【感想】TUGUMI

吉本ばなな / 中公文庫
(772件のレビュー)

総合評価:

平均 4.2
302
260
130
16
2
  • つぐみとの忘れられない出会い

    私が『TUGUMI』に出会ったのは、試験会場。国語の模擬試験の文章だった。

    どうやらつぐみというのは、主人公・まりあのいとこで、美しく病弱だが口と性格の悪い少女らしい。
    引用されていたのは、熱を出して寝込んでいるつぐみが、恭一という青年を引き留めようとしている場面だった。

    「何かひとつ話をしてくれ」つぐみは切実そうにそう告げた。
    「あたしは子供の頃から新しいお話をひとつ聞かないと眠れないんだ」
    うそをつけ、と再び私は思った。でも、その「新しいお話」というフレーズはすてきだなと思った。可愛らしいし、何か良い香りのする単語だった。

    まあ、こんな感じで話をせがまれた恭一青年。つぐみ達と会うのはまだ二度目のようだが、「タオルの話」というのをしてくれる。
    それは苦しくもやさしい話だった。

    そして・・・こんな場面。

    その時、つぐみが恭一をまっすぐ見て言った。
    「お前を好きになった」

    引用文はそこで終わり、その後設問に続いていた。
    ・・・。・・・。・・・。

    えええええええ!?

    気になるではないか!すごく気になるではないか!
    試験の後、速攻本屋に行き、はじめから読んだ。
    どうもこの場面は全体の真ん中あたりだったらしい。

    試験が手につかないほどのインパクトはどこにあったのだろう?
    改めて考えてみた。やはり、「お前を好きになった」という告白だ。
    だって、多くの場合、「お前が好きだ」ではないか?
    「好きになった」と今気付いたばかりのことを本人の前で口にするつぐみの感性がとても新鮮だった。

    その前を読んでも、後を読んでも、つぐみの喜怒哀楽は透明で、みずみずしくて、ちょっとシュール。何度も何度も読み返した。

    恭一がこんなことを言っていた。

    「俺ね。あの子のことを考えていると、いつの間にか巨大なことを考えてしまっている時があるんだ」
    「あの目を見ていると、あの生き方を見ていると、何とはなしに厳粛な気分になっているんだ」

    実は、読者である私もそうなのだ。
    「好きになった」なんて瞬間を感じ取れる感受性を持ったつぐみ。
    そのつぐみを見る(正確には”読む”なのだが)こちらも、一瞬一瞬がかけがえなく思え、何とはなしに厳粛な気分になっているのだ。
    続きを読む

    投稿日:2014.09.10

  • う~ん、どうだろう。

    出版当時は、春樹氏のノルウェーの森に追随するような発行部数だったように記憶していますが、失礼ながら、なぜそんなに売れたのだろうかと思います。好みに合わなかったのか?「マデイソン郡の橋」も読了直後は、何だこりゃと思ったものですが。

    権五郎が何故帰ってこないようにしたのだろう。
    落とし穴は、そんなに都合よくできるものだろうか。
    初めの方は、読みやすかったのですが、段々と、ホンマかな、と
    思ってしましました。
    続きを読む

    投稿日:2015.09.23

  • 色褪せない

    大好きな本です。
    とても読みやすい文章なので、普段あまり読書をしない方にもオススメできます。
    個人的には、よしもとばななの最高傑作だと思ってます。
    読み終わる頃にはきっと優しい気分になれますよ。

    投稿日:2014.09.05

  • ひとつの夏がここに生きている

    「もうし作者にもさわれないひとつの夏がここに生きている」

    ひとなつのキラキラ輝いて、初恋の優しさや、少し青臭い感じが全体から伝わってくる素晴らしい青春小説だと思う

    東京に越してしまった物語の語り部であるまりあが、繊細で破天荒でそれでいて優しいいとこのつぐみのもとで過ごすひと夏は、淡く、幻想的でリアリティはないがその世界観になぜか説得力があった続きを読む

    投稿日:2015.04.14

  • 透明感のある描写

    実は,吉本ばななさんの作品ははじめてだけど,読んでみると,やはり人気のある作家さんの作品は違う。
    登場人物や情景の描写も美しいし。というか,つぐみ自身がすごく魅力的。もちろんわがままなんだけど。

    投稿日:2015.07.17

  • 切ない

    『キッチン』でも感じたことだけど、本作も読んでいて、“切ない”という感情が沸いてきた。
    ここまで読者に切ない感情を抱かせるとは、吉本ばななおそるべし。
    登場人物も主人公をはじめ、凄く魅力的だし。

    凄い才能だと思う。
    他の作品も読みたくなってきた。
    続きを読む

    投稿日:2018.09.24

ブクログレビュー

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  • 睦月

    睦月

    吉本ばななさんの瑞々しい文章と懐かしくなるような物語はたまに読みたくなります。恋愛小説って帯についていたけどどちらかというと、つぐみとまりあの友情の方が印象的だった。成瀬と島崎をちょっと思い出したけど私はつぐみの方が潔くてすきでした。友達にはなれないけど続きを読む

    投稿日:2024.04.13

  • まよ

    まよ

    このレビューはネタバレを含みます

    つぐみの気持ちがすごくわかる。
    病気で何もできない、でも健気に強く振る舞いたい。本当の自分を探しつつ毎日をとにかく過ごす。その真っ直ぐさ、かっこいい。
    本当に死ぬかもしれないと悟った時、つぐみは自分の中で答えを出した。その後のつぐみの成長が見たかった。

    つぐみの周りにいる人物達は暖かく、つぐみを心から愛し支えてくれていた。それはつぐみもわかっていた。

    病気って辛いんだよね。でもその感情を発散したり、向き合うのって本当に勇気がいる。
    つぐみ、一歩進めたね。私も進んでいくよ。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2024.03.27

  • 生活委員会

    生活委員会

    すごい心温まる内容だった。

    病弱で色々な思いを抱えつつも溌剌と生きるつぐみ。蝋燭、暖炉のような温もりと儚さ。つぐみが周囲の人々の心にしっかりと刻み込まれていくのが主人公視点とてもよく分かる。

    なんとなく落ち込んだ時に読み返したい本続きを読む

    投稿日:2024.03.21

  • kanchan523

    kanchan523

    たとえ他の人よりも体が弱くても、それを忘れさせるくらい生き生きと生きられるつぐみはかっこいいなと思った。

    投稿日:2024.03.17

  • おはる◯

    おはる◯

    名作ぅー!

    発熱していると世界が強く浮いてみえる。体が重い分、心は飛び回り、ふだん思わないことをくりかえし集中して考える。

    投稿日:2024.03.14

  • i-アイ-

    i-アイ-

    「今度こういうことがあったら、あたしはあいつらを殺す」と言ったあと、恭一の
    「うん、そうだね、つぐみ」
    なんか分かんないけどこの一言がどの恋愛映画恋愛小説よりマジでロマンチックだと思いました。ほんとになんでか分かんないけど、

    つぐみ大好き
    続きを読む

    投稿日:2024.03.04

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