「自分の子どもが殺されても同じことが言えるのか」と叫ぶ人に訊きたい
森達也(著)
/ダイヤモンド社
この作品のレビュー
平均 3.9 (45件のレビュー)
-
評価はパス
一番目に強調する。森達也は注目しているドキュメンタリー作家である。下山事件、放送禁止歌は非常に興味深く読んだ。未だ心の準備が出来ないが、代表作であるAシリーズも是非読みたいとは思っている。
二番目に強…調する。社会は、いかなる意見も封殺してはならないと信じている。それは、社会にとって批判意見は全体として見れば有益と思うからである。ヘーゲル的弁証論に即して言えば、ジンテーゼに至るにはアンチテーゼの存在が不可欠だからとか、全員賛成の多数決は全員が誤っている危険を検知できないからでもあるが、そんな理屈を言うまでもなく、そもそも意見は全く以て自由である。
三番目に強調する。私のように匿名でなければ言いたいことも言えない人間と違い公然と意見を表明している人々は、真に尊敬に価すると思う。
そのうえで、敢えて言う。本書は勧めない(興味深いテーマもあるにはあるが・・・)。大手出版社刊行なので、興味のある人は立ち読みしてから購入することをお勧めする(電子書籍は古本屋に売れないので)。
勧めない理由を一言で言えば、主張に納得性の乏しいことが多かったからである。例を2点示そう。
【死刑制度について論じた部分】
・そもそも社会の多くは死刑に賛成しているのではなく容認していると思う。無くて済むなら結構だと思う。しかし、一命を以て始末をつけるという武士道を精神的規範としたわが国では、死刑を最高刑の位置に置くのは納得性が高いし、廃止するまでに社会は成熟していないと思う。
・諸外国との制度比較については、参考にするとしても廃止の論拠には不適切だと思う。憲法の議論は最終的には、我々がどのような憲法を持つ国に住みたいと考えるか?が最重要である。同じく、死刑制度も我々の問題であって、外国がどのような制度であるかは決定的な意味を持たないと思う。そもそも死刑制度を廃止している国と比較自体が難しい。例えば、多くの死刑制度を廃止した先進国では、テロ事件等の凶悪事件が発生した場合、実行犯の逮捕より鎮圧が優先されるようだ。つまり、取り調べは勿論、裁判にすらかけないで刑を執行していると私には見える。
・廃止後の犯罪率の予想も語られているが、統計調査の経験も多少ある私としては、他人の調査を信じない。誰がどんなパネルで、そんな質問票で、どんな分析をしたか分からないが、調査依頼主の望む結論に応じて如何ようにでもする。それが腕のいい統計屋というものだ。私も過去、某行政施策は大成功!というグラフを・・・(泣笑)。
・冤罪については被害者に本心から同情する。また、そのような事を行った人々に底知れない恐怖を覚える。その点は作者と同じだが、作者は制度と制度の運用を同列に論じようとしている。それは別に議論すべき事だと思う。また、執行方法の不確実性、残酷性を指摘しているが、昔、逆説的に生を鼓舞する趣旨で書かれた「完全自殺マニュアル」によれば、現行方式が医学的には推奨されるようだ。
・執行現場を見た検察官の意見は個人の感想に過ぎないと思う。命は終わるまで続くもので、途中で止めるからこそ、それがどのような生き物であれ苦しいだろう。私も恐らく某検察官同様、確実に正視に堪えられない。それは屠畜でも同じで、社会としてその困難を専門職の方にお願いするしかないのだ。誠に心苦しい限りである。つまり、執行官のように末端で一番苦しい人を思うと、エリート法曹家の感傷は私の心には響かないのである。
【イルカ漁について論じた部分】
マスメディアが取り上げない社会の片隅、あるいは、少数派、反対側に光を当てるのが作者の特徴だと思う。そして、イルカ漁を妨害した外国人活動家の態度が堂々として見えたというのも個人の感想として自由だ。でも、この場合、弱者はどう見ても漁師さん達だと思う。
あくまで想像だが、イルカ漁の漁師達はガソリンが値上がりする中、ボロ船を一生懸命手入れしながら、採算ギリギリを覚悟で船を出すのだろう。細々とした水揚げにため息を漏らし、古びた木造の家に帰り、ビールか酎ハイを飲みながらプロ野球をTVで観るのが何より楽しみ・・・。そして、多くは海外旅行だって一生に数回、何かの記念に一大イベントのように出かける程度、そんな人たちを想像する。
そんな漁師たちからすれば、イルカのために、わざわざ日本まで海外旅行し、船をチャーターし、自分たちの前に立ち塞がるなどということは、まるでエイリアンの所業に見えたのではないだろうか?どんなお貴族様だ?と。
海獣類は北洋で海産物に対する脅威として捕獲されているそうだ。NDLの調査部の資料で知った。僭越な私見で恐縮の限りだが、イルカ漁は魔女狩りにあっているいるのではないだろうか?
このコメントを書くか半年悩んだ。筆の過ぎた点は伏してご寛恕賜りたい。続きを読む投稿日:2015.05.30
-
面白かった。被害者の人権。仮想敵と共同体の暴走。薄気味悪い善意。普段深く考えないことをゆっくり考える機会になった生きていくための思考の本。
投稿日:2022.07.08
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。