【感想】文福茶釜

黒川博行 / 文春文庫
(23件のレビュー)

総合評価:

平均 3.5
2
8
10
1
0
  • 小気味いい

     欲が絡むと物事が狂って見えることありますね。
    騙すのが悪いのか騙される方が馬鹿なのか、登場人物たちのしたたかさが面白い。
    騙してちゃっかり儲けてる、そんな人もいるんだろうなぁと読み手に思わせる。
    ブロンズ彫刻は複製を前提に制作されている」「相剥」など等、興味深いことも
    沢山あった。難しいことは考えずに楽しく読める一冊。
    「あとがき」があったのもうれしい。電子書籍にはめったにないことなので。

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    投稿日:2015.10.27

  • 知らない世界の知られざる物語

     よく展覧会にも行きますし、縁日の骨董市めぐりも好きですが、資産として美術品を購入したことや、お宝目当てで骨董品を購入したことはないですねぇ。単に、気に入ったリトグラフを小遣い銭で買う身にとっては、この本で語られる世界は、まさに口あんぐりの話ばかりでした。
     読み物としても、軽妙な語り口でとても面白かったのですが、それよりも何よりも、古美術の世界がこんなにも胡散臭い(失礼!)世界だったとはねぇ。
     hazu-haya-yuさんがレビューで書いておられるとおり、まったく知らなかった知識も得ることが出来ます。従って、とても面白く為になる小説と言えますが、これを読むと骨董品には手を出せなくなるかもね。タイトルの分福茶釜は、連作短編の内の一つ。これを全体のタイトルにしたのも、なかなかな見事な一冊でありました。
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    投稿日:2016.06.17

  • 古美術にも骨董にも興味がなくても面白く読める本です

    なかなかおもしろい本でした。
    黒川さんの本も初めてです。
    古美術詐欺に関する5作品が収められた短編集。
    短編は好きではないので 「しまった!」と 思ったのですが 最初のひとつを読み すっかりはまりました。

    内容は 骨董品でひと儲けをたくらむ男達の話
    どんなに高い金を出しても欲しいという人がいるから値がつくのでしょうが 
    私自身は 骨董品は 大嫌いです。
    これが何千万と言われても あほくさ!というタイプ

    中に出てくる 掛け軸や壺や茶碗などなど 名前も由来も作家もちんぷんかんぷんですが それにも関わらずおもしろおかしく楽しめました。
    案を練って練ってだましたつもりが だまされて

    5つの短編 それぞれよかったです。
    この人の本 他のも 読んでみたくなりました。
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    投稿日:2016.07.17

ブクログレビュー

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  • じゅう

    じゅう

    「黒川博行」の連作短篇ミステリ作品『文福茶釜』を読みました。
    ここのところ国内のミステリ作品が続いています。

    -----story-------------
    痛快、古美術ミステリーの傑作登場!
    相剥本、ニセの入札目録……欲に憑かれた男たちの手練手管が、ニセモノをホンモノ以上に見せてゆく。
    異色のユーモアミステリー!

    古美術でひと儲けをたくらむ男たちの騙しあいに容赦はない。
    入札目録の図版さしかえ、水墨画を薄く剥いで二枚にする相剥(あいはぎ)本、ブロンズ彫像の分割線のチェック、あらゆる手段を用いて贋作づくりに励む男たちの姿は、ある種感動的ともいえる。
    はたして「茶釜」に狸の足は生えるのか?
    古美術ミステリーの傑作。
    解説「落合健二」
    -----------------------

    1997年(平成9年)から1998年(平成10年)に、文藝春秋が発行する月刊娯楽小説誌『オール讀物』に発表された6作品が収録されています… 1998年(平成10年)の第121回直木三十五賞候補になった作品です。

     ■山居静観(さんきょせいかん)
     ■宗林寂秋(そうりんじゃくしゅう)
     ■永遠縹渺(えいえんひょうぼう)
     ■文福茶釜(ぶんぶくちゃがま)
     ■色絵祥瑞(いろえしょんずい)
     ■あとがき
     ■解説 落合健二

    関西を舞台にして、古美術の売り買いでの騙し合いをユーモアたっぷりに描く連作短篇でしたねー

    水墨画を薄く剥ぎ二枚にする相剥(あいはぎ)を扱った『山居静観』、

    利幅が厚い入札目録の図版差し替えを扱った『宗林寂秋』、

    複製を前提に製作されるブロンズ像の石膏の原型像を扱った『永遠縹渺』、

    旧家から骨董品(今回は茶釜)を騙し取る初出し(うぶだし)屋を扱った『文福茶釜』、

    中国の陶磁器の贋作を扱った『色絵祥瑞』、

    等々、骨董品を巡って繰り広げられる、海千山千の金の亡者たちの物語を愉しめました… 骨董品に興味がないので、専門用語は辛かったですけどね、でも、奥が深過ぎるので手を出しちゃダメだって、改めて感じましたね。

