天才たちの日課
メイソン・カリー(著)
,金原瑞人(訳)
,石田文子(訳)
/フィルムアート社
作品情報
偉人たちも、いや偉人たちこそ、最高の仕事をするために、毎日どう時間をやりくりし、どう過ごせば創造性や生産性を高められるかを悩んでいました。彼らはどう解決していたのでしょうか。そのヒミツは日常のごく平凡な小さな積み重ねにあったのです!
本書では、古今東西の小説家、詩人、芸術家、哲学者、研究者、作曲家、映画監督など161人の天才たちの、これまで見過ごされてきた「仕事の周辺」に注目。起床時間、就寝時間といった毎日のスケジュール、部屋での様子や生活信条、仕事の際のクセやこだわり、嗜好品をまとめることで見えてきた、知られざる素顔や意外な事実は、驚きとともに、創造的な活動を続けるための秘訣に値する手がかりが満載でした。
◆ハイスミスは動物好きで、特に猫とカタツムリに強い愛着を感じ、100匹のカタツムリを夜のお伴にしていた!
◆ヘミングウェイは自分をごまかさないため、毎日書いた語数を記録していた!
◆マルクスは人生で一度も定職につかず、金銭管理能力がなかった!
かつてイチロー選手が朝食に決まってカレーを食べていたり、スティーブ・ジョブズが黒いタートルネックしか着なかったことなども、ある行為を習慣化させることで日常生活でのストレスを徹底して避けるための策であったと言われています。彼らは限られた資源である時間や意志、自制心などを有効活用するための仕組みを常に意識し、実行していたのでしょう。
どんなに偉大な作家でも、孤独との戦いがあり、苦しい閉塞状態やスランプを抱えながら机に向かわなくてはいけないのは今も昔も変わらないこと。先人たちの成し遂げてきた仕事と歴史に思いを馳せることで、そっと背中を押されたような勇気が溢れてくるはず。好奇心と向上心をくすぐる、発見に満ちた一冊です!
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この作品のレビュー
平均 3.4 (82件のレビュー)
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最高の仕事をするために、毎日どう時間をやりくりしていたのか
同時代の天才を含む古今東西の偉人たちが「最高の仕事をするために、毎日どう時間をやりくりしていたのか」を調べた本。
古今東西と書いたが、かなり片寄りがあり、アジア人は村上春樹のみで、意外にもジョブズは…出てこない。
分野は作家が圧倒的に多く、次いで音楽家と画家の順で、学者や起業家は少ない。
1人当たりの紹介の分量もまちまちで、中には1パラグラフのみという気の毒な偉人もいる。
取り上げる順番に脈絡はなく、あとがきにある矛盾や誤記(テオをゴッホの兄と紹介)を含め、とてもブログを「高い水準」の本に仕上げたとは思えない。
意外だったのは、不規則な生活は送らず、毎日決まったスケジュールという天才が多いこと。
決まった日課を守るのは、仕事に集中するためでもあり、集中力を維持するため、物音を立てるのを禁じたり、図書館通いやタバコ・コーヒーが手放せなかったりと、神経症的な一面も。
怠惰なところを戒める強迫観念や、決まったスケジュールを守ることが毎日の創造的なリズムを作るという信仰も垣間見える。
天才たちの家族は大変で、家事はからきしダメ、妻は「家政婦」扱い、物思いに耽ると邪魔せず待機など、周りの者はみな、彼らの創作の犠牲になっているんだなと同情を覚えた。
食事はかわいそうになるくらい質素でしかも毎日、毎年、同じ物で、まるで「病人食」。
独特の変わったやり方を手の込んだ儀式のように繰り返す奇行も目立つ。
総じて、早朝もしくは午前中に仕事をする偉人が多く、インスピレーションを得るために散歩が励行されている。
創造的なインスピレーションにとりつかれたときは、休むことなく働くため、規則正しい習慣も必要な時期と必要でない時期があるということか。習慣に縛られるのは身体で、精神までは縛られず、むしろそれによって解放されるということなのだろう。 続きを読む投稿日:2018.12.10
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作家、芸術家、音楽家など、創作活動を仕事にしている著名人たちの"日常"を、彼/彼女らのデイリールーティンから覗いてみる小伝風ノンフィクション。
朝方の人、夜型の人、専業の人、兼業の人など、ライフス…タイルはさまざま。規則正しい生活を保つためだけに別の仕事を続けている人もいたりする。
夜型の人はやはり不眠や薬物依存に悩んでいることが多く、画家のフランシス・ベーコンが入眠時に古い料理本をくり返し読んでたというのは、心を穏やかにする方法として共感できるし、作風とのギャップで余計に切ない感じがした。「数学者はコーヒーを定理に変える機械だ」と言ったポール・エルデシュのように開き直る人もいたけど。
ボーヴォワールとサルトルのようなパートナー関係にも注目せずにいられない。直近で読んだ『龍彦親王航海記』から、やはり澁澤と矢川澄子のことを連想してしまう。自分と同じく作曲家だった妻の仕事をやめさせたグスタフ・マーラーや、ともに作家志望の夫と「片方がフルタイムの仕事に就いて生活費を稼ぎ、片方は創作に専念する生活を一年ごとに交代する」と約束しながら、先に売れて専業作家になってしまったカーソン・マッカラーズなど、創作者夫婦の苦悩が印象に残った。
「日課」とは違うんじゃないかと思いつつ、度肝を抜かれたのはマリーナ・アブラモヴィチ。博物館で座り続けるパフォーマンスのため、夜中に体内の水分をだしきるルーティンを守り、昼間トイレに行かなくてよい体を作り上げたという。パフォーマンスを習慣化し、自分の体を素材にして見せる人の異質さが光っていた。続きを読む投稿日:2024.01.26
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