
その白さえ嘘だとしても(新潮文庫nex)
河野裕
新潮文庫nex
青春ミステリー第二弾 とても良かったです
階段島シリーズの第二弾です。 一作目は「いなくなれ、群青」というタイトルで、未読であれば先にそちらを読むことを強くオススメします。 本作は一作目の真相が前提になっているので、冒頭でそれがネタバレしていますので、先にこちらを読んでも楽しめると思いますが、一作目の方の楽しみを奪う可能性があります。 真相というのは階段島の秘密の事で、前述の通り一作目で核心が明らかになっているので本作はどういう内容なのか不安でしたが、秘密はバックグラウンドで重要な要素として物語に生かされています。その分本作は階段島自体の謎に関するファンタジーな内容は薄めです。 登場人物は「いなくなれ、群青」とほぼ同じで、階段島で噂のクリスマスの七不思議に主人公達が各々の都合で関わっていく形で進んでおり、かなりサブキャラクターにスポットが当たっています。 そのため、話の主観が頻繁に切り替わりますが、混乱することもなく読めると思います。 全然本編とは関係ありませんが、『ミステリ小説の犯人には大抵「やっぱりね」と思うけど、それはとりあえず全員疑っているからだ』という言葉は至言だと思いました。
1投稿日: 2016.01.04
黒い仏
殊能将之
講談社文庫
ハサミ男ほどの傑作ではない
「ハサミ男」のようなドンデン返しやスッキリ感を期待して読んだのですが、「ハサミ男」ほどの面白さは残念ながらありませんでした。 円載という大昔の僧侶が残した宝を探す依頼を受けて、探偵が調査に乗り出す。しかしその裏では殺人事件が起きていて絡みあっていく。 といった感じの内容ですが、主人公の探偵はほぼ物語の核には関わりません。 それはそれで面白い展開なのですが、結局主人公の関わりの薄さが、終章もふくめて全体的に軽い印象になってしまった感じでした。あくまで私の個人的感想ですが。 また、途中から超現実な内容が登場します。神話的、宗教的な背景がわかっていたらもっと楽しめたかもしれません。 超現実とは言ってもミステリーとして破綻しているわけではないのでご心配なく。
0投稿日: 2016.01.03
イエスタデイをうたって 1
冬目景
ビジネスジャンプ
めぞん一刻リスペクトな青春ラブストーリー
大学時代の友人であるシナコを好きな主人公リクオと、リクオに想いを寄せる少女ハルを中心に三角関係(途中、四~n角関係)を展開していくラブストーリーです。 めぞん一刻に似ているので、あの手の話が好きな人は買っても損はしないと思います。とはいえ、ギャグ成分は皆無なのでご注意を。 (登場人物の関係性が似ているだけで、パクりではないので誤解なきよう) 私は絵が好きで買ったのですが、内容も良かったので満足しています。 最近完結しましたが、全11巻で丁度良い長さなのもグッド。ラストもとても良かったです。 一途なハルちゃんを応援してあげましょう。
0投稿日: 2015.10.29
サクラダリセット CAT, GHOST and REVOLUTION SUNDAY
河野裕,椎名優
角川スニーカー文庫
新しい!?超能力青春ミステリー
その町でしか存在し得ない超能力を使って、「奉仕クラブ」で依頼を解決していく主人公浅井ケイとヒロイン春埼美空の物語。 超能力は、物語全体のバックグランドであり、重要なファクターですが、ストーリー展開自体は、ヒロイン春埼の「リセット」の能力を用いた時間遡行ものになっています。 超能力には強度と制限などが設定されており、安易に能力の濫用で解決するような事もありません。 きちんと物語内のルールに則った上で能力を登場させ、それにミステリー、青春を織り交ぜているので面白くないわけがありません。 やや主人公が高校生にしては大人びすぎているし、能力は別として頭の作りがチートな気もしますが、絶対記憶能力の保持者ってことで、頭も異常に良いと思って納得しましょう。 ラノベのレーベルと可愛い絵でこの作品を避けるのはとてももったいないです!
