【感想】エンダーのゲーム〔新訳版〕(上)

オースン・スコット・カード, 田中一江 / ハヤカワ文庫SF
(59件のレビュー)

総合評価:

平均 4.0
15
26
13
1
0
  • 天才の育て方

    地球を救う者として見出だされたエンダー少年がバトルスクールなどでの訓練を通して成長していく話の前編です。 教官達がエンダーを孤立させ、エンダーが自力で困難を解決していく様を丁寧に描いてます。新訳になって読みやすくなっており、映画化もされるみたいです。お薦めです。続きを読む

    投稿日:2014.01.05

  • 未来の戦争に新しい概念を入れたふるびらないSF

    1977年に発表された短編「エンダーのゲーム」(日本では、短編集「無伴奏ソナタ」に収録)を長編化して1985年に発表された長編小説です。おそらく、カードの出世作と言って良いと思います。大体、短編で物足りなかった部分がきちんと補われて、さらに続編に続くような伏線が張られています。
    今、一読して驚くのが、30年前に書かれたとは思えないほど内容が古びていない点です。それは、まだ、現実の戦争にエンダー・ウィッギンのような立ち位置の子供たちは出てきていませんが、今後の出現の可能性がまだ残されているからだと思います。1987年に初めて読んだときは、おぉ、そうか、と膝をたたいたと同時に、もし私が軍の上層部なら、かなり真剣にエンダー・ウィッギンの養成を考えただろうと思いました。しかし、二流のスペースオペラにならずに、SF小説として面白いのは、エンダー・ウィッギンとその周りの人々の活躍ではなく、その成長に焦点が当たっているからだろうと思います。
    続編「死者の代弁者」では、実際に、エンダー・ウィッギンのその後が描かれており、これも面白く読めます。(かなり内容はシリアスですが。)
    数年前に映画化されましたが、登場人物の内面の表現では小説にかなうはずもなく、本当に「エンダーのゲーム」を理解するつもりがあるならば、ぜひ本書を読むべきだと思います。
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    投稿日:2015.03.08

  • 本棚の常備書です

    昔読みました。今回新約版がどんな風になっているのかが楽しみです。
    紙では続編のエンダーズシャドウも発売になっていますが、連続して出版されるのでしょうか。

    投稿日:2013.12.16

  • バガーとの戦いか、内乱か。

    エンダー少年はどのように使われてしまうのでしょうか。ピーターはどのように権力を志向するのでしょうか。ヴァレンタインは何をなすのでしょうか。上巻だけでもさまざまなプロットが絡み合っています。エンダー少年のファンタジーゲームは幸福な終わり方をします。この作品もエンダー少年に幸福な終わり方をすればいいと思う反面、ピーターに感情移入してしまう部分ところもあります。すべてがゲームですね。うむ。素晴らしいです。続きを読む

    投稿日:2015.06.17

  • エンダーシリーズの記念すべき一作目で今や古典

    子供ばかりのバトルスクールや無重力バトルや戦闘シュミュレーション、「サード」などキーワードだけ見ても本書がその後の日本SFやアニメに与えた影響は計り知れない。天才としての孤独や努力、挫折と再生そしてバガーとの最終決戦と本作はSFエンターテイメントとして盛り上がるポイントが沢山あり、とにかくエンダーを応援したくなる。しかし本当の物語は最終決戦を経て真実を知ったエンダーがその真実に押しつぶされそうになりながら苦悩するところから始まっていると思われる。そのため続編の「死者の代弁者」として地球を後にしてからの話が彼にとっての本当の物語。(数冊出てます)
    ですが続編は本作のテイストからかけ離れた哲学的な話が多く個人的にはあまり面白とは思わなかった。むしろ本作で脇役だったビーンを主人公に据えた「シャドウ」シリーズが面白くエンダーが去った地球を舞台にバトルスクールのメンバやエンダーの兄姉のピーターやヴァレンタインとの物語がいろいろと展開する。特に「シャドウ」シリーズ第1作は、本作をビーンの視点から追ったもう1つのエンダーのゲームとなっており裏話が満載でオススメです。
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    投稿日:2017.05.10

  • 小さな指揮官は「ゲーム」をクリアできたか?

