shohjiさんのレビュー
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完全無罪
大門剛明 / 講談社文庫
読了後ジワリと効いてくる
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少女誘拐殺人事件の冤罪に挑む女性弁護士は21年前に誘拐された被害者の1人だった。『雪冤』で冤罪を描いた大門さんだが本書は強烈な悪意を持つキャラが出てこないので緩い感じがする。と同時に善人のように見えて…誰もが悪人である可能性が最後まで残る。警察官の正義感は悪を憎むこととイコールなのか、検事や弁護士の正義とはなにか、生還した被害者や子供を殺された親は一生消えない傷とどう向き合っていけば良いのか。単純に考えればリーガルミステリだが読了後ジワリと効いてくる「正義とは何か」という非常に身近な問題への問いかけである。 続きを読む
投稿日:2019.03.02
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ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士(上・下合本版)
スティーグ・ラーソン, ヘレンハルメ美穂, 岩澤雅利 / 早川書房
ついに3部作完結
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【上巻】公安、スパイ、リスベットへの陰謀、ありとあらゆる汚さが露見する。一般市民にとってスパイなど絵空事と感じるが規模の小さい陰謀は会社という組織のなかで起こっているのではないか。偶然に掴んだ新聞社の…スキャンダルは笑えないものがあった。リスベットの裁判など具体的な動きは下巻でとなるがスウェーデンの歴史や政治など考えさせられることが多かった。唯一の救いは政府が報道に介入しないと言い切っていることである。北海道開拓団「屯田兵」は北方警備の意味合いで「兵」という字がついていた。これもロシアを意識してのことだったのか…
【下巻】段々面白くなったが第1部の離島+狂った実業家一族という北欧版「八つ墓村」の雰囲気も良かった。全体通して「権力乱用して1人の人間を排除(虐待)するVSハッキングすれば何でも出来る」の対立であった。最後まで複数の女性と交際するミカエルだが常に相手を1人の人間として見ている点で魅力的だった。男女差別、DVなどが本シリーズの重要なテーマだがポイントはまさに「人を人としてみているかどうか」という一点ではないだろうか。著者がジャーナリストだったからなのか報道に関する倫理観もしっかりしていた 続きを読む投稿日:2019.01.23
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ミレニアム2 火と戯れる女(上・下合本版)
スティーグ・ラーソン, ヘレンハルメ美穂, 山田美明 / 早川書房
とにかく二人の描くコントラストが良い
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【上巻】リスベットは前回の事件で手に入れたお金で旅に出る。おそらくこの後の事件とは関係ないと思われる旅のエピソードは面白いが非常に長かった。いよいよスウェーデンに戻り、家も購入しこれからという時に事件…は起きる。殺人犯人として警察に追われる身となったリスベットと偶然にも第一発見者となったミカエルがこれからどう絡んでくるのか。静と動、陰と陽とでも言うのか対照的な二人だがどちらも強烈な個性を持っている。しかし片方だけを語った部分は退屈だ。とにかく二人の描くコントラストが良いのである。この後のミカエルの活躍に期待したい。
【下巻】リスベットは何者なのか、次第に謎が解けていく。それにしても変わり者のリスベットを誰もが敬遠しているかと思ったらそうでもない。私も読みながらリスベットならこう考えるはずだと勝手に応援していた。前半の長いエピソードもリスベットの性格を描く大切な場面だったのだと途中で気がついた。最初は警察が頓珍漢でミカエルが暴走するストーリーを予想していたが警察も賢い。常に絡んでくるのは女性への虐待である。スウェーデンも日本も背負っている病は変わらないなと考えていたらワイドショーで「純烈」の記者会見が流れるオマケもついてきた。 続きを読む投稿日:2019.01.23
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ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女(上・下合本版)
スティーグ・ラーソン, ヘレンハルメ美穂, 岩澤雅利 / 早川書房
北欧版「八つ墓村」である
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かなり流行に乗り遅れて3部作の第1部を読了。スウェーデンの夏と冬のコントラストは道産子にお馴染みの光景である。そのせいか登場人物が多いわりに読みやすかった。田舎の小さな集落で濃厚な人間関係から起きる息…苦しさにも既視感がある。絆という言葉がもてはやされる時代だが絆は時として人々の首を絞め窒息させるのだ。物語の柱は2つ。雑誌ミレニアムの責任者ミカエルが有罪となった名誉毀損事件の巻き返し。それともう一つは大実業家一族の秘密に迫る北欧版「八つ墓村」である。長くつ下のピッピのような調査員リスベットの存在感は凄い。 続きを読む
投稿日:2019.01.23
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ギャンビット
レックス・スタウト, 大村美根子 / グーテンベルク21
1962年に書かれたネロ・ウルフの長編。
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日本ではEQ掲載のみだったがついに電子書籍が出た。ギャンビットとはチェスの定石のこと。今回の殺人事件はチェス大会(1人vs12人で盤面を見ないで同時進行で進む変わったゲーム大会)で起きる。8割がたウル…フのオフィスが舞台となり会話で進む安楽椅子探偵の見本のような作品。かなり理屈っぽいのでウルフファンでも余程の変わり者でなければ楽しめないのでは・・・と途中で思いながらも私は充分楽しんだ。元妻に殺されかけたウルフの女性恐怖症が全開だがアーチーのフォローが今回も光っている。 続きを読む
投稿日:2018.12.17
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雪〔新訳版〕 下
オルハン・パムク, 宮下遼 / ハヤカワepi文庫
信仰と貧困についての理解は残念ながら深まらなかった
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詩人のKa(カー)はトルコの地方都市カルスで暴動に巻込まれるが愛する女性イペキをドイツへ連れて帰ろうと奔走する。本書には3つのポイントがあると思う。①信仰と貧困②政治と暴動③恋愛と孤独である。貧しさと…格差から現世でかなわぬ平等を来世に期待することが信仰だとしたらなぜ福祉を求めず暴動なのか。残念ながらここで語れるほど理解は深まらなかった。スカーフをかぶることが自分を守ることだと語る少女たちも悲しい。下巻は③を中心に進むが①と②が常に潜んでいるのだった。ただ孤独だけは万国共通なのか私にも共感することが出来た 続きを読む
投稿日:2018.10.04