
ストレート・チェイサー
西澤保彦
光文社文庫
むしろ眼目は、密室ではなく
「7回死んだ男」とか「人格転移の殺人」のように現実のロジックとはちょっと違った世界でのミステリ、ですがロジックというよりはワンアイデア勝負というところ。しかも、密室の謎や隠された動機というミステリ部分はわりとあっさり目です。 じゃ、どこが眼目かといえば、ラストシーンに尽きるでしょう。或る意味、マニア向けかも、と思います。
0投稿日: 2014.12.22放課後はミステリーとともに
東川篤哉
実業之日本社文庫
最初の作品で、やられました。
短編集ですが、小粒でぴりりとしたロジックの短編集です。特に、最初の「霧ヶ峰涼の屈辱」と「霧ヶ峰涼の逆襲」はしびれました。 最初の屈辱は、やはり*あれ*に尽きるでしょう。特に、東川篤哉氏のこれまでの作品を読んでいるほど、ひっかかるんじゃないかとおもいます。これは絶対に映像化は無理、とおもいました。(「ハサミ男」の時もそう思ったけれど) でも、コミック版があるんですよね?どゆこと? そして、逆襲は、推理のひっくり返しに、入りと出の人の使い方、この発想は凄い。 この2作だけでも読む価値あり、その他の作品も(些か小粒ではありますが)、粒ぞろいです。 尚、先頭に注がある通り、この本は *絶対に* 順番によんでください。これ、絶対守るべし。
5投稿日: 2014.11.09五骨の刃 死相学探偵4
三津田信三
角川ホラー文庫
今度はミステリだ
三津田信三氏のホラーミステリ(のライト版)の死相学探偵シリーズですが、3作まではミステリ要素が今一つ薄かったとおもっています。(名探偵、皆を集めてさてと言い、という舞台は毎回あったんですけど)。どちらかといえば、サスペンス&ホラーの色が濃かった、という印象ですが、本作はミステリ要素が大幅増。ミッシングリンクで全体を引っ張っています。 (いや、ホラー的&サスペンスのパートもあるんですけど) ネタバレになりかねないですけど 解明されたミッシングリンクは、賛否両論かもと思います。でも個人的には大好きです。 (横溝正史氏の*あの作品*をおもいだしましたが)
0投稿日: 2014.08.21死者は黄泉が得る
西澤保彦
講談社文庫
ミステリというよりはむしろ,,,
後書きで、作者ご本人が書かれているように、山口正也氏の「生ける屍の死」にインスパイアされた作品ということで、蘇る死者が出てくるわけです。とはいえ、事件パートではその設定はリンクせず、ミステリとしてみるならば死後のパートは不要にすら見えます(アンソニー・バークリーばりの趣向は凝らされているとしても)。ミステリ部分は、(「人格転移の殺人」や「七回死んだ男」のような)SF的な論理立ては皆無で、ごくごくオーソドックスなミステリと言えます。 じゃ、死後のパート(SF的趣向)が不要かといえば、これは結末のあの風景を書きたいからいれたんじゃないか、と思えて、これはこれで必要じゃないかと。(じゃないと、あの人があっさり殺されたあたりが救われなくて) 或る意味、甘々のラストシーンですが、ミステリ的にはともかく作品としては好きですね。(年くったせいかもしれませんが) ちなみに、もう一人のヒロインのラストでは、女は怖い(なぜ最後にあの人を残したか)、とか思ったのも事実です。 総論としては、ミステリ(特に初期の西澤氏の異なる論理世界のミステリ)を期待していると肩透かしかもしれませんが、作品としては好印象(個人的に)です。
0投稿日: 2014.06.22六蠱の躯 死相学探偵3
三津田信三
角川ホラー文庫
このシリーズを貫くストーリーが見えてきた、ような
シリーズ第一作「十三の呪」は、三津田信三氏の入門書として見ていました。が、三作目の本書で、このシリーズを貫くストーリーらしきものがみえてきたような(二作目でも伏線はあったのですが)。 他のシリーズよりも軽いタッチのこのシリーズですが、背骨が一本通ったようで今後が楽しみになってきました。
0投稿日: 2014.04.01神狩り
山田正紀
ハヤカワ文庫JA
SF的アイディアと勢い
