二つの祖国(四)

山崎豊子 / 新潮文庫
(17件のレビュー)

総合評価:

平均 4.5
8
6
1
0
0
  • 第四巻~東京裁判 後

    2011/10/25読了。
    今年度に入ってすぐに手に取った記憶があり、
    ずいぶんと時間がかかってしまったように思う。
    新装文庫版により全4巻。
    トヨコさんの作品は、いつものごとく第一巻を読み終わるのに
    時間がかかってしまう。
    本作品においては、ざっくりと下記のように分かれるかと。

      第一巻~日系アメリカ人強制収容所
      第二巻~戦場における日系二世
      第三巻~東京裁判 前
      第四巻~東京裁判 後

    第一巻では、戦争時下の日系人家族がどのような
    処遇を受けたかを通して、小説構成上の舞台設定、
    登場人物の心理スケッチを読みながら
    彼らの人となりを理解する工程を踏むのだが
    その作業に時間を費やされてしまう。
    第二巻以降は、戦場ないし裁判という局面において、
    本作品のテーマでもある二つのアイデンティティの端境の中で
    自分の果たすべき役割を見出しながらもそれに伴う苦悩に
    悶える主人公にぐっと感情移入することができ、
    夢中になって読み進めることができた。

    また、第三巻以降では、東京裁判というあまり馴染みのない
    話題に触れ、戦争指導者たちの証言から
    全く知らなかった事実や、意外な思想・信条に
    触れることができる。
    個人的な一番の関心事は、天皇についての扱いについて。
    法的理屈とは無関係に、日米ともに現実に即した
    暗黙知の中でことが進んでいったのだと実感。
    この点は日本人にとって絶対に譲れない聖域であり、
    そこを侵さなかったGHQは懸命だと再確認。

    この作品を読了できたので、最新の「運命の人」及び、
    「ぼんち」「華麗なる一族」以外の
    代表的な作品はほぼ網羅できたかな?
    戦争三部作を完読して思うのは氏の描く女性像って
    なしてここまで男目線の理想像が描けるのかしらと
    毎度のごとく感心してしまう。ナギコーーー。
    Wikiで本作のモデルは誰だろうと調べると
    思わぬネタバレに合ってしまったのが悔やまれるところ。

    余談だが、「不毛地帯」の壹岐正のモデルである瀬島龍三が
    後の作品の「沈まぬ太陽」だけでなく、本作にもちらっと登場。
    まあ、東京裁判を扱えば必然ではあるけれど。

    広田弘毅については、悲しいかな予備知識が足りず。
    東条英機は割合良く描かれているが、さもありなんかなと。
    続きを読む

    投稿日:2013.12.26

ブクログレビュー

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  • nappi85

    nappi85

    長かった…。3月末にドラマが放送され、原作がすごく気になりちょこちょこ読み進めてました。
    読んですごくよかった。長いけどおすすめ。特に若い人へ。

    日米開戦と同時に、12万人の日系人が強制収容所へ入れられたのは事実。
    この小説に出てくる主人公やそれを取り巻く人々はフィクションだけども、
    著者の相当に膨大な取材、調査による事実を織り交ぜた歴史小説です。

    日系二世の主人公は、アメリカ人として生きるべきなのか、日本人として生きるべきなのか、痛烈な問いを突きつけられます。
    米国籍を持つ主人公は、収容所に入れられながらも語学兵としてアメリカ人の立場で戦い、最後は東京裁判で言語調整官として法廷に臨み、常に日本とアメリカの狭間でもがき苦しみます。
    ただこの小説はこれだけではない。
    第二次世界大戦の全てが網羅されており、
    戦争中に日本が犯した罪。
    パールハーバーの真実。
    太平洋戦争のあまりにも壮絶すぎる実態。
    捕虜に対する、国際的な常識と当時の日本の常識の違い。(実際ハーグ条約で非人道的な扱いは禁じられていた)
    東京裁判でのかなり詳細な成り行き。
    天皇制について、戦勝国が下した決断。
    戦犯たちが負った運命。
    何が日本を戦争に駆り立てたのか。
    何も知らなかった自分を恥ずかしく思うけど、教科書だけでは知り得ない事実の数々。
    難しく読みにくい部分もあるけど、
    元号が変わって皇室のニュースも多い今、知っておかなければいけないことの多さに打ちのめされました。

