組織も人も変わることができる! なぜ部下とうまくいかないのか 「自他変革」の発達心理学
加藤洋平(著)
/日本能率協会マネジメントセンター
作品情報
『なぜ人と組織は変われないのか ハーバード流自己変革の理論と実践』(英治出版)の著者ハーバード大学教育学大学院教授ロバート・キーガンと同大学院変革リーダーシップ研究責任者リサ・ラスコウ・レイヒーらによって、欧米はもとより、日本でも注目を集める「発達心理学」。
現在の自分が成人としての発達段階のどこにいるのかを確認し、今後どのようなプロセスでさらに成長・進化していくのかを把握するための理論です。
この理論を二人から直接学んだ著者が、ワインバーで偶然出会うことになった、部下のことで悩む課長と人財コンサルタントとの対話形式により、部下とのコミュニケーション法や育成法、さらには自己成長や組織マネジメントのあり方をわかりやすく説きます。
「自分に関係することにしか関心を寄せない部下」「上司には従順な一方で自分の意見を言わない部下」「自律性が強すぎて、メンバーの意見を無視する部下」こうした部下たちとのコミュニケーションのとり方を人財コンサルタントから学び、現場で実践することで組織がうまく回り出し、課長自身も成長していくというビジネスストーリーです。
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平均 4.0 (22件のレビュー)
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「なぜ部下とうまくいかないのか」加藤洋平
人間は、知識やスキルを獲得するだけではなく、質的な成長を継続的に実現しうる。
発達理論の世界では、各意識段階は固有の価値を持っている事を尊重する。
人は…自分よりも上の意識段階を理解する事ができない。建物のそれぞれの階から見える景色は多様。
人間の意識の発達とは、曖昧さに対する耐久性の増加。
意識が成長することによって、人としての器の容量そのものが拡大していく。それに伴って人は多様な知識や経験をそこに蓄えていけるようになる。
意識段階の違いによって世界の見え方が異なっており、知識や経験の取り入れ方も違えば、各人固有の容器によって加工されたアウトプットも質的に異なるものになる。
意識の成長発達は一概に年齢によって決定されるわけではない。
人間を人間たらしめているのは、意味を構築する事。
人間の意識の成長発達は、主体から客体へ移行する連続的なプロセス。
ある意識段階から次の意識段階へ移行していくほど、客体化できる範囲が広がり、世界の捉え方が変化していく。
段階2の人は自分中心的な発想で動いているだけでなく、白黒はっきりさせるような二分法的な世界観を持っている。なので自分中心の視点から一歩離れた視点を取ってもらうような問いを投げること。
成人は一つの段階を少なくとも5-10年、あるいはそれ以上かけて成長していく。
適切な課題と支援を与えながら自らの力で成長してもらうこと。
強引な早期英才教育は、植物を育てる際に化学肥料を大量に与える事に等しい。
人には発達範囲があり、状況や文脈、体調、感情状態が変わると発達段階が上下動する。
段階2の人とのコミュニケーションで最も避けなければならない事は、相手が感情的になった時、それに対して感情的な反応をしてしまう事。相手が感情的な態度を示したら、自分の意識を下に下にさげる。
発達理論には様々な段階モデルがあり、マズローは人間の欲求に焦点を当て、キーガンは人間の世界認識方法に焦点を当てた。
大企業には、組織階層の上の者が知らず知らずのうちに、階層の下の者に対して抑圧するような見えないメカニズムが生み出されていたり、階層の下の者が上の者に意見をしにくいメカニズムが生み出されている。
社会は段階3の人たちが大量に生み出される事を望んでいるので、段階3から逸脱するような人たちを抑圧する傾向にある。その為、段階3を乗り越えていくのは相当過酷なプロセスになる。
人間の成長は曖昧なものを受け入れいていくことによって初めて成し遂げられる。
段階3は権威主義的段階。段階4は権威超越的段階。
段階4は、既存の情報を鵜呑みにするのではなく、自分の頭でそれらを咀嚼し、自分なりに意味を再構築していくという、これまでとは異なった新たな意味を生み出していけるような知性が求められる。
既存の物の見方や権威の主張に対して疑いの目を持って、それらを超克していけるだけの意識の器が必要。
段階4の振る舞いは、単なる欲求に従った利己的なものというよりも、心の内側にあるより高度な規範に基づいている。
