【感想】桶川ストーカー殺人事件―遺言―

清水潔 / 新潮社
(202件のレビュー)

総合評価:

平均 4.6
128
47
9
0
1
  • 警察は一般市民の味方ではない

    私のスマホで972ページ。
    読了までかなり時間が掛かってしまった。
    読み進めるのが辛かった。

    この事件の埼玉県警上尾署の対応があまりにも、あまりにも酷すぎたから。私なら、申し訳ないがこの地に住むことは出来ない。まともな署員がいないのでは?

    詩織さんは、ストーカーに、警察に、国に殺されたのだ。死んでなお、嘘の報道を流され、尊厳を踏みにじられた。事件に関わった100人以上の警察関係者にまともな人は一人としていなかったのか?ぞっとする話ではないか。

    本件はご存知の通り被疑者死亡で、一気にマスコミもトーンダウンした。扱いがぞんざいになった。私たちはそんな国に住んでいる。

    私も過去2度被害者になったことがあるが、警察は動かなかった。一つは都内、一つは神奈川県警だ。はっきり言える。警察は動いていない。連絡も一度ももらわなかった。別に人が死んだわけではないし、最初から期待もしないが、私はとうに警察を信頼していない。

    だから、事件を解決しようと必死に動く刑事ものが好きだ。私は本の中に理想を追い求める。

    せめて誠実な本当に被害者の立場になれるそんな警察関係者がひとりでも増えて欲しい。保身にあがくのはもう止めたらどうか。うんざりだ。日本の警察には。

    最後に、警察より詩織さんや詩織さんの家族に寄り添った著者に、心からの賛辞をおくりたい。あなたのような人が警察にいたら良かったのに。
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    投稿日:2017.04.01

  • 今の警察官はこの本を読んでいるのだろうか?

    単行本・文庫本ともに絶版となっていたため、「待望の電子化」と言える。

    埼玉県で起きた、女子大生殺人事件。
    その事件を事件としてまともに取り扱ったのは、警察ではなかった。
    週刊誌の記者である著者が、自身の身の危険を顧みず取材を続けた結果、真相である「ストーカー殺人」であることが判明したのだ。
    取材を続け、少しずつ真相に近づいていく著者。
    それはまるでミステリーの謎解きのようだが、違う、これは実際に起こった事件なのだ。

    警察がいかに腐っていて信用ならないか、読んでいて腹が立ってくる。
    (文庫版で加筆された章が、その怒りを増幅する。)
    現在の警察がここまでとは思わないが、いまだに不祥事は多く耳にする。
    自戒と反省の意を込めて、警察官は全員この本を熟読すべきだ。

    また、「ストーカー」というものの恐ろしさを知る上でも、この本はとても役立つ。
    警察だけでなく、万人にお勧めしたい。
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    投稿日:2013.09.24

  • 逆に「有能過ぎる警察」というものを想像してみると恐ろしくなった

    警察があまりに無能だ。ストーカー被害を訴えた女性と家族の主張を相手にせず、そのせいで、殺人事件が起こってしまった。更にはその無能さを隠すべく、低次元な嘘までつく。

    怒りが呆れに変わる瞬間というのはこういうものだろう。
    本書からは事件の悪質さ以上に、警察の怠慢・欺瞞・不誠実さが感じられる。

    が、逆に考えてみよう。もし、警察がとても有能だったら。ストーカー殺人どころか、ストーカー自体を防ぐことができたら。どんなに平和でいい世の中になるだろう。
    ・・・本当にそうだろうか?

    ここで、エドワード・スノーデンの告発が思い出される。
    彼によると、国家権力によって全国民の通話・通信を監視することができる。そして、アメリカでは実際にそれを行っているのだと。
    (これについてはグレン・グリーンウォルド『暴露 スノーデンが私に託したファイル』を参照されたし)
    日本の警察もこうした監視システムをフル活用すれば、このような事件は未然に防げたかもしれない。
    しかし、それは安心して暮らせる幸せな世界なのだろうか?

    セキュリティとプライバシー。
    この両者を守ることは難しい。

    ただ、この件について思うのは、埼玉県上尾署の人々は、警察として、いや、人として、被害者の訴えに対してもっと真摯になれなかったのか。
    著者は何をもって事件の真相にたどり着くことができたのか?
    国家権力でも特殊な監視システムでもない。誠意と良識と粘り強さだろう。
    警察は万能ではない。が、せめて誠実であってほしい。
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    投稿日:2014.09.12

  • 被害者は二度殺された。一度目は刺殺犯に。二度目は警察に。

    「私が殺されたら犯人は小松…」

    被害者、詩織さんの"遺言"を黙殺し続け、主犯格の男がまるで存在しないかのように捜査をする警察、いや、捜査をするふりをする警察。
    被害者はストーカー行為、脅迫行為を受けていることを何度も警察に相談したにもかかわらず、警察は全く取り合わず、遂には本当に殺されてしまった。

    責任逃れ、そして面子を保つため、警察はストーカー行為と殺害は無関係という絵柄を描き、被害者が生前必死で訴え続けた「このままでは殺される」という主張も、遺言も、遺書も、警察は無視し続け、生前の被害者の思いは死後も届かない。