    多数の長編・短編を生んで現在も展開中の「エンダー」シリーズの始まりとなる作品です。

    (1)少年に求められた「天才」とは
    舞台は、高度な技術文明をもつ異種族「バガー」との戦いで辛くも生き残った人類が、最後の決戦を挑もうとしている近未来。ところが、艦隊と新兵器はあるものの、それを指揮する指揮官がいません。
    そこで、天才的な能力をもつ子どもをスパルタ式に教育して、最終決戦に間に合わせようという、非情なプロジェクトが開始されます。その子どもが、主人公であるエンダーくんというわけです。

    ここで重要なのが、指揮官候補に求められている能力特性は、単なる知力体力の高さではないことです。
    第一に、相手の意図を理解する共感能力が不可欠です。異種族であるバガーの行動は、人類とは異なる原理に基づくのですが、人類艦隊の指揮官でこれを見抜けたのは過去に一人だけ。単なる優等生では務まらないのです。さらに、指揮官は自分の手足となる戦隊長にも、高い能力を発揮させなければなりません。人の心がわかり、人望が得られることも必要です。
    反面、共感能力は優しさにつながります。そこで第二に、指揮官は孤独でなければなりません。誰かの助けを期待せず、最大の危機を自力で乗り越える厳しさが必要ともされます。
    共感能力と孤独であること、この二つをリーダーの要件とした点が、この作品の出色なところです。

    (2)エンダーの3つのゲーム
    しかしながら、これを強制的に鍛えられるエンダーには、無茶苦茶な試練が与えられます。これが「ゲーム」なのですが、実は1種類ではありません。
    バトルスクールの中心は、無重力ルームでのチーム対抗戦です。ライバルがひしめくなかで、このゲームを勝ち抜いて指揮官として認められるだけでも大変です。
    しかし、より手強い敵は、ゲームを管理する大人たち。エンダーを鍛えるため、あえて模擬戦のバランスを破壊していく彼らとの戦いが、もう一つのゲームとなっていきます。
    エンダーは追い込まれ、セラピー用のマインドゲームに逃避します。ファンタジー要素の強い不穏なゲームで、その展開は謎に包まれています。どうやら、スクールの外に繋がっているようなのですが…。
    訓練用の模擬戦闘、その背後にある大人との戦い、そしてマインドゲームという、3つのゲームが用意されている点も、本作品の特徴といえます。

    (3)結局、ゲームはクリアできるの?
    エンダーは、試練を乗り越えてゲームをクリアし、理想の指揮官になれるのか?
    上巻の終わりには、エンダーは絶望し、挑戦するのをやめてしまいます。事態を打開するため、大人たちは完璧女神ヴァレンタイン姉さんを召喚するのですが…。エンダーの味方であった姉は、今では世間で注目される論説の書き手として、暴君である兄との共同制作を楽しんでいるのです。それでもエンダーは、姉を守るため、孤独な戦場に戻れるのでしょうか。本作でもっとも心を動かされる場面です。

    お姉ちゃんの他、バトルルームに代わる新作ゲームや師匠との出会いなどイベント満載、名言連発、大サービスの下巻には、驚くべき結末が待っています。ぜひぜひ、最後まで見届けてあげてください。初めてこれを読める人、ちょっとうらやましいですね。

    (4)再読してみて
    私も旧版以来、久しぶりに読み返したのですが、「敵より他に師はいないのだよ」というセリフ、本当にカッコいいです。私もバリバリ弟子をいじめて立派な師匠に…やっぱりムリ、なれません。
    エンダーを取り巻く大人たちが、本当はエンダーを深く愛していて、心から心配していることは、真実だと思います。しかし、エンダーの真の友は、戦友となった子どもたち、アーライ、ビーン、ペトラたちです。彼らの心をとらえたことが、エンダーの勝利といえるでしょう。
    優しくて、孤独な小さな指揮官は、自分のゲームを見つけて、それをクリアしたのです。ついでに、彼の手には負えない大きすぎるゲームも終わらせてしまったのは、彼の責任ではありません(その話はまた、先のシリーズで)。
    続きを読む

    投稿日:2017.08.28

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  • isutabi

    isutabi

    ヤン・ウェンリーでありアムロ・レイでもありシャア・アズナブルでもある可能性を持つエンダーのニュータイプ能力? を覚醒させるため軍はあえて彼を孤立させる。子どもたちの敵視は続くがエンダーはそう簡単にはやられない。
    ピーター、ヴァレンタインも含めておそるべき三きょうだい。

