【感想】旅行者の朝食

米原万里 / 文春文庫
(140件のレビュー)

総合評価:

平均 4.0
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  • 経験しているからこそ

    日本共産党の幹部を父に持ち、祖父は貴族院の議員。父方の親類にあの有田芳生がいます。親戚は皆大食漢の食道楽。もっとも多感な時期の5年間を旧ソビエト連邦で過ごし、共産主義とロシア語を学んでいます。その後も東欧、中央アジア等各国を巡り、職業は通訳であり、作家であり、TBSのニュースのコメンテーターとしても活躍。享年56歳で亡くなっています。(Wikiと一部本書を参照)何とも濃い経歴の持ち主です。

    本書の内容は食を巡る様々な話が掲載されています。文学的表現における通訳の難しさを知り、東欧、旧ソビエトのことを本当に何も知らないんだなと感想を持ち、共産圏での食事の話で切実さが伝わり、キャビアをめぐる虚実ではチョウザメの件ですっかり騙され、トルコ蜜飴の話でお菓子を巡る雄大な話に魅了され、ちびくろサンボの話では長年の疑問が解消し、様々な童話、寓話についての見解に触れ、国内外を問わず実体験を基にした様々な食事の話を楽しみ、そして何より「故郷の食」というものが如何に大事なものであるかがひしひしと伝わりました。

    若干思い込みが強く、すべて料理に絡めた話にしている為、間違った見解や誇張と感じる部分もあり、また父方の影響か日本に批判的な傾向もわずかながら見受けられましたが、それを考慮したとしても濃い経験とユーモアに富んだ文章で読み物としてとても面白かったです。

    そしてこれを読むと本書のの中で紹介されている東海林さだお著の「丸かじりシリーズ」が読みたくなります。
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    投稿日:2014.09.26

  • ホットケーキの威力とは?q

    食べものエッセイなのだけど、「舌の上でとろけるように」とか、「ジューシーでさわやかな香りがひろがり」「肉汁のナイアガラやぁ」といったたぐいのものではありません。 虎→バター→ホットケーキを連想させる、かの童話(今は問題があるらいしいあれ)の食欲に及ぼす威力?を語ります。 色々な表現で味を伝えるより、よほど食べたくなります。続きを読む

    投稿日:2014.08.09

ブクログレビュー

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  • コウ

    コウ

     食にまつわるエッセイ本。著者はロシアや東欧諸国に精通している為か、日本人には馴染みのない食物が次々と紹介されており、知的好奇心をかきたてる内容ばかりである。なかでも、「コロンブスのお土産」(p64〜66)は、今後の食糧問題を考えるのに良い。大航海時代、スペイン、ポルトガルはアメリカ大陸へ渡った。その中には、欧州にはない食物も運ばれた。具体的に言うと、トマト、ジャガイモ、トウモロコシが、当時のヨーロッパにとって珍しかった。ところが、食材として普及するのに時間はかかった。トマトは観賞用植物扱いで、ジャガイモに至っては、悪魔の食べ物と見なされた。(ちなみに、フランスでは18世紀末に、ロシアでは19世紀半ば過ぎに受け入れた)このように、食に対する意識、言い換えると、味覚ほど保守的なものはない、という著者の指摘は面白い。これが、飢饉や調理法の工夫から、美味しいとわかると、勢いを増して普及していく。このように、現代人が当たり前のように食べる食材は、実のところ、長い年月を経て受容されていることがわかる。言い換えると、現在では食べようなんて思わない食材(現時点では虫が該当するだろう)、何らかの形で今後食される可能性がある。続きを読む

    投稿日:2024.02.17

  • 司書KODOMOブックリスト(注:「司書になるため勉強中」のアカウントです)

    司書KODOMOブックリスト(注:「司書になるため勉強中」のアカウントです)

    ロシアがメインの食エッセイ。
    「ロシアのヘンテコな缶詰からトルコ蜜飴まで、美味珍味満載!著者初のグルメ・エッセイ集。「ツバキ姫」との異名をとる著者(水分なしでもパサパサのサンドイッチをあっという間に食べられるという特技のために)が、古今東西、おもにロシアのヘンテコな食べ物について薀蓄を傾けるグルメ・エッセイ集。「生きるために食べるのではなく、食べるためにこそ生きる」をモットーに美味珍味を探索する。
    チョウザメのお腹にジッパーをつけ(むろん日本製)、何回もキャビアを取り出すという話、コースとして一品ずつ提供するフランス料理のサービスのシステムは、フランスではなく意外な国から始まったetc…オモシロ薀蓄ネタ、小咄ネタが満載!」
    続きを読む

    投稿日:2023.09.26

  • riccio15

    riccio15

    全編食べ物にまつわるエッセイです。
    時代も国も飛び越えたとても幅広いお話で、でもちゃんと身近に感じられるわかりやすい文章で、なんというか一言で言うと本当に面白かった!
    「今話題の作品!」とか謳われているような若い作家さんの本を読むと変にカッコつけた文章の隙間から「面白いでしょ?!私の文章すごいでしょ?!」っていうアピールが漏れ出てきてるものが多くてうんざりがっかりするものが多いんですが、米原さんの文章はそういう薄っぺらいアピールなんて全く無く(その必要が無い)、本当の知性があふれているし興味深いしめちゃくちゃ面白い。それでいて決して軽くなくて深みのある内容。あーうまく表現できないのがもどかしい。
    早世されたのが本当に残念でなりません。
    続きを読む

    投稿日:2023.08.30

  • ラニモネ

    ラニモネ

    馴染みのない東欧の文化がとても新鮮。単純なグルメの本ではなくて、食べ物やその成り立ちに対しての考察がとても面白く、米原さんとおしゃべりしながらテーブルを囲んでいるような感覚で読める。
    米原さんならではの本。続きを読む

    投稿日:2023.07.29

  • PINKDIAMOND

    PINKDIAMOND

    ずっと気になってたカムチャッカのバザールで食べたお菓子があって、見た目が牛の糞そっくりで、量り売りされてたのですが、見た目に反してすごく不思議な甘い味で何回もリピートした位でした。でも帰国してからは誰に聞いても知らないと言われ、挙句ほんとに牛の糞食べたんじゃないの?とまで言われた謎のお菓子でした。それが、グレーテルのかまどでこの本のハルヴァが紹介されて、これかも!って閃いた時には本当に嬉しくて。米原さんの「あのハルヴァ」への情熱と欲求が我が事のようで。私はまだ牛の糞のようなハルヴァには再会できてないので、諦めずに探し続けようと思います。続きを読む

    投稿日:2023.05.08

  • 及川理仁

    及川理仁

    食いしん坊(食い意地張ってる方)には超オススメの一冊です。
    全く食いしん坊ではない私ですら、楽しく読めたくらいですから、食いしん坊の方が楽しく読めない訳がない❗

    投稿日:2022.12.21

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