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病の皇帝「がん」に挑む(下)人類4000年の苦闘
シッダールタ ムカジー(著)
,田中文(訳)
/単行本
作品情報
20世紀に入り、怪物「がん」と闘うには「治療」という攻撃だけでなく、「予防」という防御が必要であることがわかる。かくて、がんを引き起こす最大の犯人として、たばこが指名手配されたが……人類と「がん」との40世紀にわたる闘いの歴史を壮絶に描き出す!
1964年1月、アメリカ公衆衛生局長官はひとつの報告書を発表した、「たばこはがんの主要な原因である」と。たばこ産業にとって、この報告書はまさに爆弾であった。この時から全世界に覇権を広げるたばこ会社と、「がんの予防」を推進する人々との熾烈な戦いが始まる。そしてまた、巨大企業、患者、医師、研究者とのあいだの壮絶なドラマは、がんを治す「新薬」をめぐっても行なわれていた。 その一方で、分子生物学の進歩は、がんの根本的な原因を明らかにする。異形の怪物の原因は、我々自身が体内に持つ遺伝子の突然変異の蓄積によるものだったのだ!
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商品情報
- シリーズ
- 病の皇帝「がん」に挑む
- 著者
- シッダールタ ムカジー, 田中文
- 出版社
- 早川書房
- 掲載誌・レーベル
- 単行本
- 書籍発売日
- 2013.08.25
- Reader Store発売日
- 2013.10.11
- ファイルサイズ
- 1.8MB
- ページ数
- 404ページ
- シリーズ情報
- 既刊2巻
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この作品のレビュー
平均 4.6 (22件のレビュー)
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がんはどうやってできるのか? タバコ、細菌、ウイルスそして遺伝子へ
がんはどうやってできるのか?最初のヒントは1775年のロンドン。クライミング・ボーイと言う煙突掃除夫に陰嚢がんが多発した。チムチムチェリーはすてきな歌だが実態は病気の温床だった。1761年素人科学者の…ジョン・ヒルは噛みタバコが口腔がんなどを引き起こすと発表した。1951年10月31日ロンドンのドールとヒルはついに追跡調査をすべき集団を見つけた。4万人を超える医者からのアンケートを回収し喫煙者と非喫煙者の仮想の集団を観察したのだ。集団内の死亡報告が上がるたびに集計し29ヶ月後789人の死亡が確認されその内36人の肺がん患者は全て喫煙者だった。
がん研究の重要な一歩はエイムズによるサルモネラ菌の変異の研究から生まれた。サルモネラ菌を様々な化学物質で曝露し、元の菌が増殖できない培地に置いたときにどれだけ増殖するかは菌の突然変異によって決まる。菌を突然変異させる化学物質はがんの原因物質にもなりやすいと言うことが研究で裏付けられた。これが変異原性試験ーエイムズ試験で今では新しい化学物質を登録する際には必須の試験になっている。しかし、アスベストなどはエイムズ試験では変異原性を判定できない、万能ではないのだ。
1960年代にはHBV(B型肝炎ウイルス)に感染すると、肝細胞がんのリスクが高まることが発見された。
1979年胃炎の原因を調べたマーシャルは未知の細菌をなかなか見いだせずにいたが、ある時放置したままの培養基からピロリ菌を発見した。細菌が胃炎の原因になることを証明するためには感染させる実験をしなければいけないが、ブタは感染しなかった。1984年7月マーシャルは行き詰まり、助成金の申請も難しくなり究極の実験を行う。絶食して培養されたピロリ菌を飲み込んだのだ。数日後に具合が悪くなり内視鏡検査をした結果、急性胃炎を起こしており胃壁は細菌の層に覆われその下に潰瘍ができていた。
がんの原因は何か?1970年代にはがん遺伝子が見つかった。srcと名付けられた遺伝子からつくられるタンパクがいくつもの細胞を活性化させ分裂加速状態へと陥らせる。では、がんは内在的な病気なのか。これまでの発がん物質との関係はどうなるのか?遺伝子の研究が進むと細胞分裂を進めるアクセル遺伝子(原がん遺伝子)と止めるブレーキ遺伝子(がん抑制遺伝子)があることがわかってくる。網膜芽細胞腫(Rb)遺伝子のケースでは正常なRb遺伝子は対になっていてブレーキとして働き、二つの遺伝子が両方変異して不活性化するとブレーキが壊れ分裂が止まらなくなりがん化する。発がん性物質は様々な理由で遺伝子を変異させ、結果としてアクセルを踏むかブレーキを壊す。また、細胞分裂を繰り返すと遺伝子のコピーミスが起こり変異した遺伝子ががんを発生させる。
がん細胞はタンパク質をスイッチにして次々と他の遺伝子を活性化することがわかってきており、その際がん遺伝子が特異的につくるタンパクと結合する物質が考えだされた、それが分子標的薬だ。組み替えDNAの技術によってジェネンテック社は薬としてタンパクを作れるようになっていた。乳がん組織のHer-2と言うタンパクに結合する特別なタンパクー抗体がわずか3年で合成された。92年に臨床試験が始まり、98年にFDAに認可されたハーセプチンだ。
ヒトゲノムは解読されたががん遺伝子の解読はまだ始まったばかりで散発的にがん遺伝子と抑制遺伝子が見つかってきている状態だ。同じがんでも人により効く薬も違う。がんとの戦いはまだまだこれからだが、少なくとも進むべき方向はわかってきたようだ。続きを読む投稿日:2014.01.01
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「がん」の正体とは何か?
