千夜千冊エディション 源氏と漱石
松岡正剛(著者)
/角川ソフィア文庫
作品情報
平安の『源氏物語』から明治の近代化を経て『夜明け前』に至るまで、日本文学はどのような伝統を引き継ぎ、いかに近代化してきたか。「源氏」という構想の妙を紐解き、古典と近代を繋ぐ、新しい日本文芸史。「源氏」と「漱石」をつないでみたいと思ってきた。「もののあはれ」と「可哀想だた惚れたってことよ」である。途中には右京大夫、西行、後鳥羽院、連歌、芭蕉、西鶴、井月たちがいて、主人公をあからさまにしないスタイルを試みてきた。しかし「漱石」以降、近代文学は主人公を用意して、その「創(きず)」を描くことにした。何かの「夜明け前」だったのか。
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商品情報
- シリーズ
- 千夜千冊エディション
- 著者
- 松岡正剛
- 出版社
- KADOKAWA
- 掲載誌・レーベル
- 角川ソフィア文庫
- 書籍発売日
- 2023.02.24
- Reader Store発売日
- 2023.02.24
- ファイルサイズ
- 4.9MB
- シリーズ情報
- 既刊30巻
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この作品のレビュー
平均 3.0 (2件のレビュー)
-
「千冊千夜」からのアンソロジー。「源氏」は「宿世」と物語構造を融即させており、これがロングストリームとの指摘は同感。また、メタモチーフとして紫のゆかりを述べているのは定説です。正剛さんらしく視野を国外…にも広げて欲しい。「公家のあはれ」とロココの時代精神との関連はどうでしょう。「源氏」を東アジア文学史に位置付けて欲しかった。白居易グルーブがムーブメントを起こした詩と散文を一体とする文芸活動は、わが国文芸に刺激を与えています。ここを論じて欲しい。結局、研究者たちの論をコラージュして、本居宣長に着地する。これは自らの思う解釈へと導く編集手法の所産であり、編集工学ですね。続きを読む
投稿日:2023.03.26
第1章は源氏物語。
・紫式部の家が盛んだった祖父の代、天皇親政の時代がモデルになっている。
・光源氏の本名は語られていない。
・「うた」と「もの」による物語。「もののけ」から「もののあわれ」につながる…部分はよく判らない。
・罪と愛がもののあわれ=いろごのみを発動させるという論。
まあ、広大な屋敷の東西南北に4人の女性を同居させるなんて理解し難いよ。
第2章。
「とはずがたり」。前半の華麗な男性遍歴。後半は厳島、土佐、讃岐、鎌倉、浅草まで足を運ぶ歌と仏道の道。確かに源氏物語と女西行という人生。この女性の自分語りを古文で教えたら古典嫌いも減るのでは。
「連歌」。丸谷才一さんのエッセイにも連歌を巻いていたなあ。正直、理解は覚えつかない。
「其角」。芭蕉の弟子として名前しか知らなかった。
第3章。
漱石「草枕」。若い頃に読んで、判ったような判らないような感想を持った。
近代の数寄の遁世、韜晦趣味と語られる。
こうした境地は漢文が齎したものらしい。草枕の中に詩作を葛湯に例えている部分があるという。初めはさらさらにして手応えがないが、粘りが出てきて、仕舞いには葛が先方から箸に付着してくる。
漱石の漢文の本は読んだが、全然わかっていなかった。草枕を読み直そうかな。
「幸田露伴」。ヨーロッパを必要としなかった最後の日本人とセイゴオさんは評する。娘の文さんの「おとうと」では、息子を溺愛する無力な父親にしか見えないんだが。露伴も読んでいない。
島崎藤村「夜明け前」。明治維新の王政復古の宣言を信じ、裏切られた父親を描く。そういう物語であることは知っていた。藤村は姪との不倫をまんま私小説にしたと近年、批判されていたこともあり、手を出す気にならなかったのだが。
篠田一士曰く、20世紀の10代小説のひとつ。読みかどうかは判らないけれど、覚えておこう。続きを読む投稿日:2023.04.02
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