    戦争は、誰にとっても良い結果をもたらさない。
    強い国、弱い国、シナリオ作り、世論のコントロール…すべて国民の手の届かないような場所で、戦争への道が切り開かれていく。
    弱い立場の国民は、本当に、国のやること、周りの国からの思惑、見極めなければいけないなと思った。
    続きを読む

    投稿日:2019.07.09

  • taiko

    taiko

    東京裁判は判決を迎える。
    賢治の愛した梛子にも不幸な運命が待ち受ける。

    3巻から引き続き東京裁判に翻弄されました。
    判決の重さ、その判決を通訳として言い渡すことになった賢治の苦悩。
    梛子との別れ、家族との不和、そして東京裁判、それらが賢治を壊していく。
    日系二世としてアメリカに忠誠を尽くすも、日本人としても心を強く持ってしまった賢治には、余りにも酷な運命でした。

    衝撃のラスト、賢治の選んだ最後が悲しい。
    まだ幼いアーサーが心配です。

    続きを読む

    投稿日:2019.04.15

  • kozokanto

    kozokanto

    4巻は、主人公の期待にそぐわない東京裁判の粗雑・偏向・歪曲された審理と、想い人椰子の白血病による死亡、そして、なぜか主人公のピストル自殺で終わる。
     主人公のモデルは二世の伊丹明とハリー福原のミックス。ライバルのチャーリー田宮のモデルはいないようだが、彼女の戦争小説らしく嫌味で出世嗜好の男はよくでてくる。チャーリー田宮がもっとイヤな男として書かれ、さらに、悲劇で終わればもっとスッキリしたんだけどね続きを読む

    投稿日:2019.03.01

  • jif0148

    jif0148

    東京裁判の過程とケーンの苦悩が重なりあって読みごたえあり。
    現在の日米関係はなんだかんだ言っても親密だが、それに至るまでの犠牲は計り知れない。

    投稿日:2018.11.18

  • yajjj

    yajjj

    日系2世のアメリカ人が太平洋戦争中及び戦後に直面した差別、そして二つの祖国に挟まれ翻弄されつつもその中で生きる道を模索する姿を実在の人物をモデルにした主人公を中心に描いている。後半は極東軍事裁判の争点や広島原爆の悲劇を丁寧に小説の中で伝える著者特有の史実小説。戦争に関する書籍を読む度に如何に自分が近代史に無知か、表現を変えれば義務教育において学ぶ機会が与えられなかったかという問題を深く考える。文庫で全4冊。84年には大河ドラマになったそうだ。再放送する価値ある。続きを読む

    投稿日:2018.10.09

  • 赤黒い人

    赤黒い人

    このレビューはネタバレを含みます

    前巻から続く東京裁判も個人弁論に入り、判決へと向かっていく。
    そして賢治の心は、更に重苦しく重大な展開を見せるモニター、翻訳の仕事と、私生活における葛藤とストレスで次第にすり減っていく。

    二つの祖国を持つという特殊性から、どちらからも疑われ、疎まれ、それでも忠誠を貫こうともがき苦しむ賢治の姿には、もはや悲壮感しか感じない。
    この話自体はフィクションではあるが、天羽賢治のモデルのように、似た苦しみに苛まれて命を絶つことになってしまった人のことを忘れてはならないだろう。

    また、あまり知らなかったアメリカにおける太平洋戦争中の日系人への差別行為、東京裁判について知ることができたのは大きい。
    もちろん、この本だけで理解したつもりになってはいけない分野。
    太平洋戦争についての話題は、右翼だ左翼だとレッテル貼りの応酬になっている印象なので敬遠してきたのだが、日本人として少しぐらいは知っておくべきだと感じた。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2018.06.13

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