【感想】戻り川心中

連城三紀彦 / 光文社文庫
(112件のレビュー)

総合評価:

平均 4.2
36
44
19
1
0
  • 不朽の名作とはこれだ!!

    花に因んだ連作。どれも心を揺さぶられる話ばかり。
    肌に泡粒が生じます。凄愴感を含んだ風が心を叩き、吹き抜けていきます。胃に鋭い錐を立てられる場面もあります。
    表題作が一番印象的ですが、他も甲乙つけ難い秀作。
    ワンコインちょっとで体感できる素晴らしき世界。
    読書っていいなあって、心から思えました。
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    投稿日:2013.09.25

  • 大正~昭和初期の風俗描写のリアルさ。そこで出会うミステリーの見事なこと

    大正~昭和初期の日本が日本らしいのどかさと猥雑さを持っていたであろう、その時代の暮らしや街並みが見事に文字で再現されています。ちょっと時代は違いますが、目の前にAlways三丁目の夕日の風景が広がる、もしくは横浜ラーメン博物館のジオラマの中にいるような素晴らしい描写です。そしてその中で起こるミステリー。その謎解きがまた見事。どんでん返しの連続ながら、それでいて全てが収まるところに収まっている腑に落ち感。風景が目にうかぶような文学表現とミステリーとしての完成度の高さが両立した素晴らしい作品です。続きを読む

    投稿日:2015.12.14

  • 日本推理小説の歴史に残る逸品

    先日の著者の訃報に接して愕然とした一人です。
    連城三紀彦という名前を聞いただけで陶然としてしまう、そんな作家でした。
    文学と推理小説の、もっとも洗練されたハイブリッドを成し遂げたのが連城氏です。

    まされたと思って表題作だけでも読んでみてください。
    格調高い美文調で語られる大正の詩人の物語を。
    二度の心中未遂の果てに自害して早世した詩人の、心の襞を。
    彼が狙った、本当のたくらみを。
    愛した男に命を預けてしまう、悲しい女の性を。
    初読時と再読時では、物語の印象が変わっているでしょう。

    読書の愉しさを味わわせてくれる、極上の短編集です。
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    投稿日:2013.10.25

ブクログレビュー

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  • たた

    たた

    短編にしてはストーリーがそれぞれ濃い、濃すぎて良い。時代小説っぽい雰囲気もあり、米澤さんの羊たちと同じ匂いを感じた(そっちが影響を受けていそう)。表題作は、多重オチは凄いが着地点はあまり好きではないかな...続きを読む

    投稿日:2024.04.10

  • 万年筆好きムギムギ

    万年筆好きムギムギ

    1983年の作品です。
    1997年に発売された「本格ミステリ・ベスト100」のベスト10です。
    本格ミステリかどうかは判断に迷いますが、どの話もミステリではあります。
    どれも、壮絶で哀しい物語ばかりでした。
    特に、最後の「戻り川心中」は、どんでん返しがあり、物語に引き込まれました。
    続きを読む

    投稿日:2024.03.25

  • ヨヨ

    ヨヨ

    どの短編も静かで流麗な語り口が印象的で、推理小説だけど美しい純文学を読んでる気持ちになった。「桔梗の宿」が全体を通して一番好きかも。読者のミスリードも素晴らしかったし、犯人の動機も切なくてたまらなかった。ほかのお気に入りは「桐の棺」と「白蓮の寺」。「桐の棺」は主人公とヤクザの男の関係が良かった……。「白蓮の寺」のどうにも理解し難い夢(この夢がまた不気味かつ美しい雰囲気で良い……)を紐解いていく話の展開が好きだった!続きを読む

    投稿日:2024.03.22

  • オコチャ

    オコチャ

    ものすごいトリックが!と言うわけではないです。どちらかといえば、動機の方に驚きを持っていったような感じです

    とても綺麗で品の良いミステリーでありながら純文学を読んだような気持ちでした

    投稿日:2024.03.21

  • きりしき

    きりしき

    どのお話もただ美しい純愛としてだけ了解できるものにはなっておらず、濃淡の違いはあれど底の方にエゴの奔流が流れている。いくつかの事実の断片を手がかりに事件の真相を解き明かすにつれ、そのどす黒い流れが垣間見える仕掛けになっている。そして、偽善であろうと自己満足であろうと情は情であり、純粋なエゴイズムであるがゆえに美しく見えることもある。

    個々のエピソードについて話すなら、2つ目の「桔梗の宿」が1番よかった。この話も広義には恋愛をテーマにした短編ではあるが、それらは自由恋愛ではなく、他にすべもなくただ生存本能として選びとらざるをえない恋愛だ。他の恋愛小説のように華々しくなく、重苦しく切実なものだ。花が、そこがどんな荒れた土地であっても自分では咲く場所を選ぶことができずただ種の落とされた地に根を張り芽を出すことしかできないように、花町という土地に、しいてはその時代の日本に生まれついてしまったがゆえの美しさなのだ。愛は美しいが、この物語を美しいと感じてしまう読み手の私のうちにもエゴイズムがある。荒れ野の花はそこが荒れ野であるが故に際立ち人の目には美しく見えるが、初めからそんなところに咲くべきではない。
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    投稿日:2023.07.21

  • ちゃかぽこ

    ちゃかぽこ

    このレビューはネタバレを含みます

    面白かった。米澤穂信が薦めていたのと評判が良かったので読んでみた。

    「藤の香」
    代筆屋という伏線。故郷への文と目の前の少女の行く末を考えて、さらに己の寿命まで考えると成敗したくなるのもわかるな。お縫の心情を推し量ろうとするまなざしが良かった。

    「桔梗の宿」
    二階の窓から花を散らすという仕草になんともいじさらしを感じてしまう。言葉にして直接伝えられない感情を感じる。福村も人形を操ることで何かを伝えていたとしたらそこが二人の共通点になるのかな。

    「桐の柩」
    主人公がなんか百合の間に挟まる男というか、二人の愛の渦中にいるというか、面白い立ち位置。
    主人公のありようがあまりにも希薄なのが良い。
    桐の棺というダイナミックな小道具、大道具?の使い方が良い。画面映えしそう。

    「白蓮の寺」
    花を埋めるという動作について考えたことも無かったので、そんな場面を見たら忘れられないし怖さも覚えるだろうなと思った。
    前半の夢の部分はどうにも退屈だった。他人の夢ほどどうでもいいというがほんとそれ。映像化したら美しいだろうが。
    なんとも奇妙な出来事を聞いたり覚えていたりで、じゃあ真実は?と探求していくのが面白かった。
    母親が目の当たりにした春のあぜ道で女が突然死んだのは、母親の面影に誰か(女の夫か知りあい)を感じたからでは、という考察を見たが、なるほどと思った。それなら、母親も自分の子供が宗田に似てくるかも、似ていると感じるのもわかる。

    「戻り川心中」
    丹念に過去の場所を訪れて振り返るのが現場百篇って感じで面白かった。また、苑田の在り方が、とんでもすぎて西尾維新を思い出した。己の才のために人生を賭ける。そのまんますぎてすごい。すごいから常人ではないんだろうけど。それに付き合わされての心中はむごいな。トリックのために人を殺す麻耶雄嵩にも通ずるな。

    全体的に花をモチーフにしてるが、説明てきではなくさりげなく小道具として、背景や形、匂い、色として登場しているので品があって面白かった。文体も読みやすい。大正時代も感じられて面白かった。

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    投稿日:2023.05.19

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