ボンクラーズ、ドントクライ1(イラスト簡略版)
大樹連司,白味噌
ガガガ文庫
久しぶりに見る伝統的な学園小説_よく見れば舞台は1999年
傍観者だった主人公が徐々に物語へのめり込む話 登場人物は三人しかいないがそれぞれのキャラクターが魅力的に描けている 理不尽な設定や目新しいことは何も起こらないが高校生活は色々ありながら進んでいく 結論は必ずしも上手くいくとは限らないが彼らの人生にとっては通過点に過ぎない 突飛な設定の多いライトノベルの中で久しぶりに落ち着いて読むことができた
0投稿日: 2013.11.23幼年期の終り
アーサー・C・クラーク,福島正実
ハヤカワ文庫SF
人類進化SF
人類が次の段階に進む話 理不尽な設定変更から管理社会が始まりその中で人類が目的を模索する(させられる?) 現状の様々な問題が一挙に解決したと仮定した場合その中で何を目指すのかを考えるSF 謎を散りばめ段階的に丁寧な説明をしていくため非常に読み易い 後の作品に多大な影響を与えた傑作であることは間違いない それにしてもこの時代の作品はディストピアをテーマにしたものが多い 社会の状況を反映していると思えば興味深い
5投稿日: 2013.11.23ふわふわの泉
野尻抱介
ハヤカワ文庫JA
新素材開発と社会の変動
学生が新素材を開発し社会を順調に変えていく話 科学者が夢にまで見るようなサクセスストーリー 一つのきっかけを元にひらめきから社会が変わっていく 本来のSFであれば考慮されることが良いとされる軋轢や国際的な問題が論じられていないが だからこそ純粋に技術の革新をSFとして楽しむことができる 展開はやや強引だがSFを楽しむ上ではライトであることが利点になるように思う 学生や若い世代が科学者に夢を持つためには良い作品だと感じる ちなみに終盤の理不尽な展開はどこかの名作SFのオマージュっぽいが理不尽さも含めて科学ということだろうか
3投稿日: 2013.11.23華竜の宮(上)
上田早夕里
ハヤカワ文庫JA
問題点を丁寧に描いた海洋SF_翠星のガルガンティア原作?
地球の環境が激変した時にどのように対応するかを考える話 海面上昇による生活環境の減少、海上生活への適用、様々な状況に対応するためには色々と揉め事が多い 主人公は様々な衝突を解決するために奔走する 何よりSFとして設定の描き方が丁寧 登場人物が地球の環境変動に翻弄され、それでも工夫して乗り越えていく様子がすんなりと理解できる 小難しいSFにありがちな長い説明や難解な理論ではなく、問題点として設定を理解できる点が分かりやすい 本作とは全く関係はないと思うが2013年にアニメ化された"翠星のガルガンティア"と設定に似ているところが多い アニメで描かれている水の惑星になった過程が描かれていると思うと興味深い
2投稿日: 2013.11.10モロー博士の島
H・G・ウェルズ,能島武文
グーテンベルク21
古典SFの名著
マッドサイエンティストが居る島で不思議な経験をする話 書かれたのは1896年のため古典SFというよりは恐怖小説の色合いが強い まだ世界や科学に対して分からないことが多かったのか先が読めない不安感と夢が詰まっている 動物と人間の違いを考えさせられるという点でSFとして楽しむことができる あまり後味の良い終わり方ではないが人の理性と獣性に関する考え方は興味深い 他種族の感じる苦痛をどのように理解するか、本当に人は獣と違い理性を保てているのか、読後に不安が残る点が秀逸
2投稿日: 2013.11.10乾山晩愁
葉室麟
角川文庫
絵師の生き様
歴史上に登場する絵師にまつわる短篇集 時代小説で扱うには地味な話題のように思うがただ絵を描くだけが絵師ではないことを思い知らされる 歴史とは異なり文書が残っていないにもかかわらず現存する絵から想像することができるということは素晴らしい 生きた結果を形として残すことができる絵師の強さを感じる 氏の描く時代小説においてはいずれの登場人物も生き様が爽やかで読んでいて気持ちが良い 苦悩し自らの道を選ぶまでの過程を読むことで武士の気骨に触れることができるように感じる
3投稿日: 2013.11.04カーニバル・ナイト
笹本祐一
創元SF文庫
お祭り騒ぎ
敵対組織が本気を出して襲ってくるが全力で迎撃する話 相変わらず迎撃にあたっては超能力を使うこともなくSFらしいところは背景の設定がほとんど 最近ではよくある超能力バトル物ではなくあくまでも舞台設定としてしか使われていないように見える 背景についても少しずつ語られようやく全容が明らかになりつつある 続刊に向けての前編の位置づけとなるため本刊だけでは完結していない
0投稿日: 2013.11.04ラスト・レター
笹本祐一
東京創元社
お祭りの後
超能力を持つ少女に関わる話の結末 シリーズを通して作中のメンバーがドタバタと頑張る点は相変わらず 人類が直面している問題をさておいて目の前の日常に固執する主人公達が少しもどかしい 唐突な結末から読後感には若干の寂しさを感じるがお祭りの後と考えればこんなものかもしれない もともと世界を救うための話ではなく学校生活を楽しく描く話だと思えばこの結末にも納得できる 時代は違うが登場人物のキャラクターや結末から"イリヤの空、UFOの夏"を連想した
0投稿日: 2013.11.04ハレーション・ゴースト
笹本祐一
創元SF文庫
妖精作戦の続編であり外伝
校内に幽霊や怪物が現れドタバタする話 前作と同じメンバーだが本筋とはほぼ関連がない 敵対組織がないためか作中メンバーが学校生活を楽しんでいる様子がよく伝わる 前作よりも文体が読み易くなっており一冊で完結していることから当時人気が出ていたことも納得できる 最期のオチについては作中で語られるように安易に過ぎるが面白ければそれで良いように思う
0投稿日: 2013.11.04妖精作戦
笹本祐一
創元SF文庫
元祖ライトノベル
高校生たちが工作員さながらの活躍をしながら国際的秘密機関と渡り合う話 忍者の末裔、メカニック、情報屋、探偵、未だ特技のない主人公 何はともあれ一生懸命なキャラクターが魅力的で読んでて気持ち良い まだ1巻のためかSF方面の話は殆ど進んでいないため今後に期待 それにしても約30年前に書かれたとは思えないほど今のライトノベルに設定と文体が近い
3投稿日: 2013.10.08