【感想】エディプスの恋人(新潮文庫)

筒井康隆 / 新潮文庫
(150件のレビュー)

総合評価:

平均 3.7
33
48
38
15
3
  • 七瀬シリーズ、最高の傑作にして唯一の非映像化作品

    七瀬シリーズ「衝撃の最終巻」というのが相応しい作品です。
    「家族八景」「七瀬ふたたび」まで読んだのであれば、当然読むべきです。

    「家族八景」を読んだ後に、七瀬シリーズの次作として「七瀬ふたたび」を読まれた方は、ある程度面食らったかと思いますが、更に面を食らうハメになるのがこの最終巻です。
    最後まで読んだ時「え、こんなオチ、アリなの?」と思うか「流石筒井!これは参った!」となるかは、人に寄るでしょう。
    ただ、その最後のオチ以外は、人を選ばず楽しめると思います。

    是非読んで頂き、「家族八景」と「七瀬ふたたび」は何度も映像化されても決して「エディプスの恋人」が映像化されない理由を知ってください。それは決して「エディプスの恋人」が詰まらないからではなく、別の理由なのです。
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    投稿日:2013.10.16

  • 七瀬三部作の最終巻

    前作の終わりから何の説明もないまま平穏な日常に戻っている七瀬の周りで起こる不可解な現象。それがある人間と係わり合いがあると知ったときから彼女の超常現象の元である「意志」探しが始まる。前半は、ミステリー風の誰がその超常現象をおこなっているのか?を探す旅が面白い。その過程でわかってくる不可解な謎。ただその正体が徐々に明らかになってくるにしたがって日常世界から神話世界へ移行していく後半はなに~と思った。初見の時には、この展開、特に前作での状況が置いて行かれたような本作にいまいち納得できなかった。ただ今回読み直してみていろいろと気づいた点も多い。
    神によって「彼」同様、七瀬自身も守られていたと気づいた時、小説という舞台で演じているうんぬんのくだりが出てくるのだが、これは作者=神という意味に読み取れた。。。この最終巻に登場する「神」は、日本的ではなく西洋、特にギリシャ神話に登場する独善的な「神」であり、実はこの「神」、作者自身にかぶって見える。なんせ小説世界では、作者は絶対的な神であるからだ。これってメタ小説?まあ神を登場させるということは夢オチと同じで小説では諸刃の剣。使い方によっては作品そのものを壊してしまうが、ここではうまくいっている。小松左京の「こちらニッポン・・・」よりは、小説としての納まりは良い。
    ここまでの物語の飛躍を生んだのは、続編を書かなくても良いようにこのシリーズを終わらせるという意志が作者にあったということらしいが、主人公を小説舞台から消す(つまり殺す)という安易な話に持っていくのではなく、物語自体を(神を登場させることで)ドンつきまで持っていくことで終わらせてしまうというこの作者の力量には脱帽してしまう。やはり筒井康隆はすごい作家だ。
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    投稿日:2013.09.24

ブクログレビュー

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  • しんめん

    しんめん


    『家族八景』『七瀬ふたたび』に続く、俗に言う七瀬シリーズの完結編。
    異能SFの雰囲気は影を潜める、というよりかは作者の中で“異能”というものをより深く推し進めたであろう本作は、形而上的な色合いを帯びる。
    生物の上位存在の様なもの..宇宙意思..定まった呼び方の無いこういったものに対し、本作はかなり突っ込んだ、かつ文字化に成功している作品かもしれない。七瀬シリーズの幕引きに寂しさもありつつ、個人的には支持したい締め方。
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    投稿日:2024.01.04

  • nyonboo48

    nyonboo48

    このレビューはネタバレを含みます

    『七瀬ふたたび』のラストからどうなって本作に繋がったのか疑問に思いながら読み始めるも、次第に、そんなことは忘れ読み進める。ラストでなるほど納得の理由でうまく前作と繋がった。これにはまんまとやたれたという感じ。図形的な文章表現も出てきて前衛的。他の小説では見たことがない「赤字の文字」は極北と言えるのではないかと思う。

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    投稿日:2023.11.12

  • キじばと。。

    キじばと。。

    「七瀬シリーズ」の第3弾。

    高校の事務員として働くことになった七瀬は、香川智広という男子生徒に向かって飛んできたボールが、とつぜん粉々にくだけ散るという異変に遭遇します。彼女がテレパシーの能力をつかって智広の心のなかをさぐると、ほかの生徒たちにはけっして見られることのない絶対的な自信があり、やがて七瀬は彼が神のような強大な「意志」の力に守られているという確信をいだくことになります。

    智広と彼を守る「意志」の源をさぐるために、七瀬は絵描きである智弘の父の頼央の故郷を訪ねます。やがて彼女は、頼央から「意志」にまつわる秘密を教えられますが、しだいに彼女は自分の智広に対する関心も、それどころか自分自身の存在ですらも、「意志」の力にもとづくものではないかという疑問にたどり着くことになります。

    最初は、前作である『七瀬ふたたび』とのつながりがわからず、前作とはべつの世界線のストーリーだと思って読み進めていましたが、最後のほうで前作とのつながりが示唆され、本作の壮大な仕掛けが明らかにされています。ここまで舞台装置が大掛かりなものになると、SF的な世界観の根幹となる問題につながっていくことになりますが、これもシリーズの締めくくりにふさわしいテーマといえるのかもしれません。
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    投稿日:2023.11.12

  • 1080magic

    1080magic

    七瀬3部作の最後。この世界、そして七瀬自身も神に操られた存在であると気付く。太母の意思で、七瀬は復活し、存在し、行動する。現実存在とは、そのような「神」的者のシナリオによって演じさせられているのだ。それを受け入れるしかない。七瀬は、エディプスの恋人を演じるしかない。続きを読む

    投稿日:2023.11.04

  • げるぷ

    げるぷ

    前作の内容をほぼ覚えておらず、最後の方でああ、そんなこともあったなあ、って思い出したが。全体的に暗いよな。筒井さんならくすりと笑えるところもあるかなあと期待したが全くない。本文の中で時代を感じさせるところがあるので、十年早く読めばよかった。続きを読む

    投稿日:2023.06.21

  • あらたく

    あらたく



    2作目の「七瀬ふたたび」を飛ばしての作品だったけど楽しく読めました。生まれて初めて恋心を抱いた相手が高校生。超常現象の行方を追った結果それが全知全能による亡き母親によってであって
    それに従い認めざる負えない中、自己の存在自体にも悩む。しかし、最終的にはこのタイトルを超えて七瀬が幸せな方向へと向かったので良かったかな。続きを読む

    投稿日:2023.04.01

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