【感想】あなたに似た人

ロアルド・ダール, 田村隆一 / ハヤカワ・ミステリ文庫
(35件のレビュー)

総合評価:

平均 3.8
8
14
11
0
1
  • あなたにも似た人、わたしにも似た人

     なにやら二分冊の[新訳版]とやらも出ているようですが、わたしが読んだのはこちらの版なので、こちらでレビューを書きます。

     そんなわけで、江戸川乱歩の造語であるところの「奇妙な味」と呼ばれる作品は多々ありますが、本作はその中でも代表的な短編集と言ってよいでしょう。なにせ記憶力にモンダイがあり、読んだ本のストーリーを端から忘れるこのわたしですら、「味」、「南から来た男」、「おとなしい凶器」と、三篇ものストーリーを覚えているのですから! もっとも、全部で十五篇収録されているので、1/5しか覚えてないんですけどね。

     それはさておき、この三篇はホラーでもなくミステリでもなくSFでもなく、まさに「奇妙な味」としか呼べない傑作短篇で、普段あまり海外物の短編集などに手を出したことが無い人には特にお薦めです。あと早川書房は<異色作家短篇集>を電子書籍化するなら、マシスンの「13のショック」とフィニィの「レベル3」を早く電子化するように。
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    投稿日:2013.10.26

  • どこにでもいて、いつでも起こるかもしれない怖さ

    ミステリーやホラーの短編の分野で、オールタイム・ベストと評価されるのがロアルド・ダールの短編作品。

    「味」、「おとなしい兇器」「南から来た男」の三作品は、本当に傑作。

    特に人気の高い「南から来た男」は、南(米)から来た男が、ホテルのプールサイドで出会った若いアメリカ人の青年に賭けを申し出る話し。着火に失敗したことがないというライターを持つ青年に、10回連続で着けることができれば、キャデラックをプレゼントする。その代わり、できなければ青年の小指をくれという。

    着火回数をカウントするシーンがドキドキのピークかと思いきや、その件が終わった後に訪れるわずか1行分の言葉に、一瞬にして頭がサーッと白んでいきます。ただのホラーではない。奇妙な味わいのある恐怖、幻想、怪奇譚。
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    投稿日:2014.09.25

  • 「ZIPPO」のライターか?

     ライターで10回連続火が点けられるか。勝てば高級車、負ければ指を切られるーーそんな賭けに挑む若者。タランティーノの映画にもなったな。
     鬼才ダールの作品はどれも妙な魅力が漂う。だからこそ、これまで色々映画化されている訳だが、原作と比較するのも面白い。続きを読む

    投稿日:2015.05.13

ブクログレビュー

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  • ミホレイ

    ミホレイ

    もう廃盤となってる旧訳版。
    絶妙な語り口でぐいぐいと読ませてしまう。
    オチもどうなるのか意外と読めなかったりして、引き込み方が非常に巧い。
    シニカルが効いている奇妙な味。
    人間の弱さ醜さ恐ろしさをユーモラスに描いた逸品。
    傑作と言われる冒頭の3編から始まり、「韋駄天のフォックスリイ」の心痛みながらも笑えるオチ、「告別」の苦笑いしてしまう復讐劇、子供の頃の妄想は世界共通でドキドキした「お願い」など、ゾクゾクする短編で出来上がっている。
    誤訳、悪訳が所々にあり読みづらい部分もあるものの、充分に良いと思う。
    なにせ40年以上前の古い出版なので、新訳版も読んでみたい。
    チャーリーとチョコレート工場の作者とは知らなかった!

