【感想】安徳天皇漂海記

宇月原晴明 / 中公文庫
(36件のレビュー)

総合評価:

平均 3.7
10
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5
5
1
  • こんなアクロバティックな歴史の語りが見たことない

    わずか3歳で即位した安徳天皇は、8歳で迎たえた壇ノ浦の戦いで入水するも、神器の力で琥珀に封じられ、30年後、敵方であった将軍であり稀代の歌人源実朝と邂逅します。その後、魂を救済するために海を越えて運ばれて行くのですが、二部にはなんとクビライ・ハーンとマルコ・ポーロが登場、そして元寇にまで至るという壮大で奇想溢れる物語になっています。複雑に入り組んだこの物語。おもしろいのはその語りの構造。例えば、クビライ・ハーンに、中国の琵琶法師が平家物語を唄い、それを通訳がモンゴル語訳するというシーン。翻訳家・書評家の大森望さんが「翻訳というフィルタを通すことで、見慣れたものがまったく別のものとして立ち上がってくる」と言うように、幾重にも織り込まれた語りの構造は、奇想をただの思いつきにせず、小説内で見事な説得力を持たせています。綿密に資料にあたり、絶妙な飛躍をファンタジーとして成し遂げる宇月原の筆力をもっとも味わえる名作!(スタッフI)続きを読む

    投稿日:2013.09.20

  • 哀れ日本と中国の幼帝の運命

    源実朝に仕える人物を通して語られる第一部、場所を中国に変えマルコ・ポーロが語り部となる第二部で構成されたスケールの大きな歴史小説。壇ノ浦の合戦で入水した安徳天皇と元の皇帝・フビライ・ハンに追われた南宋の幼帝が登場する。当時の日本(鎌倉時代)と中国(元の時代)とを相互に絡み合わせてフィクションとして構成しており、発想はユニーク。実朝の詩歌を交えながら、史実として構成された第一部は読みやすかったが、ファンタジー色が強い第二部は骨が折れた。続きを読む

    投稿日:2013.11.09

ブクログレビュー

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  • hosinotuki

    hosinotuki

    かなり史実に基づきながらも怪異譚と混ざり合った形で,二人の幼い皇帝の死を傷んでいる.安徳天皇に対する実朝の関わり方は独創的で,前半の実朝の滅びに向かって静かに歩んでいるかのような態度は,そういうことだったのかと説得力があった.後半のマルコ・ポーロ編は元寇に安徳天皇が絡んでくるなど,驚きの事実?そして,神話の水蛭子の哀しみに思いを馳せて唐突に終わる.かなりユニークで面白かった.続きを読む

    投稿日:2017.11.17

  • itozaki_kei

    itozaki_kei

    亡国、流亡、衰亡、滅亡、興亡、亡者…。読んでいるあいだ、「亡」という文字がずっと頭の隅に引っかかっていた。歴史の中で浮かんでは消える「亡」とはなんなのか、伝奇ものならではの手法でみごとに描いている。お薦め。続きを読む

    投稿日:2016.01.10

  • わかな

    わかな

    歴史小説かと思ったら、まるで違った。前半は語り部が誘導してくれるけど、後半は自分で持てる限りの想像力を駆使して読まなきゃならない。広がりが予想以上ですよ。

    投稿日:2013.12.29

  • tomosankamo

    tomosankamo

    落人伝説のような物語を想像していたが、まったく違った。
    壇ノ浦の後の時代に天子と関わる人々の物語。
    『古事記』『平家物語』『東方見聞録』などの史料がつながり、足跡ができていく。

    関わりは無いように見える物語がつながっていく様子に驚いた。
    第一部と第二部でまったく別の作品にも見えるが、天子を荒ぶる御霊にさせまいと動く物語の軸は一貫している。

    軸となる話が幼い天子の入水なので、物語の雰囲気は静かで哀しい。

    歴史小説ではなく歴史ファンタジー。

    序盤の鎌倉ではゆっくり進む物語に焦れましたが、舞台が移って行くに連れ世界が広がってからは、もう一気に読めちゃう。
    おもしろかった。
    続きを読む

    投稿日:2013.03.29

  • shiki1970

    shiki1970

    幼帝の 御霊包みし 琥珀玉 波間漂い 時を越えゆく


    壇ノ浦の合戦で亡くなった安徳天皇をモチーフにしていたので、山口県に住んでるものとして、興味があって読んでみました。
    面白かったけど幻想小説としては少し地味かもしれません。続きを読む

    投稿日:2012.12.31

  • nonanano15

    nonanano15

    このレビューはネタバレを含みます

    壇ノ浦で入水したはずの安徳天皇が実は・・・、という話はよくあるんだけど、これは琥珀の玉の中で老いもせず生き続けてる、といういきなりなんだかすごい特殊なイメージ。
    山田風太郎とかともまた違う、こゆのなんていうんだろ?歴史ファンタジー?伝奇?
    どこへ連れて行かれるかわからないのが面白くもあり、微妙に不安でもある。
    第二章での南宋の少年皇帝がせつなくてしんみり読んでたら最後の最後は古事記にまでさかのぼってく怒濤の展開。
    不思議な本だった。一度では消化しきれなかったので、もう一度読みたいです。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2012.06.26

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