【感想】夏の塩

榎田尤利, 茶屋町勝呂 / SHY NOVELS
(39件のレビュー)

総合評価:

平均 4.6
25
6
4
0
0
  • BLというジャンルにくくるのがもったいない作品

    この作品の主軸はおそらく「恋愛」ではありません。テーマは結構重いです。
    でも、必要以上に悲壮感を出すような盛り上げ方や涙を誘う演出のようなものはなく、生とはなにか。死とはなにか。生きることの苦しさと、喜び。そういったものに素直にそして誠実に向き合った作品だと思います。
    ぶっとんだ設定もないし、個性的な登場人物たちの一人一人にどこかリアルな背景があって、現実に「いそう」な感じがするのもまた魅力のひとつかと。

    この作品はBLというよりも一つの文学作品と思って読んでほしいです。
    私自身、知人に勧められるままにBL作品と知らずに読み始めましたが、ReaderStoreでも「アダルト>ボーイズラブ」に分類されていると知ってちょっと驚きました。
    一般作として、ぜひいろいろな方に手に取ってほしい。

    上巻であるこの「夏の塩」は、あまり主人公に感情移入しすぎると後半どんどん辛く痛くなっていきますが、その先に見えてくるものがあります。下巻は「夏の子供」。2冊あわせて結構なボリュームですが、ぜひまとめて読んでください。

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    投稿日:2013.09.28

ブクログレビュー

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  • く

    日本の3〜40年のボーイズラブ小説の歴史の中で、一番の傑作は何か?と問われたら、私は迷いなくこの「夏の塩」「夏の子供」を挙げるな、と久々に再読して改めて思った。10代の頃に読んで深く胸を打たれたけれど、今読んでも全く読み味が変わらない。デビュー作だからかボーイズラブ小説の定型にハマりきっておらず、魚住と久留米だけではなく、サリーム・マリ・響子・濱田などなど…たくさんのキャラクターを扱い、そのサブラインに何度も立ち入りながら、かなり微妙なバランスでボーイズラブ小説として成り立っている。ほとんど奇跡と言っていい。
    それにしても、魚住が久留米の汗で味覚を取り戻していることに気づくくだりや、さちのからのメッセージによって魚住が久留米に愛の告白をするくだりなどはちょっと涙なくして読めない。魚住というある部分がポカンと欠けてしまった人間、生きる感覚を失くしてしまった人間の喪失と再生。「塩」で味覚を取り戻したところから、つよい「子供」になっていくまで。単行本600ページ超にわたって、不器用に近づいたり離れたりする二人の関係性に身悶えながらも、たくさんのキャラクターが奇妙な輪を作りながら二人を支え、メインストーリーをきっちり読ませる、その構造には何度読んでも驚かされる。
    「みんなひとりなのだ。自分の土管の中で、自分はどう生きていくのか、それを考えなければならないのだ。」
    恋愛が全てではない、生きることをめぐる大きくて懐の広い物語であり、私が慈しんできたボーイズラブというカルチャーの一番美しくて素晴らしいところが結晶化された宝石のような物語。たくさんのボーイズラブ読者の宝物になっているであろう作品だし、何度も何度も再刊行されるのも当然だろうが、この作品が今後も生き続け、新たな世代のボーイズラブ読者に読み継がれていくことを心の底から祈っている。
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    投稿日:2022.03.03

  • あすみ

    あすみ

    順番間違えたけど私にはそれがよかったみたい
    結末知らなかったら塩の中盤あたりまでのギスギス感で投げ出していた可能性がある

    日下部先生は魚住くんの持つ深い負のオーラに巻き込まれちゃった人なんだなあ・・
    マリさんが言っていたまんまだった。

    夏の子供の方でも名前がよく出たさちのちゃん、
    父親がキャリア持ちでそこから母子感染ってことなのか。
    さちのちゃんの話では泣いた、葉書の破壊力。
    ツライ
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    投稿日:2017.06.16

  • あおい

    あおい

    (´・ω・`) ネタバレアリ〼

    上下巻であることを知らずに、先に夏の子供を途中まで読んでしまいました。だからさちのちゃんが亡くなることも知っていたし、二人が晴れて結ばれる場面も読んでしまっていました

    だけどそれでも、とても心に響きました。魚住の置かれていた環境、マリやサリーム、濱田さんがどういった存在で、久留米がどれほど魚住のことを大切に思っているか。幸福をうまく感じられずに生きてきた魚住が、彼らと過ごす中でやっと人間らしくなっていく様子。

    BLという、人によっては抵抗を感じてしまうジャンルで括られるのは、とてももったいないと思いました。ページを繰る手が止まらず、すごい早さで読み進めたので、BLと知って見守っていた同居人は多分引いていたと思う。でも、こんなに純粋な愛(恋愛、友愛、親愛)の話なのに。同性で愛し合うことの何がいけないんだろうと、少しかなしくなります。

    そしてそんなBL要素ですが、魚住と久留米のそういうシーンはとにかく甘い。同性ゆえの、あと一歩踏み出せない歯痒さが切なく、読んでいてこっちが恥ずかしくなって、ひとり頭を抱えながら読んでいました。すごく好きでした。

    これから、改めて夏の子供を最初から読もうと思います。
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    投稿日:2017.02.08

  • OWL_89

    OWL_89

    2016.6.17 読了

    大好きな小説になった。
    魚住と久留米をひたすら見守りたくなる。
    ストーリーに厚みがあって、すべての登場人物の人となりや感情が緻密に表現されている。
    どんどん読み進めたいけど、読み終わりたくなくて、大切に1ページ1ページを読み進めたくなる。

    再読必至

    2017.1.22 再読
    2017-4
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    投稿日:2016.06.18

  • shisobook

    shisobook

    10年ほど前、大学生の時に読んだものがハードカバーで出ていた。再び手に取った。

    うまく生きていけないけど、生きていると、まわりの人と心を通わすことができる。

    投稿日:2015.02.18

  • s2tooooy

    s2tooooy

    全体を通して人物がとても魅力的でした。BL小説では蔑ろにされがちな女性陣も、この小説の中ではキャラが立っていて凄く素敵でした(マリちゃん大好きです)。スピンオフのような形でそれぞれの人物に焦点を当てた話もその人物の成長が感じられて面白かったですね。
    いろいろと問題を抱えた魚住と不器用過ぎる久留米との話ではあるのですが、この2人の恋愛を通してそれぞれの人物がどのように大人になっていくのか、正直BL小説という括りだけでは勿体ない気しかしないです。
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    投稿日:2015.01.06

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