完全ドキュメント 北九州監禁連続殺人事件
小野一光(著)
/文春e-book
作品情報
福岡県北九州市で7人が惨殺された凶悪事件が発覚したのは、
2002年3月のことだった。逮捕されたのは、松永太と内縁の妻・緒方純子。
2人が逮捕された2日後に現場入りを果たして以来、
20年間にわたってこの“最凶事件”を追い続けてきた事件ノンフィクションの
第一人者が徹底的に描く、「地獄の連鎖」全真相。
【著者略歴】
小野一光(おの・いっこう)
1966年、福岡県北九州市生まれ。雑誌編集者、雑誌記者を経てフリーに。
「戦場から風俗まで」をテーマに、国際紛争、殺人事件、
風俗嬢インタビューなどを中心とした取材を行う。
著書に『風俗ライター、戦場へ行く』『連続殺人犯』『震災風俗嬢』
『新版 家族喰いーー尼崎連続変死事件の真相』『冷酷 座間9人殺害事件』
『昭和の凶悪殺人事件』など。
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商品情報
- シリーズ
- 完全ドキュメント 北九州監禁連続殺人事件
- 著者
- 小野一光
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- 文藝春秋
- 掲載誌・レーベル
- 文春e-book
- 書籍発売日
- 2023.02.08
- Reader Store発売日
- 2023.02.08
- ファイルサイズ
- 1.7MB
- ページ数
- 576ページ
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この作品のレビュー
平均 4.3 (18件のレビュー)
-
分断工作と通電の繰り返し
ただ起きた事実だけを、一切の修飾も効果もなしに、淡々と綴るだけで怖気が止まらなくなる事件がある。
本書はそんな事件を扱っている。
読後もしはらくは頭から離れずにいる。
読まなければ良かったと思わ…なくもないが、同時に読まなければ知ることのできないものでもあった。
事件の最初の一報段階から、多くの人はこれが単なる監禁事件に留まらない底深さがあることは知っていた。
警察発表に先行する形で、テレビや新聞・雑誌でさかんに報道されていたからだ。
「完全ドキュメント」を謳う本書は、そんな経過をこと細かく再現している。
時々の会見のレポや検察調書などが延々と綴られるため、本の分厚さはそれが原因なのかと訝む。
しかし事件発覚から第一審の判決が下る第2章までの、全体の1/3が終わって、その次の第3章が始まると、それまでがほんの序の口に過ぎなかったのだと悟る。
事件発覚から何しろ20年以上も経過しているし、その後の報道もこまめには追っていなかった。
本書を読んで反社会的サイコパスをどう社会が扱うかといった問題や、ハンナ・アーレントの「凡庸な悪」について改めて考えさせられた。
しかしまずは、次の4つの漠然とした思い込みから。
1)監禁致傷による逮捕から連続殺人までの裏付けは芋づる式に立証できた?
否。
元担当検事がしみじみと述懐している通り、「死体なき殺人」捜査の難しさを嫌というほど味あわされている。
死体が残された殺人事件であれば、DNAなど法医学的な検査が可能なのだが、「死体なき殺人事件」では、どうしても証言頼みとなるため、言い逃れの余地が生じてしまうのだ。
松永が撮影した無数の写真など、物証はかなりあるにはあるが、それ単体ではいずれも決め手に欠けた。
例えば被害者の腕や四肢に残る多数の痕を、検察は痒疹だと判定し多臓器不全の兆候を示していたと見るが、それは松永から少女が噛んだからだとか、ペンチで摘んだからなどと主張されれば、死因の決定的な証拠として扱えなくなってくる。
遺体が見つからないこと、解体時の遺留物の痕跡さえ見つからないこと。
決定的な物的証拠がないことで、殺人を立証することが極めて困難となった。
それでは証言があれば事足りるかと言えばそうでもない。
刑事訴訟法上は、有罪を認定する証拠が被告本人の自白のみである場合は、有罪にすることはできないと定められているからだ。
しかも松永・緒方とも完黙を続けたため、検察も殺人で立件可能なのか危ぶむほど及び腰になっていた。
松永は雑談には応じるが、緒方は自分が誰かを含め一切なにも口にしなかった。
突破口になったのは、逃げ出せた少女の証言だった。
しかも彼女は抜群の記憶力の持ち主で、川に捨てた包丁に刻印された文字まで描き出し、捜査陣を驚嘆させている。
しかし序盤の捜査が、少女の証言頼みだったため、不都合も起きた。
新聞に少女の父親の実名が出てしまい、それでひどく動揺したのだ。
慌てて警察は「未成年だし、信頼関係にヒビが入る」と報道の自粛を要請するが、マスコミは「殺人事件の被害者を匿名にできるか」と反発する事態に。
しかしとまれ、初動において少女の『お父さんが殺された』という証言がなかったら、単なる監禁事件で終わっていた可能性は極めて高い。
少女が捜査員に『とにかく部屋を見てほしい』と激しく訴えるシーンが印象的だ。
捜査員が家宅捜索で片野マンションの部屋に初めて足を踏み入れた時、文字どおり凍りつき、「生まれて初めて霊感のようなものを感じた」とその後に回想しているほどだ。
「部屋に入った途端、その光景に捜査員みんなが愕然とした。背筋がゾクッとするといった表現では足りない恐ろしさだった。そこでまず感じたのは、明らかに人間の血の臭い。部屋は真っ暗で、トイレから風呂場から部屋にあるドアというドアすべてに七、八個の南京錠がかけてあって、まさに異様な光景だった。部屋の片隅には商売ができるほどの量の消臭剤が積まれており、明らかに血の臭いを消すためだと、誰もが直感した」
慌てて所轄署に捜査本部が立てられることになったが、遺体もないのに殺人事件を想定して捜査本部が設置されるのは極めて異例だった。
そういう意味では警察の初動は早く、捜査員の「やれるだけのことはやろう」という意気込みは強かった。続きを読む投稿日:2024.07.26
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過去この事件についての本は数多く見てきたが、何度読んでもむごすぎる。この本で新たに知った事実も多々あり、衝撃的でした。
投稿日:2024.05.22
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