    更にはまるで被害者には殺される理由があったと言わんばかりに、警察は記者会見を通じ被害者の人間像を貶め、マスコミは警察発表を鵜呑みにし捻じ曲がった人物像を世間に報道する。

    これが現実に起きたことかと思うと、やるせなく、腹立たしく、被害者家族は本当に報われない。

    事件の全容を全く知らなかった私は、記者と一緒に事件取材、真相究明しているような感覚で、あっという間に読み終えた。
    多くの方に一読してもらいたい一冊。




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    投稿日:2014.05.08

  • リアルのおそろしさ

    ドキュメンタリーは事実の箇条書きになってしまいがちだが、本書は小説のように読みやすくなっている。けれど、内容は小説なんかよりも恐ろしい。
    本当に日本は先進国なのだろうかと疑問に思わせる。
    近代から変われていない警察組織と狂気な人たちが最悪に絡みつけばこのようなことが起こるのかもしれない。
    よくわからないサスペンス小説を読む時間があれば、本書の方がいいのでは?
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    投稿日:2014.07.03

  • 腐りきっていた上尾署の上層部

    写真週刊誌というと胡散臭い、世の中に在っても無くてもどうでもよいものという先入観を打ち砕かれた。
    これは、一人の写真週刊誌記者の熱意が幾多の困難の中、事実を解明した話である。
    マスコミを拒絶していた被害者のご両親がこの記者には信頼を寄せ、様々なことを語ったということを
    警察、大マスコミはどうとらえるであろう。
    目の前の人間を大事にするという使命・人としてのありかたを、警察は蔑ろにした。
    大マスコミは、自らの不正を隠蔽するために被害者のイメージダウンを図った警察の策略にまんまと嵌った。

    そしてこの本は最後のページが一番泣けます。
    続きを読む

    投稿日:2013.11.20

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ブクログレビュー

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  • Nao Cuy

    Nao Cuy

    読み応えバツグン。
    登場人物が思ったより多く、後々色々な事実が判明する複雑な事件であるものの、とても分かりやすく書かれていてどんどん読み進めてしまう。
    後半につれて判明する警察がらみの事実、これ他人事ちゃうぞと怖くなる。日本の事なかれ主義の悪い面が最悪の形で出た事件。続きを読む

    投稿日:2024.02.17

  • baytown2016

    baytown2016

    桶川ストーカー殺人事件はテレビや雑誌等でもよく目にしていたこともあって、事件のことも知った気になっていました。
    でもこの作品を読んで、無知であることに恐怖すら覚えました。
    警察や大手マスコミってこんな事するの?
    是非真実を知ってもらうためにも、一人でも多くの人に読んで欲しい作品です。
    続きを読む

    投稿日:2024.02.13

  • lacchanl

    lacchanl

    実話というだけあってリアリティが凄い。
    こんな人間が世の中にいるなんて。最後のあとがきのコメントには涙腺やられました。

    投稿日:2024.01.12

  • みちょはちゃ

    みちょはちゃ

    このレビューはネタバレを含みます

    桶川ストーカー殺人事件-遺言
    清水潔

    ∞----------------------∞

    ストーカーや殺人ももちろん酷いけど、警察が比じゃないくらい酷い。

    詩織さんの名誉は警察によって更に傷つけられ、著者の言うように、ストーカーグループと県警の違いがわからない。
    フィクションであって欲しいと願わずにはいられなかった。

    2023/10/25 読了

    レビューの続きを読む

    投稿日:2023.10.25

  • ゆり

    ゆり

    以前どこかで少しこの本の内容を知り、事件の真相や警察の怠惰を知るのが怖かったけど、今回じっくり読んでみたくて手にとりました。想像していた通り、読んでいてつらくてつらくて感想はとめどもないものになってしまいそうだ。ここに書かれていた内容は…。警察が嘘をついた。信じられない。人の命を守る警察が?簡単に言えば仕事をしたくないからといった経緯であるが、告訴を取り下げてほしいとも言った。もう言葉すら見つからない。怒りしかない。なんのための警察なのだろうか。。。この事件により以後ストーカー規制法が出来たらしいが、被害者が哀れすぎる、遺族がつらすぎる。1999年の事件であるが忘れてはならない事件だと思った。またこの事は多くの人に知ってもらいたいし、多くの人にこの本を最後まで読んでもらいたいとも思った。こんな世の中であってはならないから…。そして清水潔さんを心から尊敬しました。続きを読む

    投稿日:2023.09.12

  • sambo0217

    sambo0217

    亡くなった被害者とその遺族の無念といったらない。

    ストーカー集団はもちろん、助けられた命を見殺しにした警察も十分罪に問われるべきだけど、司法もまともに機能していないし、自分が犯罪に巻き込まれた時に、誰を頼るべきなのかすら不安になる。

    上尾署が、日本の警察が少しでもマシになってくれていれば良いが、今なお断罪されて然るべきと思ってしまうぐらい怒りの感情が芽生えた。
    続きを読む

    投稿日:2023.07.19

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