    ■エンダーのゲームについての簡単なメモ
    【アーライ】バーナードの取り巻きの一人だがエンダーの能力を認めているし自身の能力も高い。
    【IF/インターナショナル・フリート】国際艦隊。
    【遊び道具】《そして、遊び道具は――ゲームがひとつだけだ》p.58
    【アンドルー・ウィッギン】→エンダー
    【ヴァレンタイン】エンダーの姉、ピーターの妹。エンダーの理解者。エンダーは彼女を慕っている。そこが軍にとっては問題やった。人の美点を刺激することでコントロールする能力を持つ。
    【エンダー・ウィッギン】主人公。本名はアンドルー・ウィッギン。ヴァレンタインがそう呼んだ。「終わらせる者」の意味? 物語開始時六歳。戦争の天才かもしれないと大人たちは考えている。
    【グラッフ大佐】戦闘訓練基地で初等訓練の指導をしてはる。
    【サード】第三子。この世界は二人以上の子どもをつくってはいけないことになっている。
    【サラマンダー隊】新入生の間でようやくうまくいきかけていたエンダーがそこから引き離されて配属された隊。
    【シェン】バーナードのいじめの対象になった小柄な少年。
    【出産】エンダーは第三子だが本来ならこの人数は違法のようだ。ピーターが優秀そうやったからか両親の遺伝子的な何かで第三子まで生むことができた。
    【スティルスン】いじめっ子。
    【ダップ】エンダーたちの部屋のメンバーの世話係。
    【ディンク・ミーカー】ラット隊の小隊長。優秀でエンダーを認めた。
    【二流】二流にできるのは一流を育てることと権力に酔うことくらい。
    【バーナード】いじめっ子気質。エンダーにちょっかいを出して腕を折られる。フランス系で自分のことをベルナルドと言う。
    【バガー】敵性異星人? 前回の襲撃は八十年前でメイザー・ラッカムがいなければ人類は滅亡していたと思われる。そして今メイザー・ラッカムはいない。
    【不承諾家庭】二人以上の子どもをつくらないという世界的な決まりを守らない家庭。税金も重くなるしいろいろ苦労する。国レベルで不承諾なポーランドは国際的な制裁を受けている。
    【ピーター】エンダーの兄。戦闘訓練基地に行けなかった。人の弱点を突くことでコントロールする能力を持つ。
    【ペトラ】サラマンダー隊のメンバー。唯一の女子。狙撃の技術が高い。
    【ボンソー】サラマンダー隊の指揮官。規律を重んじる。というより皆を自分に従わせたいタイプ。
    【メイザー・ラッカム】あらゆる不利を覆した名司令官。
    【ローズ・ド・ノーズ】ラット隊の隊長。あまり優秀とは言えない。
    続きを読む

    投稿日:2024.01.21

  • じゅう

    じゅう

    アメリカの作家「オースン・スコット・カード」の長篇SF作品『エンダーのゲーム〈上〉〈下〉(原題:Ender's Game)』を読みました。
    ここのところ、SF作品が続いています。

    -----story-------------
    〈上〉
    2014年、正月第二弾全国ロードショー 

    地球は恐るべきバガーの二度にわたる侵攻をかろうじて撃退した。
    容赦なく人々を殺戮し、地球人の呼びかけにまったく答えようとしない昆虫型異星人バガー。
    その第三次攻撃に備え、優秀な艦隊指揮官を育成すべく、バトル・スクールは設立された。
    そこで、コンピュータ・ゲームから無重力訓練エリアでの模擬戦闘まで、あらゆる訓練で最高の成績をおさめた天才少年「エンダー」の成長を描いた、ヒューゴー賞/ネビュラ賞受賞作!

    〈下〉
    三年にわたる苛酷な訓練で、つねに戦績表のトップを守り続けてきた「エンダー」は、バトル・スクールはじまって以来の最年少で竜隊の指揮官となった。
    だが、集合した隊員をみて愕然とした。
    ラーンチイ・グループから直行してきた戦闘未経験者がほとんどで、数少ない古参兵も「エンダー」より年下の者ばかりだったのだ! 
    厳しい戦いの訓練をくぐり抜け、やがて人類の運命を握る存在へと成長していく「エンダー」の活躍を描いた傑作。
    -----------------------

    1977年(昭和52年)に短篇版が発表された後、1985年(昭和60年)に長篇化されて出版されたエンダーシリーズ (Ender Wiggins Saga) の第1作… 1985年(昭和60年)にネビュラ賞、1986年(昭和61年)にヒューゴー賞を受賞した作品で、2013年(平成25年)には「ギャヴィン・フッド監督」により映画化されているらしいです。

     ■1 サード
     ■2 ピーター
     ■3 グラッフ
     ■4 発進
     ■5 ゲーム
     ■6 巨人の飲み物
     ■7 火蜥蜴(サラマンダー)
     ■8 鼠(ラット)
     ■9 ロックとデモステネス
     ■10 ドラゴン
     ■11 来た、見た、勝った(ヴェニ・ヴィディ・ヴィチ)
     ■12 ボンソー
     ■13 ヴァレンタイン
     ■14 エンダーの師
     ■15 死者の代弁者
     ■解説 堺三保

