【感想】トヨタ物語 強さとは「自分で考え、動く現場」を育てることだ

野地秩嘉 / 日経BP
(19件のレビュー)

総合評価:

平均 4.4
11
4
2
1
0
  • 反発と危機感がカイゼンに不可欠だった

    意外の連続だった。
    ふつう車メーカーの創業の物語といえば、まず造りたい理想のクルマ像というのがあって、それを実現していく話かと思ったら、創業者のジャスト・イン・タイムという生産方式のアイデアをいかに具現化していくかという物語だった。
    しかもいまでは全能のように語られる生産方式も、確かにトヨタを強くはしたが、どん底から救い、かつその生産方式の礎にもなったのは、朝鮮戦争と不良トラックに激しくクレームをつけたアメリカ軍だったという事実。
    そもそも現場での創意工夫や改善も、裏にあったのは怯えにも似た強烈な危機感だった。

    いまではなかなかその危機感を共有することは難しいが、アメリカが本格的に日本で車を売りはじめたら、トヨタはつぶれるという恐れは、是が非でもトヨタ独自の生産方式を会社全体に根付かせなくてはならないという悲壮な使命感につながった。
    しかしこの生産方式も、いかにも勤勉な日本人らしい発想から生まれたものだと誤解していたが、その実はむしろ欧米人の方が親和性が高いのではないかと感じるほどドライで、現状維持をよしとする日本社会の風土への挑戦であり、真面目な優等生タイプより要領のいい横着なタイプの方が発想しやすいという。

    この本を読んでトヨタ生産方式なるものがわかった気になるのが、最大の錯覚だろう。
    これでよしといった終わりのない不断の試行錯誤の繰り返しで、パターン化された公式は存在せず、解決策も現場と指導員の数だけ無数に存在する。
    本書にもある通り、社内で幹部から直接研修を受けた従業員が、実際に工場でラインを見るまでは、その真の革命性を理解できなかったというのだから、本書を読んだだけでわかった気になるのがいかに愚かなことかわかるではないか。
    その著者も、いわゆるトヨタ生産方式の亜流を見て「これは違う」などと書いていて落胆した。

    カイゼンの生みの親である大野耐一のエピソードが強烈だ。
    幹部でさえ大野が近づいてくるだけで足がすくみ膝の震えが止まらなかったという。
    極めつけはしのぶ会での一件で、当時の現場での大野の姿がビデオ上映されただけで、それまで談笑していた会場の雰囲気が一変し凍りついたというのだから相当なものだ。
    それほど厳しい大野を追い返すほどの反発が当時には存在していたが、現在はどうか?
    「トヨタがつぶれる」という切迫した危機感が裏返しに使命感を強くしたが、その危機感は現在も共有されているか?
    反発と危機感、実は欠かせない要素だ。
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    投稿日:2018.10.08

ブクログレビュー

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  • kdobashi

    kdobashi

     第二次世界大戦後の復興から経済成長の過程で日本の製造業は世界市場を席巻した。しかし欧米諸国の反撃や新興国の台頭で家電製品、エレクトロニクス、医薬品、化学製品等々の日本企業の優位性は崩れてしまった。その中で、トヨタ自動車が世界最大の自動車会社の一つであり続けている理由がわかるドキュメンタリーであった。本書の最後のところで、アメリカのケンタッキーでトヨタの工場が地元の誇りと見られていることが語られている。トヨタ生産システムによってトヨタは一日本の企業ではなく世界のトヨタになっている。国内国外にかかわらず工場、協力会社、販売店で現場の人たちが自分で考えカイゼンを繰り返している組織であるからこそ、好不況の波や災害、米国でのリコールに対するバッシングにも耐えて成長を続けられているのだろう。続きを読む

    投稿日:2022.01.26

  • takeshitamura

    takeshitamura

    知っていることと、実践は全然違う。
    トヨタ生産方式は有名だけど、それをやりきることがいかに難しいか。知っていれば出来るというものではない。
    そして、トヨタの凄さは徹底的にカイゼンをやり抜くところにあるんだということを書いた本。続きを読む

    投稿日:2021.01.21

  • aki4155

    aki4155

    このレビューはネタバレを含みます

    トヨタは、中小企業の時から何度も倒産の危機に立ち向かってきて「このままでは潰れる」という危機感が強い。それを忘れずに見事に引き継がれている。

    トヨタ生産方式は、中間在庫を無くす事でピンと糸を張った緊張状態をつくる。不良品は流さない、異常があったらラインを止め手を打つ。
    リードタイムを短くする=仕入から代金の回収を早くなる。トヨタ生産方式は経営に直結している。
    佐吉と喜一郎が考えた思想を指導でうまく繋いている。
    営業改革の話では鶏そぼろ弁当と幕の内弁当の話が納得の面白さだった。
    トヨタ生産方式の導入は、指導する人により、結果は大きくかわり、間違いもおき誤解もされる。
    全体的にエピソードを混じえて分かりやすく表現されていて有意義でした。支えてるのは現場主義!!

    レビューの続きを読む

    投稿日:2020.10.09

  • ぼぼ

    ぼぼ

    トヨタの生産方式である「カンバン方式」の成り立ちを通して、トヨタを作り上げた指導者目線の思考を学んだ。

    自ら考え、行動する。スターバックスでアルバイトをしている私にとって当たり前になってきているこの考え。この意識の大切さを改めて思い知らされた。それと共にトヨタの教育の現場に益々興味が湧いた。

    その他にも、戦争や大災害を経験した当時の日本人と日本企業はどうやって逆境を乗り越えたのか。その要因も知れた。

    また、この本に書かれていた指導者としての条件のうちの一つは既に私に備わっていると思う。現場と顧客の両方に共感し、寄り添った経営を目指していきたい。
    続きを読む

    投稿日:2020.08.31

  • M. Nakamoto

    M. Nakamoto

    創業に近い時期は時間が経ち過ぎていて、生き生きとしたやりとりというより、事実が淡々と語られる感じ。それほどドラマティックでもないし、登場人物もあっちからこっちへ飛ぶので感情移入するポイントもあまりなく。カンバン方式を学ぶにしては考察が薄いと感じました。トヨタの社員の方が読まれればいいのではないでしょうか。続きを読む

    投稿日:2019.08.19

  • くどロン

    くどロン

    トヨタのものづくりについて学べる本です。
    創業時の何もないところからビッグスリーを凌ぐまでカイゼンを継続し続けたトヨタの経営陣、現場、そして生調のメンバーの生き様に大いに学ぶことが出来ました。
    是非一読をお勧めしたいです。続きを読む

    投稿日:2019.06.16

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