教育格差 ──階層・地域・学歴
松岡亮二(著)
/ちくま新書
作品情報
出身家庭と地域という本人にはどうしようもない初期条件によって子供の最終学歴は異なり、それは収入・職業・健康など様々な格差の基盤となる。つまり日本は、「生まれ」で人生の選択肢・可能性が大きく制限される「緩やかな身分社会」なのだ。本書は、戦後から現在までの動向、就学前〜高校までの各教育段階、国際比較と、教育格差の実態を圧倒的なデータ量で検証。その上で、すべての人が自分の可能性を活かせる社会をつくるために、採るべき現実的な対策を提案する。
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商品情報
- シリーズ
- 教育格差 ──階層・地域・学歴
- 著者
- 松岡亮二
- 出版社
- 筑摩書房
- 掲載誌・レーベル
- ちくま新書
- 書籍発売日
- 2019.07.10
- Reader Store発売日
- 2019.07.26
- ファイルサイズ
- 27.1MB
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この作品のレビュー
平均 3.8 (66件のレビュー)
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データの紹介本
メディア掲載の書評を見ていて購入。
タイトル通りの本なのだが、大部分がデータ(数値)の紹介とその読み方についての記述に費やされている。「それを踏まえた上で」の話は1/4程度。
「データが見たい」人…にはいいが、「それを踏まえた上で」が知りたい人には肩透かしになる。
後日、学生向けの解説本を出すそうなので、そちらを待つのも手。続きを読む投稿日:2020.01.25
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ふつうの話は同じではない
ふつうに育ってくれれば良いと親は言う、しかしそのふつうは例えば住むところによっても大きく違う。例えば通勤時間、家賃、教育環境などで住む所を選ぶと階層が似た人たちが集まって来てそこには町の文化が立ち上が…る。例えばこの街では中2から塾に通うのがふつうと言ったように。それぞれの家庭や地域や学校での教育格差はどうやら小学校に入る前には現れ、ずっと持続しているのが日本の社会だ。日本が特殊と言うことでもなくOECDの報告書からは、どこの国も「生まれ」によって学歴達成格差のある緩やかな身分社会であり、学歴によって社会経済的便益が異なる学歴社会なのだ。少なくとも国際比較が可能なデータでは、日本の15歳の能力は高い。しかし格差という見方をすると平均的だ。教育界で礼賛されることが多いフィンランドを含めどのような社会であっても格差を埋めることは難しい。教育業背だけではなく、税の再配分を含めてどれだけ平等主義的にしても、SESによって15歳時点の学力格差が明確に存在するのだ。
日本では親の学歴と世帯収入は大きく重なり、本書では親の学歴を大卒0、1、2人の3階層に分けて格差の実態をこれでもかと並べている。この元になるのがSES、社会経済的地位という考え方だ。世帯収入だけでなく、経済的、文化的、社会的要素を統合した地位を意味する。似通ったSESの階層では親の子供に対する働きかけ方が似てくる。そして格差は小学校入学前にすでにあらわれ、そのまま維持され、高校では偏差値によって固定化されている。
SES階層の違いによって様々な行動で違いが見られる。親子の大学進学希望率、私立校への進学、1日あたりの学習時間、メディア消費時間、蔵書数、学校活動への参加、親から子への関与の度合い、習いごとの数や塾に通う時期などなど、明確な相関関係が見られるのだ。全国共通の教育指導要領と義務教育は格差を縮める方向に働くが例えば夏休みにはその差が開く。継続して学習する環境があるかどうかと言って良いのかもしれないがどちらも普通の生活を送っている。
私たちにとってはごく当たり前の高校ランキング制度は世界的にかなり特殊だ。義務教育段階で「生まれ」による学力格差を埋めないままの「能力」選別は、SESによる分離(隔離)を制度として行なっていることになるのだ。高校受験に失敗しても大学受験で敗者復活する者もいるが、その生まれは高階層出身者に大きく偏っていた。そして低ランクの高校教師は達成感の無さのためか生徒に期待していない。生徒は諦められている。
これまでの様々な改革と言われるものはこういった現実を見ないものだった。例えばよく言われる大学無償化をしたところでSESごとの元々の格差は埋まらない。経済力だけが大学進学の格差の理由ではないからだ。学校群制度は高校による能力選別の解消を目指したものだったが高学力、高SESの生徒は私学に流れた。結果として同じ学内にロールモデルがあれば高ランクの大学を目指していたかも知れない生徒から機会を奪うことになってしまう。
基本的には「平等」に軸を置いて「公平」をめざす介入か、個人の「自由」による「優秀さ・効率」の追求かという価値の相克に話が戻る。1つの価値軸を重視することは誰かの血が流れることを意味し、同じ扱いでは結果が出ず、選抜という現実があり、データによる現状把握をすると「自己責任」の名の下に格差が拡大する姿があらわになる。
ではどうするか、まずは現状をデータで把握すること、そして教職課程に教育格差のカリキュラムを入れること。少しでもましな対策を取るためには改革の効果を測定しないとできない。続きを読む投稿日:2019.11.18
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