社会や組織の声に盲従するのではなく、内発的な問いを自ら発せられる事が、自律的な自己を確立する事に不可欠。
段階4は自分の価値体系に縛られるという限界を持つ。
プロフェッショナル人財とは、単になにかの専門家を意味するのではなく、主体的自律的に行動できる個人のこと。
水平的な成長とは、知識やスキルの獲得、垂直的な成長とは、意識の器の拡大、認識の枠組みの変化を表す。
段階5の要素が芽生えてくると、他者の存在は自分の成長に不可欠であるという認識が生まれてくる。
水平的な成長とはPCのソフトを増やす行為、垂直的な成長とは、PCのOSそのものを変えていくこと。
他者の成長に関わる者自身の発達段階は、支援の質と効果に極めて大きな影響を与える。
垂直的な成長は意識段階の低いコーチからでは起こらない。
既存の価値観を乗り越えていく為に必要な事は、異質なものに触れる事。
人間の成長発達は葛藤を乗り越えていくプロセス。
段階5に近づきつつある人は、自分の性格や個性、さらには自分の歴史までも客観的に捉えることができ、それらが自分を超えた世界の中で脈々と形成されていったことを的確に認識できる。
驚きが小さな自己の殻を破っていくきっかけになる。
生涯続く学びそのものが自分の人生になる。
段階5の人は、他者との共同は異なる認識の枠組みを理解する素晴らしい機会であると認識する。他者との協同を通じて自分自身と他者をより良く理解する為に、自分の価値体系や認識の枠組みの限界を頻繁に曝け出そうとする。
段階5に到達してはじめて人と組織の永続的な成長を促し、人と組織を導いてくれる真のリーダーになる。
段階5の人は優れたシステム思考を持つ。相反する事から逃げずに対極にあるものを統合させるような働きかけができる。
段階5の人は、他者の発達段階を見極める直感力が研ぎ澄まされているだけでなく、他者がどれくらい発達可能性を秘めているのかもわかってしまうような感性を持っている。
発達段階が高度になっていくにつれ、必ずしも生きる事が楽になったり人生が良くなったりするとは言えない。どの段階でも必ず固有の課題を乗り越える事が要求される。
意識の成長が進めば進むほど、自分が保持する過去の成功や社会的な地位名誉などはちっぽけなもに過ぎず、自分という人間は宇宙における一粒の砂のような存在にすぎないという明確な認識を獲得していく。
自律的な人材が増え、組織が活性化する事によって、新たな価値を創出する土壌が生まれてくる事を「組織の生産性の向上」と呼ぶ。
キーガンの5つの発達段階
段階1:具体的思考段階
具体的な事物を頭に思い浮かべて思考する事はできるが、形のない抽象的な概念は扱えない。幼少期。
段階2:道具主義的段階(利己的段階)成人人口の10%
極めて自己中心的な認識の枠組みを持つ。自分の欲求を満たす事に焦点が当てられており、他者をその達成の道具とみなす。他者の感情や思考を理解する事が困難。他者の視点も考慮し始めると段階3への移行サイン。
段階3:他者依存段階(慣習的段階)成人人口の70%
組織や集団の従属し、自らの意思決定基準を持たず他者に依存する形で意思決定する。
段階4:自己主導段階 成人人口の約20%
自分なりの価値観や意思決定基準を設け、自律的に行動する。自己成長に強い関心があったり、自分の意見を明確に主張する。
段階5:自己変容・相互発達段階 成人人口の1%未満。
自分の価値観や意見にとらわれる事なく、多様な価値観・意見などを汲み取りながら的確に意思決定ができる。他者の成長にベクトルが向かう。他者が成長する事により、自らも成長するという認識を持ち、他者と価値観や意見を共有しあいながらコミュニケーションを図る。続きを読む投稿日:2018.03.28
このレビューはネタバレを含みます
■ひとことで言うと?
レビューの続きを読む
自己探求を続け、自己の「器」を成長させ続けよ
■キーポイント
- 発達段階
- 他者主導(利他→依存)→自己主導→自己超越(相互発達)
- 人としての「器」の容…量が大きくなる
- さまざまな曖昧さを受容できるようになる
- 成長の2つの軸
- 水平的成長:スキル拡充
- 垂直的成長:自己深化
- 透明な自己認識
- 「自己の成長=他者の成長」と感じられる段階
- 自己成長のためには他者の成長が必要不可欠
- 「器」を大きくするために
- 異質なものに触れる→既存の価値観の破壊
- 内発的な問い(自己探求)の継続続きを読む投稿日:2023.04.30
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