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山本周五郎 / 新潮文庫 (2件のレビュー)
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総合評価:
おでんbm
人間らしく,生きる。
この著者の作品を初めて読んだ。上巻のあたりは登場人物が多くてそれぞれに複数の呼び方が混在するので混乱してしまい,何より主人公である原田甲斐の内面を表現するような部分が全くないので何やら読みづらいままで…進む。話としては「伊達騒動」に関わる一連の出来事を原田甲斐を中心に据えて追っており,10数年の時間経過があるはずなのだが,主人公の動きがなかなか見えてこないこともあり,物語の進行しているという感じがない。甲斐はひたすら自分を韜晦しつくし,伊達藩を転覆させる陰謀を阻止すべく耐え続けるのだが,その過程で親しかった人々から見放され,あるいは責められあるいは別れ,その中でも感情の動きを表に現さない甲斐の姿は,読者にも何やら得体のしれないものに思われる。そんな甲斐が心を通わせるのは樅の木や鹿,鯉であり,人間とはおよそ心を通じ合えないように見える。甲斐は主家の存続のために周囲の人間の苦しみまでも受け入れて耐えながら,一方では孤独そのものの山での時間を愛するように武家社会の倫理に縛られない生き様こそが本来の人間らしい生き方であると考えているように思われ,陰謀に巻き込まれて縁者を失った宇乃,あるいは宮本新八への接し方にそれが表れている。しかし武士としての生き方を自ら捨てることはできず,自らの心を誰にも明かせないすさまじい孤独の中で10数年生きる甲斐の姿は,なんとも言い表しようがない。物語の中盤から終わりにかけて,わずかに甲斐の心情が漏れだすように述べられる。歴史の真実は不明であるが,孤独に耐えて自らの使命を貫く男の姿は,無言の中に存在感をもって読者の心に残るものと思う。続きを読む
投稿日:2016.08.23
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竃猫
シリアス版『男はつらいよ』か、いや、漢の鑑か・・・
命を懸けても守りたいもの、守らなければならないものがあった、そして守り切って微笑しながら死んでいった、しかも汚名を残すことを承知の上で・・・、そんな漢の生き様を根性なし腑抜けの私が読みました。 現在…に続く大河ドラマのご当地ブームのきっかけになった原作です。 ひたすら救いのない、読んでいて、苦しくなる物語。全てを放擲して出家でも脱藩でもしたらどうかと、逃げるは恥だが・・・(苦笑、オッホン(咳払い))、少なくとも命は落とさないのにと、何度も思って読みました。山本周五郎にしては主人公の社会的地位が高いものの、周囲との”しがらみ”や自分に課せられた責任・使命を全うしようとして悩み苦しむ姿に貴賤の差はないようです。本日は山本周五郎の命日にあたり、読売新聞のコラムでもエピソードが紹介されていました。それによれば、あらゆる受賞を辞退したそうですが、その姿は主人公と重なって見えはしないでしょうか・・・。 主人公が守ったものは教科書的には、伊達藩の存続、ということになるのですが、「何を守ったか?」に対する読み手の解釈が本作に対する評価に深みを与えてくれると思います。あなたは、どう思いますか?私の解釈は・・・恥ずかしいので書けませんm(_ _)m。 山本周五郎、次に読むのは宮本常一と名を連ねている『日本残酷物語』の予定です。続きを読む
投稿日:2017.02.14
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