病の皇帝「がん」に挑む(上)人類4000年の苦闘
シッダールタ ムカジー(著)
,田中文(訳)
/単行本
作品情報
地球全体で、年間700万以上の人命を奪うがん。紀元前の昔から現代まで、人間を苦しめてきた「病の皇帝」の真の姿を、患者、医師の苦闘の歴史をとおして迫真の筆致で明らかにするノンフィクション。ピュリッツァー賞受賞作。
古代エジプトのパピルスにイムホテプはこう記した「この病の治療法はない」。この病を「カルキノス」と呼んだ医聖ヒポクラテスもまた「がんは治療しないほうがよい。そのほうがより長く生きるから」と述べている。人類は4000年にわたって、この怖るべき病気と闘い続けてきた。 外科手術による病巣の切除、X線による放射線療法、抗がん剤と骨髄移植を組み合わせた超大量化学療法、さらに「がんに対する魔法の弾丸」になると期待される分子標的療法……不治の病から治癒可能な病へといたるその治療の歴史と、「がん」をめぐる患者、医師、研究者たちの人間ドラマを見事に描きだした「病の皇帝」がんの伝記。
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商品情報
- シリーズ
- 病の皇帝「がん」に挑む
- 著者
- シッダールタ ムカジー, 田中文
- 出版社
- 早川書房
- 掲載誌・レーベル
- 単行本
- 書籍発売日
- 2013.08.25
- Reader Store発売日
- 2013.10.11
- ファイルサイズ
- 2.4MB
- ページ数
- 420ページ
- シリーズ情報
- 既刊2巻
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この作品のレビュー
平均 4.4 (21件のレビュー)
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「がん」撲滅を信じ挑みつづける医師たちとその陰で犠牲となる患者たちの歴史
がんの正体が少しずつ解明されていく歴史を楽しみにしていたら、やみくもに治療に邁進していく医師の姿が描かれていて驚いた。「より多く切り取れば、より多くの患者を治せる」とか、「化学療法を最大にすれば、生存…率も最大にできる」と。著者も「彼らの根本的な目的は、目の前の患者の命そのものを救うことではなく、別の患者の命を救う方法を見つけることだった」と書く。しかし、唯一の解決策は治療であり、がんを多様な疾患ではなく単一の病だとする揺るぎない信念がなければ、そもそもこの巨大な敵に立ち向かうことすら難しかったのだろう。
印象に残った文章をいくつか。
「がんを完治させるには患者を生死の境にまで追いやらなければならない」
「国立がん研究所はしだいに、毒工場に変わっていった」
「治療法の探求にばかり取り憑かれていた国立がん研究所の戦略の中に、予防が含まれていなかった」
「がんは過剰の病あり、拡張主義者の病である。がんに立ち向かうということは、われわれと類似の種に、ひょっとしたらわれわれ自身よりも適応能力の高い種に立ち向かうことなのだ」
「ほかのあらゆる殺し屋が殺されて初めて、がんはありふれた病になった。文明化はがんの原因ではなく、ヒトの寿命を延ばすことで、がんを覆っていたベールを取り去ったのだ」
残念なのは章前のエピグラムが過剰なことで、チョイスも平凡すぎること。半ばくらいからは、読み飛ばすことにした。続きを読む投稿日:2013.12.11
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紀元前からつづくがん治療の歴史。 根治的な手術、X線、化学療法による総攻撃が始まった。
紀元前2625年頃活躍した古代エジプトの偉大な医師イムホテプの教えた書と言われるパピルスの写本には48の症例がのっている。その一つが乳がんで「治療法はない」この後がんは古代医学史から姿を消した。次に現…れたのは紀元前440年頃、ヘロドトスの「歴史」にペルシアの王妃アトッサの同じく乳がんの記述が出てくる。アトッサはギリシャ人の奴隷医師に摘出手術をさせどうやら成功したらしい。故郷に帰ることを願う医師の訴えを聞きアトッサはギリシャを攻めるよう夫に進言し、ギリシャ・ペルシア戦争が勃発した。
がんの歴史の特徴は古代にはほとんどがんが見つかっていないことだ。しかし、がんが文明病だとは言えない。平均寿命の伸び、がんを診断できるようになったこと、そして他の病気が征圧されていった結果がんの罹患率が上がっている。1900年にはアメリカ人の死因の圧倒的1位は結核で肺炎、下痢、胃腸炎が続きがんは7位だった。1940年代には心疾患に続く2位となり同時に平均余命は26年のび、60才以上の割合は倍になっている。
ヒポクラテスが名付けたがんは目に見える場所にできる腫瘍がほとんどで悪性と良性の区別もなく、病気の原因は4体液説(赤ー血液、黒ー黒胆汁、黄ー黄胆汁、白ーリンパ液)で説明されこのバランスが狂うことが病気の原因とされた。近代まで続けられた治療法の瀉血は悪い血を抜いて病気を治すと言うものだがこの4体液説に基づいている。がんの原因は黒胆汁とされたがいくら乳がんの切除手術をしてもそんなものは見つからなかった。
麻酔と消毒が発見され1850年から1950年代には腫瘍摘出手術は花開く。20世紀初頭には転移のない原発性のがんは摘出手術によりかなりの確率で完治した。そうするうちに腫瘍を取り除いてもがんが再発するケースが見つかっていく。ではもっと初期に徹底的に取り除けば完治するのでは?
1900年代には根治的なすなわちできるだけ患部を大きく切除する手術が生み出された。しかし、根治的な手術の生存率を統計に取った所、リンパ節に転移がなかった患者の5年後の生存率が高かったのに対し、転移していた患者はどんなに大きく腫瘍を切り取っても効果は見られなかった。手術が有効なのは転移していない患者だけならば大きく切り取ることに意味はあるのか?
X線治療と毒ガスを起源とする化学療法が見いだされ、がんは一時的に寛解するようにはなったがどうしても再発は避けられない。根治療法同様化学療法も大量投与に突き進む。
がん治療のためには資金がいる。病院や研究者も。白血病の化学療法の臨床診療を勧めたシドニー・ファーバーは国庫をこじあけるロビー活動が得意な「医学研究を助けるやさしい妖精」メアリ・ラスカーと出会った。
ファーバーとラスカーは手を握り、終戦後拡がった長期的な基礎研究を主体とする文化に対し「がんのためのマンハッタン計画」戦時中に行われた実用的目標を念頭に置いた目的指向型研究のため激しいロビー活動を行い、1954年国立がん研究所(NCI)による抗がん剤発見のプログラムを上院に認めさせた。82700種類の合成化学物質、11万5千種の発酵品、17200の植物成分を年に100万匹のマウスに投与するファーバーの長いあてどもないがんへの総攻撃が始まったのだ。 続きを読む投稿日:2014.01.01
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