shizukiさんのレビュー
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阪急電車
有川浩 / 幻冬舎文庫
私には印象が薄かった
2
正直読み終えて「ふーん」というくらいの感想だった。
若者向けのライトな読み切り小説、という感じ。
短いエピソードをつないでいるだけなので、しょせん
深みは求めようもないが。
地元に住んでいて、その列車…を利用したことのある人
ならば、多少興味がわくかもしれない。
列車内で隣り合ったりほんのちょっと話をしたり、
そんなふうにして僅かでも関わりあいを持った人たちの、
それぞれのちょっとしたエピソードが綴られていくお話。
ただ、私には少々退屈だった。 続きを読む投稿日:2015.03.22
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鹿男あをによし
万城目学 / 幻冬舎文庫
主人公のキャラがなぁ・・
1
大絶賛してる人には申し訳ないが、私はこの物語はイマイチ好きになれない。
いや面白かったですよ?奈良の美しい自然と神の使いの鹿。情景が目に在り在りと浮かんだし、途中から古代ロマン溢れる壮大な?ファンタ…ジーになっていく辺りはなかなか良かった。
ただ、途中までひっぱり過ぎだろうという感は拭えない。最初からおそらくキーパーソンだろうと思わせる女の子の正体が明かされるのはいい加減後になってからだし、何より主人公の男性に魅力が感じられない。
「コイツの性格はどうなんだ?」と始めからイライラし通しだった。
却って脇を固める人々や、神の使いの三神獣の方がよほどキャラが立っていると感じたくらいだ。
・・いや、これが作者の狙いなのかもしれない。
格好良くもいい人でもない、いわば禄でもないような
主人公を敢えて据える事によって、より登場人物たちが活きるという。
だとしたら、やはり見事な物語なんだろうな。 続きを読む投稿日:2019.12.31
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お月見村の診療所 ~プラマイゼロ~
丸山ユイチ / JSpace
なめて掛かったらガツンとやられました
1
掘り出し物の佳作を見つけた気分です。
文体が非常に優しくて、子供向けの
ファンタジーなんだろうな、と思います。
でも発想がすごくて、主人公である診療所の
先生の変わり様に度肝を抜かれました。
…
こんな不思議なお話は、子供の頃にだって
読んだことがありません。
終わり方も良かったと思います、自分の当初の
予想とは違いましたが、却って良かったです。
自然と人と、心の脆さ強さ、家族の有り難さ。
じんわりと胸に滲みて、温かくなる物型です。 続きを読む投稿日:2020.01.04
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人質の朗読会
小川洋子 / 中公文庫
なんともいえない余韻の残るお話
1
地球の裏側の南米で日本人の旅行者8人がゲリラに誘拐され、数か月のちの救出作戦のさなかに全員が爆死してしまった・・という、非常にショッキングな事件の顛末を語るところから、この物語は始まる。
ただし物語自…体は誘拐事件そのものを扱ったものではなく、捕えられた人質たちの恐怖や政府のゲリラとの交渉、救出時の息詰まる攻防といった類の話は、一切出てこない。
暴力的で殺伐とした背景を舞台としながら、この物語全体を支配しているのはひっそりとした静けさだ。
長い拘留生活の中で人質たちの心にどのような葛藤があったかは、外部からは知る由もない。ただし残された記録が存在した。
人質たちの肉声が。
彼らは、解放されたら何をしたいかといったような未来は語らずに、自分が過去に体験したエピソードをおのおの語っていた。
その一人一人の話で構成されているのが、この物語である。
正直、ドラマになるような劇的なエピソードなど一つもない。よく考えるとちょっと不思議な感じのするお話もあるが、しみじみ感動させるとか泣けるとか、突出した話ではない。ただそれが淡々と次々に語られていくのに耳を傾けているうちに、我々は気付かされるのだ。
他人が聞けば何でもないようなちょっとした事柄でも、それがその人の人生を決める大事なきっかけとなることがある。そして生涯忘れられないエピソードとして、心に刻まれている。そうしたことは、実は大多数の人が大なり小なり経験しているのではなかろうか。
私たちの周りにいる、大成した事業家でも華やかな芸能人でもない、どこにでもいるごく普通の人たち。それがある日突然、普通でない状況に巻き込まれ、命を落としてしまった―。
だからこそ、彼らのささやかな人生が確かにそこに有ったのだと。こんなふうにして皆それぞれ懸命に日々を生きているのだと。
声高に何かを主張するのではないが、ひたひたと波が打ち寄せて来るような、そんな味わいのある物語だと思う。
とても感動的だとか胸に迫るとか、そういう劇的な部分は何もない。なのに何故か静かな夜にもう一度読み返したくなる、そういう余韻を残す物語だ。
続きを読む投稿日:2014.10.11
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百鬼一歌 都大路の首なし武者
瀬川貴次 / 講談社タイガ
シリーズ物の第2弾
0
この作者の別シリーズ「ばけもの好む中将」の大ファンでこちらの作品も読んでみたのですが、前回の第1作目は正直面白いと思えませんでした。歌人を主人公にした点に物珍しさはあっても随所に挿入される本人による歌…の解説に(話中の人物同様)げんなりさせられ、主人公の歌人希家のキャラクターがどうにもボンヤリして、魅力を感じる事ができなかったのです。「ばけもの~」はどこか可笑しみを感じさせる軽妙洒脱な文章が気に入ってるのですが、こちらは至って真面目な文章の運びです。こちらのお話の方が史実の流れををより意識させるような作りになっていると感じます。ただどうにも凡庸感が否めず、これが何故2作3作と続く事になったのか…と失礼ながら首を捻ったものでした。
が、2作目になって俄然面白くなりました!実はこのシリーズの(隠れ)主人公は歌人その人ではなく、いつも彼の周りをちょろちょろしている陽羽という少女だったのです。そうした目線で見ると、作中誰よりも生き生きとキャラが立っていて動きのある人物で、彼女の熱意ある行動が物語を広げて行きます。
今回は首なし武者出現という、おどろおどろしい話ですが前回よりずっと緊迫感・ミステリー感があって楽しめました。そしてこのシリーズは、最後の最後に「えっ?!」と驚くようなタネ明かしをぽんと投げかけて次回に引っ張る、という特徴があるようです。じわじわと面白さが増して来ました、次回作が楽しみです。 続きを読む投稿日:2021.05.06
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消滅 VANISHING POINT (上)
恩田陸 / 幻冬舎文庫
少し長すぎるかな
0
テロリストがこの中にいる。そう告げられて空港に足止めを食らった人々。互いに疑心暗鬼を募らせながらも連帯感によって結ばれて行くという話。果たしてテロリストは誰か。彼らが目論む「消滅」の意味するものは?
…
ミステリーの要素があってとても面白かった。長丁場だけあって人物描写が非常に細やかだし、ここで必要なのかと思うような突拍子もないようなSF要素も話の中でスパイスになっていた。
ただ描写がいささかクド過ぎ長すぎの所があって、こんなどうでもいいような説明を長々するよりもさっさと話を進めて欲しい。そう感じる時もあった。この物語はもう少し短く纏めても良かったのではないかと思う。
あと、この騒動は結局落ち着く所に落ち着いて終焉を迎える訳だが、国家や政府など物々しい体制をを持ち出した割には、いささか甘いというか呆気ないというか。でも軽い読み物としては最高だし、2時間ドラマにしたら面白い内容だと思う。 続きを読む投稿日:2020.07.30