    「黒川博行」は、京都市立芸術大学彫刻科を卒業しているらしいので得意分野なんでしょうね… 骨董好きだったら、もっと愉しめたんだろうなと思います、、、

    作品中、繰り返し説かれる「道具屋が道具屋を騙すのは、騙された方が悪い。その代わり客にクレームをつけられたら、売値で買い戻すのが道具屋の仁義」という道具屋のモラルが印象的でした。
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    投稿日:2023.09.03

  • しげ

    しげ

    このレビューはネタバレを含みます

    正直、美術品の良し悪しなんて全くわからないし、ましてや作家の名前もわからないけど、物語のテンポの良さはさすが黒川さんって感じですね。
    物語に描かれている人物はどいつもこいつも守銭奴ばっかりのクズばかりなのですが、すべてがうまくいかないように描かれているのが逆に楽しかったです。

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    投稿日:2022.11.29

  • バルーン

    バルーン

    このレビューはネタバレを含みます

    こないだ吉本興業がつくった映画『文福茶釜』を楽しく見ちゃったんですが、わりと評価低くてね。駿河太郎の熱演とぽっちゃり小芝風花ちゃんが可愛くて良かったんですよ。そしたら原作が素晴らしいっていうんで、これ。

    言っちゃえば古美術を小道具に人の騙し合いを愛でるといったところでしょうか。もうやんなっちゃう。あたし呑気に暮らしすぎ。凄いんですね贋作の世界! まずは相剥。和紙は重ねてあるのでそれを剥いで1枚目を真本として2枚目を相剥本(正確には贋作ではないみたい)としてお金儲ける人がいるんだとか。

    茶杓、茶碗、茶釜といった茶道具も贋作の宝庫。これは「誰がどこで使っていたか」が重要になるんだとか。信長が武功をあげた部下にあげる土地がなくなっちゃったんで「名物」として茶器を与えるとかってもうちょっとした詐欺よね。

    最後のお話はタイムリー。新興宗教の教祖が持っている中国の古い焼物について。あの詐欺師どもは税金がかからないことを良いことに信者さんから集めたお金でごっそり買うんでしょうねぇ。「信者」を縮めて「儲ける」だもんなぁ。昔っからこの関係はあるんでしょうね。

    好きなところいくつか。

    「美術品なんてもんは、所詮は金ですわ。値段が上がった下がったで、持ち主は一喜一憂する。ただ好きなだけで、何百万、何千万とする絵を買う人間はいてません」

    「あの番組はヤラセやから派手な値がつく、売るとなったら半値ですわ」

    「偽物を買ってしまったときはどうするんです?」「贋物は天下のまわりもの、いうてね、目利きの甘い道具屋に売りつけるんですわ。道具屋が道具屋を騙すのは褒められこそすれ、非難されるもんやない。騙されるほうが悪いんでっせ」

    「お客さんに売ったりはしないんですか?」
    「そら、売りますがな。きれいごとはいうてられへん。その代わり、客にクレームつけられたら、売値で買いもどすのが道具屋の仁義ですわ」

    「我々のような素人が掘り出し物を手に入れることはないんですね」
    「道具屋が掘り出しもんを客に売ってどないしますねん。飯の食い上げですがな」

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    投稿日:2022.08.01

  • 魔

    美術の真贋とそれを取り巻く様々な人々の話。人脈が真贋の見極めにつながり、それぞれの人がとてもキャラが濃い。97年から98年に発表された短編を集めたものなので、2022年に読むと連絡方法や雑な個人情報の扱いはかえって新鮮に思える。
    ※評価はすべて3にしています
    続きを読む

    投稿日:2022.07.25

  • p-leid

    p-leid

    書画骨董の古美術取引の詐欺を扱う短編集。
    大阪弁もそこまで嫌味ではなくテンポ良く話が進む。これくらいならいい登場人物も分かり易い。
    偽作の手口や真贋の見極め、古物商の気概など、リアルな描写が作品を支えている。続きを読む

    投稿日:2022.05.23

  • まっしべ

    まっしべ

    初めて読んだ黒川博行先生の作品。

    びっくりするほど純に欲と金に塗れた5話を収録。

    古美術品ミステリーということで掛け軸やら焼き物に関する蘊蓄が面白い。

    そもそも黒川先生自身が美大の彫刻科専攻だったとは驚き(p254あとがき より)。

    面白かった…のだが、私の場合は美術品に関する必要知識を追うことが先行してしまいミステリーの本筋がいまひとつ頭に入りにくかったことが残念。

    再読したらまた違った印象になりそうな予感。


    8刷
    2021.12.19
    続きを読む

    投稿日:2021.12.19

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