0投稿日: 2015.10.29
パプリカ
筒井康隆
新潮社
SFでありながら、リアルな恐怖も演出してくる
すごく面白いです。筒井康隆さんの作品の中では一番好きかもしれません。 夢から覚めたはずなのにまだ夢の中に居たって場面が怖いです。 夢の中で寝たりとか、だんだん現実と夢の境界が曖昧になっていくのとか、SF作品ではありますが、ちょっとリアルな恐怖が描かれているSFものです。
0投稿日: 2015.10.29
ボトルネック(新潮文庫)
米澤穂信
新潮文庫
米澤穂信さんの作品の中で一番好きです
兄の命日に迷い込んでしまったパラレルワールドには、生まれなかったはずの姉がいて、死んだはずの人が生きていて、何もかもがうまくいっている世界だった。 バタフライエフェクトのバットエンドの主人公がグッドエンド見せられたような話です。 先日久しぶりに読み返しましたが、若い頃に読んだ方が感度が高い気がします。
1投稿日: 2015.10.29
社会派ちきりんの世界を歩いて考えよう!
ちきりん
だいわ文庫
エンタメ8割、自己啓発2割
自己啓発系の内容、ビジネス書的な内容を多分に含んでいますが、ちきりんさんの本は読み物としてとても面白いので、途中で挫折する可能性が低く、とてもオススメです。 世界を歩いて考えようなんて自己啓発本あるあるっぽいタイトルですが、、著者が旅行した時のエピソードをまとめた紀行的な内容が多く、そのエピソードから考え方を展開していくので、説得力があり且つ面白いのだと思います。 ・奴隷を使って作られた、今後作られる事がないかもしれない「人間の人生より大事な美術品」 ・なぜシンガポールがアジアで最も裕福になれたか ・それぞれの国の富の再分配方法 のあたりの章は特にオススメです。
0投稿日: 2015.10.29
声の網
星新一
角川文庫
先見の明がありすぎる作品
他の方もレビューで書かれていますが、インターネットのイの字も知られていないような時代に、インターネットによる情報化社会の危険性を警告しているような雰囲気の作品です。(別に作者は警告したかったわけではないと思うけど) 声の主が最後にわかるのかなと思って読んでいたら、中盤くらいにはそれがわかってしまいます。別にそれ自体が謎だったわけではんく、以降は主のエスカレートする行動と対向勢力との対決が描かれていきます。 そして最後には絶対な平穏が! 謎と種明かしだけでは終わらない面白さがあります。
0投稿日: 2015.10.29
七瀬ふたたび(新潮文庫)
筒井康隆
新潮文庫
ラノベの感覚で読める良SF作品
超能力バトル有りの冒険ものから始まり、ダークな雰囲気に展開していきます。超能力バトルものとかのラノベが好きな人はまず楽しめると思います。 最後はちょっと後味悪いですが。 超能力者陣営はもっとチート能力を活かせたんじゃないのかなーとか思います。
0投稿日: 2015.10.29
ひとりっ子
グレッグ・イーガン,山岸真
ハヤカワ文庫SF
SF初心者にはかなり厳しい
書籍説明で、科学+ヒューマンドラマ的なものを期待した人は、悪い意味で裏切られるしかないと思います。 短編集で、内容的には主にインプラントという脳内をコントロールするマシンと、多世界解釈を中心にした話が主ですが、途中数学や物理、コンピューターの用語が登場して、前提知識がないと理解できない所が多いです。 とは言え、雰囲気やストーリーはそれなりに楽しめるところもあり、本書の楽しみ方としてはそれで良いような事が訳者後書きにも書いてあります。 ちなみに、訳者後書き曰わく、この作者の作品としては、「祈りの海」の方が初心者向けのようです。
1投稿日: 2015.10.27
