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アーサー・C・クラーク, 深町眞理子 / ハヤカワ文庫SF (16件のレビュー)
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総合評価:
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4
「今からでも映像化して欲しい」と思わせてくれる1960年代のSF
初版は1961年。ジョン・F・ケネディ大統領が月への到達を公約した年に書かれた月世界旅行の本です。これからアポロ計画が始まる、って時ですね。この手の本は時代が進んでベースとした仮説が間違いだとわかると…一気に魅力を失うものですが、そんなことが全くないあたり、さすがはクラーク、といったところです。 さて、本書の舞台は「月面遊覧船」です。とても細かくて軽い月の砂が重力作用によって集まった水無き海。あまりの流動性に重い物を支えることができず、そこには専用の「船」でなければ入れません。ここで起きてしまった事故に対応する人々の活躍。それが本書のメインプロットです。 で、それは読んで楽しんでもらうとして。ここに出てくる描写がとても美しいのです。放物線を描いて音も無く舞い散る砂。白と黒にくっきりと色分けされたクレーター。稜線にかかる地球。などなど。「この人、実際に見てきたんじゃなかろうか」と思わせる書きっぷりに魅了されます。 「現実ではあり得ない」なんて瑣末事はひとまずおいて、月世界旅行を堪能してみてはいかがでしょうか?続きを読む
投稿日:2013.10.14
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トシヒコさん
3
これは隠れた名作ですよ。
月面で発見された渇きの海は、奇妙な月面上の砂の海だった。 塵の上を航行可能な砂上遊航船セレーネ号は、二十名の乗客を乗せて神秘の海を遊覧していたが その途中、誰も予見していなかった地滑りのため、セレーネ…号は まるでアリ地獄の罠にかかったかのように砂のクレーターの中へ飲み込まれていく・・・ 船内に備蓄された酸素は一週間分しかなく、 それまでに救助されなければ全員死亡してしまうではありませんか・・・・ 次々と襲いかかる困難に対して人々が団結し、それを乗り越えようとするこれは SFですが、サスペンス、スペクタル巨編でもある。 パニック映画なんて分類がなかった時代にこういう物語を書けるところが アーサーCクラーク先生の成せる技です。 映画化されなかったので、あなたの頭の中で映像化して楽しんでもらいたい作品です。 続きを読む
投稿日:2016.07.22
チョッピー
1
傑作
クリフハンガーな状況設定の連続や、登場人物のキャラクター設定の描き分けもくっきりと、今読んでも小説として十分に面白く読めました。余りにもありとあらゆる面で「端正」な印象を受ける為か、個人的には内容に見…合った「ダイナミック」なインパクトに欠けているような印象も残りましたが、個人的嗜好の範囲でしょう。古典SFが大好きな人間としてもお勧めしたい作品です。続きを読む
投稿日:2014.05.06
1tsk
映画化したらおもしろいと思う
地下にうまって閉じ込められてしまった月面の遊覧船からの救出劇を描いたものですが、もうずいぶん昔に書かれた作品なので、その科学的バックグラウンドとかには現代とのギャップがあり、そこの補完は必要性は感じま…すが、読ませるストーリーとしては「映画化したらおもしろいよねこれ」と思わせる逸品です。アーサー・C・クラーク氏の作品で、ストーリーからどきどき感じたのはこれが初めてです。続きを読む
投稿日:2014.05.10
くっちゃね村のねむり姫
設定あるいは前提が古い?とんでもありません!