個人的に、「宝石泥棒」、「エイダ」、「チョウたちの時間」他、好きな作品がたくさんある山田正紀氏ですが、その中でもこの「神狩り」と「弥勒戦争」は何度も読み返してしまいます。あらすじは、書籍説明に書かれてますので省略するとして、個人的な感想を。人間には理解できない構造の言語や”神”の位置づけ等、SF的なアイディアに溢れながら、小説としてはある意味荒々しい、勢いで突っ走っている、でもそれが魅力です。(ちなみに、"神"の扱い等は、今でこそありがちなガジェットですが、日本ではこの作品がさきがけじゃないか、と個人的には思っているのですが) 発表は1974年、でもその熱気はまだまだ読み取れる、と思います。若い人が読んだらどう感じるか、オジサンは気になります。
0投稿日: 2014.01.10十三の呪 死相学探偵1
三津田信三
角川ホラー文庫
三津田信三氏の入門書として
ホラーとミステリのハイブリット作家、三津田信三氏。特にミステリの部分については通好みというか、とにかく凝っています。ただ、初心者には敷居が高いかも、とも思います。その中で、この死相学探偵シリーズは、比較的すなおに読めるシリーズでおすすめです。基本ホラーの作品ですが、キャラクタを含め(これはホメコトバではないかもしれないですが)余り怖くない、ライトな感じに仕上がっています。その上、犯人捜しのミステリ要素もあり、なので三津田信三氏の格好の入門書ではないでしょうか。この作品を読んで気にいったなら、ミステリの人は「刀城言耶」のシリーズにいくもよし、ホラーの人は「怪奇作家」のシリーズにいくもよし。
3投稿日: 2014.01.07田舎の刑事の動物記
滝田務雄
創元推理文庫
やっぱり、黒川鈴木には....
前作のレビューでは、「主人公の黒川鈴木に、松重豊氏がダブってしまい」とかきました。本作を読んでみると、”コメディを一生懸命演じている松重豊”が浮かんできます。作者が後書きでも書いているように、前作よりキャラクタが動き回っている印象です。でも、なにかあれば、黒川鈴木刑事(私の脳内で松重豊氏)が、些細なとっかかりから推理をして、ビシッとしめてくれる安心感があります。 全体的にはライトなミステリですが、前作と合わせて、キャスティングを妄想しながら読むと楽しいとおもいます。
0投稿日: 2013.12.31茶坊主漫遊記
田中啓文
集英社文庫
まるで講談的な
ブラウン神父を日本のお坊さんに置き換えたミステリです。(そのまんまですけど) ブラウン神父の逆説は、この本でも展開されています(もちろん、ネタは別物ですけれど)が、 寧ろ読みどころは、講談的な展開かもしれません。 ブラウン神父物は、幻想的な雰囲気で逆説を納得させるのですが、 こちらは茶坊主は、東野英治郎氏の水戸黄門を思わせることやあの柳生十兵衛が銭形警部よろしく茶坊主を追っかける アップテンポな勢いで逆説を納得させているような。 尚、これを読んだ後、思わず山田風太郎氏の忍法魔界転生を読んだのは、個人的な好み、ですけれど。
1投稿日: 2013.12.13田舎の刑事の趣味とお仕事
滝田務雄
創元推理文庫
ドラマは見てませんけど
読み始めたところ主人公の黒川鈴木に、松重豊氏がダブってしまい、途中から黒川の独り言(心の声)が、孤独のグルメのモノローグのように聞こえるは、シーンが黒川鈴木氏の表情が浮かぶは、脳内では松重豊氏主演のドラマがつくりだされたのでした。(黒川の管理職的な部分など) そういえば、ドラマになっていたな、と検索してみると主演が板尾創路氏なんですね。今一つ、イメージに合わないような。ドラマは見ていないですけど。(妻役の鶴田真由さんは、こう来たのね、と納得ですが) ドラマ見てみようかな、と思っています。 さて、内容はといえば、田舎でおきたささやかな事件(ばかりではないですけど)から、実は、という展開が多いです。ワットダニイットという言葉があるかどうかはわかりませんが、何が起きたのかというパターンです。(ミステリは大なり小なり、何が起きたのかという要素はありますけど)特にこのドラマはその要素があると思います。(9マイルには遠すぎるほどじゃないですけど) シリーズの次の作は、黒川は松重豊氏のままなのか、板尾創路氏になってしまうのか、次作を読んでみようとおもいます。
0投稿日: 2013.11.17