    時は未来… 人類は、異星人バガーの二度にわたる太陽系への侵攻を退けた、、、

    そして三度目の侵略に備えるため、地球の衛星軌道上にバトル・スクールと呼ばれる施設を設置し、「戦いを終わらせるもの」を養成することに決定した… その頃、地球では人口抑制政策により、一家族で2子までしか子供をもうけられなくなっていたが、長男「ピーター」と長女「ヴァレンタイン」の優秀さから、「ウィッギン家」には特別に3人目の出産が許された。

    その3人目こそ、運命の子「アンドルー(エンダー)・ウィッギン」だった… 天才的な才能を見込まれ、司令官の最有力候補としてわずか6歳でバトル・スクールに編入させられた「エンダー」は、世界中から集められた優秀な子供たちの中でも桁違いの成績を残し、成長していく、、、

    時を同じくして、「ピーター」と「ヴァレンタイン」もネットを利用して、地球上で勢力を広げていた……。


    天才少年「エンダー」の成長を描いた物語… 徐々に難易度の上がるゲーム形式の訓練(コンピュータ・ゲームから無重力訓練エリアでの模擬戦闘)を経て指揮官となり、その後も過酷な訓練が続くが、その訓練が実は、、、

    少年にゲームの達人に仕立て上げ、ゲームをやっていると思わせて実際には… 大人に利用されてしまったんですねー

    バーチャルな空間での戦闘や、インターネット上での情報発信による世論誘導等、この時代に予見できていたのは凄い先見の明だと思いますね… そして、異生物とのファーストコンタクトものとしても興味深かったです、、、

    終盤、「エンダー」がバガーの気持ちにシンクロしていく様が印象的でした… 意外と面白かったです。
    続きを読む

    投稿日:2024.01.04

  • ののっち

    ののっち

    タイトルは知っていたので読んだ。昆虫型宇宙人というのはある種の定型らしい。宇宙の戦士もそんな感じだった。翻訳物にありがちな読みにくさはあるものの読みやすいと思う。

    投稿日:2023.04.10

  • がらがら

    がらがら

    上下巻感想。

    異星人との戦争に勝利する為に訓練する主人公。

    オチは有名で知ってたから驚きは無かったし、10歳前後の主人公が子供過ぎてあまりワクワク出来ず。

    むしろラストに描かれるような異星人の思考の違いとかの方が好み、続編には描かれそうだけど、多分読まないかなあ……。続きを読む

    投稿日:2022.12.28

  • nomitomo13

    nomitomo13

    昆虫型異星人バガーの第三次攻撃に備えて、優秀な艦隊指揮官にすべく過酷な訓練を課せられた少年・エンダーの苦悩と成長を描いたSF小説。

    上巻は、将校たちが仕組んだ仕掛けによって周囲との対立を余儀なくされたエンダーが苦悩しつつも好成績を上げていく姿が描かれます。続きを読む

    投稿日:2022.08.11

  • eirain0320

    eirain0320

    ヒューゴー賞とネビュラ賞を受賞し、映画化もされた名作SF。ふと入ったブックオフで見つけたので、これは機会と手に取ってみた。

    昆虫型異星人バガーによる二度の侵攻を退けた人類。バガーによる三度目の侵攻に備えるため、IF(International Fleet=国際艦隊)は、候補となる幼い子供たちの体ににモニターを取り付け(文字どおり)モニタリングし、素質のある子供を遥か宇宙に設立されたバトル・スクールに送り込み、優秀な艦隊指揮官を養成していた。
    主人公である少年エンダーは、その素質をIFに見出された一人だが、バトル・スクールの責任者であるハイラム・グラッフ大佐らは、彼の素質が前回のバガーとの戦いにおいて勝利の立役者となった天才戦艦指揮官、メイザー・ラッカムの再来となるものだと期待を寄せていた―――。

    家族と別れ、遥か宇宙にあるバトル・スクールで艦隊指揮官としての才能を磨いていく天才少年エンダーを描いた作品。IFの期待を裏切らず、バトル・スクールで頭角を現していくエンダー。一方の地球では、彼の兄姉であるピーターとヴァレンタインが、ネット上で匿名アカウントを使用して政治論評を展開し、影響力を広げていく。今後、どのような形で彼らは"交差"するのか。バガーによる三度目の侵攻は本当に起こるのか。(下巻に続く。)
    続きを読む

    投稿日:2022.06.25

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