まず冒頭、著者の1987年版への序文が書かれています。それによれば、この小説を書いたのは、アームストロング船長が月面に立った9年前の1960年ということ。そして、船長は月塵の海へ飲み込まれはしなかっ…たこと。 どこか言い訳をしている感がありますが、そんなことは全く関係ありません。 舞台が月面であろうがなかろうが、問題は砂に埋もれた遊覧船をどうやって救出するか、これが問題なのであります。 当然のことながら、2010年に発生したチリの「コピアポ鉱山落盤事故」救出作戦を思い出させますし、閉鎖した空間に閉じ込められた観光客の心理描写は、萩尾望都の「11人いる」を想起させます。 どのような方法でこの困難な状況を打破するのか、興味は尽きないのでありますよ。古典的名作なんて言う言葉は使いたくありません。なぜって、今後、どこかで同じような事故が起こるかもしれないではないですか? それに時々、コミカルな表現もあるんですね。深町さんの訳のなせる業かもしれませんが、隠れてキスしようとする瞬間「まぁ、いけませんわ。宮中でございます!」なんて、原書では何と書いてあるのかな? それにね、ベルリオーズのラーコーツィ行進曲が太陽系の果てまでこだましていった、なんて表現は、痛快ではないですか?続きを読む
投稿日:2019.03.31
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diver0620
何度読み返しただろう。 まだスプートニクの打ち上げよりも前に書かれたにもかかわら修正すべきところはないという驚きの作品。 月面の海を航行する観光船が突如海に飲み込まれる。海を構成するのは固体と液体…の悪いところばかりの性質をもつ細かい塵。この海の存在のみがSF的設定。閉鎖空間でのパニック・コントロールと次から次に発生する困難に立ち向かう乗員。パニック映画の王道をいく設定でクラークの独特の巨視的視点を絡めながら描かれます。 自分がこの本を読みたくなるタイミングには傾向がやはりあったことに気づきました。困難な状況に陥っているタイミングなのでした。逃れられないし根本問題も解決することができない状況では、自分の持つスキルと周りの協力を引き出すことでしか脱出することはできない!今もって胸に響く傑作です。続きを読む
投稿日:2017.05.22
フラビオ
2015年11月16日読了。塵の層に覆われた月面を観光飛行する『セレーネ号』が突然塵の中に消失した。船の探索・救助は可能なのか、搭乗者22名の生存は・・・?SFの巨匠による、まさに悠然たる筆致のSFデ…ィザスター小説。この人なら地球の海を舞台にしても同じように面白い小説を書けるのだろうと思うが、綿密な科学考証や「宇宙飛行士のむずむず」といったリアルなエピソードなどで高まる物語の迫真性がたまらない。危機的状況を「余興」で乗り切ろうとする提督の百戦錬磨の経験とユーモアや、自らの発見を虚仮にされるリスクを知りながらあえて発表する若き科学者のプロフェッショナルな態度など、人間の英知のすばらしさを歌い、「科学が人類の課題を解決する」という著者のゆるぎない確信が読んでいて心地よい。面白かった!『幼年期の終わり』だけしか読んでいなかったが、もっと読まねば。続きを読む
投稿日:2015.11.18
riariarian
とても面白かった。 SFはあまり得意ではないけれど、これはとても読みやすく、月での風景がよく想像できた。本当にこんな世界があるんだと思い込んでしまうくらいにリアルな描写ばかりで、読んでいる間は間違いな…く月旅行していた。でも、ところどころに古い機器の名前が出てきて、ああ、古典SFなんだと思い出さされた。それも含めて愛すべき世界観だと思う。 最後までハラハラしました。続きを読む
投稿日:2013.12.03
うろたんけらむの
1961年の小説。 親の書庫から昭和52年に販売されたものを読了。 現代から見れば、機器類の名称はレトロなものばかりだが小説全体の世界観は揺るがない。 緻密な設定と襲い来る難題がそれを支えている。
投稿日:2013.09.08
ま鴨
月の表面にある「渇きの海」。それは、あまりの細かさ故に液体のような特性を示すミクロの砂が海のように広がる月有数の絶景地である。観光客を乗せてこの「渇きの海」を遊覧する船が、突然の事故で「渇きの海」の底…深くに埋もれてしまう。軽量のダストスキーしか近づけない「渇きの海」のただ中で、砂に埋もれた観光客と遊覧船スタッフを救い出すために、果たしてどんな作戦が取られたのか?救出作戦の顛末は? クラークがこの作品を執筆した当時、月表面には「渇きの海」のようなエリアが実在すると考えられていたそうです(実際には観測されていません)。この作品の真骨頂は、執筆時点における最先端の科学理論を前提として広げ得る想像力の範囲内で100%物語を構築している、つまり「その時点での嘘は一切ついていない」ということ。まるでドキュメンタリーを読むかのような筆致、まさに未来の「プロジェクトX」。ハードSFの代名詞・クラークの面目躍如たる佳作です。 ただし、あくまでも月面の一エリアでの出来事の描写に終始するストーリーですから、スケール感はかなりこじんまりしてます。また、いかにもクラークらしく、キャラクターの人物造形はステロタイプで深みはありません。それでも面白い、と思えるのは、ひとえにこの作品がジャンルSFだからだと鴨は思います。SF初心者にこそ読んで欲しい作品ですね。続きを読む
投稿日:2013.05.13
melty
1961年の小説。ただ図書館で手にとっただけだがたいそう有名らしい。月で旅行ができるようになって、砂の海を観光中、地震が起こり砂の海の中に船が沈んでしまう。"塵"の圧力、酸素、温度…様々な問題が矢継早…に起こるのは見所満載。閉鎖空間の中の人間関係。考えられる限りの技術を用い、救出に全力を上げる月の技術者達。偏屈だが有能な天文学者。スクープを追い求める記者。まるで壮大な映画を見ているようだった。続きを読む
投稿日:2013.04.24
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