また凄いの読んじゃったな。
上巻を読んでるときは、近藤誠の『患者よ、がんと闘うな』を思い返していた。
90年代にセンセーションを巻き起こしたのも、本書のセンテンスを辿ると、出るべくして出たという時…代の必然性を感じていた。
そして下巻になったら、何かホントとんでもないオチが用意されててブッたまげた。
例えて言えば、ある探偵が何年も前に失踪した人物を捜すよう依頼されて、探し出してみると自分だったという、昔見た映画のシナリオのような驚天動地の展開だ。
著者の例えはもっと洗練されてて、異国の獣スナークを捕まえたハンターが、それがかつてその獣を捕まえに来ていたハンターだと知るというルイス・キャロルの詩を引用している。
それが「がん」の正体だったのだ、と。
「がん」の正体とは何か?
ただのしこりなんかでは絶対ない。
病理的な定義では「無制御な細胞分裂」ということになるが、それだけでもない。
体じゅう至る所に移動し、組織を破壊する。
臓器に浸潤し、新たにコロニーもつくっちゃう。
周りには新しい血管まで張り巡らし、おまけに薬にも抵抗する、そんな病。
恐るべき増殖能力で、30年前に死んだ女性から採取された白血病細胞が、いまだ研究室内で繁殖し続ける。
基本的に不死なのだ。
これまでがんの原因因子として3つが考えられた。
ウイルス、化学物質、そして遺伝子だ。
最初は何が「がん」の危険因子になるのかを外部に求めていた。
たばこの煙やアスベストのように発がん因子は外部にある、と。
B型肝炎ウイルスやピロリ菌もがんを誘発するとわかった。
しかしすべての発がん因子が単独でがんを誘発するわけではない。
ピロリ菌を豚に感染させても潰瘍を作らなかった。
発癌因子の同定だけでなく、何をしているかのメカニズムの理解が必要だと悟る。
がんというのは実際には多様な病なのだから、単独の戦略で対処できる単独の疾患ととらえるべきではない。
さまざまながんを一度にノックアウトできるような魔法の弾丸探しや、予防や早期発見も結構だが、たった一つの道筋で太刀打ちできるものではない。
しっかりと「がん」の起源、発生のメカニズムを探るべきだというところから、ハロルド・ヴァーマスとマイケル・ビショップの原がん遺伝子説が生まれ、がんの正体とはつまるところ我々そのものではないかという発見に至る。
細胞を分裂マシーンに変え、細胞分裂の「オン」シグナルを永久に流しっぱなしにするsrc遺伝子は、ウイルス由来だと思ったら、実は正常細胞由来だった、と。
「がん原因遺伝子(ウイルスのsrc)の原型である正常細胞のsrcは、細胞に本来そなわった遺伝子なのかもしれない。ウイルスのsrcは正常細胞のsrcに由来するのかもしれない。レトロウイルス研究者は長いあいだ、ウイルスが活性化したsrcを正常細胞に組み込んで正常細胞を悪性化すると信じていた。しかしsrc遺伝子はウイルス由来ではなく、正常細胞に — あらゆる細胞に — 存在する原型遺伝子に由来するのだ」
ウイルスは確かにがんをつくるが、細胞由来の遺伝子を運ぶことでつくっているのだ。
ウイルスは実のところ、がん細胞に由来する遺伝子の偶然の運び屋に過ぎない。
化学物質やX線で誘発される突然変異によってがんが発生するのも、外来性の遺伝子が細胞に挿入されるためではなく、内在性の原がん遺伝子が活性化されるからではないか。
こう考えるといろんなことが腑に落ちる。
放射線や煤やたばこの煙といった一見なんの共通点もないように見える多様な原因が、なぜ一様にがんを誘発するのかは謎だった。
だけどそれらが、細胞内の原がん遺伝子を変異させ、活性化させることによって誘発しているのだと考えれば、納得がいく。
DNAに突然変異を起こす化学物質が「がん」を誘発するのは、それらの物質が細胞の原がん遺伝子を変化させるためである。
喫煙者のほうが「がん」の罹患率が高いのは、たばこがそれらの遺伝子の突然変異率を増加させるためである、と。
がん細胞の中心的な分子的欠陥としては、rasとRb、がん遺伝子とがん抑制遺伝子とがある。
活性化した原がん遺伝子は、言ってみれば「戻らないアクセル」と同じで、アクセルが戻らなくなった細胞は、細胞分裂の道を疾走する。
分裂を止めることができず、いつまでも分裂を繰り返す。
不活性化したがん抑制遺伝子は、言ってみれば「失われたブレーキ」と同じで、細胞はあらゆる停止シグナルを無視して、分裂をどこまでも繰り返すのだ。続きを読む投稿日:2024.04.16
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