村上タクタさんのレビュー
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69
このユーザーのレビュー
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赤猫異聞
浅田次郎 / 新潮文庫
複数人の語りで描く『解き放ち』の多面性と、衝撃の結末
4
相変わらず面白かったですが、浅田次郎作品の中でもこのプロットの面白さは出色の出来。長い江戸時代が終わって、開明な世の中に移る直前の、まさにどさくさ紛れのストーリー。浅田次郎ファンなら必読!
投稿日:2015.09.15
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グイン・サーガ外伝1 七人の魔道師
栗本薫 / ハヤカワ文庫JA
グイン・サーガはこの一冊から読むべきかもしれない
3
外伝の一巻。今からグイン・サーガを読む人は、この本を正伝を読み終ったあとに読むかもしれない。でもい執筆されたのはかなり初期で、むしろこの一冊から読んでもいいぐらい。
結局のところ、グインの正伝130…巻は、この『七人の魔道師』で広げてしまった伏線を回収するためにあったのかもしれない。で、129巻でようやく『七人の魔道師』にたどり着く。ある意味、最初に広げた風呂敷。この時点での豹頭王や、シルヴィア、ヴァルーサ、ヤンダルゾック……が、執筆当初から想定されていたというところがすごい。
さすがに、若干辻褄が合わないところもあるけれど、そのあたりを考えてみるのもグイン読みの楽しみか。
正伝1巻の『豹頭の仮面』(あれ、この時点では考えてみれば仮面だって言ってるんだ……?)から読み始めるのもいいけれど、『七人の魔道師』から読み始めるのもアリかもしれない。『豹頭の仮面』は剣と魔法の世界の『剣』から始まるけれど、『七人の魔道師』は『魔法』の方が好きな人に向いてる。
しかし、ヴァルーサ……。 続きを読む投稿日:2013.09.27
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flick!号外 (iPhone 5s/5c最新情報&買い方ガイド)
エイ出版社 / ヘリテージ
100円で、iPhone 5s/5c の最新情報を!
3
この本の編集者です。
電子雑誌の可能性を拓く試みのひとつとして、超短期間で編集し、30ページ、100円という紙では発売できないスタイルの本を作ってみました。
各社の価格が発表される前に配信をスター…トしたので、そのあたりは入ってませんのでご了承を。プレス向けの発表会で取材(実際に触って、撮影しています)し、実際に発売されるまでに配信しております。間に合わなかった情報については、ウェブサイトにリンクして補っているところも、新たなトライでした。
ぜひ、ご覧になって、感想をお教え願えれば幸いです。 続きを読む投稿日:2013.09.27
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中原の虹(1)
浅田次郎 / 講談社文庫
中国、伝説の時代から、現代への掛け橋
3
『蒼天の昴』の続編ともいうべき作品。西太后を軸に進んだ蒼天の昴に対して、本作は張作霖を軸に話が進む。登場人物は、春児をはじめ、前作と共通の人物も多く、彼らが伝説の時代から抜け出て、歴史の荒波に揉まれて…いく様が描かれる。
読後に調べたら、登場人物のひとりであり張作霖の息子の張学良は1990年代まで生きていたらしい。一部伝説として始まり、今に続く中国の歴史の転換点が描かれていて非常に面白い。 続きを読む投稿日:2013.11.09
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終わらざる夏 上
浅田次郎 / 集英社文庫
大戦末期、『赤紙』から始まるいくつかの意外な物語
3
大戦末期の『赤紙』といえば、召集令状。
赤紙が届くと母は泣き崩れ、周囲は「お国のために!」と万歳三唱で送り出すというイメージだが、そんな単純なものではなかったことを本書は教えてくれる。
『動員命令…』として、何万人の人の命を死地に向かわせる人の思い。それを各県、各地区に割り振る人の思い。そして、その数字を、実際の個人にふりわける人の苦痛。
そうやって届けられた召集令状を持って、戦地に赴く人々のストーリー。招集年限ギリギリ、45歳で招集を受けた英米文学の翻訳家。若き医学生。そして満州で戦って英雄となりつつも指を失い、乱暴者として故郷に居場所を失った男。
彼らは出会い、そして敗色濃厚で多くの人が死んで行った南方の戦線ではなく、意外なところに連れて行かれる……。
これもまた戦争の一面。終らざる夏は、70年近くを経た今なお続いているのかもしれない。 続きを読む投稿日:2013.11.30
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グイン・サーガ131 パロの暗黒
五代ゆう, 天狼プロダクション / ハヤカワ文庫JA
とにかく読んでみよう!
3
高校時代から30年に渡って読んできたグイン・サーガ。栗本薫さん逝去で、続きが読めなくなったことは誰にとっても悲しいこと。
他の人が書いた続編が読みたいかどうかは、ファンなればこそ葛藤の激しいところだ…と思う。正直、どんなに上手く栗本さん風に書いてあったとしても、いや似ていれば似ているほど「こんなハズはない!」という思いも涌いてくるに違いないでしょう。
続編を書く事になった五代ゆう氏と、宵野ゆめ氏にとっても、猛烈なプレッシャーと、多分ネットを通じての猛烈な罵詈雑言さえも覚悟して書き始められたに違いありません。
私も、迷いながら読み始めた「非栗本グイン」の1冊目ですが、私的結論としては「この冒険についていこう」です。
文体の違いは私的には許容範囲です。「栗本さんはこう書かない!」と思う部分はありますが、それも「慣れなきゃ」って思える範囲です。
僕だったら「最初の数冊は違和感ないように、辺境から始めて、あまり大きなストーリーの展開はなく……」と思ったと思います。だって、『栗本グイン』だって、グインの記憶喪失のあたりはかなりのんべんだらりと旅を続けてたじゃないですか(失礼)。ですが、この『五代グイン』の一冊目は、中盤からは、こっちがビビるぐらいの怒濤の展開です。
そして、それが、なかなか展開しなくてじれったかった『栗本グイン』とはまた違った爽快さも感じさせてくれます。このへんの話は、五代氏によるあとがきでも多少謎解きされるのですが、私はそれで多少納得しました。
五代グインがいい、宵野グインがいいなんていう論争も今後巻き起こるのでしょうけど、それも彼らは承知の上なのでしょう。
ともかく、ヴァレリウスやマリウス、リンダたちのいる世界に帰ってこられたことをうれしく思います。五代さん、宵野さん、がんばって下さい!
続きを読む投稿日:2014.06.16