【感想】華氏451度

レイ・ブラッドベリ, 宇野利泰 / 早川書房
(178件のレビュー)

総合評価:

平均 3.8
35
63
37
15
2
  • 名作は何十年経っても色あせない

    主人公モンターグは、書物を隠し持つ家に出動しては焼き尽くすことを生業にしているファイアーマン。彼と出会った少女クラリスは、ファイアーマンというのは本来放火するのではなく、消火する職業だったのだと言う。
    自分の仕事に疑問を持つようになった彼は、燃え盛る炎の中からこっそり本を持ち帰り、読書に没頭するようになる。

    良書は何十年を経ても人々の記憶から消えることはない。
    この本が今は電子書籍でも読めることに感謝しつつ、モンターグが守ろうとしたものが未来へと受け継がれていくことを願う。
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    投稿日:2013.09.24

  • 科学の進歩は人を幸福にするか?

     現代文明がもつ矛盾点やおかしな点に気付かせてくれた作品です。現代文明に囚われ、大事な何かを無くしているモンターグの妻、ミルドレッド。そして主人公モンターグを変えていく人物たち。当初本を燃やすことに疑念を持たない主人公でしたが、話が進んでいくうちに疑問を感じるようになります。そして本を守る側へと転じていき・・・・。

     一つのエンターテイメントの作品としても十分楽しめる作品です。しかしこの本から得られるものは、必ずしも楽しいひと時だけでは、ありません。色々なことに気付かせてくれます。決して難しい小説ではありません。深い小説を読みたい方は、是非読んでみてください。
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    投稿日:2013.11.14

  • 歴史と文化の燃え尽きる温度

    華氏451度 (摂氏 約220度) ... 
    それは、紙が引火して燃え出す温度...

    「焚書」 を軸に
    国家による思想制限・コントロール政策の中で
    それに従事する人間
    順応 (?!) する人間
    られる人間
    そして、立ち向かう人間 と 生き残る人間 を
    描いた作品です。

    スリル、サスペンス、逃亡劇、悲劇と皮肉、...
    読者を惹きつける様々な要素とともに
    迫り来る危機感への警鐘が強く感じられ
    SF の形をとった、現代社会派小説のような気もしてきます。

    本書巻末には、福島正実 氏 による
    充実した 「ブラッドベリ・ノート」 が付いており
    原書のある版に掲載されていた、著者自身による
    「あとがき」 について触れています。
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    投稿日:2014.04.30

  • 平穏無事が幸福の要領

    評判通りの傑作。
    本を燃やす自分の仕事に疑問を懐きはじめる主人公、モンターグに上司は「平穏無事が幸福の要領」だと告げる。
    真実を知ることは不幸か。モンターグは「本」を取り上げられた世界から抜け出していく。
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    投稿日:2014.01.02

  • 序盤だけ・・・

    序盤だけ面白いです。世界設定もユニークで、メッセージ性が強く出ています。
    けど、途中からはやたらと説教臭くなるだけで、物語性もあまりなし。そして、主人公が持って逃げる書籍が聖書なのが気に食わない。
    っぱりブラッドベリは、3大SF作家に入れないわけだと納得。同じ系等のSF作家ならフレデリック・ブラウンのほうが、好きだ。続きを読む

    投稿日:2014.04.04

  • 別の意味で紙の本が消滅しつつある未来が到来

    フランソワ・トリフォーにより映画化されましたが映画は駄作です。(笑)
    映画でがっかりしないように。
    ブラッドベリ氏が後年語っているように、この世界は旧ソ連をモデルにしてるようです。
    紙の本はジョセフ・ムニヤーャニ氏の素晴らしいイラストがありますが、著作権の関係か載ってないのは残念。焚書を描いたS・Fを電子書籍で読むってのもまた皮肉なもんですね。
    続きを読む

    投稿日:2016.04.27

ブクログレビュー

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  • じゅう

    じゅう

    アメリカの作家「レイ・ブラッドベリ」の長篇SF作品『華氏451度(原題:Fahrenheit 451)』を読みました。
    ここのところSF作品が続いていますね。

    -----story-------------
    焚書官「モンターグ」の仕事は、世界が禁じている“本”を見つけて焼き払うことだった。
    本は忌むべき禁制品とされていたのだ。
    人々は耳にはめた超小型ラジオや大画面テレビを通して与えられるものを無条件に受けいれ、本なしで満足に暮らしていた。
    だが、ふとした拍子に本を手にしたことから、「モンターグ」の人生は大きく変わってゆく―SFの抒情詩人が、持てるかぎりの感受性と叡智をこめて現代文明を諷刺した不朽の名作。
    -----------------------

    1953年(昭和28年)に発表され、1966年(昭和41年)に「フランソワ・トリュフォー監督」によって『華氏451』として映画化された作品、、、

    本の所持や読書が禁じられた、架空の社会における人間模様が描かれており、タイトルは(本の素材である)紙が燃え始める温度(華氏451度≒摂氏233度)を意味しているそうです。

     ■第一部 炉床と火トカゲ
     ■第二部 ふるいと砂
     ■第三部 火はあかるく燃えて
     ■解説 佐野眞一

    舞台は、情報が全て超小型ラジオや大画面テレビによる画像や音声などの感覚的なものばかりの社会… そこでは本の所持が禁止されており、発見された場合はただちにファイアマン(焚書官)と呼ばれる機関が出動して焼却し、所有者は逮捕されることになっていた、、、

