
    反発と危機感、実は欠かせない要素だ。
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    投稿日:2018.10.08

ブクログレビュー

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  • くどロン

    くどロン

    トヨタのものづくりについて学べる本です。
    創業時の何もないところからビッグスリーを凌ぐまでカイゼンを継続し続けたトヨタの経営陣、現場、そして生調のメンバーの生き様に大いに学ぶことが出来ました。
    是非一読をお勧めしたいです。続きを読む

    投稿日:2019.06.16

  • lmndiscrm

    lmndiscrm

    このレビューはネタバレを含みます

    トヨタ生産方式を通じて、トヨタ自動車の歴史を振り返る内容。特に喜一郎以降は指導員にフォーカスがあたっており、彼ら、そして生産方式を通じて、トヨタの現場は自分たちで考えることのできる場所に変わっていく、という流れ。

    同方式そのものへのフォーカスは多かったが、それを「どう展開するか」、そしてその結果現場は「どうなるか(生産結果という意味でなく内面的に)」に焦点を当てたものはまだ見ていないので新鮮だった。

    後工程が前工程に取りに行く、その結果自工程でのきっちりとした簡潔をしていないと、取りに来た人に迷惑をかける。結局渡す流れは同じだが、自分で持っていくと取りに来てもらうということで心理的な変化もあるのだろうか。

    また、よくある批評として労働強化であることを否定しており、基本的に身体は楽になる方向に向かうというもの。
    当然突き詰めていけば少人化されるものではあるが、そういう中でも当時の大野は眺めておけなど、余計な遊ばせ仕事に工数を割かせていない。

    また、同方式の弱点として展開できる人が限られることが挙げられているが、それはだからこそ強みであるし、これだけ世の中に大っぴらに漏れていっても問題がないところの一つだと思う。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2019.05.06

  • shinjesus

    shinjesus

    なるほどこれは実践して失敗して悩んで試行錯誤して成果を上げてその過程を振り返ってみないとトヨタ生産方式を理解できそうにないなあ。
    そしてトヨタ生産方式を目指しても良い結果は得られそうにない。結果的に「あ、これはトヨタ生産方式と同じだな」というやり方を自分で築いていきたい。

    今ではエクセレントカンパニーに見えるトヨタが、常に危機と直面していたこと、泥臭い細かな努力で生き残ったこと、しかしその危機感がトヨタ生産方式の原動力であったこと。
    外からは見られない人間臭〜いやり取りを追体験できて、とてもエキサイティングな読書体験だった。
    続きを読む

    投稿日:2019.03.10

  • shimu2

    shimu2

    【トヨタは、トヨタを超えていく】今で言うところのベンチャー企業としてスタートし、今日では世界に冠たる自動車企業となったトヨタ。その代名詞とも言える「トヨタ生産方式」を軸とし、成功に到るまでの困難続きの道のりを振り返った作品です。著者は、『TOKYOオリンピック物語』でミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞した野地秩嘉。

    トヨタという企業に流れるDNAをわかりやすく解説した一冊。「生産方式」と目にすると、どうしても自働化や製造プロセスにまつわることを想起してしまいますが、突き詰めて言えば、一人ひとりの心構えや考え方というところまで降りて考えていくシステムなのかなと感じました。それにもかかわらず、決して精神論に堕してはいないというのが素晴らしい。

    〜「トヨタ生産方式とは考える人間を作るシステムです」と付け足した。〜

    つい誰かにオススメしたくなる作品でした☆5つ
    続きを読む

    投稿日:2019.02.11

  • フラビオ

    フラビオ

    2018年12月10日読了。トヨタの工場を70回以上見学し多くの関係者にインタビューした著者による、機物から自動車にプロダクトを切り替え、日本を代表する企業となったトヨタの歴史とその強さの真髄に迫るドキュメント。「焼け野原からイノベーションを起こした」というとソニーがよく引き合いに出されるが、トヨタもそれと同じかそれ以上に革命的な偉業を成し遂げた会社なのだ、ということがよくわかった。アンドンやかんばんといった目に見える要素を真似しても、「現場に考えさせる」「カイゼン」「ジャストインタイム」といったTPS(トヨタ生産方式)を取り入れることは難しいよなあ…と思う。これを成し遂げたトヨタの社長らと、大野耐一らTPSの推進役は確かに偉大だ。大野の死後もその映像を見て震え上がった、という幹部たちのエピソードが好き。続きを読む

    投稿日:2018.12.10

  • ryomichi

    ryomichi

    何度でも読み返したくなる一冊。アメリカの公聴会のくだりでは、涙が溢れました。毎日がカイゼン!ですね!

    投稿日:2018.11.29

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