紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている 再生・日本製紙石巻工場
佐々 涼子(著)
/ハヤカワ文庫NF
作品情報
「この工場が死んだら、日本の出版は終わる・・・・・・」絶望的状況から、奇跡の復興を果たした職人たちの知られざる闘い「8号(出版用紙を製造する巨大マシン)が止まるときは、この国の出版が倒れる時です」――2011年3月11日、宮城県石巻市の日本製紙石巻工場は津波に呑みこまれ、完全に機能停止した。製紙工場には「何があっても絶対に紙を供給し続ける」という出版社との約束がある。しかし状況は、従業員の誰もが「工場は死んだ」と口にするほど絶望的だった。にもかかわらず、工場長は半年での復興を宣言。その日から、従業員たちの闘いが始まった。食料を入手するのも容易ではなく、電気もガスも水道も復旧していない状態での作業は、困難を極めた。東京の本社営業部と石巻工場の間の意見の対立さえ生まれた。だが、従業員はみな、工場のため、石巻のため、そして、出版社と本を待つ読者のために力を尽くした。震災の絶望から、工場の復興までを徹底取材した傑作ノンフィクションが待望の電子書籍化! 解説/池上彰
もっとみる
商品情報
- 著者
- 佐々 涼子
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- 早川書房
- 掲載誌・レーベル
- ハヤカワ文庫NF
- 書籍発売日
- 2017.02.15
- Reader Store発売日
- 2020.03.05
- ファイルサイズ
- 7.7MB
- ページ数
- 320ページ
以下の製品には非対応です
この作品のレビュー
平均 4.4 (52件のレビュー)
-
私は日本製紙の煙突の白煙が長いこと好きではありませんでした
東日本大震災で3700人を超える最も多くの犠牲者を出した宮城県石巻市、市内北東部のリアス式海岸沿岸は壊滅し津波は北上川を遡上し5km上流の大川小では児童74人が犠牲になっている。地図を見ているといくら…川があるといっても東側にはいくつもの山が連なりこの山を越えて津波が襲うと言うのは知らなければ想像しがたい。日本製紙石巻工場があるのは南浜地区という牡鹿半島に守られた石巻湾に面しており、石巻市の中心部に近く、低い建物しかない石巻では日本製紙の巨大な煙突と吐き出される白煙がランドマークになっていた。
従業員のインタビューからは地震直後誰もが津波を心配していたという様子はない。例えば原動課長は津波よりも高温のタービンが急に止まると自重でたわんで歪んでしまうことを心配していた。それでも他の課が全て避難したため逃げることにしたのだがこれが地震発生30分後のことで、さらに30分後には津波が工場を襲った。工場のすぐ前には高さ60mの日和山があるが工場敷地は1km四方ほどもあり、もう少し津波の到着が早ければこの工場だけでもどれだけ被害が出ていたことか。
日本製紙石巻工場の震災前の生産量は年間約100万tなかでもN6という最新式のマシンは1日の生産量が1000tを超える世界最大級の設備であり、小さな製紙工場に匹敵する。このマシンの投資額は約630億円で、東京スカイツリーの総工費役650億円に匹敵する。石巻工場だけで日本製紙の洋紙国内販売量の1/4を供給していた。また、最初に復帰することに決まった8号機は雑誌や単行本やマンガなどに使われる出版用紙を作っていた。8号が動かなければ日本の出版業への影響が大きい。
工場長の倉田は震災直後から会社は石巻工場を見捨てないと信じてまず1台を動かす、期限は半年と宣言する。工場は津波が運んだがれきで埋まり、近隣から運ばれた家屋の2階部分が18棟、自動車が約500台そして後に工場内で41名の遺体が見つかっている。石巻工場がおかしくなれば日本製紙もおかしくなる。半年での復興は無茶な注文でもあり、従業員にとっての希望の光でもあったようだ。3月26日に工場入りした社長の芳賀も同じ思いで「これから日本製紙が全力をあげて石巻工場を立て直す!」と宣言した。「金の心配はするな。銀行と話はつけてきた」最終的には日本製紙の被害額は東京電力に次ぐ1000億円にのぼっている。
苦労の末半年後に8号機が震災1年後の3月9日にN6が立ち上がったがこの本が書いているのはプロジェクトXの話ではない。日本製紙の復興は一つのシンボルだが、目の前を流されていくのを助けられなかった人への思いや工場内に津波で運ばれ水が引くまで車中で我慢して佐藤達に助けられた女性の話。自粛ムードの中でも野球部を応援した会社と復活した野球部を応援した石巻の人達など様々なサイドストーリーがある。
工場外に流出した巻取(紙のロール)を回収に行った職員がついでにがれきを片付けると話に尾ひれがつき「日本製紙に頼めば瓦礫処理までしてくれる」とうわさがひろまった。ある工場では巻取1つのために会社はホイールローダー、4トン車、クレーン付きトラック、ゴミ収集車を手配し20台以上重なったトラックや乗用車を片付けた。それでも「あんたのところの製品さえ入ってこなければ、うちは壊れなかったんだ!」と非難の電話を受けることもあった。
ボイラーに火が入った翌日の市民からのメールがある「私は日本製紙の煙突の白煙が長いこと好きではありませんでした。でも震災が起きて、煙突から煙が出ないのを見て、さびしく思っていました。今日、煙突から白い煙が上がるのを見て、とても勇気づけられました。私たちも負けずに頑張ろうと思います」工場の復旧は従業員のためだけではなく、石巻市民にとっても復興の希望の光のひとつになった。続きを読む投稿日:2020.03.18
-
このレビューはネタバレを含みます
3.11で崩れかけた出版業界を人知れず救っていた日本製紙石巻工場、その再生のお話。フィクションであってほしいと願わずにいられない紛れもない現実に立ち向かった社員たちのノンフィクション。確かに本書を読む…までは普段当たり前に読んでいる本の著者や出版社、編集者までは遡っても、その紙がどこで、誰が、どのように、何を材料に作っているかまでは考えたことがなかった。この事実を知るだけでもこの本を読む価値はある。感情ごちゃ混ぜで色々と思うところはあっても、1人の読者という立ち位置から言えるのは「ありがとう」の言葉だけだ。続きを読む
レビューの続きを読む投稿日:2023.01.17
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。