    味 ★4
    おとなしい兇器 ★4.5
    南から来た男 ★3
    兵隊 ★2
    わがいとしき妻よ、わが鳩よ ★3
    海の中へ ★4.5
    韋駄天のフォックスリイ ★5
    皮膚 ★4
    毒 ★3.5
    お願い ★3.5
    首 ★4.5
    音響捕獲器 ★3
    告別 ★5
    偉大なる自働文章製造業 ★4
    クロウドの犬 ★4
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    投稿日:2021.05.28

  • pokorit

    pokorit

    短篇集。収録作品は、味、おとなしい兇器、南から来た男、兵隊、「わがいとしき妻よ、わが鳩よ」、海の中へ、韋駄天のフォックスリイ、皮膚、毒、お願い、首、音響捕獲機、告別、偉大なる自動文章製造機、クロウドの犬。

    短編の醍醐味はキレの良い展開。 この短篇集は、ミステリー要素はあまりないけど、話がどう展開してゆくかワクワクする。 予想外の結末にうならされたり、予想通りの顛末に納得したり。 特に好きな作品は、ワインをあてる賭けをする「味」、なんでもないような賭けが緊張感を募らせる「南から来た男」、時代を先取りし過ぎている「偉大なる自動文章製造機」。 賭けにまつわる題材が多い。 最後の「クロウドの犬」だけは長めの約100ページで、プロットの割に冗長に感じた。
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    投稿日:2020.07.30

  • ashisas

    ashisas

    このレビューはネタバレを含みます

    ミステリ文庫ではあるものの、この本に収められている短編はいずれもミステリーではないよなぁ、という印象。

    面白い作品もそうでもない作品も入り混じってますが、共通するのが「確かにこういう人、身近にいるかもしれない」という人物が取り上げられていること。特に冒頭の『味』で登場するワインの産地をあてる美食家や、『海の中へ』で賭けに勝つために海に飛び込む男なんかは、ほかの小説でも出てきそうです。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2015.12.31

  • 沙都

    沙都

     15編の作品を収録した短編集。

     絶妙な語り口と独特のオチの数々。それだけに内容がちょっと分かりにくいものもあるものの、それすらもこの短編集の魅力として映るような気がします。

     最初の3編はいずれも傑作揃いなので、そこでハマれば他の独特のオチの短編も、「こういう作家性なんだなあ」と自然に受け入れられるのではないか、と思います。

     その最初の3編はワインの銘柄当ての賭けの様子を描いた「味」
    思いがけず夫を殺してしまった妻が証拠隠滅を図る「おとなしい兇器」
    ライターで連続10回火をつけることができれば高級車を手に入れられる、しかし失敗すれば指を一本失う、という賭けの顛末を描く「南から来た男」の3編。

    「味」はオチの書き方が絶妙! 単純に書けばそれまでの話なのですが、結末を微妙にぼやけさせて書くことで独特の”味”のある短編になっています。

    「おとなしい兇器」も今となってはトリックは見覚えのあるものかもしれませんが、そこに至った時のブラックな書きっぷりが見事の一言に尽きます。思わずにやりとしてしまいました。

    「南から来た男」もラストの一行が印象的。どんでん返しの衝撃というものではなく、例えるなら気づかぬうちにスッと自分の背後に何かが忍び寄っていた、という感覚のような感じです。淡々としながらも、想像すればするほど恐怖や狂気が感じられるオチです。

     比較的分かりやすかった短編としては、「南から来た男」と同じくスッと忍び寄る怖さが印象的な「皮膚」。自動で文学を描く機械の発明を描いたブラックユーモア系の「偉大なる自動文章製造機」も好きです。

     そしてオチの不可解さが印象的な短編も多いです。「海の中へ」「毒」「音響捕獲器」など、面白いのかどうか正直よく分からないのですが、なんだか忘れられない短編が多かったです。これもまた”奇妙な味”の短編集の最高峰とされるこの作品の魅力なのかな、と思います。
    続きを読む

    投稿日:2015.10.17

  • nanaenanae

    nanaenanae

    異色、奇妙な味、とよくよく表現される名作ぞろいの短篇集。

    『味』のおかしさといったらないのです。

    新訳も出ているのでそちらも読んでみたい。

    この時代の女性の台詞は本当にこう、なんていうか「あら、あなた、それってなんですの」的な、実のないからっぽな物言いばかりでついつい笑ってしまいます。続きを読む

    投稿日:2015.08.25

  • 810073

    810073

    わー結構ブラックだなーと思いながら読み進め、最後の短編が「クロウドの犬」。
    犬が可哀想な目にあうんじゃないかと思って気が気ではありませんでした。
    まあ予想よりもマシでしたが……。

    投稿日:2015.07.19

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