    (表向きの)理由は、本によって有害な情報が善良な市民にもたらされ、社会の秩序と安寧が損なわれることを防ぐためだとされていた… 密告が奨励され、市民が相互監視する社会が形成され、表面上は穏やかな社会が築かれていた。

    だがその結果、人々は思考力と記憶力を失い、わずか数年前のできごとさえ曖昧な形でしか覚えることができない愚民になっていた… そのファイアマンの一人である「ガイ・モンターグ」は、当初は模範的な隊員だったが、ある日「クラリス」という女性と知り合い、彼女との交友を通じて、それまでの自分の所業に疑問を感じ始めた、、、

    「ガイ」は仕事の現場で拾った数々の本を読み始め、社会への疑問が高まっていく… そして、「ガイ」は追われる身となっていく……。


    SNSや動画配信サービスにより過去の文化が破壊されつつある現代文明を予見していたような作品でしたね… これが70年近く前に描かれた作品なんですからねー 驚きです、、、

    活字が、本が、スマホにより駆逐されつつある社会に警笛を鳴らす作品ですね… 現代文明に対する鋭い批評を秘めた名作でした。


    以下、主な登場人物です。

    「ガイ・モンターグ」
     主人公。焚書の仕事をしているファイアマン(焚書官)

    「クラリス・マックルラン」
     モンターグ家の隣に引っ越してきた少女。17歳

    「ミルドレッド」
     モンターグの妻

    「ビーティ」
     モンターグの上司で署長。

    「フェイバー」
     元カレッジの英語教師の老教授

    「老女」
     本を隠し持っていたため、隣人の密告により処罰対象となる

    「ストーンマン」
     モンターグの同僚のファイアマン

    「ブラック」
     モンターグの同僚のファイアマン

    「フェルプス夫人」
     ミルドレッドの友人

    「ボウルズ夫人」
     ミルドレッドの友人
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    投稿日:2023.08.02

  • 辺土名小次郎

    辺土名小次郎

    本書は、一九七五年十一月に早川文庫NVから刊行された『華氏451度』に手をくわえ、新たに早川文庫SFとしたものです。

    投稿日:2023.02.15

  • pikomelo

    pikomelo

    このレビューはネタバレを含みます

    ALTER EGOのエスが勧めてくれたので読んでみた。

    本が禁止され焚書される世界の話で、紙の発火温度がタイトルになっていることにセンスを感じて読み始めた。

    正直物語は面白くない。描写が詩的で仰々しいため進むのが遅い。350ページ近くあるが短編小説でも消化できるほどの物語しかない。しかも最後は戦争がすべてリセットしてぶん投げエンド。

    ただ問題提起は凄まじく正しい。現在の人々の殆どが直面している課題に直撃している。
    受動的にダラダラとインプットされる情報、思考する暇のない絶え間ない情報とそれに対する中毒、人生において死ぬまでにすべきこととはなにか。
    まさしく今私がどうにかすべきと思っていた課題であり、その解決策として本を読むことと記録を付けることが提案されている。

    私はまずは読書を始め、簡単なアウトプットを行うこととする。

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    投稿日:2023.01.11

  • cocosurvive

    cocosurvive

    モンターグがこの世界には愛がないことに気づいて、世の中から流れ込む情報に抵抗するために聖書の一節を心の中で唱え続けるシーンが本当に胸に響いた。
    広告も時速100kmの運転も言葉ではない。愛ではない。
    生きた人間が綴じ込められている本だけが、ただ真実を届けようとして生きている人間に語りかける。
    生きた人間を焼き払う世界が、すでにやってきている。
    買ってから読了までに何年もかかったけど、この先も何度でも読み返すと思う。
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    投稿日:2022.07.19

  • かとのひも

    かとのひも

    モンターグはFiremanだ。消防士ではない。本を“殺す”仕事だ。
    本自体が禁制であり、見つけしだい(密告が多い)焼却する。
    自分の仕事に疑問を持っていなかったが、ある少女と出会い言葉を交わしてから、考えはじめる。

    ・人々は与えられたものを批判なく受けいれるようになっている。
    〇今のリアルと重なるような所もあり、怖い。
    〇主人公よりも、上司の叫びに揺さぶられる。実は本や知識をすごく愛しているから、引き裂かれるように仕事をしていたんだろうなあ。
    〇新訳は雰囲気が違うのかな?ちょっと読んでみたい。
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    投稿日:2021.10.07

  • daisuket

    daisuket

    本が禁制品となったディストピア的未来世界を描く超有名作。本を読んで考えることをせず与えられた情報だけで過ごすことに対する警鐘が散りばめられている訳ですが、文章のリズムや勢いが良いから説教臭くはない。英語読めないけどたぶんこれは英語版読んだ方が楽しめるんだろうな。本を燃やす役人だった主人公がふとしたきっかけで本を読むようになり…、という大筋がわりとポンポンと進んでいくためか主人公の思考や態度に疑問を感じる感想も見かけたけど、思考する習慣を取り上げられて育った人の思考回路に違和感ない方が無理あるのではと思う。次は『火星年代記』も読みたい。続きを読む

    投稿日:2021.07.25

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