ガザに地下鉄が走る日
岡真理(著)
/みすず書房
作品情報
イスラエル建国とパレスチナ人の難民化から70年。高い分離壁に囲まれたパレスチナ・ガザ地区は「現代の強制収容所」と言われる。そこで生きるとは、いかなることだろうか。ガザが完全封鎖されてから10年以上が経つ。移動の自由はなく、物資は制限され、ミサイルが日常的に撃ち込まれ、数年おきに大規模な破壊と集団殺戮が繰り返される。そこで行なわれていることは、難民から、人間性をも剥奪しようとする暴力だ。占領と戦うとは、この人間性の破壊、生きながらの死と戦うことだ。人間らしく生きる可能性をことごとく圧殺する暴力のなかで人間らしく生きること、それがパレスチナ人の根源的な抵抗となる。それを教えてくれたのが、パレスチナの人びとだった。著者がパレスチナと関わりつづけて40年、絶望的な状況でなお人間的に生きる人びととの出会いを伝える。ガザに地下鉄が走る日まで、その日が少しでも早く訪れるように、私たちがすることは何だろうかと。
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商品情報
- シリーズ
- ガザに地下鉄が走る日
- 著者
- 岡真理
- 出版社
- みすず書房
- 書籍発売日
- 2018.11.16
- Reader Store発売日
- 2018.12.07
- ファイルサイズ
- 0.5MB
- ページ数
- 312ページ
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この作品のレビュー
平均 4.8 (15件のレビュー)
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衝撃の光景が、目の前に。
とても辛い、でも直視せざるをえないと思わせる、強力な経験でした。
パレスチナ人が経験している筆舌に尽くし難いことを、筆に表していただいたことに感謝しています。そして、著者の思いがこの地上に広がること…を、切に願っています。
私の小さな慰めは、この本の著者が、日本という国で、指定国立大学法人に属しておられることです。。。続きを読む投稿日:2019.06.02
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あらすじ(みすず書房より)イスラエル建国とパレスチナ人の難民化から70年。高い分離壁に囲まれたパレスチナ・ガザ地区は「現代の強制収容所」と言われる。そこで生きるとは、いかなることだろうか。
ガザが完全…封鎖されてから10年以上が経つ。移動の自由はなく、物資は制限され、ミサイルが日常的に撃ち込まれ、数年おきに大規模な破壊と集団殺戮が繰り返される。そこで行なわれていることは、難民から、人間性をも剥奪しようとする暴力だ。
占領と戦うとは、この人間性の破壊、生きながらの死と戦うことだ。人間らしく生きる可能性をことごとく圧殺する暴力のなかで人間らしく生きること、それがパレスチナ人の根源的な抵抗となる。
それを教えてくれたのが、パレスチナの人びとだった。著者がパレスチナと関わりつづけて40年、絶望的な状況でなお人間的に生きる人びととの出会いを伝える。ガザに地下鉄が走る日まで、その日が少しでも早く訪れるように、私たちがすることは何だろうかと。(https://www.msz.co.jp/book/detail/08747/)
土地を追われ、閉じ込められ、ただそこで生きようとする人々に対して繰り返される暴力のあまりの残虐さに言葉を失う。人間は「人間ではない」とみなした人間に対してここまで残酷になれるのか。
人間は一歩一歩、少しずつでも世界をより良くしてきたと信じたかったが、パレスチナの人々が国際社会において「ノーマン」とされ続ける限り、イスラエルの暴虐が放置されている限り、決してそう思うことはできない。これまで無知だった自分が情けない。
パレスチナの人々が人間らしく生きることを許さない、じわじわと首を絞めるような占領下の生活、繰り返される殺戮と破壊、そんな中でも生き続ける人々に心を動かされるが、もしこの方達と言葉を交わすことがあったら私は何と言えばいいのかわからない。不自由なく日本で暮らす私にどんな言葉がかけられようか。
著者の岡真里さんが実際に言葉を交わした、志高き若い人々が数年後に命を奪われる、そんな当たり前のように訪れる死、気持ちの持っていきようがない。イスラエルは、生きようという、戦おうという人々を一人一人潰せば一掃できるとでも思っているのだろうか。これまでの歴史を振り返っても、必ずその人の意志を継ぐ者が現れるのに。国際社会全体の無関心により、あまりに遅いけれど、変化は必ず訪れる。
