
言語学講義 ──その起源と未来
加藤重広
ちくま新書
言語学の最新の研究状況
言語学を始めとする文系の学問は、理系に比べて進歩が遅いというイメージをお持ちの方がおられるかもしれませんが、決してそんなことはありません。 多くの研究者の努力で、ゆっくりとではありますが着実に研究は進んでいます。 言語学のこれまでの研究内容を踏まえて、現在そして未来の言語学の課題を述べた本です。 記述も読みやすく、お薦めします。
0投稿日: 2019.05.02
道頓堀川
宮本輝
新潮社
大阪文学の傑作
舞台は、昭和40年代の大阪、道頓堀。邦彦は、大学に通いながら喫茶店リバーに住み込みで働いている。リバーのマスター武内は、かつては日本一といわれたプロのハスラーだが、今はビリヤードから遠ざかって穏やかな暮らしをしている。大阪・道頓堀にたむろする登場人物たちは、みな人生の影を背負って生きている。 道頓堀の夜のネオンが、その人生の影を映し出しているような小説である。大阪ミナミの街を知っている人には是非読んでほしい大阪文学の傑作である。
5投稿日: 2016.12.04
東大卒ポーカー王者が教える勝つための確率思考
木原直哉
中経出版
確率論・期待値から考えるツキや運の考え方
私は、これまで、麻雀の雀鬼と言われる方や将棋の高段者、占い師などの書いたツキや運気に関する本を何冊も読みましたが、それらの本は、いずれも「運気の流れ」というものがあり、その流れをいかにコントロールするかという観点から書かれていました。 しかし、本書は、それらの本とまったく違っています。ツキは回数を重ねれば期待値に収束するという、確率論に基づくドライな考え方から書かれています。 著者は、アメリカで行われた大きなポーカー大会の優勝者なのですが、ポーカーのトランプの出方は、それぞれが独立事象でツキとは関係ないという合理主義的な考え方です。 「幸運・不運は単なる事象であり将来に影響しない」とか「歴史上の出来事や戦略はヒントにならない」つまり、歴史上の教訓から学び取るものはないと、身もフタもないことを著者は言います。 このような合理的・科学的な考え方から書かれた本であるのに、結論は「人生は収束しないギャンブル」であり「人事を尽くして天命を待つ」、人生の幸せを最大にするのが重要ということになっており、私が今まで読んできた他の本と共通する部分も大きいなと思いました。 ツキや運気について、関心のある方は読んでみると面白いと思います。
4投稿日: 2016.07.29
わりなき恋
岸惠子
幻冬舎文庫
恋愛に年齢は関係ない
とても上質の恋愛小説です。 主人公の69歳の女性が、59歳の男性と恋に落ち、世界各地を舞台に愛を語るというお話です。 恋愛に年齢は関係ないなと改めて感じさせられました。 主人公は、著者の岸恵子さん自身がモデルなんでしょうね。 50代、60代の女性に読んでもらいたい本です。
0投稿日: 2016.05.17
財部誠一の経済深々(第3回) 「どうなる? 日本株」
財部誠一
ゴマブックス
大手証券会社の社長へのインタビュー
経済ジャーナリストの財部誠一さんが大和証券の社長にインタビューするという本です。 財部さんは穏当なジャーナリストですし、対談の相手は大手証券会社の社長ですので、常識的で当たり前の話ばかりです。 つまり、目からウロコが落ちるような話はありませんが、現在の経済情勢や株式市場について基本的な状況が分ると思います。 薄い本ですし、サクサク読めました。
1投稿日: 2015.03.07
アジアへ羽ばたく若き和僑たち
WEDGE編集部
WEDGEセレクション
ビジネスチャンスは、海外にある
アジアでのビジネスに取り組む7人の若者の紹介、それにアジアビジネスと日本の若者についての短い記事をまとめた本です。 ビジネスチャンスは、日本よりアジアの国々の方が多いのは自明です。一人でも多くの若者に、他人事ではなく自分の課題として、アジアでのビジネスを考えてほしいと思います。 志のある人は是非、日本を飛び出してください。私も若者ではありませんが、アジアで働いています。
3投稿日: 2015.02.28
おどろきの中国
橋爪大三郎,大澤真幸,宮台真司
講談社現代新書
中国は2000年前にできたEUだった
3人の社会学者が中国について語っています。 時事的な中国問題を取り扱っているわけではなく、中国の本質、つまり中国とはそもそも何かを論じています。 例えば、中国の皇帝とは?とか、漢字がどの様な役割を果たしてきたのかとか、儒教とは?とかです。 ちょっと難しめですが、その分内容が濃いです。 時事刻々と中国の動きを追うことも大切ですが、中国や中国人の奥底が分れば、中国がなぜ不可解で横暴な行動をするのか理解できると思います。
6投稿日: 2014.10.13
徳川家康公遺訓 人の一生は重荷を負って遠き道を行くが如し、急ぐべからず――
日本歴史遺産研究会
ゴマブックス
短い言葉にこめられた深い人生への洞察
若いころは、私も信長や秀吉が好きでしたが、最近は歳をとったせいか家康の生き方に共感するところが多いです。 人の一生は、重い荷物を背負って、遠い道を行くようなものなのですよね。 短い遺訓ですが、しみじみと味わいたい言葉です。 家康の他に、西郷隆盛や伊達正宗、徳川光圀の遺訓も収録されています。 どの遺訓も、味わい深いですよ。
2投稿日: 2014.09.10
銀翼のイカロス
池井戸潤
ダイヤモンド社
今回の本当の主役は、中野渡頭取だ
今回の半沢直樹は、帝国航空(JAL?)の債権放棄をめぐって、女性国土交通大臣(蓮舫?)や大物政治家(小沢一郎?)や旧Tの銀行幹部などを相手に、いつものように戦います。 半沢直樹はもちろん、同期入行の渡真利、近藤、上司の内藤部長など、前3作で登場した人物たちも活躍します。あの金融庁の黒崎検査官でさえ、単なる悪役とはいえない役割で登場です。でも今回の本当の主役は、中野渡頭取なんですね。最後まで読むと中野渡頭取が好きになりますよ。 エンターテイメントとしては、前3作より落ちるかなと思いますが、前3作を読んだ方なら絶対に楽しめます。ただし、前3作をまだ読んでない方は、前作を先に読んだ方がいいと思います。
2投稿日: 2014.09.08
舟を編む
三浦しをん
光文社文庫
地味な仕事に込められた熱い思い
辞書編集という門外漢から見れば、地味な仕事に熱い情熱を持って取り組む人々のお話です。 この小説に登場するのは、真面目な人たちばかりです。その登場人物たちが真面目に、辞書編集という地味な仕事に20年もの間、取り組むという、とても地味なお話なのですが、読み終わった時、不思議な感動を覚えます。 この小説の中では、殺人事件や大災害は発生しませんが、登場人物たちは言葉という海の中で、辞書編集というアドベンチャーを続けているわけです。 私も読み終わって、手元にある国語辞典を手に取ってみたくなりました。
3投稿日: 2014.07.26