あとがきでも「いかなる不正義も永久に続くということはありません」と締めくくられていた。確かにそうだし、そう信じたいが、今現在おぞましい殺戮が発生していることを思うと希望を失ってしまいそうになる。またしても最悪を更新してしまった今回こそは占領を、全てを終わらせないと。停戦だけでは生き地獄に戻るだけ。起こってしまったこの最悪を最後にしなければ。
以下、印象に残った部分
いま、この世界にあって、国を持たないということはノーマン、すなわち何者でもない者、人間ならざる者であることを意味する。国を持たざる難民とはノーマンなのだ。国民国家の空隙に落ち込んだノーマン。彼らは人権とも、彼らを守る法とも無縁だ。「法」も「人権」も、それは「人間」、すなわち「国民」の特権なのだということ。国民でない者は「人間」ではない、それが、普遍的人権を謳うこの世界が遂行的に表明している紛うことなき事実であり、その事実がー彼らが「国民」ではないために「人間」ではないという事実、それゆえに人権や人間を護るべき法の埒外の存在であるという事実がー露わになるのが、ここノーマンズランドだ。(p.17)
離散状態のなか、いまだ過去の暴力の傷口が癒えてもいないのに、新たな暴力が上書きされてゆく。一九四八年のナクバ、そのとき、自分たちの村で何が起きたのか、その始原の暴力の記憶を掘り起こし、共同体の集団的記憶として言説化する余裕など、今日を生きていくことに必死の彼女たちにあろうはずもなかった。(p.55)
歴史の事実が私たちに教えるのは、パペが書いているように、人間とは「非人間化」の暴力の犠牲者であろうとなかろうと、「他者を非人間化することを教え込むことができる」、ということなのだから。(p.58)
本来、ペンの力によって伝えなければならないのは、自爆を選ばせるまでに若者たちを絶望の淵に追い詰める「占領」とはいったいいかなる暴力なのか、といいうことであるはずだ。(中略)中東で起きることは、すべてイスラームという信仰、イスラームという文化ー我々とは本質的に異質な文化ーに還元されてしまうと、サイードが『イスラーム報道』で批判している。まさにそのとおりの「カヴァリング・イスラーム」だ。(p.65)
イスラエルの犯した戦争犯罪がこれまでひとたびも正しく裁かれなかったという、国際社会におけるこのイスラエル不処罰の「伝統」が、パレスチナ人に対してイスラエルが繰り返し戦争犯罪を行使することを可能にしている。サブラー・シャティーラ、ジェニーン、ガザ、繰り返される虐殺……、パレスチナ人がどのような戦争犯罪、不正を被ろうと、国際社会は寛大にも、つねにその犯罪を看過し、責任者を処罰しないことで、世界に向けてメタメッセージを発してきたのだと言える、パレスチナ人などとるに足らない存在であると。彼らは我々と等価な存在ではない、ノーマンであると。ラジ・スラーニは言う、私たちは人間として尊厳をもって生きる機会が欲しい、これは不当な要求だろうか、と。(p.129)
占領という「人間を破壊する」怪物と闘うパレスチナ人にとって真の敗北とは、自らが怪物と化してしまうこと、敵の似姿となってしまうことだ。たとえ政治的に勝利したとしても、軍事的に勝利したとしても、「人間であること」を手放してしまったら、それこそが人間にとっての真の敗北となる。だから彼らは人間であり続けようとする。人間の側に留まり続けようとする。サリ・ハナフィが言う「スペィシオサイド」、パレスチナ人がパレスチナで人間らしく生きる可能性をことごとく圧殺する暴力のなかで、人間らしく生きること、それが占領下のパレスチナ人の根源的な抵抗となる。(p.227)
ガザの歴史をざっと概観しただけでも、パレスチナ人がその難民的生の経験を通して、国連の援助でかろうじて命をつなぐ「難民」から、占領と闘う抵抗者、自らの権利を訴え、故郷への帰還と主権国家の樹立を求めて闘う政治的主体、自分たちの社会を自分たちで統べる市民へと変貌していったことが分かる。(中略)継続する完全封鎖と繰り返される攻撃が目論むのは、このパレスチナ人を、今日を生き延びることに汲々として、国際社会の恩情がなければ生きていけない、テント暮らしの「難民」に再び鋳直すことにほかならない。ポリティサイド、政治的主体性の抹殺である。(p.251)続きを読む投稿日:2024.01.10
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